子どもと里親のための...

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子どもと里 親のための サポートハンドブック (発行元) 社会福祉法人二葉保育園二葉乳児院 二 葉 子どもと里 親 サポートステーション 2 2

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Page 1: 子どもと里親のための サポートハンドブック...二葉乳児院の元院長、故・鈴木祐子氏は、 二葉乳児院が東京都から受託した 「家庭的養護推進

子どもと里親のためのサポートハンドブック

(発行元 )社会福祉法人二葉保育園二葉乳児院

二葉子どもと里親サポートステーション

2

子どもと里親のためのサポートハンドブック 2

Page 2: 子どもと里親のための サポートハンドブック...二葉乳児院の元院長、故・鈴木祐子氏は、 二葉乳児院が東京都から受託した 「家庭的養護推進

 二葉乳児院の元院長、故・鈴木祐子氏は、二葉乳児院が東京都から受託した「家庭的養護推進

モデル事業」の一環として二葉乳児院が作成・発行した『里親勉強会テキスト1・2』(2006 年・2007年)

の「はじめに」で次のように述べています。

「乳幼児期の子どもたちは、不器用ながら、発達に応じたそれぞれの世界をひろげています。乳幼児期の

子どもたちの発達はめまぐるしく変化し、それにあわせた養育方法が必要となります」。しかし、

それらを里親が獲得できる機会が足りていません、と。

 里親養育を重んじるからこその取り組み姿勢と創造性は、現・都留和光院長や職員の方たちの実践にも

引き継がれています。私の手元にも大事に保管しているこのテキストのタイトルは「すくすく」と「のびのび」。

乳幼児期の子どものみならず18 歳までを含む、まさに私たちが育ちを支えたい子どもたちの姿です。

里親は「24時間365日」の家庭生活の中で、子どもの養育に心を注ぎます。子どもに寄り添い、向きあう

生活実践が今日も積まれています。養子縁組に向かう子どもや長期養育を必要とする子どももいますが、

短期の養育が必要な子ども、実家族のもとに戻っていく子どももいます。年齢の高い子どもの委託も

あります。

 多様な養育がある中、とくに乳幼児期の子どもを育てる里親の中には、子どもをはじめて養育する人も

います。また、里親が一生懸命に養育していても、子どもを基点として考えると、子ども理解や発達理解

の不足、子どもへのケアやかかわりの発想のもちにくさ等から、養育者が子どものニーズに対応できてい

ないこと、それに気づいていないこともあります。養育者の課題が子どもに映し出されることも

あります。子どもも里親も苦しくなっては、養育が明日につながりにくいでしょう。支援者は、どのように

養育の要点を里親と共有し、養育の伴走者になったらよいでしょうか。

 そこで、前作の「ハンドブック1」に続いて、「ハンドブック2」が、意図と思いをこめて元気よくここに

誕生しました。「チーム二葉」のみなさんが、日頃の里親養育の支援をふり返りながら、実践知や

課題意識をふまえてまとめられた、ハンドブックの「続き」です。本作は、子どもの発達理解と子ども

へのケアのヒントを中心に編んでみることになりました。里親子に実際にふれてきた「チーム二葉」の

みなさんならではのまなざし。年齢の低い子どもほど、自らのニーズを言語化しにくいため、重点的

に書いています。また、発達年齢だけでとらえられない、社会的養護の子どもたちが抱える状況の理解に

ついても加えて記載されています。関連する理論や情報も取り入れ構成しています。

 荒削りな部分や足りない部分もあろうかと思いますが、本作の中に描かれた子ども理解が、少しでも

実際の養育につながること、養育者を支え、関係者の共通理解の一助となることを願います。そして何

よりも、子どもたちのニーズへの応答につながりますように。ささやかながら本作作成の取り組みを

見守らせていただいたスーパーヴァイザーとして、またこの分野に携わる者として祈るところです。

 さあ、「ハンドブック」、二つ目の「卵」が産まれました。この「卵」を関係者との対話の中でどう育て

ていけるでしょう。また、この「卵」から、いま家庭養育の中にいる子どもたち、養育者、関係者に、

どんな栄養を届けていけるでしょう。子どもの育ちを支えながら、大人である里親も支援者も皆、ともに

育ちあいたいものです。子どもたちの人生にかかわる者として。将来にわたって子どもたちに説明できる

誠実な養育実践を目指して。

子どものニーズに応えられる「応援団」として育つために青山学院女子短期大学 教授 横堀 昌子

ハンドブックの使い方・作成にあたっての考え方

 二葉乳児院は、平成 20 年度より、東京都の里親支援機関事業を受託し、現在では、11名のスタッフで

この事業に取り組んでいます。10年をとおして、事業内容も変遷してきました。事業内容は、広報啓発・

相談援助・研修企画など多岐にわたります。そのなかで、もっと何かできたのではないのかと落ち込むことも

あります。私たちはその都度、話し合い、最善の方法が何かを考えるよう取り組んできました。今回、

里親さん、養親さん、子どもから教えてもらったこと、スタッフ間で悩んだこと、関係機関職員さんと話し合った

ことなどの多くのキーポイントと、知っておきたいこと、知っておいて欲しいことをハンドブックとして

まとめることにしました。二葉乳児院の理念でもある「c h i l d r e n f i r s t」という考えを大切にして、

特に、「子どもにとってどう考えるか」という視点を中心に置いて作成しています。また、学識経験者として、

平成 20 年度からずっと私たちの SV をお願いしている青山学院女子短期大学教授・横堀昌子先生に本研究に

参加いただき、このハンドブックを充実させ、より多くのみなさまの手に届き、活用していただけたらと考えました。

 里親・養子縁組を希望する里親として登録をされた方、現在受託中の方、そして、里親子に関わる施設職員

並びに児童相談所等関係機関の方に是非読んでいただきたいと思います。また、このハンドブックをとおして、

また、共に課題を整理し、次につながるようなきっかけになればと思います。

● このハンドブックは、「植山つる児童福祉研究奨励基金 」の助成をうけて作成しています。

● 「知的障害」など診断名については、「障害」と記載していますが、 それ以外は、「障がい」と記載するようにしています。

● 文中では、「里親」と記載されている場合と「里親さん」とさん付けで記載している場合があります。

● 文中に紹介されている事例等は、内容を損ねない範囲で個人が特定されないように加工・修正しています。

ハンドブック作 成にあたって

社会福祉法人二葉保育園二葉乳児院 二葉・子どもと里親サポートステーション 長田 淳子

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子どもと里親のためのサポートハンドブック2

乳幼児期の生活リズム

月齢ごとの発達と子育てポイントp7-18

子どもとのくらし

子どもを迎えたら ~家事と育児のバランス~

里親さんと出会った頃の子どもの気持ち

子どものグリーフに寄り添うこと ~発達段階に応じた理解と対応(真実告知)~

子どもと食事

トイレトレーニングや排泄のこと

子どもの健康

子どもと安全

p21-22

p23-28

p29-32

p33-36

p37-40

p41-46

p47-54

2

子どもの生活

子どもと遊び

子どもと本

子どもの発達とその支援

発達に課題のある子どもと社会資源 MAP

p56-63

p64-68

p69-72

p73-74

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子どもと学び

子どもにとって学びとは

子どもの学びを支援する

子どもとお金のこと

p77-80

p81-82

p83-84

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乳幼児期の生活リズム

第1章

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0 か月

※但し、発達には個人差があり、伸び方も一様ではありません。

身体の動き 手の動き 情 緒

乳幼児期の生活リズム1

月齢ごとの発達と子育てポイント

生後~3か月までの赤ちゃんの成長 水分補給

7 8

人間の子どもの誕生は、生理的早産と言われるように、一人では身体を上手に動かすことも、食事を自分一人で摂ることも

できません。

しかし、早く生まれた分、外界の情報をどんどん吸収し、めまぐるしく成長していきます。昨日できなかったことが、

今日にはできていることもたくさんあります。まだ、お話をすることも、自分自身の体を自由自在に動かすこともできない

月齢ですが、もう立派な一人の人間として、たくさんのことを感じ、吸収する力があります。

羊水で泳いでいた子どもにとって、外界に突然出されてしまうことは、ちょっとしたショックな体験でもあります。

子どもが欲求に応じた要求を出し、それを大人に満たしてもらえるという体験が、大人との適切なアタッチメント形成の

基礎となり、これからの成長にとても大切なこととなります。

だいたい3時間おきにミルクをあげます。

ミルク以外にも湯冷ましも与えても構いませんが、

必要なミルク量が飲めているか確認しましょう。

1 か月

2 か月

3 か月

自由に頭や体の向きを変えられない

腹ばいでときどき頭を上げる

首がすわる腹ばいで頭を少し上げることができる

反射的に固く握る

手を口の中に入れる指をしゃぶる手に触れたものをひっぱる

自分の手をかざして見る

単調な泣き声

表情を持った泣き声、「ウッ」「アー」などの発声が出始める。

あやすと手足をばたばたさせて喜ぶ

微笑みがでる声がよく出るようになるあやすと声を出す

泣くことこの段階の赤ちゃんは、「快・不快」で感じます。

また、いろんなことを言葉の代わり泣くことで

要求します。泣く原因が分からないときもある

かもしれませんが、だんだんと泣き方の違いが

分かってきます。

保温赤ちゃんの体温は37度前後です。新生児の

子どものいる部屋の温度はなるべく20度

以下にならないように。換気も大切に。

身長・体重生後2~3日は一時的に体重が減りますが、

1週間ほどで戻り、だんだん増えます。一日に

約30~40グラムほど増加。身長も1か月で

約4~5センチ伸びます。

睡眠生まれてすぐは一日のほとんどを眠っています。

成長するとともに起きている時間はだんだん

長くなり、睡眠の時間も決まってきて、3か月

ごろには夜まとめて眠れるようになります。

少しずつ生活リズムがつきます。夜眠っている

ときは、電気を暗くしましょう。

「目覚めると泣きます」

乳児期の睡眠について

SIDS(乳幼児突然死症候群)に注意しましょう。

● 仰向けに寝かせましょう。● 枕の使用は避けましょう。(タオルやドーナツ枕などの使用の際にも注意が必要です)● 赤ちゃんの周りで、たばこを吸わないようにしましょう。● 室温をなるべく平均させ、暖めすぎないようにしましょう。

● 0~1か月頃は睡眠時間が一日のほとんどで4~5回に分けてとります。

● 1~3か月頃では、睡眠時間は1日の60%ほどになります。おなかがすいたり、おむつがぬれたりすると  不快になり目覚めて泣き、要求が満たされると眠るということを繰り返します。2か月頃になると睡眠と  目覚めの区別がはっきりしてきます。睡眠リズムには個人差もあるので、個々のペースに合わせましょう。

+ お布団は吸湿性のあるものを選びます。窒息を防ぐため硬めの寝具を使用しましょう。+ 適温を保ち、60%程度の湿度を保ちましょう。扇風機や冷房の風が直接当たらないようにしましょう。 また、冬に湯たんぽやカイロを使用する場合でも、直接肌に接しないようにしましょう。

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1子育てポイント子育てポイント子育てポイント

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9 10

4 か月

※但し、発達には個人差があり、伸び方も一様ではありません。

身体の動き 手の動き 情 緒

4か月~7か月までの赤ちゃんの成長

赤ちゃんはだんだんと手足を動かし、自分なりに遊んだりするようになります。また、人を認識し、人とのやりとりを通して

遊ぶこともできるようになります。子どもの世界は、子ども自身がびっくりするくらい急速に広がり、子どもは好奇心で

いっぱいになります。しかし、急激な変化は、子どもにとってとても不安なものにもなります。たくさんの外界の刺激に気づき、

子ども自身が疲れてしまうこともあります。泣いたり、怒ったり、甘えたり、子どもの要求も複雑になっていきます。

理由が見つからない大泣きをする子どもを前にして、疲れ果ててしまうこともでてくるかもしれません。泣き声ばかりが気に

なってきたら、それはお疲れのサインです。二人きりの時間を少し減らして、一呼吸置いてみましょう。

自分がリラックスできる方法をいくつ知っていますか?

5 か月

6 か月

7 か月

あおむけだと手が膝に触れる

両手をついて背を丸くして座れる

手を放して背を伸ばして座れる

両手を合わせて遊ぶ

片手でもつかむことができる

あやすと声をたてて笑う

人見知りが始まる

手に触れたものを口へ持っていく

自分の指を吸い始める

人をじっと見つめる

喃語も増えて声に広がりがでてくる

ガラガラを持たせると振り鳴らす

寝返りを始める

おなかを中心にしてぐるぐるまわる

揺さぶられっこ症候群(SBS)に注意しましょう。

離乳食ミルク以外の味に慣れましょう。ただし、離乳食

の進め方は、子どものペースも大切に。水分の

補給として、湯冷ましや薄めたノンカフェイン

のお茶などをあげてみましょう。赤ちゃんは、まだ

まだ味を覚える段階です。薄味を心がけて、調味料

等はなるべく避け、素材の味にしましょう。

(*はちみつは、1歳まで使用しません。)

生活リズム日中目覚めている時には、寝かせているだけでな

く、抱っこや座らせて声をかけてみましょう。夜

にはパジャマに着替えさせるなどして、昼と夜の

区別をつけて、リズムをつけるようにしましょう。

衣 類動きが活発になるので、上着とズボンにする

など工夫しましょう。動きでおなかがでにくい

ロンパースを使うなどの工夫も。着衣の目安は、

大人より一枚少なめです。薄着の習慣がつく

ようにしましょう。

遊び音のでるおもちゃが大好き!転がしたり、叩い

たりできるものもステキです。喃語で音を楽しみ、

人とのやりとりにも興味がでてきます。子ども

の声や表情を真似てみるだけでも、子どもに

とっては楽しい遊びの時間になります。

一日の生活リズムがついてきます

+ ベッドやソファ、椅子からの墜落に注意しましょう。+ 生理学的にもまだまだ発達的に未熟で疲れやすい子どもにとってお昼寝は大切です。薄暗くするなどして、 午睡の時間をとりましょう。+ 徐々に睡眠の時間を定めていきましょう。+ 日によってはどんな工夫をしても眠ってくれない、泣き止まないこともあります。イライラしてしまうと 余計にその気持ちが伝わって眠らなくなることも。そんな日が続いてしまうようなら、大人も疲れ切って しまわないように、複数でかかわるなど役割分担を相談してみましょう。

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5 人見知り人見知りは、だいたい7か月頃から1歳頃に見られ

ます。よく見知っている人とそうでない人との

区別がつくようになるためです。安心できる人が

傍にいて、声をかけるなどしてあげましょう。● 5~6か月の子どもは、自分で寝返りができるなど、うつぶせで眠ることも増えてきます。  寝入った後、気づいたときには上向けに戻してあげましょう。睡眠時間が安定してきます。

● 6か月を超えると、睡眠時間も定着し、一日の半分ほど活動できるようになります。また、  眠たくなると機嫌が悪くなったり、ぐずったりして知らせます。

● 8か月ごろからは、身体機能の発達によりたくさん動き、何にでも興味を持つので、たくさんの刺激と  遊び疲れでぐっすり眠ることもあります。 反面、日中の刺激によって、夜間突然泣き出してしまう「夜泣き」が  始まることもあります。一時期のことが多いですが、トントンや背中をさする、 抱っこする、ミルクや湯冷ましなど  を与える、場所を変えたり、電気をつけて一旦目を覚まさせるなどの工夫が必要になることもあります。

赤ちゃんはゆらゆらと揺らすことで眠りに誘われることもあります。しかし、激しく揺さぶったり、急激な「たかいたかい」は揺さぶられっこ症候群という脳内の出血や眼底出血を伴うことがあり危険です。特に首のすわらない乳児期には要注意です。乳児期の脳は、まだまだやわらかいお豆腐のような状態です。ときには重度の障害が残り、死に至ることもあるので注意しましょう。

