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日本学術会議臨床医学委員会 臨床研究分科会世話人
東京医科歯科大学医学部付属病院長 宮坂信之
臨床医学研究とCOIマネジメント
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研究成果の発表、公表 の科学性と中立性確保
・学術雑誌 ・講演発表 ・ガイドライン策定 ・調査報告書作成 ・市民公開講座など
医療系施設、機関 学会、学術団体、 学術雑誌社など
臨床研究・臨床試験の適正な の実施と結果・成果の蓄積 新規の診断、治療法、予防法開発 医療機関 EBMによる
診断、治療、予防法
の確立と周知 社会へ還元
診断、治療、予防法の開発には産と学との連携が必須
産学連携推進
企業
(曽根三郎先生より提供)
ア) 狭義の利益相反:教職員又は大学が産学連携活動に伴って得る利益と、教育・研究という大学における責任が衝突・相反している状況。
イ) 責務相反:教職員が主に兼業活動により企業等に職務遂行責任を負っていて、大学における職務遂行の責任と企業等に対する職務遂行責任が両立し得ない状態。
ウ) 個人としての利益相反:狭義の利益相反のうち、教職員個人が得る利益と教職員個人の大学における責任との相反
エ) 大学(組織)としての利益相反:狭義の利益相反のうち、大学組織が得る利益と大学組織の社会的責任との相反
1.利益相反の概念 大学の使命=教育・研究+産学官連携による技術移転(社会貢献)
不可避的に生じる利益相反
利益相反(広義) 利益相反(狭義)(ア)
責務相反(イ)
個人としての利益相反(ウ)
大学(組織)としての利益相反(エ)
利益相反
学会、学術団体会員として、中立的立場で成果発表
医科系施設・機関にて 医学研究を適正に実施
医師・研究者
産学連携と研究者のCOI状態とは?
公的利益 (国民、患者等)
公明性 中立性
社会的責務
新規診断、治療、予防法の確立
(曽根三郎先生より提供)
私的利益
産学連携活動
企業
謝金 研究費 寄付金等
企業利益 開発・販売促進
○共同研究
○受託研究
○技術移転
○技術指導
○大学発ベンチャー
○奨学寄附金
○寄附講座
○講演会、セミナー開催など
利害の衝突
米国の臨床医学研究における COIイメージ(Google Image)
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米国の臨床医学研究における COIイメージ(Google Image)
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多額の寄付金を貰ってて診療ガイドライン策定は 公正にできるのか?
2008年3月
タミフル副作用事件とCOI
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イレッサ訴訟とCOI
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米国サンシャイン条項による 企業サイドからのCOI公開
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COIマネジメントの重要性
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医学研究にかかる利益相反マネジメントへの対応について
(平成23年度文部科学省イノベーションシステム整備事業 大学等産学官連携自立化促進プログラム)
1. 全国医学系学術研究機関へのアンケート調査
2. 研究者への意識調査 (国立大学法人 東京医科歯科大学研究・産学連携 推進機構産学連携推進本部 飯田香緒里氏)
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(1)対象 医学部を有する大学・医学系研究機関 (86機関) (2)調査方法 アンケート
(3)実施期間 2011年12月2日~28日
(4)調査項目 ①2010年度医学系産学連携活動状況 ②2011年度COIマネジメント状況 ③透明性ガイドラインについての意識
(5)回収率 77%(66/86)
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1.医学系学術研究機関への調査
①2010年度医学系産学連携活動状況
Ⅰ 医学研究に関する外部資金の内訳
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医学研究に関する外部資金の50%は民間企業から
①2010年度医学系産学連携活動状況
Ⅱ 民間からの資金の内訳
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民間資金の62%は奨学寄附金
②2011年度COIマネジメント状況
Ⅰ 臨床研究COI指針策定状況
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国立大学医学部長会議研究倫理に関する小委員会
いない 12% 策定している 88%
いない 25% 策定している 75%
1年で13%UP 【2010年度調査】
【2011年度調査】
臨床研究COI指針がまだすべての機関で策定されていない
②2011年度COIマネジメント実施状況
Ⅱ 自己申告体制
Ⅲ 説明会体制
Ⅳ マネジメント対象者
不定期22 定期申告78%
②2011年度COIマネジメント実施状況
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Ⅰ自己申告率
Ⅳ否決率
0% なし
Ⅲ アドバイス率
Ⅱ ヒアリング率
COIマネジメントは果たして 十分か?