子育てポイント子育てポイント子育てポイント1

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つたい歩きが始まる

一人で立つことができる

指先でモノをつかむことが で き、細 か な 操 作 ができ始める

一人歩きが始まる

「ダメ」がわかる

後追いがみられる

模倣がみられる

「ちょうだい」に対応できる

要求するものを指さしして訴えることができる

11 12

8か月~1歳までの子どもの成長

このころの子どもは、ハイハイやつたい歩きで移動ができるようになります。視野も広がり、子どもの世界はどんどん

広がっていきます。目に入った興味のあるものに手が届くことを知ります。触った感触、音など様々な体験を通して、発達が

より促されていきます。何かにつかまって立つこともできるため、手を伸ばすと今まで届かなかったところに手が届いて

しまうことも…。転倒や転落の事故が増える時期でもあるので、なかなか目が離せなくなります。

言語面は意味を持つ発声が聞かれるようになり、言葉でのやりとりが少しずつできるようになります。指さしなど、子どもが

興味を持ったものについて、「〇〇だね。」と応えてあげましょう。離乳食

歯ぐきでしっかりかめるようになってきたら、

柔らかいものであれば、つぶさずに小さく切った

固形であげてみましょう。自分で食べたがる

ようになる時期でもあるので、手づかみで

食べられる機会を作りましょう。触感や味で、

今まで食べていたものもべーっと出して

し ま う こ と も あ り ま す。味付けや形状で

工夫してみましょう。

コミュニケーションまだまだ人見知りが強い子どももいるで

しょう。反対に、積極的に人に対して声を

かけたり指差しをしたりする子どももいます。

子どもにとって特別な養育者を起点に子ども

の世界は広がります。

身長・体重一日 10 グラムほど増えていきます。11 か月

の終わり頃には、体重は生まれた時の 3 倍

近くになり、身長が 1.5 倍近くになります。

赤ちゃん体型も、歩き始めると身体のバランス

がしっかりしてきて、幼児体型に変化して

いきます。

歯およそ6~10か月ころから歯が生え始めま

す。但し、個人差がある時期。歯並びは乳歯が

生えそろうまで様子をみましょう。虫歯防止の

ために、最初は食後などに湯冷ましやお茶を

飲ませるなどしましょう。また、ガーゼでそっと

歯を磨くなどからチャレンジしてみましょう。

口の中に歯ブラシなど入ることを嫌がる子ども

もいます。声をかけながら、歯磨きに慣れて

いくようにしましょう。

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3 5生活リズム

離乳食が定着すると、いよいよ睡眠の時間が

安定していきます。朝寝が必要なくなる

子どもも出てきて、昼寝と夜との2回の睡眠

リズムになります。まだまだ、深夜に目が

覚めてしまうこともある時期ですが、少し

ずつ生活リズムができてきます。

8 か月

※但し、発達には個人差があり、伸び方も一様ではありません。

身体の動き 手の動き 情 緒

10 か月

1 歳

一人で座れるようになる

つかまり立ちができる

ハイハイが始まる

両手に物を持って打ち合わせることができる

親指を上手につかって物をつかむことができる

自分の名前に反応する

子育てポイント子育てポイント子育てポイント1

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1歳~2歳半ごろまでの子どもの成長

ハイハイやつたい歩きなど移動が可能になって、子どもたちの生活範囲はぐんと広がります。言葉も豊富になり、「自分」

が芽生えてきて、「イヤイヤ」も多くなります。それは、自分でやりたいという気持ちの表れです。子どもにとって、

2歳半の発達は大きな節目となり、今まで以上に急激な発達の変化が見られるようになります。自分でできることも

増え、周りの大人と変わらず、なんでもできるような気持ちになります。なのにまだまだできないことも、うまく

伝えられないことも多いため、地団駄を踏んで怒ったり、ひっくり返って泣くような姿が増えてきます。 遊 び電車などおもちゃを使った遊びが少しずつ発展

して、「ごっこ遊び」ができるようになります。

視野が広がり、お友達が遊んでいるものも気に

なり始める頃。お友達のおもちゃをとってしまう

こともあります。子どもの気持ちを言葉にしな

がら、大人が少し間に入ったり、見守ったり

して子どもどおしの遊びを支えていきましょう。

言 葉大人の言葉を聞いて子どもは言葉を学び、

使えるようになっていきます。たくさん

言葉かけをしてあげましょう。「お花が咲いて

いるね。」「おいしいね。」「楽しかったね。」

「上手にできたね。」など見えているもの、

体験したことなどを言葉で共有してみましょう。

指差し興味のあるものを見つけたときに、子どもが

指を差してうったえることがあります。まだ

うまく言葉では表すことはできません。ですが、

どんどん子どものなかでは興味が広がり、

大人と見たこと感じたことを共有したいと

思うようになります。指差ししたものなどを

言葉で大人が表現してあげると、言葉の

広がりにもなります。

生活リズム規則正しい生活リズムを心がけましょう。でき

ない日があっても大丈夫です。成長を支える

ホルモンバランスとしては、早寝・早起きの

リズムに整えることが大切です。夜、寝たがら

なくなる子どももいますが、一緒に絵本を読む

など、寝る前の特別な時間を作って入眠に

気持ちが向くような工夫をしてみましょう。

1

5

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4

2 歯歯ブラシに慣れてくると、「自分でやりたい!」

「できるもん」という気持ちが強くなります。

その気持ちを尊重しながら、最後の仕上げは

大人がするようにしましょう。

● 甘い食べ物や飲み物が好きな子ども

● だらだら一日中食べている子ども

● 歯磨きが大嫌いな子ども

→虫歯注意報です!前歯がそろってきたら、

一度歯医者さんに健診に行くこともお勧めです。

手を引くと階段を上がることができる

手すりを持って階段を上がることができる

意味のある言葉がみられる

二語文がでる「デンシャ、キタ」など

走る

ジャンプができる

簡単なやりとりができる

こだわりや自己主張がでてくる

簡単なみたて遊びができるようになる

1 歳

※但し、発達には個人差があり、伸び方も一様ではありません。

身体の動き 言語•社会性 情 緒

1 歳 6 か月

2歳 6 か月

2歳

一人歩きができる

コップが上手に使える

階段を這って上がる

言葉がではじめる

大人の真似をする

ものごとを記憶する力がついてくる

「イヤイヤ」や「これなあに」がはじまる

子育てポイント子育てポイント子育てポイント1

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15 16

2歳半~4歳までの子どもの成長

めまぐるしい 2 歳半の発達を超えると、どんどん自我は確立され、思考に広がりが見られるようになります。大人

のやっていることに興味を持ち、自分でもやってみたいという想いが募ります。それが思い通りにいかないと、「やだ」

と頑なになって周りを困らせてしまう場面も増えます。

でもそれは成長の証でもあります。時間の余裕があるときには、または余裕をもって子どもとの時間を見積もって、

できる範囲でやらせてあげてみましょう。また、簡単なお手伝いをしてもらい、「ありがとう」と伝えてあげると、

子どもの自信にもなります。但し、到底出来そうもない危険なことなどは、しっかり止めてあげましょう。一人

でやっていいこと、大人とならやってもいいこと、危険で絶対やってはいけないことを伝えていきましょう。

言 葉簡単なお話しややりとりができるようになり

ます。大人との遊びや日々の生活のやりとり

を通してたくさんの言葉を吸収し、自分の

感情や行動を言語化できるようになります。

言葉遊び、わらべうた、手遊び、絵本などを

使って子どもと遊んでみましょう。

遊 び泥、砂、水、粘土など可塑性の高いものを使った

遊びは、創造力を広げます。同年齢の子どもたち

と遊ぶようになり、そのやりとりをとおして社会

性も育ってきます。はさみやのり、折り紙や

画用紙など様々な素材を通して作ることも

やってみましょう。

食 事食事前の手洗い、「いただきます」「ごちそうさま」

など、大人がお手本を見せてあげながら習慣

づけをしていきましょう。スプーンやフォーク

を使って上手に一人で食べられるようになり

ますが、まだまだこぼすこともあります。4歳

ごろからはお箸に興味をもったら持たせてみ

ましょう。準備に忙しくても、子どもが独り

だけで食べることにならないようにしましょう。

2

子どもの気持ち3歳ごろから服選びや着替えなどなんでも

自分でやりたいと思う年頃です。うまくできない

ことも多いですが、少し見守ってやらせて

あげましょう。失敗しても一方的に叱らない

ようにしましょう。子どもができそうな

ところまでそっと手助けも必要かもしれ

ま せ ん。子 ど も な り に う ま く で き た ら、

一緒に喜んだり、ほめてあげるなどする

と自信がもてます。

4

5 歯乳歯の歯並びはそれほど気にしなくても大丈夫

ですが、気になる場合には、歯医者さんに診て

もらいましょう。歯磨きの仕方や歯並びのこと、

咀嚼についても相談することができます。まだ

うがいが上手にできない時期なので、歯磨き粉

を使う場合も、子ども用のもので、歯ブラシに

ほんの少しつけるくらいにしましょう。

はさみを使う

低いところから飛び降りる

片足立ちができる

その場に応じた言葉のやりとりができる

三語文が使える

お友達とごっこ遊びができるようになる

2歳 6 か月

※但し、発達には個人差があり、伸び方も一様ではありません。

身体の動き 言語•社会性 情 緒

3歳

4歳

イヤイヤ・これなあに・なんでが増える

遊びの好みが分かれていく

可塑性のあるもので遊べ、創造できるようになる

大人と同じようなやりとりができるようになる

1

3

子育てポイント子育てポイント子育てポイント1

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17 18

4歳~6歳までの子どもの成長

たいていのことは自分でできるようになります。信頼できる人や場所を拠点として、子どもの世界は広がります。そして、

友達とのかかわりや遊びをとおしてルールなど社会性を学ぶ機会となります。友達との時間が増え、ルールや勝ち負け

を知るようになります。そのなかで、子どもは悔しい気持ち、恥ずかしい気持ちも学んでいきます。マイナスの感情は、

子どもを不安にさせることもあります。不安な感情を、いつも以上に甘えたり泣いたりして表現することもあります。

今日あったできごとやお友達のことなど、子どもが話せるタイミングを見ながら聞いてみましょう。

しっかりした発音で話すことができる

4歳

※但し、発達には個人差があり、伸び方も一様ではありません。

身体の動き 言語•社会性 情 緒

5歳

6歳

大人と同じように話せる

出来事を思い出して話せる

ブランコを立ってこぐことができる

スキップができる

縄跳びが連続して飛べる

足を交互に出して階段の昇り降りができる

片足ケンケンができる

簡単な工作ができる

想像遊びをするようになる約束やルールを守って友達と遊ぶことができる

子どもの発達と定期健診

子どもの発達は、記載した通りの年齢で成長するとは限りません。

身体の発達の伸びが早い子どももいれば、言葉の獲得が早い子ども

もいて様々です。なかには時間のかかる子どももゆっくりと伸び

ていく子どももいます。気になることは、定期健診や小児科受診

の際に聞いてみましょう。また、保育園や幼稚園の先生、児童館

やひろばなどの子育て支援機関や発達支援センターなどで相談し

てみるのも一つです。定期健診には、3 ~ 4 か月、6 ~ 7 か月、

9 ~ 10 か月、1 歳 6 か月、3 歳児健診などがあります。小さな

頃を知っている出身施設にも、心理職や保育士、看護師がいます

ので、いつでも相談することができます。

言 葉物語の筋を理解し、文字への興味や数の概念の

理解もできるようになってきます。手紙を交換

するなど、文字でやりとりすることに関心を持つ

ようになります。簡単な絵本や本が読めるように

なり、セリフを覚えて短い劇の役を演じること

も可能になります。論理的なやりとりもでき、

交渉する力もついてきます。

遊 び約束やルールを守って友達と遊ぶことが

できます。ごっこ遊びもストーリー性のある、

それぞれ役割がしっかりした形で行うことが

できます。友達と喧嘩や協力し合うことを

学び、話し合うことで解決する力も養われます。

縄跳びやコマ回し、自転車や一輪車に乗ること

も可能になります。

子どもの気持ち

1

3

4

2 食 事食事前の手洗い、「いただきます」「ごちそう

さま」など、大人がお手本を見せてあげながら

習慣づけをしていきましょう。4歳ごろから

はお箸に興味をもったら持たせてみましょう。

子どもによって嗜好が分かれていきますが、

一日を通してバランスよくとれるように食事

やおやつ ( 補食 ) を工夫しましょう。準備に

忙しくても、子どもが独りだけで食べること

にならないようにしましょう。

習い事をする子どもが増え、「やってみたい」

という気持ちが芽生えてきます。反面、失敗し

たらどうしよう、恥ずかしいなど「恥」の気持

ちも感じることができるようになるので、無理

のないペースで「自信」につながるような工夫

をしましょう。6 歳頃には、小学校に向けて、

気持ちが揺れることもあります。事前に学校

に遊びに行く、通学路を一緒に歩いてみる、ラ

ンドセルや筆箱などの準備をするなどを通し

て、子どもなりに気持ちが向いていくようにサ

ポートしましょう。

子育てポイント子育てポイント子育てポイント1

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子どもとのくらし

第2章

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「衣」に関する項目

「食」に関する項目

「住」に関する項目

 就労の有無、帰宅時間、得意な家事など、様々な理由から家族の生活上の役割は決まります。下記に、家事項目

の一部を示しています。この他にも目に見えないところで担っている家事もあると思いますが、まずは基本的な

ところを今、里父、里母のどちらがどれくらい負担しているか下記の「家事分担の『見える化』リスト」で確認

しましょう。里父、里母それぞれ色を決め、ご自身が担当している項目に色をつけてみてください。

家事分担の「見える化」リスト

家事、育児のバランスはいかがでしたか?これは、どちらかに役割が偏りすぎていることを見るためではなく、どうすれば負担を軽減しながら養育を続けられるかを考えるために可視化したものです。子どもを迎えることで、大人だけだとできなかったことや楽しみが増えます。その一方で、やらなければならないことが増え、時間が足りないとストレスに感じることもあるでしょう。少なくとも、大人だけの生活で作られてきた生活のペースは変化します。「今、仕事が忙しくなってきたから保育園への送りはやってもらいたい」「普段の家事は苦手だけど、育児のこの部分はできる」「平日は難しいけれど、休日はこの部分を担当しよう」などと折に触れ、このページを見ながら互いの状況や思いを話し合っていただけたらと思います。また、お互い子どものことで気づいたことや子どもの成長を伝えあうことも、ぜひ大切にしてください。ご夫婦でのコミュニケーションが円滑に行えることが、育児、家事の両立を上手に行えるポイントのひとつです。

洗濯機をまわす

洗濯機をしまう

クリーニングを取りに行く

朝食の食器を用意する

朝食後テーブルを拭く

電球の取り換えやエアコンの掃除をする

朝食後食器をしまう

昼食後テーブルを拭く

夕食後食器を洗う

食材の買い物をする

洗濯物を干す

衣替え

昼食の食器を用意する

昼食後食器をしまう

夕食後テーブルを拭く

残ったご飯を保存・廃棄する

各部屋のゴミをまとめる

風呂掃除

町会やマンションの集まりに出席する

各公共料金の支払いをする

生活用品を補充する

トイレ掃除

粗大ごみを捨てる

家計簿をつける

朝食をつくる 朝食後食器を洗う

夕食の食器を用意する

夕食後食器をしまう

シンク・コンロ周りの掃除

部屋を片付ける

ベランダや庭の掃除

役所に書類を提出する

昼食をつくる 昼食後食器を洗う

夕食をつくる

掃除機をかける

献立を考える

ボタンやほつれの直し

洗濯物をとりこむ

アイロンをかける

洗濯物をたたむ

クリーニングに出す

朝食を食べさせる

保育園・幼稚園の見学に行く

沐浴・お風呂に入れる

お出かけ先を決める・調べる

保護者会に出席する

保育園・幼稚園に迎えに行く

夜泣きに対応する

おむつ替えをする

子どもとのくらし

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子どもを迎えたら ~家事と育児のバランス~

育児分担の「見える化」リスト

「衣」に関する項目

「食」に関する項目

「子どもとの日常」に関する項目

子どもを迎えると、上記の基本的な家事に加え、「育児」の部分も増えます。右記の「育児分担の『見える化』リスト」で、どの項目をどちらが主に担当するか、話し合ってみましょう。また、様々な子育て支援のサービスがあります。お住まいの子育て支援サービスにどんなものがあるのか、里親支援としてのレスパイト制度など、利用できるものが何かを確認しておきましょう。

おむつを補充する

着替えを手伝う

授乳する

昼食を食べさせる

予防接種・検診に行く

髪をとく

お出かけ準備をする

病院に連れていく

保育園・幼稚園の入園手続きをする

園からの連絡に対応する

必要な経費について申請する

服のサイズをチェックする

汚した服を洗う

爪切りをする

仕上げ磨きをする

お昼寝をさせる

薬を飲ませる

入園時の持ち物等を準備する

連絡帳に記入する

関係機関からの連絡・訪問に対応する

お弁当をつくる

離乳食をつくる

夕食を食べさせる

哺乳瓶、食器を消毒する

トイレの使い方を教える

寝かしつける

写真を整理する

入園時の持ち物等に記名する

保育園・幼稚園に送る

耳掃除をする

服を補充する

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子どもの成長は、日々めまぐるしく変化していきます。子どもは、胎生期の頃から五感を働かせ、母体

の情緒の動きや外部の音など敏感に感じ取っています。乳児期の子どもであっても様々な経験を身体で

感じ取り、体感として記憶に残しています。乳児院の子どものなかには、出生時に母親から離され、

別の女の人に連れていかれたことが、とても寂しかったと話ししてくれた子どももいました。なぜ施設

に来ることになったのかを実親から説明してもらえなかった子どもも多くいます。明確にならない喪失

感は、どの年齢の子どもの心にも深く沈み込んでおり、交流や委託後に見え隠れしながら、里親さんと

の生活に混乱をもたらせることもあります。「普通とは違う」と里親さんが感じる要因の一つになります。

また、里親さんのところにお願いする子どもは、それまでの家庭や施設での生活リズムを身につけてい

ます。それを里親さんの家庭の生活リズムに変えていくことが必要となります。就寝の方法、起床時間、

食事や入浴の方法まで、ちょっとしたことが今までと異なってきます。その変化を子ども自身が理解し、

合わせていくことはとても難しいことです。子どものこれまでの生活リズムを理解したうえで、里親

さんが子どもとのペース合わせをしながら、子どもにとっての「安心・安全基地」を里親宅に作って

いく営みに寄り添う必要があります。

今まで、「特別な誰かが自分だけに会いに来てくれる」という経験のない子どももいます。家庭で生活を

していて、実親から別れて施設に入所した経験を持つ子どももいます。小さいながらに様々な経験と

傷つきを負い、多くの喪失感を感じている子どもは、ストレートに甘えることができなかったり、

愛情を受ければ受けるほど不安になってしまうこともあります。里親さんとの関係が深まるほど怖く

なることもあるでしょう。

ここでは、そのような子どもの気持ちについて、年齢ごとの情緒面の成長と共に見ていきます。しかし、

ここで述べることは一例にすぎず、子どものそれまでの体験や発達段階、心身の状況によっても表出の

方法や度合いは様々です。

 子どもたちの発達には、個人差があります。ゆっくりと成長する子どももいれば、一時期に

ぐんと伸びるのを繰り返す子どももいます。一般的に言われている月齢どおりに発達の伸び

がみられないときも、子どもなりのペースで成長していきます。特にアタッチメント形成に

とても重要な時期でもあります。子どもの生理的なニーズに、養育者が適切にかかわることで、

安心感と信頼を養育者に対して感じていきます。

 乳児院で里親交流が開始されるのは、1歳前後から2歳の子どもが多いです。ただし、東京都で

平成 29 年からモデル事業として開始された新生児委託事業の取り組みのようにここ数年で乳児期早

期の委託が進められています。その理由としてある程度の発達状況が分かる年齢までは里親委託を

控えようとしていた考えに変化が見られたためです。

 どの月齢の子どもであっても、自分にとって特別な人が現れたことに気づくものです。周りの

職員の里親交流に対する期待が子どもに伝わることもあるでしょう。マッチングと言われる初めて

の出会いの日も、子どもは、「いつもと何かが違う!」と感じ取ります。子どもの気持ちはとても

複雑になるときもあります。長い時間一対一で向き合って生活をする経験を多く持っていない

子どもも少なくありません。そのため、里親さんと過ごすその時間は、子どもにとって戸惑いとなり、

今の生活が脅かされるような不安を感じることもあるでしょう。

 低年齢であればあるほど、この感情の整理と、担当保育士とは異なる特別な存在を受け入れる

時間は短くなります。但し、低年齢だから大丈夫という訳ではなく、どの年齢であっても、実親

との別れ、喪失体験をしていることには変わりありません。その度合いによっては、新たな養育者

との関係作りに時間がかかる場合もあります。乳児院の里親支援に関わる職員や心理職員とも

相談しながら交流方法を工夫し、子どもも里親さんも負担が無いようにしましょう。

 乳児院では、まずは、生活場面や面会室で面会を重ねることをお願いします。これは、子どもが、

「この人は自分に会いに来てくれる。自分に興味があり遊んでくれて、お世話をしてくれようと

している。」と感じ、里親さんを覚えていくことが大切です。里親さんの中には、保育士さんに

養育力を見られているのではないか、何か失敗をしたらこの交流が中止になってしまうのでは

ないかと不安になることもあるようです。でも、職員たちは、子どもとの交流を喜び、子ども

との関係が順調に進むことを望んでいます。保育士さんは、その子どもの生活を共にし、子ども

の特徴や生活のペースを知っている存在です。ぜひ、子どもについて、そして養育方法について

聞いておきましょう。保育者は、委託になった後も、継続して相談に乗ってくれ、子どもの

成長を応援してくれる存在となります。

 子どもが里親さんとの出会いをとおして様々なことを感じるように、里親さんも子どもとの出

会いと交流をとおして、様々な感覚や感情、今まで気づかなかった想いなどが生じることも

あります。そのような気持ちはとても大切な感情であり、心のサインです。話のできる周りの

方や、施設の職員などに是非伝えてください。交流を進めていくうえで、大切な指標となります。

[ 里親さんと出会った子どもの気持ち ]

子どもとのくらし

里親さんと出会った頃の子どもの気持ち

20~1歳ごろの子ども0~1歳ごろの子ども

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 子どもたち同士で遊びを展開することができます。ごっこ遊びや複数でのゲームなど役割やルール

のある遊びも増えます。友達とのやりとりが深まり、友達の持ち物や家族構成をうらやましがること

もあります。優劣や恥ずかしさを知り、悔しい気持ちを経験します。安心安全な基地を心に置いて、

養育者から離れてもそれを起点として、友達同士でのかかわりを楽しむことができます。

 子どもはある程度自分の置かれている状況を知っています。施設での生活が落ち着いている場合

もあります。施設によっては、交流当初は里親交流であることを伏せて、子どもの様子をみること

もあるようです。里親さんとの交流が深まることで、今いる生活から離れなければならないことを

理解したときに、様々な葛藤を感じる場合もあります。時には、いままで同様自分の意見は通らないと、

生活の場が変わることを言われたままに受け入れる子どももいます。また、実親が迎えにくると

思っていて、施設から離れてしまうことに不安を感じることもあれば、保育者と里親との間で忠誠

葛藤(注1)が生じて揺れることもあります。子どもは、「特別な存在である人」を失うことにも、

新たに現れることにも適応するには時間がかかります。幼児とは言え、しっかりと考えて意見の

言える年齢なので、説明すれば理解できると思われがちですが、まだまだ、自分の周りに何が

起こっているかを冷静に整理して理解することは難しい年齢です。

そのため、委託後に、嘘をつく、暴言暴力やパニックが見られる、他児とトラブルが絶えない、

里親に対して反抗的な態度をとる、または、叱られると固まって動かなくなるなどの様子が見られる

ことも多くあります。交流中にはあまり見られなかったその変貌ぶりに耐えられず、「難しい子ども」

として里親養育が中断されることも少なくありません。このように、委託交流が難しい年齢では

ありますが、だからこそ、里親家庭で生活することがとても大切な時期とも言えます。交流中から、

施設職員や児童相談所職員、里親支援機関職員と十分に養育について振り返りながら進めましょう。

委託後は通う予定の保育園や幼稚園との連携をとって委託当初の子どもの心の揺れに耐えられる

ようなチーム体制を組むことが必要となります。

[ 里親さんと出会った子どもの気持ち ]

幼児期(4~6歳ごろ)の子ども幼児期(4~6歳ごろ)の子ども このころの子どもは、大人や他の子どもの様子をよく見ています。いろいろなことをやって

みたくて、大人のことを真似するようにもなります。自分より月齢の低い子どものお世話をして

みたり、大人の食べ物に興味をもったり、「自分でやりたい!!」とトライします。大人が

先にやってしまうと、やりたかったと怒ってしまうこともあります。自分でできることも増えて、

自分自身の欲求を自身で満たし、興味あることにチャレンジしたいという気持ちがでてきます。

また、難しい時には、他者に訴えて、少し手伝ってもらいながらチャレンジを繰り返し、達成

できることの喜びを知ります。自我の芽生えを通して、自分と他者を知り、特別な存在である

養育者との安心安全な基地を起点として、周りに気持ちを向けることができます。

 乳児院で2~3歳と言えば、在籍児童のなかでも月齢が大きいお兄さんお姉さんです。家庭復帰

や里親家庭、施設への措置変更など、子どもが乳児院から生活の場を変えていく様子を目にしている

場合もあります。一緒に生活する子どもが変わっていくことに気づく年齢でもあります。誰に面会

があるのか、保育士がどの子どもの担当なのかも理解します。この年齢になると、「いつもの外出や

外泊とは違うらしい」と、退所の日の違った雰囲気を感じ取ります。巣立っていく子どもを泣いて

怒り、後を追いかけていこうとする子どももいれば、理解したかのようにしっかりと手を振って

見送る子どももいます。次は自分のところにそういった大人が来るのかもしれないと感じ取る

子どももいます。

里親さんとの交流が始まると、早い段階で子どもは自分に会いに来てくれる人だと気づきます。

面会交流が今までなかった子どもは、週に2~3回になる面会交流に戸惑いながらも、特別な人

と一対一で過ごすことの喜びや不安を感じます。交流中、特に問題なく進んだ場合でも、里親さん

宅へ委託になった後に、赤ちゃん返りや甘え、試し行動と言われるような様子が見られます。交流

中とは全く違う一面が表出される場合もあります。子どものペースと心の動きに寄り添いながら、

焦らず、少しずつペース合わせをしていきましょう。

特に委託間もなくは、子どもも大人も一緒の生活に慣れ、生活リズムを整えることが重要となります。

分離体験を重ねてきた子どもにとっては、すぐにここが安心で安全な場所であると感じることが

難しい場合もあります。急がず、季節を重ねていくようなペースで子どもの変化を見守りましょう。

里親さん自身が養育に不安になったときには、是非、出身施設職員や、児童相談所職員、里親支援

機関職員等に相談してください。

また、「施設という集団保育に慣れていたから、里親家庭での大人との一対一よりは集団の方が良い

のでは?」と考えて、委託間もなくに保育園利用を考える里親さんもいます。しかし、それは

あまりお勧めしません。生活の場も養育者も変化するなかで、当初の一番の目標は、「変わらない

安心安全な生活の場と特別な養育者との関係が安定すること」です。子どもの成長のなかでとても

大切な、「特定の人との愛着関係形成」は、里親家庭に子どもをお願いする最も重要な目的です。

それは、簡単に形成されるものではなく、子どもも里親さんも揺り動かされながら築いていく時間

が必要になります。しっかりその過程を踏まえないと、試し行動と言われるような子どもの様子や

感情の揺れが長引くこともあり、児童期、思春期以降に影響することがあります。

[ 里親さんと出会った子どもの気持ち ]

幼児期(2~3歳ごろ)の子ども幼児期(2~3歳ごろ)の子ども

※注 )忠誠葛藤とは、新しい養育者との関係性ができ始めるなかで、実親と里親、担当保育士と里親など、

どちらかに忠誠心(信頼感)を持たなければならないと子どもが感じてしまい、両者に挟まれ感情が揺れ動き、

三角関係のような葛藤を抱くことを言います。

参考文献:里親・ファミリーホーム養育指針ハンドブック』全国里親委託等推進委員会 2013

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虐待など様々な

経験をしてきた

子ども

小学生から高校生年齢の委託は、一時保護所や実家庭から直接来る場合が多くあります。それまで

の生活状況の詳細が分からないこともあります。子ども自身も里親家庭で生活することについて

児童相談所職員から説明を受けてある程度理解してきているため、委託当初大きな混乱を見せること

はそれほどありません。ただし、実家庭からの分離体験や、社会的養護のもとで生活することになった

原因が解消されたわけではありません。生活が落ち着いてくるのに比例して、「問題行動」として

表面化してくることがあります。それは、学校でのトラブルや、友達とのトラブル、万引きや家の

お金の持ちだし、嘘など多岐に渡りますが、家の中の問題にとどまらず、外に向くことも多くみら

れます。里親さんは、子どもと向き合うことによって生じる課題であればなんとかなったとしても、

対外的にトラブルを引き起こすことに耐えられなくなってしまうこともあります。

子どもは、実家庭から離れたこと、里親家庭での生活に納得せざるを得ないと感じていても、

そうなった自分の状況をすぐに受け止めることは困難です。実親への感情や想い、「自分が

悪かったから捨てられた」と感じることもあります。その気持ちのズレが様々な形で表現

される場合があります。子ども自身がそうしてやろうと故意に行動してしまうわけではなく、

大半は無意識で、子ども自身でどうにかコントロールできるものではありません。そのため、

何度言ってもやめられないという状況を生むこともあります。

できる限り、里親家庭へ来た理由について情報を得て、それまでの子どもの生活や養育者との関係

を把握しましょう。里親さんだけで向き合いすぎず、学校など様々な関係機関との連携を図りながら、

その都度の養育目標を立てて取り組みましょう。養育目標はすぐに変更可能なスモールステップ

なものとし、子どもの変化に応じて、何度も振り返りながら設定しましょう。

高校生年齢からの委託では、子ども自身も自立が目の前にあることを承知しています。それに伴った

焦りや孤独感を感じる場合もあります。進学や自立のためにアルバイト等をしなければならないと

感じる反面、気持ちがついていけずに、勉強もアルバイトにも力が入らない状況が続くこともあり

ます。子どものペースを見守りつつも、ある程度のゴールを設定し、子どもが選び取っていけるような

進路・自立の選択肢を提案できるようにしましょう。奨学金など様々な制度利用が可能なため、

関係機関からの情報提供を受け、それぞれの役割分担を活かして、子どもの自立を支えましょう。

自立後もどの関係機関が継続して見守っていけるのか、里親さんがどこまで担うのかなども相談

しておきましょう。気持ちの拠り所として里親家庭が在るだけでも、子どもにとっては心強い存在

となります。

[ 里親さんと出会った子どもの気持ち ]

小学生~高校生ごろの子ども小学生~高校生ごろの子ども

 里親家庭へお願いする子どもたちは、本当に様々な

経験を重ねています。子どもの中には、胎児期に一度

も気づかれることなく出産に至った子ども、産みたく

ないと否定的な感情にさらされた子どももいます。

全ての子どもが実親との突然の別れを経験し、自分の

置かれている状況も理解できていないこともあるで

しょう。乳幼児期であっても、自分の置かれている

状況を子どもは肌から感じています。

虐待やネグレクトを受けてきた子どももいます。虐待

の種別にもよりますが、受けてきた心身への傷や適切

でない養育、コミュニケーションを学んでいる子ども

もいます。施設入所後に、感情を押し殺し、意識が

どこかに飛んで行ってしまっているように見える子ども

や、逆にとても過敏で全身に力が入っているような

子どもに出会います。虐待を受けてきたことにより、

月齢相応の発達や感情・情緒的なバランスを上手に保て

ない場合もあり、改善にはとても長い時間がかかります。

そういった様々な経験をしてきた子どもは、新たな

養育者との関係をとおして、今まで経験したことのない

感覚や距離感、愛情を知ります。それによって逆に不安

が強まり、体験してきた虐待行為を引き出すような

行動をとることもあります。里親さんが子どもとの生活

によって、今まで経験したことのないような負の感情

を引き出されることもあります。また、子どもの代理

受傷を受けて、深い傷つき体験をする場合もあります。

生活場面とは異なる場所で心理治療が必要となること

もあるので、里親として養育を始めたからにはと責任

を負いすぎず、チームとなる関係機関との役割分担を

しながら、子どもの養育にあたりましょう。

子どもが入所していた施設や一時保護所等では、生活して

いた期間の子どもの成長や変化についてアセスメント

しています。地域で保護されるまで継続した支援を行っ

ていた場合もあります。そういった職員から子どもとの

エピソードや保育者とのかかわりを伝えることもできま

す。交流中や委託後、子どもとの生活で、「あれ?」と

気になることがあれば、是非、担当の児童福祉司や児童

心理司、出身施設職員や地域の施設職員など支援機関に

相談してください。ヒントが得られる場合や、すぐに

答えがでないときでも一緒に考え、その都度役割分担

することができます。

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アメリカで長年子どもたちのグリーフケアに携わっているシンシア・ホワイト氏は、グリーフやトラウマを抱える子どもの

サポートに最も重要なのは安全、安心な環境であると述べています。家族の中で安心してグリーフを扱えることも

大切ですが、家族には心配をかけまいとして表現できない子どももいます。同じような喪失体験をした仲間と気持ちを共有

する場があると、子どもは自分だけではないと感じることができます。周囲がグリーフに気づき、子どもを一方的に決め

つけたり、枠に押し込めようとしたりしないで、子どものありのままを無条件で受け入れる姿勢が必要です。

里親・養子縁組家庭では、「真実告知」を行うことと思いますが、子どもが自分の置かれた境遇を受け入れていくプロセスは、

単に「もう一人産んでくれたお母さんがいる」ということを認識することに止まりません。年齢を重ねていくうちに、

なぜ実親は自分を手放したのだろうという想いを抱き、その想いに怒りや悲しみの感情が伴うことも少なくありません。

喪失体験を特別視しすぎたり、存在しないかのように振舞ったりせず、安全にグリーフを表現できる環境を提供しましょう。

グリーフの表現を否定しないことはもちろんですが、無理に話すことを求めないことも大切です。

次頁では、子どもが発達段階に応じて自分の境遇をどのように捉える傾向にあり、どんな課題に直面し、どのような対応を

必要としているのかまとめましたので、参考にしていただけたらと思います。

「グリーフ」とは、喪失体験への反応のことを言います。大切な人との死別や離別に対する「悲嘆」とか「悲しみ」と

訳されることも多い言葉ですが、実は卒業、結婚、転居などの肯定的に見える変化も含めて、日々のあらゆる変化の際に

グリーフは生じています。それは自然で健康的な反応です。人生の、大小様々なグリーフのプロセスを通して、私たち

はその変化に適応し、自分自身に対する見方や、価値観、生き方を変容させ、成長するのです。グリーフにはストレス

が伴うので、周囲の理解とサポートは重要です。特に、喪失があまりに大きい場合は、適応する過程でグリーフ反応が

複雑化し、心身の健康に課題が生じる可能性が高まります。

 グリーフは自然で健康的な反応ですが、虐待やネグレクトなど、命を脅かすような出来事や精神的苦痛をもたらすような

出来事は、通常の対処能力を超えたトラウマ体験となり、人の脳機能や神経系の働きにも多大な影響を与えます。常に不安

や警戒心に苛まれるなど、安心して生きていく能力を損なう可能性がありますので、早期の治療的介入が必要です。

大きな喪失を経験すると、悲しみ、怒り、罪悪感、恥、無力感など、様々な強い感情を抱きます。別れた人(物事)との関係性、

喪失の種類、予期していたかどうか、経験した時の年齢、サポートの有無などにより、グリーフのプロセスは一人ひとり

異なります。そして、グリーフは成長に応じて波のように形を変えてくり返します。

 グリーフの表現には、正しい形やプロセスがあるわけではありません。特に子どもは、言葉を使ってうまくグリーフの

感情を表現できるわけではないので、その行動や態度、遊びを通して表現します。静かにエネルギーを表現する子どもも

いれば、強いエネルギーを持て余すように、はしゃいだり、動き回ったりする子どももいます。イライラして乱暴になったり、

上の空になって集中できない子ども、赤ちゃんのように退行する子ども、大人びた態度で誰かのお世話をするような

子どももいます。また、喪失を想起させる遊びをする場合もあれば、まるで何事もなかったように振る舞う場合も

あります。グリーフは、その表現の仕方も、強弱も、場面や時の経過とともに変化します。

子どもとのくらし2

子どものグリーフに寄り添うこと~発達段階に応じた理解と対応(真実告知)~

グリーフとは

里親家庭に迎えられる子どもは、例外なく大きな喪失を何度も体験しています。生まれて間もなく乳児院に入所している

子どもの場合だと、「実親との別れは覚えていないので喪失とは言えないのでは」と考える方もいるかもしれません。

しかし実親との別れを覚えているか、いないかにかかわらず、別れは子どもの人生にとって非常に大きな出来事です。

むしろ実親を覚えていないことで、喪失の体験があいまいになり、喪失を受け入れていくプロセスが複雑になると言えます。

「あいまいな喪失」とは、行方不明者の家族など、喪失の事実が明確でない場合や、認知症患者や精神疾患の患者の家族など、

その人は存在するのに、以前のその人ではないような場合に、その個人や家族をどのように支えるかという家族療法の視点

に立つ理論です。「あなたには産んでくれたお母さんがいる」と説明をされても、実親についての記憶が無かったり、

実親が生きているのか生きていないのかも知らされていなかったりする子どもにとって、この喪失は非常にあいまいで、

理解し受け入れることは簡単ではないのです。

里親家庭の子どもにとっての喪失体験

子どものグリーフを支える

子どものグリーフの表現

子どもを養育する人々の喪失体験とグリーフ

社会的養護のプロセスで喪失を経験するのは子どもだけではありません。

「子どもを施設や里親に預ける多くの実親の喪失感には、悲しみだけでなく、子どもを手放したことへの

罪悪感を伴いますし、「再び我が子と暮らすことなど許されない」と、親失格の烙印を押されたように感じ、

無力感を抱いていることも少なくありません。

社会的養護を担う養育者はどうでしょう。施設の職員は、日々子どもを迎えては送り出しています。子どもが

家庭復帰や自立、里親家庭への措置変更などで、施設から離れる時には、寂しさや不安が伴います。

里親家庭は、施設ほど子どもの出入りは多くはないかもしれませんが、家族という非常にプライベート

で生活のコアな部分の変化を経験します。新しい家族を迎えることはこれまでの生活を喪失することでも

あります。新しいメンバーが加わったことによる家族のダイナミクスの変化へ適応する際のストレスは

非常に大きなものであることを知っておく必要があるでしょう。さらに子育てをしているとこれまでに自分が

経験してきた喪失体験の記憶がよみがえることもあります。自らの親との死別や生別、不妊治療、流産や

死産などの経験など、自分自身のグリーフの存在も軽視することはできません。子どもが自分のグリーフに

気づき、安心して向き合えるような環境を作るには、グリーフを支える側の大人も、自らのグリーフを

受け入れ、ケアしていくことが大切なのです。

参考文献Boss, P. (2006). Loss, trauma, and resilience: Therapeutic work with ambiguous loss. New York: Norton.(中島聡美・石井千賀子(監訳)『あいまいな喪失とトラウマからの回復~家族とコミュニティのレジリエンス~』 誠信書房 2015)ラリヴィエレ美佳 編著『子どものグリーフとトラウマに寄り添う~ハワイの経験に学ぶ~』 2017(伊藤ヒロ、シンシア・ホワイト講演録)、一般社団法人グリーフサポートせたがや

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4〜7歳

8〜12歳

12〜16歳

16〜19歳

0〜3歳

2~3 歳頃だと、妊娠、出産する女性が周囲にいると、生まれるということに興味を持ち始める子どももいますが、この年齢の子どもは、まだ里子・養子である自分と他の子どもの違いに気づいていません。

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4〜7歳

8〜12歳

12〜16歳

16〜19歳

0〜3歳

この時期に必要なのは、新しい家族に適応し、安 全 な 愛 着 を 発 達 さ せ る こ と で す。里 親、養親と人種が異なる場合には、外見や肌の色などの違いを認識するようになります。

言葉の数も増え、記憶力もよくなり、過去、現在、未来の違いを理解し始め、子どもは、たくさん質問するようになります。里親家庭に迎えられるまでの話をききたがる子どももいます。しかし、この年齢の子どもたちの理解は、まだ表面的で、その概念はほとんど理解していません。

だんだん里親や養子縁組制度などの概念がわかるようになります。自分が何かを喪失したということに気づき、少しずつ理解できるようになると、グリーフの反応が表面に出てきます。その現実を受け入れたくないという気持ち(否認)が働いて、幼い頃のように自分から質問はしなくなる子もいます。

思春期に入り、権威に抵抗したり、新しい自分になってみたいと感じたりするのがこの時期です。人生において、自分の力ではどうにもできないことを実感するようになり、喪失体験への反応(グリーフ)は、怒りの段階に入ります。

大人になることや家から自立することへの不安を感じる子どもも少なくありません。喪失に対して激しく反応したり、落ち込んだりする子どももいるでしょう。

●里親家庭にいること、養子であることの意味などについて理解できるようになります。里親家庭で通称姓を使っている子どもは、実姓を認識することも必要です。次第に周囲との違いに気づき、血のつながらない親子であることをネガティブに捉えるようになる場合があります。自分が大切な人を失ったという事実を少しずつ受け入れていくプロセスが必要です。 ●さらに周囲の人たちに自分の境遇を伝えたときの様々な反応に対処する必要がでてきます。里親・養親と人種が異なる場合などには、現在一緒に暮らしている家族との外見的な違いについても受け入れ、対応していくことになります。 ●実親が自分を手放した理由、産んだ母はどんな人なのかなど自分のルーツに関心を持つようになるなかで、「自分が可愛くなかったから捨てられたのだろうか」「実親はダメな人間なのかもしれない」など、様々な感情を経験することも少なくないため、理解し、支えてくれる大人が必要です。

引き続き、里親家庭に委託されていることや、養子である事の意味などについて理解していきます。養育里親宅で生活する子どもは、措置解除の意味や将来の見通しなど持てるようになる必要もでてきます。この時期には、自分が喪失したものの大きさを感じ、自分なりに整理し、対処していくプロセスを経て、自身のアイデンティティに統合していくことが課題となります。より具体的な情報を得るなかで、これまで持っていた実親のファンタジーがより現実的になっていくことになります。子どもによっては、実際に実親を探したり、会いたいと考えることもあります。こうしたプロセスは、自分の過去や現在を理解し、自立に向けて歩みを進めるためにとても大切です。

子どもの理解 適応の課題 里親・養親ができること

乳児院の職員や児童相談所の担当者から、実親についての情報を聞いておきましょう。実親からもらった手紙や物(産衣、おくるみ、へその緒、出産時のリストバンド等)、母子手帳やアルバムなど、出来るだけ、具体的な情報を集めておきましょう。子どもが生まれてから、里親・養親家庭に迎えられるまでのプロセスをストーリーにして、後々子どもと