③透明性ガイドラインについて
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Ⅱ 透明性ガイドライン検討の有無
Ⅰ 認知状況
COIに対する 現状認識は 十分か?
医学系研究機関における COIマネジメントの実態
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• 民間資金への依存度が非常に高い • COI指針等の基本整備は段階的に進展しているが十分といえない
• 透明性ガイドラインの認知度は低くないが・・・ 対応策は十分か??
医学研究、特に臨床医学研究における COIマネジメント体制は形式的で不十分
2. 研究者への意識調査
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(1)対象 東京医科歯科大学臨床系分野長(77名)
(2)調査方法 アンケート(実態/意識調査)
(3)実施期間 2012年1月6日~20日
(4)調査項目 ①奨学寄附金について ②透明性ガイドラインについて意識
(5)回収率 94%(73/77)
基本データ 研究費の内訳
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①奨学寄附金について
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Ⅰ 受入状況
Ⅱ 奨学寄附金が研究費全体に占める率
31%
17%26%
23%3%
研究費
人件費
学会参加費
備品等
その他
35%
47%
7%11%
とても大きい
大きい
ほとんどない
全くない
Ⅲ 奨学寄附金の役割
Ⅳ 奨学寄附金の使途
①奨学寄附金について
64%36%
知って
いた
知らな
かった
②透明性ガイドラインについて
COIマネジメントに関する 臨床医学研究者への調査結果
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• 臨床系分野の大部分が奨学寄附金を受け入れ、 研究費全体における占有率も高い • 奨学寄附金は研究を支える重要な資金源である • 大学にとっても、運営を支える貴重な財源である
学術研究機関にとって奨学寄附金制度の適正な受入体制の強化とCOIマネジメント
の徹底は喫緊の課題である
3. 米国アカデミアの状況調査
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(1)対象 米国2大学 スタンフォード大学・ハーバード大学 (2)調査方法 ヒアリング調査 (3)実施期間 2011年12月下旬~2012年1月初旬 (4)調査項目 サンシャイン条項制定後の COIマネジメント状況等
基本データ(米国) 研究費の内訳
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産業界からの資金 5.8%
産業界からの寄付が入っている可能性はあるが~
委任経理金・奨学寄附金
委任経理金:各大学に対して、国庫よりその経理が委任された金銭のことを指す。 奨学寄附金:一度国庫に納められた後、「委任経理金」として寄附講座・寄附研究機関などで利用可能となる。「委任経理金」は公金に当たるが、その使途に関しては、趣旨に応じてある程度機動的に利用できる、という特徴がある。
(曽根三郎先生より提供)
奨学寄附金の特色
1)寄附金の利点 ・使途が制限されず、自由に使える ・経理は大学経理事務が担当し年度を越えて繰り越しができる
2)受け入れルートと受け取り者について *理事長、学長 学部長、病院長 *講座(或いは分野)の長
3)最終配分される講座(或いは分野)、当該教員 *アカデミアとの利害が一致すれば、企業は予め配分先を決め て寄付している
企業からの寄付金受入れ様式と流れ
製薬企業 XX社
YY大学受入先
・理事長 ・学長 ・医学部長 ・病院長 ・講座(教員)
寄附金
大学内事務経理 A教授 B教授 C教授 D教授 - - - G教授 M教授
80-90% 交付
寄付要請・申し込みなどの交渉
販売促進への期待 ?
(曽根三郎先生より提供)
臨床医学研究とCOI:今後の課題
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アカデミア:奨学寄附金の寄附金受入れの透明化と
配分先の公開→社会に対する説明責任 企業:透明性ガイドラインに基づいた情報の公開
+産学連携活動資金の全公開
日本学術会議 対象:研究者
文科省研究班 対象:医科系大学
日本医学会
臨床医学研究に関する利益相反マネジメント
産業 連携
対象:学会
2012年度以降 アカデミア共通認識 統一見解策定に向けて 協働した活動を目指す