一緒に見られる本(ライフブック)を作成することもオススメです。また、改まって「真実告知」するというより、日々の生活の中で、血のつながらない家族であることを、自然なリラックスした雰囲気で肯定的に、赤ちゃん本人、家族、友人などに語るようにしましょう。そうすることで、里親・養親自身も語ることに慣れ、このトピックがタブーではなくなります。

●子どもが質問しやすい雰囲気を作り、誠実に答えましょう。特に扱うのが難しい問題については、子どもが大きくなるまでは省略しますが、嘘は言わないようにしてください。●お気に入りの絵本を読むように、子どもを家庭に迎えるまでの話を楽しい雰囲気の中で、繰り返し話しましょう。一緒にライフブックの続きを作るのもいいでしょう。●実親が自分を手放したという現実を実感した子どもの中には、

言葉にしなくても、「自分がいつまでここにいるのだろうか」「次はどこに行くのだろうか」などの漠然とした不安を抱えている子どもも少なくありません。養子縁組の場合や、18 歳まで養育する予定の長期の里親委託の場合は、これからも家族であるということを言葉で伝えてあげましょう。養育里親では、家庭復帰などが予定されている場合もあるので、ケースに応じて別途工夫が必要です。

●抵抗を感じている子どもに無理強いすべきトピックではありませんが、里親や養親が、この話題を恐がったり、怒りをもったりしていないと子どもが感じられる環境は重要です。日頃から「あなたが話したくなったら、いつでもオープンに喜んで話す準備ができている」「里親(養親)か実親、どちらかを選ぶ必要はなく両方を大切に想っていい」というメッセージが伝わるような

工夫をしましょう。●子どもが実親について話さなければ興味がないと思いがちですが、意外に遠慮していたり、気持ちを言語化するのが難しかったりして言い出せないでいる場合もあります。時々聞いてみたいことや話したい気持ちがないかどうかなどを投げかけ、言葉だけでなく、表情や行動にも気を配り、子どもが感じていること考えていることを想像しましょう。

●決断をする機会を増やすことで、子どもが自分で自分をコントロールする感覚を持てることが大切になってきます。子どもには、自分の出生についての情報にアクセスし、受けとれる権利があることを伝え、手助けしましょう。●喪失への反応としての怒り、悲しみの多くは、実親に向けられていることを理解する必要

があります。こうした子どもの怒りに怒りで応えないようにして、しっかりとした制限を設定し、ルールを破った場合の結果をあらかじめ決めておき、自分がした行動についての当然の結果を経験できるようにすることは大切です。何があっても、これからも愛しているというメッセージは意識して伝えるようにしましょう。

●家庭の中で、特別養子縁組として実親子になったことや里親の話題をオープンにし続けましょう。養育里親宅に委託されている子どもについては、措置解除後に実親や里親とどの

ような関係性を持っていくのか、一緒に考えていくことが大切になります。●寂しさや怒りの表現に注意を払いつつ、独立と自由への機会をサポートしていきましょう。

【表】発達段階に応じた理解と対応(真実告知について)

参考文献:Pavao , J . M . (2005) The Fami ly o f Adopt ion . Bos ton: Beacon Press .

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 子どもにとって食事は栄養補給だけでなく、味覚を育て、家族で楽しむことができる大切な時間です。里親家

庭に来るまでの生活のリズムや食事の内容など異なることも多く、また、実家庭での被虐待経験やネグレクトな

どの体験から、食に関する興味がなかったり、逆に執着して過食気味になる場合もあります。また、経験不足か

ら咀嚼が弱い、飲み込んでしまうなどの様子が見られることもあります。そのため、里親さんにとっても、一緒

に生活をし始めたころには、食事をさせることに難しさを感じることも多いでしょう。空腹や睡眠など原始的な

欲求に対して、里親さんが適切に応えていくというサイクルを重ねることが愛着の形成に必要です。また、子

どもが自分のニーズに応えてくれる存在がいると知ることで、自己肯定感を高めることができます。まずは、食

事のマナーや食材を増やすことなどに注視するのではなく、生活のペース合わせをし、食事の時間を楽しく過

ごせ、少しずつ里親家庭での食事のリズムに合わせていくことが大切になります。

子どもとのくらし2

子どもと食事

授乳を通して健やかな親子関係を築くことが大切です。授乳は、「親子のスキンシップの上で重要な役割を果たし、

優しい声かけとぬくもりを通してゆったりと飲むことで、赤ちゃんの安定がもたらされ、食欲が育まれていく」ため、

できるだけ静かな環境の中で、抱っこして、視線を合わせたり、優しく声かけするようにしましょう。また、

テレビやスマートフォンなどを大人がやりながら授乳をすることは避けましょう。

ミルク量は、月齢に合わせて異なります。市販の粉ミルク缶などにも表示されていますので、目安として確認

しましょう。子どもによっては一度にたくさん飲めない場合もあります。子どもの哺乳力や飲むペースなどを

確認していきましょう。一回のミルク量で考えず、一日あたりの摂取量で考えましょう。体調によっても摂取

量が変わりますので、どれくらい飲めているのかを記録しておくと体調の変化に気づきやすいです。

授乳について

哺乳瓶について生まれたばかりの赤ちゃんは親から免疫をもらって生まれてきます。しかし、生後すぐから免疫は徐々に減っていきます。1歳ごろでも大人の約半分程度です。そのため、哺乳瓶など、赤ちゃんが口にするものは消毒を心掛けましょう。

離乳とは、乳汁栄養から幼児期の食事に移行する過程をいいます。

子どもの食べる機能は、乳汁を吸って飲み込むことから、食べ物をかみつぶして飲みこむことへと発達

していきます。離乳食の開始は、概ね生後5~6か月頃が適当と言われていますが、それぞれの成長発達

に合わせて進めることが大切です。少しずつ、食材の種類や献立や調理の仕方も変化し、それに合わせて

味覚も発達し、食への興味も増えていきます。

食事を通して生活リズムを身につけ、食べる楽しさを体験することが大切です。子どもの個々のペース

に合わせながら進めましょう。

以下、「授乳・離乳の支援ガイド」厚生労働省(2007)よりポイントを抜粋します。

離乳食について

離乳食開始の目安● 首の座りがしっかりしている

● 支えてあげたり、座らせると座ることができる

● スプーンなどを口に入れても、舌で押し出すことが少なくなる(哺乳反射が減る)

● 大人の食べている料理など、食べ物に興味がでてくる

離乳食の開始離乳開始当初の栄養源は継続して乳汁(ミルク)になります。以前は、離乳食開始前に果汁などを与えたり、スプーンでお白湯を与えるなどが言われていましたが、現在では推奨されておらず、スプーンの使用についても離乳食の開始後で大丈夫です。

離乳の完了離乳の完了とは、形のある食物をかみつぶすことができるようになり、エネルギーや栄養素の大部分がミルク以外の食物からとれるようになった状態をいいます。概ね、1歳から1歳半ごろで完了となります。咀しゃく機能は、3歳ごろまでに獲得されていきます。

● 離乳の開始後おおむね1か月間は、離乳食は1日1回。ミルクは、減らさずに飲める量を飲める量を与え  ましょう。スプーンに慣れ、舌触りや味に慣れることが大切です。

● 離乳開始1か月を過ぎた頃から、1日2回にしていきましょう。アレルギーが出た場合に対応できるように、   午前中と午後昼過ぎなど、受診可能な時間帯にしましょう。ミルクは、1日3回程度にしましょう。舌で  つぶせる固さにしましょう。

● 生後9か月ごろからは、離乳食を1日3回にしましょう。歯ぐきでつぶせる固さのものを与えましょう。  食欲に応じて、離乳食の量を増やしましょう。ミルクは、1日2回程度を目安にしましょう。● 哺乳瓶に残ったミルクは、次に使いまわさずに、すぐに洗うようにしましょう。

● 哺乳瓶の消毒方法には、  ①煮沸消毒  ②薬液消毒  ③電子レンジ消毒  などがあります。  それぞれのメリットデメリットを確認しながら、家庭に合ったものを選びましょう。● 子どもによっては、哺乳瓶の形や乳首の形状によって哺乳量が変わることがあります。

 病院や乳児院等で使用していたものがあれば、それと同じものを使うのも一つです。

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離乳期の食物

(1)食品の種類与える食品は、離乳の段階を経て種類を増やしていきましょう。

● 特に離乳の初期に、新しい食品を始める際にはさじ一杯程度から与え、子どもの様子をみながら増やして  いきましょう。● 離乳の開始の頃は、米、パン、じゃがいもなどでんぷん質性食品を主にしましょう。料理法に気を付けながら、  野菜、豆腐、白身魚、卵黄(固ゆでにしたもの)、ヨーグルト、チーズなどを用いてみましょう。● 離乳食が進むにつれ、卵は卵黄から全卵へ、魚は白身魚から赤身魚、青皮魚へと進めましょう。離乳中期  からは食べやすく調理した脂肪の少ない鶏肉、豆類、各種野菜海藻を用いることもできます。ただし、  脂肪の多い肉類やベーコンやハムなどの加工食品は少し遅らせましょう。● 離乳後期以降は、鉄が不足しやすいため、赤身魚やレバーなども使用してみましょう。また、調理用に  育児用ミルクを使用するなどしましょう。● はちみつは、1歳まで使用を控えましょう。● 消化機能がまだ未発達のため、お刺身などの生魚などは避けましょう。● アレルギーに配慮し、一度に新しい食材を与えないようにしましょう。

幼児の食事について

アレルギーとは

● 様々な食材にチャレンジしてみましょう。● 噛む習慣をつけましょう。子どものペースをみながら、  やわらかいものばかりでなく、噛むことを促せるよう  な食材にもチャレンジしてみましょう。● スプーンやフォークにチャレンジしてみましょう。● 手づかみ食べを見守りましょう。ぐちゃぐちゃ遊びは   少し声をかけますが、是非「自分で食べる」を見守り  ましょう。

● 食器運びや買い物、食事作りなどのお手伝いをすすめ ていきましょう。お手伝いができたらほめてあげましょう。 自信につながります。● 子どものペースに合わせて、食事の時間のルールを 伝えていきましょう。すぐに守ることはできない かもしれませんが、大人が見本をみせてあげましょう。

(2)与え方についてすでに乳児院等で離乳食が進められている場合には、どれくらいの形状で食べているのか、また、どういった食材をすでに使用しているのかなど確認しましょう。それまで食べていた食材や形状によっては、月齢相応の進め方ではない場合もあります。子どもの身体の発達やそれまでの環境によっても異なりますので、個々に合わせながら進めましょう。完了のころは、食べる量も個人差があり、生活環境や大人の嗜好によっても好き嫌いがでてきます。無理に食べさせたりすることはありませんが、成長期の子どもにとって栄養はとても大切です。主食・主菜・副菜がそろうように心がけ、バランスのとれた食事にしましょう。

特に委託間もなくの頃の子どもは、生活環境の変化から、食事場面にも影響がでる場合があります。過食や偏食、

ミルク飲みが悪いなど様々です。施設入所中には食べていた食材も食べなくなってしまうこともあります。また、

食事のマナーも悪くなり、スプーンやフォークが使えていたのに、手づかみで食べ始めるようなこともあります。

委託間もなくは、多くの場合そういった様子が見られます。焦らずに数か月は様子を見ながら、全体として栄養

がとれているかを確認して見守りましょう。心配な時には、出身施設職員や里親支援機関のスタッフ、地域の保健

センターなどに相談してみましょう。

 また、赤ちゃん返りなどによって、食事を作る時間がなかなか作れないこともあります。子どもが幼稚園や

保育園、学校に行っている間や、寝ている間、週末などにおかずのストックを作るようにしてもいいでしょう。

時には、お惣菜や冷凍食品で1品足してもいいと思います。

 施設などでは、食事は調理場で調理職員が作ります。施設経験が長い子どものなかには、時間になれば食事は

出てくるものと感じている子どももいるでしょう。外食やコンビニ等の食事ばかりだった子どももいます。その

ため、自分に関わってくれる人が食事も作るということが理解できず、待てないこともあります。子どもの理解

や様子をみながら、食事作りのタイミングを考えたり、他の人に協力してもらいましょう。

食物摂取により、食物を原因とした反応を食物アレルギーと呼んでいます。発疹だけでなく、血圧低下や呼吸困難、

意識障害など死に至る場合もあり、注意が必要です。実親さんにアレルギーの既往歴があるかなど確認して

おきましょう。アレルギーの可能性がある場合などには、医師に相談しながら、離乳食や食材を増やすこと

を進めましょう。成長発達に伴ってアレルゲン除去の軽減や治療のタイミングがあるため、自己判断で完全

除去するなどせずに、医師の指示を受けましょう。

委託間もなくの頃の子どもの食事

食物アレルギーを引き起こすおそれのある食品(アレルギー表示が義務付けられているもの)

子どもとの食事

子どもにとって、食事の時間は、家族と話の出来る大切な時間です。成長するにつれ、ゆっくり話をする時間も

限られてくるため、食事の時間を通して大人も子どもも語る時間があることは、気持ちの整理や、コミュニ

ケーションを育むことにもなります。子どもがどの年齢になっても、「孤食(一人で食事をとる)」にならない

ように心がけましょう。学校や部活動、アルバイトなどで食事のタイミングがずれるときにも、一緒に食卓に

座って子どもの話に耳を傾けてみましょう。

大人も子どもも、食事の時間はテレビやタブレット視聴、スマートフォンの利用を控えるなどルールを決めて

おきましょう。

● 特定原材料7品目  卵・乳・小麦・えび・かに・落花生・そば *卵には鶏卵のほか食鳥類(あひる、うずらなど)の卵も含む*乳は牛乳由来のもので、ヤギや羊の 乳は含まない*小麦には大麦やライ麦等は含まない

● 特定原材料に準ずるもの20品目 あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・くるみ・牛肉・ ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン

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1~2歳の子どもの食事 3~5歳の子どもの食事

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子どもにとってのトイレトレーニング 保育園や幼稚園に通い始めると、それまでできていなくても、お友達の真似をしてトイレでの排泄にスムーズに移る

ことができる場合もあります。一方、なかなか進まず、大人の方が焦って悩むこともあります。ですが、大切なのは

おむつが早くとれることよりも、自分でトイレに行けるようになることです。

大人の焦りが子どもにプレッシャーになることもあります。例えば、大人に褒めてもらいたいから無理に力んで出そう

としたり、逆に緊張して出しにくくなったりと、子どもの体に負担をかけてしまいます。時間で区切ってトイレで

排泄させる方法もありますが、それでは「トイレに行きたいな」という感覚を身につけることが難しくなるかもし

れません。家庭ではゆとりを持って自分のペースでトイレに行けるよう促しましょう。

大切なのは、子どものペースと意思を尊重すること

遊びに集中しているときは

0 歳児はもちろん、未就学児の子どもと交流する場合、まだおむつを使用している場合があります。また、委託前に

おむつがとれていても、里親さんと一緒に生活するようになったらまたおむつが必要になった、という話もよく聞きます。

このように、子どもが自分で排泄できるようになるまでの過程には、心身の発達が大きく影響しています。交流中や

委託後まもなくの時期に、無理にトイレトレーニングをする必要はありません。まずは子どもが安心して里親家庭で

生活できるようになること、生活リズムに慣れることを優先しましょう。

トイレでの排泄を始めるタイミング

ネットや書籍では、おむつを使わない育児や、0 歳からのトイレトレーニングなどを目にします。多くの子どもたちは

2歳前後から始めるようです。しかし、あまり年齢にこだわらず、個々の子どもの発達を基準に開始する時期を考えましょう。

乳児期は、膀胱に尿をためることができず、反射ですぐに排泄されます。歩き始めるくらいになると、膀胱に尿を一定量

ためることができるようになります。大脳へ尿意が伝わり、「トイレまで我慢する」「トイレで出す」のコントロール

ができ始めるのは、さらにその後です。自分の意志で肛門をしめて便を我慢できるようになるのも排尿の場合と

同時期です。子どもの身体の発達が今どの段階なのかを大人がよく見て、下記のような様子が見られるように

なったら始めてみましょう。

子どもとのくらし

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トイレトレーニングや排泄のこと

トイレトレーニングを始める時期を見極めるポイント

● 一人で歩ける

● 大人と意思疎通がだいたいできる

● 排尿の間隔が一定になる

● おむつが濡れていることを気にしたり、排泄したことを知らせる

● 里親さんと一定期間生活を共にし、生活リズムにも慣れてきた

遊びに夢中になっておもらししても叱らないことが大切です。排泄に嫌なイメージを持ってしまうと、ますます知らせることができなくなります。おもらしした後でも、「おしっこがいっぱい出たね。次はトイレでやってみようか」「おしっこしたくなったら教えてね」と穏やかに伝えること。それができたら教えてくれたことをほめること。一つ一つの言葉かけが、子どもの自立を促します。

夜は睡眠を優先に日中おむつがとれたとしても、夜間など睡眠時すぐにおむつがとれるとは限りません。睡眠時におねしょをしてしまうことはごく普通のことです。焦らず、おおらかに構えておきましょう。寝ているところを起こしてトイレに連れていくことは避け、夜は睡眠を優先させてください。寝る前にトイレに行くよう促すとよいでしょう。また、防水シーツを活用するなど工夫することで、大人も気持ちにゆとりができます。

参考文献・『改訂新版 乳児院養育指針』発行 社会福祉法人全国社会福祉協議会 全国乳児福祉協議会編集 全国乳児福祉協議会 広報・研修委員会 2015.2.27 発行・『里親勉強会テキスト1 すくすく 乳幼児の生活リズム』 編集 家庭的養護促進モデル事業 二葉乳児院 2006.3 発行

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紙おむつの替え方

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おむつには、テープタイプとパンツタイプがあります。テープタイプは開くと縦長の平面状で、赤ちゃんにあてて

からテープでとめ、おしり全体をくるむようにするおむつです。パンツタイプは下着と同じパンツ状になっています。

テープタイプは主に生まれてすぐ~ハイハイのころまで使い、動きが活発になり、立てるようになったらパンツ

タイプを使うことが多いようです。

おむつがぬれて重くなっていないか、ぬれたら色が変わって知らせるラインに変化がないかチェックします。便や尿の臭いで気づくこともありますが、特に臭いがなくても起きた時や食事後など、タイミングを見て確認しましょう。赤ちゃんの場合、泣いて教えてくれることもあります。

1)おむつチェック

テープ式のおむつの場合は、汚れたおむつを外す前に、新しい紙おむつを広げておしりの下におきます。おしりの下に手を差し入れ、腰全体を持ち上げておむつを差し込みましょう。おしりふきも数枚出しておくと慌てずにすみます。

2)新しいおむつを準備する

テープ式の紙おむつの場合、拭き終わったら汚れたおしりふきを使用済みの紙おむつでくるみ、丸めながらおしりの下から抜き出します。新しい紙おむつの上に赤ちゃんのおしりを置きます。テープを止めるときの目安は、おなかまわりに指が 1 本入るくらいにします。テープは左右対称になるようにとめ、おへそにおむつがかからないようにします。パンツタイプの場合は、つかまり立ちをさせた状態で片足ずつ脱がせ、交換することができます。また、両側のギャザー部分から破って、股の間から引き抜くこともできます。おしりを拭いた後、新しい紙パンツをはかせます。

4)新しいおむつに交換する

取り替えた後は「気持ちよくなったね」「すっきりしたね」など声かけをし、スキンシップを忘れずに。

5)「すっきりしたね」

「おむつ替えるよ」と声かけをしながらはずしましょう。おむつをはずす瞬間、おしっこが出ることもありますので、そっと確認しながらはずすと安心です。便の場合は、はずしたおむつの汚れていない部分で大まかに拭いた後、おしりふきを使います。汚れが残っているとかぶれの原因になります。また、汚れたおしりふきが性器に触れると細菌に感染することがあるので、きれいな面を使って拭くように気をつけましょう。※男の子の場合…おちんちんの後ろや睾丸の裏、しわの間も拭きます。※女の子の場合…必ず前から後ろに向かって拭きます。

3)汚れたおむつをはずす・おしりを拭く

おむつ交換のポイント

便がゆるくなっていたり、濡れた状態で長時間過ごしていると、皮膚がかぶれることがあります。赤ちゃんは、「痛い」「かゆい」をまだ表現できないので、大人が確認してあげましょう。赤くなっている場合は、シャワーや空き容器にぬるま湯を入れて汚れた部分をさっと流して洗うなど清潔にし、乾いてからおむつをつけます。石鹸などでごしごししないようにしましょう。

肌の状態をチェックしましょう

最近のおむつは性能がよく、尿をたくさん吸収します。しかし、その状態で長時間使用すると肌トラブルや細菌感染を起こしてしまう可能性があります。また、おむつのギャザーが内側に折れていたり、テープがずれていると尿漏れや便漏れを起こします。おむつを替えた後は、適切につけられているかチェックしましょう。

おむつの性能を過信しないで、適切に交換しましょう

おむつ交換は、毎日数回は行う手間暇のかかる作業です。行う大人としては毎回大変だと感じるでしょうが、子どもの健康状態を確認できる大事な時間。便の状態が違う、おしっこが出ていないなど、「いつもと違う」と気づけることで、子どもの健康を知ることができます。

健康状態をチェックできる貴重な時間

紙おむつの種類は多種多様。背中にギャザーがついているタイプ、テープ部分が伸びるタイプなど、様々です。肌触りもメーカーによって違いますので、子どもの肌の状態や年齢、動きに合わせて選ぶのも良いでしょう。子どもが立てるようになったら、テープ式よりもパンツタイプのほうが使いやすくなります。子どもが動くようになると、おむつ替えは大変な作業になります。家族の協力や、お気に入りのおもちゃを持たせている間に済ませるなど、工夫しながら行いましょう。

年齢や肌の状態に合わせておむつを選びましょう

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子どもの病気とその対応

子どもを育てるなかで、一番心配になるのが日々の健康についてです。また、病気など医療面のケアについても事前に知っ

ておくといいでしょう。「いつもと少し違うな」と思ったときには、焦らず、子どもの様子を把握して対応していきましょう。

どう判断していいかわからない場合には、症状をチェックし、電話相談や医療機関への受診をしましょう。

受診の際や、保育園・幼稚園入園、小学校入学の際など、既往歴や親族の病歴について聞かれることがあります、ある程度

の情報は、委託の際に引継ぎとして情報提供を受けます。それ以外のことで必要な項目がある場合には、出身の施設または

児童相談所に問い合わせして確認しましょう。

受診にあたって

里親宅や児童福祉施設(乳児院や児童養護施設等)で生活する子どもに対して、医療給付を行うために「受診券」が発行

されています。慣れていない医療機関によっては、「処理の仕方が分からない」という理由などで、まれに診療に難色を

示すところもあります。里親さんのしおりなどに説明の文章がある場合には、それをコピーして提示するとスムーズな

場合もあります。初診のときには、受診券の説明や、里親が保護者であること、通称姓を使用している場合には、窓口

などでその姓で呼んで欲しいことなど伝えなければならないことも多くありますので、少し余裕のある症状のときや、

予防接種のときなどに初診を終えておくことも一つの方法です。窓口でばたばたとやりとりをしなくていいように、事前

に電話連絡をして問い合わせしたり、内科併設の診療所であれば、里親自身が受診の際に、相談してみる方法もあります。

年齢が大きくなると、本人が受診券をもって一人で受診をすることがあるかもしれません。受診券を持って受診する

ことに抵抗があったという子どもにも出会います。本人にも受診券について説明し、対応について相談しましょう。

子どもとのくらし2

子どもの健康

ひきつけ・けいれん

ひきつけ・けいれんがみられたら、すぐに受診しましょう。

● 衣服を緩めて顔を横向きにして、風通しの良い部屋に寝かせましょう。

● 口の中に割りばしや物を入れるのは危険です。絶対しないようにしましょう。

● 発熱の状態、持続時間、回数、目・腕・足の動きや左右差の有無を確認しましょう。

● 初めてのひきつけ・けいれんのときには救急車を呼びましょう。

もしもの前にチェックしましょう。もしもの前にチェックしましょう。

□ 近くに小児科の診療所や病院はありますか?

小児科や耳鼻科、歯科、眼科、皮膚科など近隣の診療所の確認をしておきましょう。

土日祝や夜間など救急対応をしてくれる病院も事前に探しておきましょう。

□ 子どもの平熱を知っていますか?

何度か同じような時間帯(食後や入浴後すぐは避けましょう)に熱を測って、

子どもの平熱を知っておきましょう。施設に平熱を聞いておくこともできます。

□ 子どものアレルギーや既往症について知っていますか?

母子手帳の記載、乳児院など施設やかかっていた病院などの記録から、

子どもの今までの病気などを知っておきましょう。

既往歴から、かかりやすい病気(風邪をひきやすい、湿疹がでやすいなど)がわかることもあります。

また、継続して服用していたお薬など把握しておきましょう。

施設や児童相談所で実親の既往歴が分かる場合には、把握しておきましょう。

①受診券

②医療機関宛の受診券説明文章

③保険証(遠隔地被扶養者証)

受診の際には

初診時にもっていくとスムーズです。

保険証がない子どもも多くいます。

困ったときには、連絡を

● 里親宅へ長期外泊中や委託間もなくの頃は特に、子どもの健康な時の様子と体調が悪い場合の様子を

把握できていないこともあります。そういったときには、子どもが入所していた施設職員に連絡する

のも一つです。その子どもの特徴や既往歴を把握しています。以前の記録などからもアドバイスを

することが可能です。

● 子どもの急な病気で困ったら#8000(小児救急電話相談)休日や夜間の急な子どもの病気のときなど、対応や受診に迷ったときには、#8000(全国同一短縮番号)

に連絡しましょう。小児科医や看護師などが対応してアドバイスをくれます。

※全国47都道府県で実施しています。心配や不安なときには、遠慮なく相談してみましょう。

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食 欲1食欲はありますか?

□ 食事を摂らない

□ ミルクをいつものように飲まない

機 嫌2機嫌はいいですか?

□ 泣き方がいつもと違う

□ ぐったりしてきた

うんちや尿3どんなうんちや尿がでていますか?

□ 下痢をしている

□ 便が白い・赤い・黒い

□ 数日間便秘が続いている

□ 尿が濁ったり、血が混じる

全体の様子4● 顔色に変化がありますか? 

● 熱はありますか?

● 吐いていませんか?

● 発疹など肌の状態はどうですか?

● 呼吸は苦しそうですか?

● 発熱により水分が失われるため、水分を適宜あげましょう。● 衣服や布団を調節して、暖めすぎないようにしましょう。● 氷枕や額を冷やす場合には、冷やしすぎないようにしましょう。貼るタイプのものは、

 ずれて窒息に至らないように時々確認をしましょう。● 汗をかいている場合には、こまめにふき取り着替えさせましょう。● 高熱の場合には、入浴を避け、蒸しタオルなどで身体を拭いてあげましょう。

[ 症状別チェックポイント ]

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[ ホームケアのポイント ]

発 熱

● 繰り返しのおう吐がみられたり、水分を与えても吐く場合には、病院に受診しましょう。● 様子を見ながら水分補給をしましょう。● おう吐物が気管に入らないように、顔を横に向かせましょう。● 衣服が汚れた場合には着替えて、締めつけない服を着せましょう。

おう吐

● 適宜、水分を与えましょう。● 室内の換気を適宜行いましょう。● 室温を一定にし、湿度を保って、乾燥のしすぎを避けましょう。● 上半身を高くして寝かせましょう。呼吸がしやすくなります。● 咳き込むときには、縦抱っこして背中を軽くトントンしてみましょう。

● 発疹がなかなか消失しない場合には、病院に受診しましょう。● 発疹が赤く腫れたり、化膿している時には、入浴を控え、病院に受診しましょう。● 日常ケアとして、皮膚を清潔に保ち、カサカサ肌の場合には保湿を心がけましょう。● 発疹が見られたときには、数日間の食事や行動について振り返ってみましょう。

発 疹

● 通常と色の違う便や血便がでたときには病院に受診しましょう。● 量が多い場合や、複数回続く場合には受診しましょう。● 症状が下痢だけなら、消化にいいものを与えて様子をみましょう。● 水分を十分に与えましょう(湯冷まし、幼児用イオン水など)● お尻がただれないようにこまめに洗いましょう。(おむつ交換時にシャワーするとすっきり)

下痢や便秘

[下痢 ]

● 水分不足が予想される場合には、水分をたっぷりあげましょう。● 食物繊維の多い食材を利用しましょう。● おなかを「の」の字にマッサージしてみましょう。● 食欲がなかったり、おなかが張って苦しそうな時には病院に受診しましょう。

[ 便秘 ]

病院に行く時には、チェックポイントの項目について該当するものはお医者さんに伝えましょう。

また、その症状がいつからどれくらい続いているのかについても把握しておきましょう。

発熱からの熱の変化を記しておくといいでしょう。

「食欲がある」「機嫌がよい」「顔色がよい」場合には、おうちで少し様子をみても構いませんが、

症状が続いたり繰り返される場合には、病院で診てもらいましょう。

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[ 子どもの薬の注意点 ]

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どうして使うのか、薬の名前、副作用などを理解しておきます。

医師、看護師、薬剤師などに確認しましょう。「おくすり手帳」があると相談しやすくなります。

子どもの薬を理解しましょう

薬の量は子どもの体重に合わせて処方されています。大人と同じ薬であっても量が異なります。

指示通りの回数、量を確認して、間違わないようにしましょう。

用法、用量を守りましょう

薬の副作用で気分が急に悪くなったり、発疹がでてきたりすることがあります。

使用前後の子どもの変化に気をつけましょう。

薬を使った前後には、子どもの様子を把握しましょう

シロップなど甘くしてある薬も多いので、

大人の知らないうちに子どもが大量に飲んでしまうことがないよう管理しましょう。

子どもの手の届かないところで管理しましょう

服薬しなかった薬を保管しないようにしましょう。薬の使用期限を確認しましょう。

似た症状であっても同じ病気であるとは限りません。

特にシロップや粉薬は使用期限が短いです。

服薬しなかった薬は捨てましょう

症状が消えたからといっても、一定期間使い続ける薬もあります。

また、症状が一緒だからといって勝手にきょうだいの使い残しを使用するなどは厳禁です。

薬は一人ひとりに応じて処方されたものです。

自己判断で薬を使わないで相談しましょう

[ 子どもの歯の健康 ]

乳歯は、上下10本ずつ、合計20本生えてきます。

個人差がありますが、生後約6~10ヶ月頃に生えてくると言われています。

生後6~7ヶ月ごろに下の前歯 2 本が生え始め、2 歳半~3歳ごろまでには、

20 本の歯が生えそろいます。生えたばかりの乳歯は虫歯になりやすいので注意しましょう。

乳歯について

永久歯は、上下16本ずつ、合計32本生えてきます。親知らずは生えない場合もあります。

最初に生える永久歯は、5~6歳ごろに生え始めます。

12 歳から 13 歳頃までに親知らずを除く全ての歯が生えそろいます。

永久歯について

虫歯になりやすい場所は、

①歯と歯の間、②歯と歯ぐきのさかい目、③前歯の裏側、④奥歯のかみ合わせの溝などです。

虫歯について

子どもが一人でしっかり歯磨きをすることは難しいです。可能であれば小学校低学年までは毎日、

小学校高学年のころには時々チェックするように、大人が「仕上げみがき」しましょう。

特に、奥歯から生えてくる永久歯は、大切な歯なので、虫歯にならないようにしましょう。

子ども用の歯ブラシを使いましょう。歯磨き粉を使うとしても、発泡しにくい子ども用のものが

おすすめです。歯ブラシの約 1/3程度に歯磨き粉をつけましょう。つけすぎ注意です。

歯磨きについて

口の中がよく見えて仕上げみがきしやすいのは、子どもを寝かせた姿勢です。子どもを膝の上

または膝の間に寝かせて磨きましょう。寝た状態で磨くことを嫌がる場合には、座らせたり、

立たせて磨くこともできます。子どもが楽しくなるように歌を歌ったり、大人と磨き合いをしたり、

ぬいぐるみや絵本を利用して磨くことへの導入をするのもひとつです。

仕上げみがき

乳歯の大切な役割とは

・食べ物をかむことができるようになります。

・発音を助けます。 

・顔のかたちを整えます。

・永久歯が正しく生えかわるときの場所の目印になります。

参考文献 ・東京都福祉保健局 東京都こども医療ガイド(http://www.guide.metro.tokyo.jp/)

2

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【表1】2016年・子どもの死因上位 5位(消費者庁作成)子どもとのくらし

47 48

2

子どもと安全

子どもにとって

乳児院や児童養護施設にいる子どもたちは、集団で生活しているため、家庭とは違った環境で育てられています。例えば、

乳児院によってはコンセントが子どもたちの目や手が届かない高い位置に配置されていることもあります。食事は居室

とは異なる場所で作られるため、大人が食事をつくる姿や、食器、調理器具に触れる機会は家庭ほど多くありません。

里親家庭で生活するようになると、何気ないものも興味の対象になります。キッチン、洗濯場、トイレ、お風呂、家じゅうの

引き出しなど、慣れてくると冒険するような気持ちで冷蔵庫やドア等を開け閉めしたり、触ろうとします。里親さんに

は見慣れていても、子どもにとっては人生で初めて目にするものなのです。

大人ができること

大きな事故につながることを防ぐための知識や情報を得ておきましょう。子どもを迎えることが決まったら、ぜひ

家の中の危険な箇所や、触れられると困る物の置き場所を見直すなど、点検しましょう。

また、子どもたちの中には経験不足のため、誤った道具の使い方をしてけがをしたり、危険を予期することが苦手

な場合もあります。言葉のやり取りもでき、理解しているように見える場合でも、道具を使う場合は見守るなど、

大人も注意することが必要です。

子どもに多い「不慮の事故」消費者庁の統計によると 2016 年には「不慮の事故」により 292人の子ども(0 ~14歳)の命が失われています。

死因につながる「不慮の事故」で一番多いのは、0 歳では窒息が 89.9%、1 歳以上では溺水が約半数を占めています。

1 位 2位 3位 4位 5位

先天奇形、変形及び染色体異常(663人 34.4%)

周産期に特異的な呼吸障害等

(282人 14.6%)

乳幼児突然死症候群

(109人 5.7%)

不慮の事故(73人 3.8%)

胎児及び申請時の出血性障害等(67人 3.5%)

先天奇形、変形及び染色体異常(150人 21.7%)

不慮の事故(85人 12.3%)

悪性新生物(59人 8.6%)

心疾患(40人 5.8%)

肺炎(35人 5.1%)

悪性新生物(84人 21.5%)

不慮の事故(68人 17.4%)

先天奇形、変形及び染色体異常(32人 8.2%)

肺炎(19人 4.9%)

心疾患(16人 4.1%)

悪性新生物(95人 21.6%)

自殺(71人 16.1%)

不慮の事故(66人 15.0%)

先天奇形、変形及び染色体異常(27人 6.1%)

心疾患(19人 4.3%)

0歳(1,928人)

1歳~4歳(690人)

5歳~9歳(391人)

10歳~14歳(440人)

※1 厚生労働省「人口動態統計」(2016 年)の「性・年齢別にみた死因順位(死亡数、死亡率(人口10万対)、割合(%))」により作成。※2 0歳は「乳児死因順位に用いる分類項目」、それ以外は「死因順位に用いる分類項目」に基づく。※3 「心疾患」は心疾患(高血圧性を除く)、「周産期に特異的な呼吸障害等」は周産期に特異的な呼吸障害及び心血管障害、  「胎児及び新生児の出血性障害等」は胎児及び新生児の出血性障害及び血液障害の省略。

子どもの心身の発達と安全

乳幼児期の安全を確保するには、その心身の発達との関連をしっかりと把握することが大切です。(表1参照)

行動範囲や視野の広がりに合わせて、事故が起こる場所もベッドの周囲だけだったのが、リビング、浴室、ベランダ、

屋外と広がっていきます。大切なのは、子どもの事故防止のために正しい知識を得て、大人が行動することです。

CHECK!CHECK!CHECK!□ 子どもの年齢・月齢、発達、興味関心の対象を把握し、 起こる可能性のある事故を

  想像できますか?

□ 事故を防ぐために、何をすればよいか知っていますか?実際に行っていますか?

□ 事故が起きた場合の応急手当や相談できる場所、連絡先を把握していますか?

※1

※2

※3

※3

※3

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発達は個人差があり、上記はめやすです。子どもが身近な物に手を伸ばし関わることは、物事や周囲の環境を知ること

につながります。命の危険に関わることは避けなければいけませんが、子どもの発達を見ながら、また、大人が手助け

しながら身を守れるならば、子どもの興味・関心を満たせるよう、様々なことにチャレンジさせることも必要です。 

月齢のめやす

4 か月頃

5 か月頃

6~7か月頃

8~9か月頃

11~13か月頃

2 歳以降

運動発達 手の操作・探索事故防止のため

気をつけたいこと(例)

ひとり座りハイハイ

足をバタバタ

見た物に手を出す口に入れて確かめる

( 手が自由になる )指で上手につかむ何でも口に入れる

スイッチを押す持ち上げ・持ち運ぶ戸を開けられる高い所・机の下好き

寝返り

つかまり立ち

ひとり歩きくぐる走る・登る

( 行動の拡大 )高い所へ登れる

49 50

【表2】子どもの行動拡大(運動発達)と事故予防

表1 出典:消費者庁 H29 年度消費者政策の実施の状況・消費者事故等に関する情報の集約及び分析のとりまとめ結果の報告(概要版) 表2 参考:上記に同じ 及び 消費者庁「子どもの事故防止ハンドブック」(H30 年3月改訂 )

窒息 顔のそばの布類に注意

やけど 熱いものの置き場所転落 ベッドやソファから口に入れると危険なものに注意する

転落 まだ安定しない座り誤飲 タバコ・薬は高い所へ溺水 5cm の水でも溺れます

転落 階段からの事故もあり溺水 お風呂も遊び場にはさまれ / 打撲 ドアや家具・家電危険な物は手の届かないところへ

転落 頭大きく転倒しやすい溺水 浴槽付近で一人にしない

転落 ベランダ 滑り台4歳頃には庭にもひとりで行ける

子どもの安全のために必要な2つのこと

子どもの安全を確保するために必要なことは主に2つあります。

1つは「環境づくり」であり、特に乳幼児期は大人が気をつけることで防げる事故は多く、子どもの安全も守るのは

大人の義務です。

もう1つは子どもへの安全教育です。例えば、子どもの身長は大人よりも低く、障害物の向こう側にある車を目視で

きなかったり、興味のあるものしか目に入らず、障害物に気づけなかったりと、いろんな危険を確認・予測すること

は困難です。信号や交通ルール、安全な道具の使い方など、子どもの年齢に合わせ、分かりやすい言葉で伝えること

が必要です。とはいえ、理解できても実行できるようになるのは、ある程度大きくなってからです。「環境づくり」

と「安全教育」はどちらか一方では効果が発揮できません。どちらも継続して行いましょう。

環境づくり● 目や手の届く範囲に、危険なものを置かない。(タバコ、薬、飴、ボタン電池など)

● 危ないものは覆う。(ストーブ、扇風機、コンセント等)

● 家具、テレビ等が倒れないように固定する。

● 公園、プール、河川など子どもにとって魅力的な場所にも危険はつきもの。 子どもから目を離さないこと、周囲の環境を確認し、危険なところには子どもを近づけないよう 配慮することが必要。● 電化製品にチャイルドロックがある場合は、それを利用する。

安全教育● 言葉での理解が難しい場合は、大人がやってみせる。また、子どもにしてほしくないこと(リモコン を操作する、給湯器の温度調整のパネルを操作する等)は、できるだけ子どもの前でしない。

● 言葉で伝える時は、子どもの発語の分量と同じ単語数で伝えると、子どもも理解しやすい。また、 絵本や人形等を使って伝えるのも良い。

● ジェスチャーやアイコンタクト、表情なども有効な手段。ただし、怖がらせすぎないことに注意 すること。

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吐かせないで、至急病院へ

<病院へ行く際のチェックポイント>

① 何を飲んだか ② いつ飲んだか ③ どれだけの量を飲んだか 

④ 顔色が悪いなど、いつもと違うところはないか ⑤ けいれんを起こしていないか

⑥ 意識ははっきりしているか 

などをチェックし、誤飲したものの容器や袋、証明書などを持っていきましょう。

<誤飲してしまったときの対応のポイント>

子どもの一次救命

心肺蘇生と応急処置

51 52

呼吸停止後、2 分以内に人工呼吸を開始した場合、約 90%の確率で蘇生できます。

何もしないまま 10 分経過すると 10%以下になってしまいます。119 へ通報後、救急車が到着するまで平均約9分

かかります。(H29 年 消防庁)そのため、救急車が到着するまでに何ができるのかを知っておくことが重要です。

中指と薬指で胸の厚さの約 1/3 くぼむ程度

押し下げる。1 分間当たり 100 ~ 120 回の

テンポで 30 回続けて行う。

乳児の場合片手または両手で胸の厚さの約 1/3 くぼむ程

度押し下げる。1 分間あたり 100 ~ 120 回

のテンポで 30 回続けて行う。

幼児の場合

心肺蘇生の方法は、国際的に統一されており、定期的にガイドラインが変更されます。2018 年現在、

最新である「JRC 蘇生ガイドライン 2015」では、心停止の判断に迷った場合でも胸骨圧迫を開始

すること、訓練し、技術があり可能な場合は人工呼吸を行い、できない状況の場合は胸骨圧迫のみ

行うとされています。

胸骨圧迫

心 肺 蘇 生心 肺 蘇 生

特に小さい頃は、体のバランスも不安定なため、転倒や擦り傷、打撲はどんなに気をつけていても

防ぎきれるものではありません。子どもの機嫌やけがの様子を観察し、病院に行くほどでない

ならば家庭で適切なケアができると良いでしょう。病気やケガに備えて、日中はもちろん土日、

祝日に行ける病院を把握しておくことが大

切です。誤飲の場合の応急処置は、何を飲

んだかによって対処方法が違いますので、

慌てず、確認しながら行いましょう。

応 急 処 置応 急 処 置

たばこ大部分の医薬品など

ナフタリン、パラジクロルベンゼンなどの防虫剤

除光液、灯油、ガソリン、

ベンジンなどの揮発性物質

トイレ用洗剤、漂白剤などの強酸・強アルカリ性物質

ボタン電池

何も飲ませない

水や牛乳を飲ませる

牛乳は飲ませない

何も飲ませない

水や牛乳を飲ませる

何も飲ませない

2

※1 出典:日本医師会 ウェブサイト http://www.med.or.jp/99/(救急蘇生法・子どもの一次救命処置の手順)(H30 年 8 月 10 日利用)

※2 出典:消費者庁 ウェブサイトhttp://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_002/ ( 子どもを事故から守る!事故防止ポータル「子どもの事故防止ハンドブック」(H30 年 8 月 10 日利用)

※1

※2

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ベランダ

リビング

出典:厚生労働省ウェブサイト 子どもに安全をプレゼント 事故防止支援サイト「家庭内の絵~危ないのはどこかな」https : //www.n iph .go . jp/sosh ik i /shoga i/ j i kobosh i/publ i c/ index .h tml (H30年8月 10 日利用 )

【解答例】

1)誤飲……テーブルの上のクリップやコイン、たばこや灰、ボタン電池  やけど…アイロン、ストーブ、コーヒー  窒息……ベビーベッドとマットの隙間、ぬいぐるみ  転落……ソファー、ベッド  感電……コンセント  はさむ…ドア、窓、ビデオデッキの出入り口、ビデオの収納台の扉  切創……はさみ  転倒……テーブルの角

2)転落……クーラーボックス、植木鉢、ポリタンク  窒息……カーテンの紐  はさむ…窓

参考サイト

子どもの安全を守るヒントは、次の消費者庁、厚労省の HP のほか、居住地の自治体の HP

にも載せられている場合が多いです。また、最寄りの消防署では小児救急救命講習会も

開かれています。 (H30 年8月 10 日現在 )

● 消費者庁ウェブサイト子どもを事故から守る!事故防止ポータルhttp://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/  ※「子どもを事故から守る!!事故防止ハンドブック」も閲覧できます。

● 厚生労働省ウェブサイト①子どもに安全をプレゼント 事故防止支援サイトhttp://www.niph.go.jp/soshiki/shogai/j ikoboshi/②健やか親子21( 第2次 ) ホームページ http://sukoyaka21.jp/「子どもの事故防止~特に誤飲について~」(監修:山中龍宏)

● 日本医師会 救急蘇生法 http://www.med.or. jp/99/ 「子どもの一次救命処置の手順」他、様々な子どもの救急救命に関する情報があります。

● 日本赤十字社 ホームページ http://www.jrc.or. jp/「一次救命処置」「子どもの手当・事故防止」の情報や、赤十字支部や赤十字施設で開催される「救急法講習会」の情報を得ることができます。

※解答例を参考に、危険予測と対策を考えましょう。 また、子どもは思いもよらない行動をとる場合がありますので、 大きな危険につながるようであれば触らせない、置かない工夫も必要です。

【実践】次のリビングとベランダの図を見て、危険と思われる箇所を挙げましょう。

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子どもの生活

第3章

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遊びには「楽しみ」「娯楽」という印象がありますが、それだけではありません。特に乳幼児のころは遊びが心身の成長・

発達を促し、好奇心や創造力を高めます。友達とのかかわりが持てるようになると、遊びを通して社会性や共感力、

協力することなどを学びます。遊びの中で、子どもは困難を乗り越えることや、自分の思い通りにならないことが

あることなど、様々なことを経験し、成長していくのです。

また、遊びは自分自身を癒し、回復させる力を持っています。例えば、震災で被災した子どもたちが「地震ごっこ」

「津波ごっこ」でその時のことを再現したといいます。不適切な環境で育った子どもたちの場合も、玩具や人形を

使った遊びやお絵描きの中で自然に再現することがあります。これらは、今いる場所が安全で安心な場所であると感じ

られる場合に、これまで抱えていた不安や恐怖、怒りなどを解放し、自分自身を回復させようとしているのです。

子どもが、これまで抱えていた感情や記憶を再現している場合は、それをやめさせるのではなく、見守ることが必要

です。なぜなら、遊びの中で再現することで、過去に起こった出来事やその時の感情を整理し、受け入れようとして

いるからです。しかし、この行為が子どもに再び恐怖や苦しみなどしか与えていない場合は専門職の介入、治療が

必要です。子どもの様子をよく見て、気になる場合はすみやかに関係機関に相談しましょう。

子どもの生活

57 58

3

子どもと遊び

子どもにとっての遊び

子どもが自由にふるまえる遊びの時間は、子どもが何に興味を持っているか、何が得意で何が苦手なのか、たくさん

の情報を与えてくれます。また、一緒に楽しみを共有することで、子どもは里親さんを安心できる大人と認識し、

里親さんも子どもを自然に一層可愛く思えるでしょう。子どもの遊びにつき合うことは根気や体力のいることです

が、助言や指示をせずに、子どもの遊びや流れに寄り添い、肯定的に声かけをしましょう。

大人にとって、子どもと遊ぶということ

子どもが大きくなるにつれて、一緒に遊ぶことは少なくなる

でしょう。しかし、子どもの適切な行動に注目すること、

認めることは大きくなっても続けることができます。

小さな変化を見逃さず、気づいていることを言語化して

伝えましょう。身近にいる大人の肯定的な言葉かけや

注目は、いくつになっても子どもの支えになります。

成長に応じた遊びと関わり

参考文献・『子どものトラウマ』 西澤哲 著 1997 年 10 月 20 日第1刷発行 講談社現代新書

スキンシップや語りかけは、赤ちゃんにとって大切な遊びです。スキンシップは赤ちゃんの心を安定させ、脳の発達

を促し、また赤ちゃんのストレスだけではなく、関わる大人のストレスも軽減させる効果があるといわれています。

たくさん触れ合って、赤ちゃんとの信頼関係を築いていく大切な時期です。

ねんねの頃(誕生~3か月頃)

子どもの成長に合わせた遊び

この頃の赤ちゃんは手やおもちゃなど、なんでも口にいれます。赤ちゃんは、口に入れた感覚で形や素材などを学習していきます。この行為はおおよそ 1 歳半頃までは続くといわれています。なんでも口に入れる時期なので、3.5 センチ以下の小さい物や危険なものは赤ちゃんの近くに置かないようにするなど、誤飲や窒息に気を付けていく必要があります。

3.5センチ以下は危険

実物大

プレイマットプレイマット

3.5センチ

◆ 生まれてすぐの赤ちゃんの視力は 0.02 程度といわれていますが、聴力は胎児期から発達しているそうです。赤ちゃん

がよく見えるおおよそ 30 センチまで顔を近づけ、しっかり目を合わせ微笑みゆっくり話しかけてあげましょう。

「お腹いっぱいになったね」「おむつきれいになって気持ちいいね」など、ミルクの時間やおむつの時間、お風呂の

時間など生活の中でたくさん声をかけてあげましょう。赤ちゃんはかかわってくれている大人の声をしっかり聴き、

覚えていきます。

◆ 手遊び歌には心や脳の発達を促す効果があるといわれています。親子でスキンシップをとることができ、リズム

感を養い、体を動かす練習にもなります。この頃の赤ちゃんには歌いながら優しく手足を触ってあげましょう。

スキンシップは赤ちゃんの情緒の安定につながり、また体を触られることにより、赤ちゃんは自分の体を少し

ずつ認識していきます。

◆ 少しずつ視力が向上し、動くものを目で追うようになります。

赤ちゃんの遊びの第一歩は、見ることから始まります。

赤ちゃんが認識しやすいといわれている、丸いものやはっきり

とした色のプレイマットやメリーを選んであげると良いで

しょう。また大人が赤ちゃんにガラガラなどのおもちゃを

振って見せてあげましょう。

子どもにとっての遊び

3

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「見る・聞く・触る・舐める」すべてが赤ちゃんの発達にとって必要な遊びです。様々な質感の物を触ったり、舐めた

りすることにより、脳はたくさんの刺激を受け、どんどん発達していくといわれています。安全で清潔なおもちゃを選

んであげましょう。

首がすわり寝返りをする頃(4か月~6か月頃)

ずりばいが始まるこの時期は、赤ちゃんが「動きたい!触りたい!」と意欲を持つことができる環境や働きかけが大切

です。発達には個人差がありますので、できなくても焦らず、大人も赤ちゃんも遊びの中で、楽しめる範囲で促してあ

げましょう。

ずりばいからハイハイの頃(6か月~8か月頃)

59 60

おきあがりこぼしおきあがりこぼし触るとゆらゆら動き、きれいな音がします。

シェイカーシェイカー赤ちゃんが握りやすく、当たっても痛くない柔らかい素材です。

小さめのペットボトルにビーズや小豆等を入れて、しっか

り蓋をすると手作りのガラガラのおもちゃの完成です。

ビーズをいれたペットボトルにお水を入れると、ビーズの

動きが変化したり、キラキラ光ったりしてとても綺麗です。

食紅や絵具で色をつけ、色水を作るのもおすすめです。色

水は、おままごとでも大人気です。

ふたが開いてしまうと誤飲の恐れがあるので、接着剤などでしっかりふたを固定しましょう。長年利用すると、劣化していきますので、定期的にふたが開かないかなど、チェックしてください。

CHECK

◆ 自らの意思で自由に移動することができるようになり、赤ちゃんの世界は大きく広がっていきます。行動範囲が大

きく広がるため、赤ちゃんが安全に過ごせるよう室内の環境を整える必要があります。

◆ 首がすわり寝返りができるようになると、赤ちゃんの視界は大きく変わります。首がすわると、腹ばいの姿勢を少

しずつ取り入れていきます。赤ちゃんの視界に入るようにおもちゃを置くなど、大人が赤ちゃんと同じ目線になり

声をかけてあげましょう。おきあがりこぼしや触ると音がなるおもちゃなど、応答的なおもちゃがおすすめです。

◆ おもちゃなどに手を伸ばし、つかもうとします。親指が外側に開いてくると、おもちゃを握ることができるように

なります。握りやすい軽いおもちゃを握らせてあげると、次第におもちゃを振って遊ぶようになります。

◆ この頃になると、おもちゃを握るだけではなく、ガラガラのおもちゃなどを上手に振って音を鳴らして遊ぶことが

できるようになります。

◆ 乳歯が生え始めるこの頃は歯茎がかゆくムズムズするため、ぐずぐずしたり、ご機嫌が斜めになったり、おもちゃ

を噛むようになります。歯固め(赤ちゃんがカミカミして遊ぶ玩具)は、かゆみを抑えることができ、また舐める

ことから噛むことへのトレーニングにもなるのでおすすめです。

子どもにとっての遊び子どもにとっての遊び

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子どもは外遊びが大好きです。外には、日の光、風、花や木々の揺れる風景など、肌に触れる空気やにおい、音など五

感を刺激するものがたくさんあります。外遊びは、室内遊びでは使わない筋肉を使い、良い運動になります。またたく

さん身体を動かすことにより食欲も増し、夜もぐっすり眠ってくれます。

61 62

ハイハイからお座り・たっちの頃(8か月から12か月頃) 1歳頃

1 歳頃の子どもは何でも投げて遊ぶ子は多いですが、子どもにとっては、投げる事も楽しい遊びです。

かといって投げると危険なものだったり、場所だったり・・。大人の目線で考えると、「とても危険

な行為」となり、対応に困ることもあります。投げる事を否定するのでなく、思いっきり投げてもよ

い場所やボールやお手玉、風船など投げて遊べるおもちゃを渡してあげましょう。また投げてよい物

と投げてはいけない物を教えてあげましょう。

遊びを大人がやってみせると、次第にまねをして遊ぶようになります。

CHECK

◆ 伝い歩きから歩行ができるようになってきます。歩行が安定してくると、身体を使った遊びがおすすめです。ただ

お散歩に行くだけでも十分です。砂遊びや水遊び、リズム遊びや手遊びなど五感をフルに使った遊びがおすすめです。

脳や身体にいい刺激を与える事ができると言われています。

◆ ハイハイをたくさんすることにより、腕の力や背骨の筋肉、腰が鍛えられ、バランス感覚を身につけることができ

ます。また転んだ時に、手を出し、顔面をかばうことができるようになります。公園の芝生や広いスペースなど、赤ちゃ

んがたくさんハイハイできるような環境を作ってあげられるとよいですね。大人が一緒にハイハイして追いかけっ

こをすると、とても喜びます。

◆ お座りができるようになると、手先を使った遊びもぐんと広がります。つかまり立ちや伝い歩きが始まると、赤ちゃ

んの手が届く範囲も広がるため、再度室内の環境を見直す必要があります。

◆ 指先が器用になり、上手におもちゃをつかめるようになります。手や指先には多くの神経があり、脳に刺激を与え

発達を促すといわれています。様々な物を触ったり、手先を使った遊びを取り入れましょう。

◆ 親指と人差し指で小さいものがつかめるようになります。クレヨンを持ってなぐり書きをしたり、積木を数個積む

ことができるようになります。積木やお絵かきは手先の器用さを養うことができる遊びです。

◆ 言葉をある程度理解することができ、意味のある単語を話すようになります。「どうぞ」「ちょうだい」など簡単な

やりとりもできるようになります。

◆ 身近な大人のまねをたくさんするようになります。大人と同じものが使いたいので、生活用品等を与えるととても

喜んで遊びます。危なくないものを選んであげましょう。

◆ 子どもが一人で集中して遊んでいるときは見守ってあげましょう。一人遊びは思考力、想像力、集中力が育つ大切

な時間です。

・一人遊び → ・傍観遊び(お友達の遊びを見ているが遊びには参加しない)→ ・平行遊び(同じ場所で同じ遊びを

するがかかわりを持つことはない)→ ・連合遊び(一緒に遊ぶが役割分担ははっきりしていない)→ ・共同遊び(共

通の目的を持ち、役割分担やルールを作って遊ぶ)

このように発達に伴って遊びの状況も変化していきます。

子どもにとっての遊び

ボール落としボール落とし

ビーズコースタービーズコースター指先を使って遊ぶ

ビーズコースターもおすすめです。

ボール落としは赤ちゃんが大好きなおもちゃの一つです。・ボールをつかむ → ・穴の位置に手を動かす →・手を離す → ・でてきたボールをつかむというように手先をたくさん使う遊びです。ボールが上手につかめるようになるまでは、見るだけでも楽しむことができます。

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子どものやりたい気持ちを大切に、できる限りやらせてあげましょう。そしてたくさんほめてあげることが大切です。

ほめられた経験が自信につながり、自己肯定感を高めていきます。

お友達と遊ぶことを好むようになってきます。ケンカも増えてきますが、ケンカを通して、人との付き合い方を学んで

いきます。また4歳頃になると、子ども同士で解決する力も身につけていくことができます。

2歳半頃

3歳~4歳頃

ルールのある遊びを通して、少しずつ社会のルールを身につけていくことができます。作戦を立てたり、友達と協力す

ることも可能になります。勝ち負けの中で、自信や悔しさを知り、練習するようにもなります。

◆ 仲の良いお友達ができ、お友達と協力して遊ぶことができます。他人の気持ちを理解しようとして、自分の感情の

コントロールもできるようになってきます。集団生活の中で様々な経験を積み、お友達の意見を聞いたり、意見に

共感し譲り合う気持ちや調整する力が身についていきます。

◆ 全身運動が滑らかになり、様々な運動に意欲的に挑戦します。

◆ 手先も器用になり、はさみやペン、折り紙など上手に使いこなすことができるようになってきます。

◆ ルールを理解できるようになります。かくれんぼ、サッカー、鬼ごっこなどルールのある集団遊びがおすすめです。

自分たちでオリジナルのルールを作って遊びます。

◆ 思考力や認識力も高まり、自然事象や社会事象、文字に関心を持ちます。文字や数字は焦らず、遊びの中にうまく

取り入れていきましょう。

◆ 運動機能はますます発達し、バランス感覚が身につく頃です。4 歳頃には身体のコントロールも上手にできるよう

になります。公園の遊具はほとんど一人で使えるようになってきます。

◆ 指先はさらに器用になり、折り紙やはさみも使えるようになってきます。紙を切ったりのりをはったりする工作は

手先を使い、また造像力や表現力が磨かれていきます。

◆ 言葉がますます増え、ある程度日常会話ができるようになってきます。お友達とおもちゃの貸し借りや順番を待つ

ことができ、また簡単なルールも理解できるようになってきます。

◆ 役割を意識し始めるこの頃は、ごっこ遊びが盛んになります。ごっこ遊びは、役割になりきることにより想像力を

培い、また相手の気持ちを考えられるようになってきます。社会性や言語力を身につけることができる遊びです。

5歳~ 6歳頃

◆ 運動機能は大きく発達し、ジャンプしたり、走ったり体を自由に動かすことができるようになってきます。体をた

くさん動かして遊べる環境を作ってあげるとよいでしょう。バランス感覚を養うことのできるといわれているボー

ル遊びもおすすめです。この頃にはキックもできるようになってきます。

◆ ブロックや粘土遊び、ひも通しやパズルなど指先を使った遊びができるようになります。指先を使った遊びは、集

中力と手先の器用さを養うことができます。

◆ この頃は見立て・つもり遊びをするようになります。積み木を車に見立てたり、リモコンを電話に見立てたり・・イメー

ジや創造をして遊びます。見立て遊びからごっこ遊びへ発展していきます。

◆ お友達にも興味がでてきます。おもちゃの取り合いなど喧嘩になってしまうことも多い時期ですが、大人が声をか

けてあげたり、一緒にかかわるなかで少しずつお友達とのかかわり方を学んでいきます。お友達と一緒に遊ぶ機会

をたくさん作ってあげましょう。

子どもにとっての遊び

子どもにとっての遊び

子どもにとっての遊び

手作りおもちゃの紹介

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子どもにとって本の時間は、好奇心を刺激し、新しい発見と想像を膨らませることができます。ときには主人公に

なりきり、ときには感情移入をして様々な感情の広がりを経験します。特に乳幼児期の子どもにとって、大人に読

み聞かせてもらう経験は、自分の興味関心の広がりを支えてもらい、一緒にその世界を楽しみ共有するという時

間になります。親子が1対1で密にコミュニケーションがとれる大切な時間です。それによって、集中力や想像力を

養い、豊かな感情を育み、言葉の発達を促す効果もあります。

また、里親家庭で生活をする子どものなかには、感情表現の方法が不器用であったり自分自身の感情というものが

わからない子どももいます。経験不足や養育者が丁寧に子どもの感情を扱わなかった虐待経験によるところも多く

影響します。そういったときにも、絵本は安全に感情を取り扱うことができ、あまり見つめてこなかった自分自身

の感情を振り返る機会にもなります。寝る前の時間など、一日 15 分でも時間をとって、是非、子どもと一緒に

本に触れる体験をしてみてください。ここでは、おすすめの絵本を一部ご紹介します。そのほかにも、素敵な絵本

がたくさんありますので、図書館や本屋さんで、大人も子どももお気に入りの一冊を見つけてください。

*発達には大きな個人差がありますので、あくまで目安として参考にしてください。

子どもの生活

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子どもと本

子どもにとっての本の時間

言葉を理解する前の赤ちゃんでも、絵本を見たり触ったり、大人の抑揚のある声を聴くことで、絵本を楽しむことが

できます。赤ちゃんは、「ぷくぷく」「ごぼごぼ」「ぽんぽん」などの言葉のリズムが大好きです。音やリズムが

楽しめる絵本、赤ちゃんが認識しやすい丸い形や多彩な色使いの絵本などがお勧めです。

絵本を読んでいる途中で、子どもがどんどんページをめくると「絵本に興味がないのかな」と思うこともあるでしょう。

ですが、絵本を触ったりページをめくったりすることも、しっかり絵本に興味を持っている証拠です。無理にページを

戻さずに、子どものペースも大切にしてみましょう。またページをめくることで手先を使う遊びになります。

絵本を読みきるというよりも、絵本を通して赤ちゃんとの 1 対1の時間を楽しんでくださいね!

0歳からの子どもと絵本

「ごぶごぶ ごぼごぼ」 駒形克己1999

福音館書店

「いないいないばあ」 ぶん:松谷みよ子え:瀬川康男1982 童心社

「もこ もこもこ」 作:谷川俊太郎絵:元永定正1977 文研出版

このころの子どもは、ストーリーを理解するのはまだまだ難しい年齢です。身近な食べ物や乗り物などの絵本は子ども

が興味を持ちやすく、一緒に指さしやあてっこするなど、コミュニケーションがとれる絵本もおすすめです。

1歳頃のおすすめの絵本

「がたんごとん がたんごとん」 

安西水丸1987 福音館書店

「くだもの」平山和子

1983 福音館書店

簡単なストーリーを少しずつ理解できるようになってきます。子どもによって興味のあるものも分かれてくるころです。

電車やバス、昆虫や好きなキャラクターの本などたくさんの絵本がありますので、是非、一緒に図書館や書店に行って、

選んでみましょう。

食事、トイレ、歯磨きなど生活習慣が学べる絵本もおすすめです。

2歳頃のおすすめの絵本

「ピン・ポン・バス」作: 竹下文子絵: 鈴木まもる1996 偕成社

「トイレ いけるかな」わらべきみか

1990 ひさかたチャイルド

「わにわにのおふろ」文:小風さち絵:山口マオ

2004 福音館書店

「きんぎょがにげた」 五味太郎

1982 福音館書店

「だるまさんが」 かがくいひろし 

2008 ブロンズ新社 

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このころの子どもは想像豊かになり、頭の中でイメージを展開させることができます。また、絵本のお話しの内容が

だいぶ理解できるようになってきます。絵本の次の展開にどきどきしたり、想像することもできます。絵本だけでなく、

本を寝る前に読み聞かせてあげるなどしてもいいでしょう。4 歳頃には少し長めの絵本でも楽しめるようになってきます。

3~4歳頃おすすめの絵本

長めの絵本や絵の少ない本でも、イメージをして聞くことができるようになってきます。6 歳頃になると、どんどん

文字が読めるようになり一人で本を読む子もいると思います。親子の触れ合う大切な時間としてたくさん本を読んで

あげましょう。図書館に一緒に行って、興味のある本など様々な本に触れてみましょう。

5~6歳おすすめの絵本

「だるまちゃんとてんぐちゃん」加古里子

1967 福音館書店

「エルマーのぼうけん」作:ルース・スタイルス・ガネット絵:ルース・クリスマン・ガネット

1963 福音館書店

「いやいやえん」作:中川李枝子絵:大村百合子1962 福音館書店

「おしいれのぼうけん」作:中川李枝子絵:大村百合子1962 福音館書店

「ちょっとだけ」作:瀧村有子絵絵:鈴木永子

2007 福音館書店

参考文献「発達がわかれば子供が見える」 乳幼児保育研究会 2009 ぎょうせい「続発達がわかれば子供が見える」乳幼児保育研究会 2013 ぎょうせい

子どもとメディア

電子映像メディア機器(テレビ、DVD, スマートフォン、タブレット端末等)の普及により、子どもも触れる機会が増えています。公益社団法人日本小児科医会は、過度の利用による子どもの発達への危険性についてリーフレットなどで啓発を行っています。そのなかの提言では、授乳中、食事中の親子共にテレビ、スマホなどの視聴を控える。子ども部屋には置かない、利用の際には、親子で上手に利用するルールを作ることなどが言われています。過度なメディア機器の利用は、大人とのやりとりを通して得られるかけがえのない刺激の機会を減らすことにもなります。子どもに見せてはいないけれど、授乳や食事中、遊ばせているとき、電車の中などで大人がメディア機器を利用して子どもとかかわらないことも同じことです。また、鬼やおばけなどが出てくるアプリで子どもを怖がらせてしつけに利用することも控えましょう。特に、里親家庭で生活する子どものなかには、様々な体験をし、アプリをきっかけに怖い体験を引き出してしまうこともあります。昔から使われているような、「言うこときかないと鬼が来るよ」などは、信頼関係のある親が語るからこそのことです。メディアを利用するときにも、一緒に見る、声をかけるなどかかわりをもちながら、それが子どもに適しているかの判断も行いましょう。

参考資料「スマホに子守りをさせないで!」リーフレット 公益社団法人日本小児科医会

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発達は、身体(運動)、感覚や知的能力、人との関わりなどいろいろな側面からみることができます。ここでは、非常に

大まかにではありますが、月齢や年齢ごとに発達の特徴を挙げてみました。

これらは標準的な目安であり、各月齢・年齢の発達の特徴を網羅したものではないので、参考として見ていただきたい

と思います。子どもの個人差もあるので「この通りに発達していないから問題がある」ということではありません。社

会的養護のもとで生活する子どもは年齢相応の順調な発達とはいかない場合も多いうえ、それまでは順調と聞いていて

も、生活環境や人間関係の変化を受け「できていたことができない」状況になることも珍しくありません。年齢相応で

ないとしても、「この子にとっての課題に今取り組んでいる」という意識で見てみましょう。そのうえでどんな支援が必

要なのか考えてみます。

0歳後半以降の項目を見るとわかるように、成長に伴い移動したり少し高いところに手が届いたりします。手指も器用

になるため、まだできないと思っていたことができてしまい事故につながる場合があります。子どもはまだ危険の予測

をする力に乏しく、発達の自然な過程として好奇心からさまざまなことをします。5歳、6歳になっても危険なことを

すべて回避できるわけではありません。また、大人にかまってほしいとか反応を試したいなど、関係性において危険な

ことをわざとやるという場合もあります。いずれにせよ危険なことはやめさせなければなりませんが、「危ないことをす

るのは悪い子」という見方で接すると子どもは罪悪感を持ってしまいます。危険な状況をつくらないよう養育者が工夫

すること、危険な行為は否定しても子どもの人格を否定しないことを心がけましょう。

子どもの生活

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3

子どもの発達とその支援

3か月

月齢・年齢 子どもの様子

4 か月

5 か月

6~7か月

子どもの発達

縦抱きをしても首があまりふらふらしない。手のひらに物を入れてやると、しばらく握っている。

人の声に対して反応が活発になり「あ」「う」など声を出す。

目の前で手などをゆっくり動かすと、それに合わせて目を動かす。音のする方に首を向ける。手を口に持っていきしゃぶる。

首がしっかりすわる。腹ばいにすると手足をさかんに動かす。

声を出すことが盛んになり、発声する音の種類も増えていく。

腹ばいにすると手足を使わずに胸をそらせて肩を持ち上げる。あおむけにすると横向きに寝がえりできる。

何でも手でつかみ、口に入れて確かめようとする。

支えないで座っていられる。ハイハイするようになる。

手近なものに興味を持ち、手を伸ばしてつかめる。

イナイイナイバアを喜ぶ

8 ~9か月

月齢・年齢 子どもの様子

つかまり立ちができる

両手に持ったものを打ち合わせる。手に持ったものをスムーズに別の手に持ち替える。

バイバイ、コンニチワなどの身振りをする。人見知りが芽生え、知らない人を見ると表情が硬くなったり泣いたりする。

引き出しを開けて物を引っ張り出そうとする。

12~13か月

10か月落ちたときの音を楽しむために、おもちゃなどを投げ落とす。

軽い戸や少し開いた戸を開けることができる。

11か月伝い歩きができる。

高いところの物を取ろうと、つかまり立ちをして背伸びをする。

2歳2 語文(単語を2つつなげて話す)が話せる。語彙が増え、次第に3語文も話せるようになる。

自分でやることへのこだわりが強い一方、できるのにやらないこともある。

3歳食事・排泄などがほぼ自立。会話のやりとりが上手になる。

友達と一緒に遊べる。ごっこ遊びなど想像力を働かせた遊びができる。

18か月(1歳半)

自分でスプーンを持ち、すくって食べようとする。小さなものを拾って穴に入れる。

ひとりで机や椅子の下にもぐったり、箱の中に入ったりして遊ぶ。

ひとりで2、3歩、歩くことができる。

「ママ」「パパ」「まんま」など意味のある単語が出て、徐々に増えていく。

4歳~6歳

リズムに合わせて体をゆすったり手足を動かしたりする。

走ることができる。

自己主張が出てくる。

自発的になぐり書きができて連続した線がかける。

自分でスプーン等を握り、こぼすが食べられる。

ほかの子どもの遊びに入りたがり、おもちゃの取りっこをする。

身体を動かす運動、手指の使い方ともに、年齢を増すごとに上手になる。

基本的生活習慣が自立。

物語の筋を理解し、文字への興味や数概念の理解も出てくる。

集団生活を送ることができ、友達と遊ぶ中でけんかしたり相手を思いやったりすることを学ぶ。

判断力や思考力がつき、問題場面を自分たちで解決しようとする姿勢も出てくる。

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性被害・加害を防止するための配慮

プライベートゾーンを大切にすることについて、幼児期から教えます。

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就学の頃には幼児特有の自己中心性を脱します。見た目は違っても本質は同じだと区別がつくなど、物事を客観的にと

らえるようになってきます。知識欲や学習に必要な記憶力も高まります。学年が上がるにつれ、目に見えない抽象的な

ことがらの理解や、論理的思考ができるようになります。

小学校高学年の頃からは「思春期」にさしかかります。心も身体も、子どもから大人へと移行する時期で、養育者にとっ

て難しい時期であると同時に子ども自身もそれまでにない悩みを抱えることがあり、心身のバランスを崩しやすい時期です。

この時期には以下のような傾向があります。

性に関することは思春期以降の問題と思われがちですが、決してそうではありません(『子どもと里親のためのサポート

ハンドブック 1』第5章「子どもと性」「性被害から子どもを守る」参照)。性的発達の概要や、気をつけたい養育上の

事柄について以下にまとめました。

学童期から思春期

心身の成長が著しく、大人と同じようにできる部分も出てくるが、不安定で未熟な面も残っている。

二次性徴が現れ、性への関心や特定の相手を求める気持ちが高まる。

大人の言動に反発し、反抗的になる。大人に対し秘密を持つようになる。

大人との関係より友人関係を重んじる。

乳幼児期

家庭での「当たり前」の習慣や意識が子どものために適切かどうか、今一度考えてみましょう。

思春期(およそ小学4年生)以降の子どもが異性の親きょうだいと一緒に入浴することは不適切です(小学校入学以降は避けたほうがよいとの考え方もあります)。二次性徴の発現や異性への意識の芽生えがみられる思春期以降には、たとえ保護者でも異性が一緒に入浴することは性的権利の侵害になり、性的虐待の範疇にも入ります。子どもが嫌がらない、恥ずかしがらないから良いというものではなく、逆に、家族であっても(思春期以降)異性の前で着替えない・一緒に入浴しない等は自己や他者を大切にするマナーであることを教えます。そのように適切な「境界線」を引けることが、自己を守る力になります。

● 公衆浴場等で子どもが性別を問わず入浴できる(男児が女湯に入る、またはその逆)年齢は各都道府県で定められており、7歳から12歳くらいまでと幅があります。しかし、不特定多数が出入りする場にはさまざまな性嗜好の大人がいる可能性があります。幼児であってもできるだけ異性との混浴はさせない(同性でも絶対安心というわけではない)、子どもの裸が他人の目にさらされないよう注意を払うなど、家庭での入浴より更に慎重な対応が望まれます。

● 外出先・旅行先で子どもがトイレに行くときには、たとえ近くのトイレでも、慣れた場所であっても、幼児や小学生をひとりで行かせるのは避けましょう。場所や状況にもよりますが、特に女子は中学生以上でも大人が同行するほうが安全です。

性的な要素が全くないように考えられやすい時期で

すが、皮膚や粘膜周辺の生理的・身体的快感があると

言われています。3歳~5歳くらいになると、性別や

男女の身体の違いに興味を示すようになり、自分の

性器を刺激したときの快感に気づくこともあります。

思春期(小学校高学年から中高生)性機能・性的関心が急速に発達し、身体も著しく成長します。二次性徴を中心とした身体変化に男女とも

悩みや不安を抱きやすい時期です。女子には、乳房の発育、月経、発毛等があり、男子には声変わり、精通、

発毛等がみられます。それぞれに処置を教わったり、それまで必要なかった物を購入したりと養育者の

具体的な助けが必要になります。

また、そうした身体の変化から「男性である自分」「女性である自分」に直面します。その自分を肯定的に

受け止めるか否定的に受け止めるかは、身近な大人が子どもの身体の変化をどう感じ、どう説明してくれる

かによります。大人になりつつあることを喜ばしいと感じる気持ちが子どもに伝わるといいでしょう。ただし、

喜ばしいことであっても、羞恥心はあって当然であること、人前ではマナーがあることは時に応じて

具体的に伝えましょう。「(性的な発達や関心が)早すぎるのではないか」など養育者が戸惑う場合もあります。

そのような戸惑いを子どもに直接見せると、子どもは不安になったり成長を前向きにとらえられなかったり

するかもしれません。気になったら周囲の支援者や関係機関に相談してみましょう。

思春期後期には性衝動も強くなり、興味本位で性行動に走ることもあります。予期しない妊娠や性感染症の

リスクもあります。「寝た子を起こすな」という発想では、かえって子どもを危険にさらしたり傷つけたり

してしまう恐れがあります。子どもは友だちの話やインターネット、漫画など養育者と異なる情報源を持って

います。それらの情報には誤りや偏りもあるため、妊娠や避妊に関する知識や異性への配慮などを正しく

伝えていく必要があります。学校ではいつ頃どんなことを教えてくれるのか、学校と相談して力を借りる

こともできます。

自分自身に価値を感じられず寂しさや自己否定感、不安などを埋め合わせるために、性的な逸脱行為に走る

子どももいます。特に社会的養護のもとで生活する子どもは、そのような気持ちの背景に未消化な生い立ちの

問題がある場合もあります。子どもの心の中を察しながら、生活全体がバランスのとれた充実したものに

なるよう整えます。子どもと話ができる同性の大人の存在も貴重です。

学童期

小学校入学後の時期は、性的関心やそれに基づく

活動は落ち着きを見せ、学習や学校生活への

適応が新たな関心事となります。友達と手を

つないだりじゃれあったりするスキンシップに

より、友達と遊ぶ楽しさや信頼感を得ています。

参考文献・「ヒューマン・セクシュアリティ論ノート」  益田早苗 2015 大空社 ・「ボクとワタシの育児入学」 岡宏子 日本児童家庭文化協会・「小学生の父として母として」 立川市青少年問題協議会 2002 けやき出版

性 的 発 達性 的 発 達

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小学校・中学校

高校進学

各種・療育機関

運動・ことば・情緒などの発達に支援が

必要な子どもに、発達支援を行う機関です。

市区など行政が設置している施設、民間

団体が運営している施設があります。

[ 東京都の場合 ]

[ 教育~多様化する選択肢 ]

子ども家庭支援センター・区の子育て相談窓口など

東京都育成支援課

里親担当児童相談所

保健センター保健所など

チャレンジスクールエンカレッジスクール

特別支援学校高等部・就業技術科など

地域の情報を得るには、地域の相談機関を活用することもできます。

通級指導教室

特別支援学校

サポート校

特別支援学級

※区や市によって「教育相談所」、「スクーリングサポートセンター」、「教育相談室」など呼び方が違うかもしれません。 ※無料です。

「教育」とついていますが、学校や学習に関することだけでなく,心やからだ、友達や親子、

しつけや生活習慣の問題など、子どもの成長に関する相談ができます。臨床心理士など

専門職が、親子それぞれに対し継続して相談に応じ、心理検査を受けることも可能です。

希望すれば、学校などと情報共有をしてもらえます。

教育相談所

一人一人に合わせた個別または集団で学習指導。集団へ

の参加、社会生活、コミュニケーションなどのスキルを

身につけるコースがあることも多いようです。

発達に偏りのある子ども向け学習塾

心理系の学部を持つ大学では、心理相談室を 開設していることがあります。電話で

申し込 みをすると初回の面接があり、相談支援が必要だと判断されると継続相談と

なります。相談・検査は有料 (1 回 3,000 円程度 )。大学によって得意分野も開設

しているプログラムも異なります。 合いそうだと思ったら利用してみてください。

大学の心理教育相談室等など

発達障害の疑い、その対応などで受診する場合は,子どものこころの発達や行動上の問題に対応する

診療科である児童精神科を受診します。心療内科はストレスなどが関係する身体の病気(心身症)

を治療するところです。発達障害を専門にしているところ、思春期の課題や愛着の課題などを得意とする

ところなど、色々ありますので、児童相談所や地域の相談窓口などで、情報収集するといいかもしれません。

受診を希望する場合には、前もって児童相談所担当者に相談しましょう。

病院・クリニック

親向けのペアレントトレーニングや、子どもの仲間

遊び体験など、様々なプログラムがあります。児童

相談所の担当者と相談してみてください。

児童相談センター治療指導課

子どもの心理検査、心理的支援は担当

心理司が担当します。

子ども担当児童相談所

発達に課題のある子どもと社会資源

[ 市区町村 ]子どもの生活

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子どもと学び

第4章

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日々の生活から学べること

[ 自由に遊ぶ時間 ] 「子どもの仕事は遊び」とよく言われます。テレビゲームなどのデジタル、バーチャルの遊びではなく、リアルな遊びは子どもを様々な側面で成長させて

くれます。遊びは与えられるものではなく、子どもの自発性によるものであるというところにパワーがあります。

子どもは、遊びを通して想像力、創造力、集中力、チャレンジ精神、協調性を身に着けます。この経験はその

後の学習意欲に多大な影響を与えることになります。

[ お手伝い ] 2 ~ 3 歳くらいになると、子どもは大人を真似てお手伝いをしたがります。ゴミ捨てや靴を

揃えること、野菜を洗ったり、風呂掃除や洗濯物をたたんだりなど。大人がやった方が早いこと

も多いのですが、子どもはお手伝いによって、工夫することを学び、役に立つことの喜びや達成感を得ることができます。

一緒に楽しみながら、無理強いせず、出来の良し悪しを評価するのではなく「手伝ってくれて助かったよ」と伝えるなど

がポイントです。少し時間がとれるときは、一緒に料理をしてもいいかもしれません。野菜を切る時と肉を切る時の

感触の違い、ホットケーキの小麦粉とミルクを混ぜた時の変化、卵を割る時の繊細な手の力加減、さらには火加減と

焼き加減など、学習刺激が満載です。親子で一緒に作ったものを一緒に食べる達成感は子どもの自信にもつながります。

芸術に触れること

音楽、絵画など本物の芸術に触れることは、子どもの感性や表現力を養います。難しいことではなく、一緒に音楽を聴

いたり、絵を見たりする機会を持ち、その時の感情を大事な大人と共有できることは、子どもが自分の好きなものを見

つけたり、表現する喜びを感じる力を育みます。子どもの興味の方向が見えてきたら、芸術系の習い事を考え始める方

もいるでしょう。他の習い事同様、決して無理強いはせず、子どもが楽しめているかどうかを重視して選びましょう。

3歳頃までの習い事は、何かが上達することよりも、養育者と子どもが一緒に楽しめる時間を共有できることが大切です。

子どもにもよりますが、4 歳頃には「もっと上手にできるようになりたいな」という気持ちが少し芽生え始めます。出

来ないことに注目するのではなく、出来るようになって嬉しい、楽しいという気持ちを大切にすることで、習い事への

モチベーションを高めるようにしましょう。芸術に関わる習い事は、ピアノやエレクトーン、歌などの音楽、リトミッ

クやダンス、バレエ、絵画教室など様々です。

体を動かすこと、スポーツを楽しむこと

体を動かす習慣は基礎体力の向上だけでなく、心身の健康につながります。まずは一緒にお散歩する機会を増やすだけ

でもいいのです。歩くことは全身運動ですし、歩調を合わせて歩き、季節を楽しむことは子どもの五感を刺激してくれ

ます。特定の動きをするスポーツ以上に、普段の自発的な遊びの中で、走ったり、飛んだり跳ねたりくぐったりという

運動は、子どもの総合的な運動能力を高めてくれます。さらには前述したお手伝いも同様です。お盆を使って食べ物を

運ぶこと、お風呂掃除や窓の拭き掃除、バランス感覚を養うなど体の使い方を学ぶことができる機会になります。成長

に伴い、スポーツ系の習い事を始めることも検討される方も多いかもしれません。スポーツ系の習い事を通して、上達

する喜びを感じることで、自信につながり、集団競技であれば力を合わせて頑張る喜びも得られます。スイミング、空

手や合気道などの武道、体操、サッカーや野球、テニスなど様々です。子どもの個性、好みに合わせて選びましょう。

自然の中で学ぶこと

自然の中で遊ぶことから得られる学びは計り知れません。風を感じ、泥んこまみれになり、草木や虫に触れ、

子ども達は季節を五感で感じます。さまざまな刺激を通して、のびのびと主体的に遊びを見つけ、工夫をする

経験は子どもの感性と生きる力を育みます。子どもを自然の中に連れだして、大人も一緒にリフレッシュしましょう。

いつもは、行動に対して注意や禁止をする機会の多い大人も童心に戻って子どもと思い切り楽しめる機会を作る

ことは、子どもにとっても嬉しいことです。時間をかけて遠くへ足を運ばなくても、近隣の散歩道や公園からも

自然を感じることは可能です。公園などで開かれている「プレーパーク」なども活用できます。プレーパークは

既成の遊具のある遊び場とは異なり、子どもがあれこれ禁止されずに、のびのびと創造力、想像力を発揮して

遊びを作り出すことのできる遊び場として始まった活動です。都内には約 90 ヶ所が登録されていますので、「日本

冒険遊び場づくり協会」のホームページなどで確認してみてください。また、日帰りの野外体験プログラムや夏キャンプ、

冬スキーなど、さまざまな団体が企画をしています。子どもの成長と興味に合わせて検討してみましょう。

子どもにとって「学び」とは何でしょうか。子どもは、教科学習だけではなく様々な経験によって五感を通して刺激

を受け、学ぶことへの動機を育て、成長します。子どもが、自分らしい選択を重ね、時には困難にも立ち向かい、

いきいきと生きていけるようになるためには、私たちはどんなサポートができるでしょうか。

子どもと学び

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子どもにとって学びとは

子どもにとって

子どもが自発的に学ぶ力を身に着けるには、自分が大切な存在だと感じられる土台が必要です。近藤卓氏は、人が健康

に成長していくために必要な「自尊感情」には 2 種類あると述べています(2013)。「自分には価値がある」

「生まれてきてよかった」と感じられる基本的自尊感情と、他者との比較で「ひとより優れている」「自分は役に

立っている」などと思える「社会的自尊感情」です。周囲の期待に頑張って応えている子どもは、社会的自尊感情

が高いかもしれません。でも人との比較で成り立つ社会的自尊感情は失敗や挫折でしぼんでしまうこともあります。

たとえ社会的自尊感情が低い子どもでも、土台に基本的自尊感情をしっかり感じられていれば「自分は大丈夫」

と乗り越えることができると言います。

里親家庭で生活する子どもは、大切な大人との別れを幾度も経験しているので、基本的自尊感情を持ちにくいのは想像

できると思います。そのような子どもに社会的自尊感情を高めることにだけ焦点を当てたかかわりをすることは心配

です。近藤氏は、自分の存在を無条件で受け入れてくれる大人の存在を実感できるようなかかわりを土台に、大切な

大人との「共有体験」を積み重ねることが基本的自尊感情を高めることにつながると述べています。日々の生活の中で、

五感を使って、味わう、触る、嗅ぐ、聞く、見る、一緒に笑ったり、びっくりしたりと様々な体験、感情の共有を通して、

「こう行動していいんだ」「こういう感情を持っていいんだ」という安心を積み重ねることは、子どもが自発的に

やりたいことを選び、楽しみながら夢中で取り組む力を育んでくれるのです。

学びの土台としての自尊感情と共有体験

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習い事を選ぶときに子育てを始めてしばらくすると、自分たちがかかわるだけでは不十分なのではないか、子どもに習い事をさせた方

がいいのではと考える人は多いと思います。特に都心では、習い事の種類も多く、周囲で習い事をしている子ども

も多いため、将来を見据えて早く何か始めた方がいいのではと、焦りを感じることもあるでしょう。

■ 子どもがどんなことが好きなのかをよく観察して、子どもの目線に立って選びましょう。

■ 新しいことに慣れるのに時間がかかる子どもや、里親家庭に迎えられて間もない子どもにとっては、新規の体験を重ねすぎると、刺激が強すぎてストレスになることもあります。あれもこれもと詰め込めすぎないようにしましょう。

■ 施設にいた時の体験不足を補う必要があるのではと習い事の開始を焦る里親さんもいます。しかし、委託間もない子どもにまず必要なのは、里親さんとの安心で安全な愛着関係の形成です。里親子で参加できる水泳、リトミック、親子体操など、一緒に楽しめるものを探してみましょう。

■ 自分で希望した習い事でも、実際に行き始めると、「やめたい」「休みたい」と言い出す子どもも少なくありません。子どもの話をよく聞き、様子を観察して、何が嫌なのか見極めるようにしましょう。先生や友達になじめない、やっていることが難しくて理解できない、教室の建物が怖い、疲れている、里親さんから離れたくない…など、様々な理由が考えられます。「怠けている」と済まさずに、子どもの気持ちを丁寧に受け止めて一緒に対応を考えましょう。無理をさせずに辞めるという判断ができる場合もありますし、ちょっとした工夫や励ましで楽しめるようになることもあります。

■ 大好きな人の期待に応えたいという気持ちから、本心でなくても通いたいと言う子どももいます。特に里親家庭で生活する子どもは、心のどこかで「期待に応えられないと嫌われて見捨てられるかも」という不安を抱えている場合があります。子どもの気持ちを確認するときには、頑張りすぎていないか、大人の期待がプレッシャーになっていないか、という視点も大切です。

参考文献

近藤卓『子どもの自尊感情をどう育てるか そばセット (SOBA-SET) で自尊感情を測る』

ほんの森出版 2013 年

知的な発達を促すためには、まず日々のコミュニケーションの量と質が重要です。テレビやタブレットのように一方

通行のメディアではなく、相互作用が発生する人と人との言語、非言語のコミュニケーションを豊富に経験する

ことが、子どもの語彙を増やし、情緒を育てます。

また、日常的にできることでは、絵本の読み聞かせが非常に有効です。絵や言葉のリズムを楽しみながら、親子の

コミュニケーションが促進されます。様々な言語表現に触れることで語彙が増えます。また、場面の展開や登場

人物の気持ちを想像することで好奇心を刺激し、想像力も養われます。

子どもの知的発達を期待して、幼児教室の活用を検討する方もいるかもしれません。早ければ 0 歳から対象とした

幼児教室があります。出来るだけ幼いうちに脳を刺激することが良いと聞いて、子どもの可能性を伸ばしてあげたい

という期待から通わせる方も多いようです。実際、子どもに集中力がついたとか、語彙が増えたことで自分の気持ち

を言えるようになったと効果を実感する声も聞きます。教室によって達成目標や特徴は様々なので、体験レッスンを受ける

などして子どもの様子をよく観察し、楽しめているか、進んで宿題などに取り組めているかなどを確認してください。

ただし、視聴覚教材やプリント学習を使った学習は、子どもが自発的に探索して取り入れた学習とは異なり、子ども

の意思とは関係なく与えられた受け身の知的刺激です。こういった学習に頼りすぎてしまうことは注意が必要です。

ぜひ、子どもが自由な遊びから学ぶ機会も大切してあげてください。例えば、教室で提供される教材を通して、沢山

の魚の名前の漢字を読めるようになるかもしれません。でも、実際に川遊びをして、水の流れを感じながら、魚が

泳いでいる様子を目で追ったり、目の前で魚を焼いてもらって食べたりという実際の生き生きした体験は、たくさん

の感情が伴い、将来の生きる力に繋がる理解や自分で考える力の土台となり、子どもにとってかけがえのない財産に

なっていきます。

最近は国際社会を意識して早い時期からの英語教育をと英語教室を考える方も多いようです。子どもが興味を持って

楽しんで通える教室も増えています。

しかし、子どもによっては、日本語の語彙を身に着けることで精いっぱいです。母国語の基礎をきちんと身に着けてその

語彙を増やすことは、豊かな感情表現、論理的な思考、ゆくゆくは抽象的な思考を可能にします。母語である日本語の

土台ができる前に、英語などの第二言語を学習すると、混乱して母語の日本語の獲得が遅れてしまうことがあります。

乳幼児期の語学学習は、「英語って楽しいな」とか「外国の人と話したいな」という気持ちを育てることが大切です。

知的な発達を促すこと

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夢や目標について語ろう

大人から見れば、宿題や勉強をしないことに不安を感じ、「とにかくやらせなければ」という気持ちになるでしょう。

しかし、「勉強しなさい」と声をかけるだけでは、あまり効果はありません。また、無理にやらせようとすれば、

子どもの拒否も強くなり、「どうせやってもできない」となげやりになったり、「もう宿題は終わった」などと嘘を

ついて回避してしまうことも考えられます。表面だけ見れば、子どもたちは宿題をやらないことや、勉強ができない

ことを気にしていないようであっても、実はできないことに不安や劣等感を感じているかもしれません。

子どもの学びを支援する

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◆ 学校に行くだけで疲れてしまい、家ではゆっくりしたい。

◆ 勉強の仕方がわからない、宿題の内容が難しすぎる。

◆ 宿題が何だったのか覚えていない、メモをしていない。

◆ 勉強に関して注意や叱責を繰り返し受けた経験があり、その時の不快な気持ちがよみがえって、学習意欲が持ちづらくなっている。

◆ 集中するのが苦手。

◆ 勉強する意味が分からない。

◆ 勉強よりも気になることがある。(将来への不安など)

 これらは考えられる理由の一部です。

里親さんのもとで生活する子どもたちの中には、未来のことよりも自分の生い立ちという「過去」や、

いつまでここにいていいのかという「今」のことが不安な子どももいます。この点において、自分

自身の家庭でずっと生活してきた子どもたちとは配慮が異なります。子どもの「過去」や「今」

「これから」について知りたいことを確認しながら丁寧に話をしていかなければなりません。この部分

が安定しなければ気持ちが学習に向かないことも、理解できることです。自己肯定感が持ちづらいと

いう点も、このハンドブックの中で折に触れ説明しています。(4.子どもと学び『子どもにとって

学びとは』参照)このような点からも、子どもたちの学びの支援は、簡単に効果が出ることでは

ないとご理解いただけるかと思います。長い時間をかけて行うことであり、支える大人が諦めて

しまわないことが大事です。そして、少しずつ未来に目を向けられるよう、自分が得意なことや、

やってみたいこと、夢や目標について、前向きに話せる機会をつくってもらいたいと思います。

その中で、里親さん自身の子どもの頃のことや、出会ってきた友達のこと、あこがれだった人の

ことなど、いろんな話をしてあげてください。学びの先にある未来が、少しでも明るく、具体的

にあることは、子どもたちにとって大きな励みになるのです。

子どもにとって

乳児期から就学前までの子どもたちは、日々大人とのやりとりや、友達との関わりの中で学び、成長・発達していきます。

小学生になると、授業を受け、勉強が始まります。宿題もあります。学校に行き、慣れない環境のもとで集団生活を

するだけでも子どもたちにとっては大変なことです。「学校が大好き」な子どもは多いですが、「勉強が大好き」という

子どもはそれほど多くないでしょう。勉強が苦手な子どもたちには何らかの理由があり、大人の支援を必要としています。

子どもたちに必要な学びの支援

まず理解しておきたいことは、「こうすれば、すぐに、確実に勉強ができるようになる」という方法はない、と言うこと

です。なぜなら、勉強をするという行動に向かうまでに、生活環境の安定や里親さんとの関係、学ぶ目的の有無など、

さまざまな要因を確認し、そこを整えながら進めていく必要があるからです。

幼児期には、たくさん遊んで、経験することや物事を知ることが楽しいと思えることが、その後の学習意欲につながり

ます。この時期は、里親さんも子どもと一緒に遊び、「楽しかったね」「面白いね」と感情を共有しましょう。学童期には、

決まった時間と場所で学ぶ習慣を身につけます。

習慣が身につくまでは勉強前の声かけも必要ですが、ある程度できるようになれば宿題に取り組んでいるときや、

終えたときに「頑張っているね」「できたね」と認めてあげることの方が、学習意欲を保つにはずっと効果的です。

分からない問題があったときは、一緒に考えたり、調べる方法を教えたりと、子どもの能力に合わせたサポートが

必要です。考える過程に付き添い、子どもが自分で答えを出せるほうが達成感や満足感を得られます。勉強が難しく

なってくると、学習塾などで教えてもらったほうが良い場合もあります。塾の規模や目的 ( 進学か補習か )、集団授業

か個別指導かなど様々な違いはありますが、親以外の大人や友達に褒められたり、認められたりする経験は、子どもの

学習意欲に良い影響を与えます。特に友達同士で教えたり、教えられたりすることは、かけがえのない経験になりますし、

友達に教えるための学びは、より深いものになるでしょう。

確認したい学習環境と子どもの気持ち

確認が必要なのは、勉強しやすい環境が用意されているか、ということです。

固定された場所で、周囲にテレビなど興味をひくものがなく、特に低学年の場合は大人に支援を求めることができる

ように、大人の目が届く場所であると良いでしょう。

家庭学習に取り組めない理由を考えてみることも必要です。理由は一つではなく、色々考えられるでしょう。例えば、

下記のような理由が考えられます。

子どもと学び4

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里親家庭には子どものお小遣いとして、「生活訓練費」が支給されています。自立後の社会生活の

ためにはお金を使う体験が必要で、「生活訓練費」はそのためのお金です。

学年に応じて一定金額が支給されますが、「あれでは足りていない。もっと使っている」という家庭

もあれば「全額お小遣いとして使わせたら多すぎる」という家庭もあるようです。

実際に子どもが使う金額や与え方は、里親の考え方や子どもの年齢・生活(たとえば地元の公立

学校に通っているか、離れた私立学校に通っているか)によっても変わってきます。どこまで

お小遣いから出すのか、お小遣いとは別に里親が払うのか、そのルールによっても足りるか足り

ないかは違ってくるでしょう。

まずはそういった基準を家族で話し合って決め、子どもとも共有しましょう。

毎月のお小遣いの使い方を考えコントロールすることは、将来自分で家計をやりくりする練習になり

ます。自由に使ってよいことにした金額に関しては、使途がだいたいわかっており問題ない範囲で

あれば、細かく口出ししなくてよいでしょう。もらうとすぐに全部使ってしまう場合には、1か月分

を一度に渡すのでなく2週間もしくは1週間ごとに分けて渡し、使い方を短いサイクルで一緒に確認

するという手助けが必要かもしれません。

また、お手伝いをしたら1回いくら、テストの点が良かったらいくら、などのルールでお金を与える

家庭もあります。確かに、子どもの励みになったり良い習慣がついたりするメリットもあるかも

しれませんが、報酬が大きな意味を持ちすぎると「お金をもらえなければやらない」という発想

になりデメリットとなる場合があります。

お年玉、誕生日や入学祝いなど、里親以外の人からの臨時収入が入る場合もあります。多額であるとか、

子どもの所持金や使い道を里親が把握できなくなるようなことがあれば、子どもに直接お金や高価

な品をあげるときは里親に一言知らせてくれるよう周囲にお願いしておきましょう。

子どもとお金のこと

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お小遣い

児童手当

高校生になるとアルバイトをする子どもも多くいます。進学費用や自立後のための蓄え、お金を得る

苦労を実感すること、自分に合った職業・職場を考える契機になること、職業体験として技能を習得

できること、一般社会での人間関係や常識を学ぶことなど、アルバイトによりさまざまなことが期待

されます。一方で、アルバイトに時間を費やすことで勉強がおろそかになる、自由になるお金が

増えることで金銭管理が難しくなる、帰宅が遅くなる、交友関係が変わるなど、子どもの生活を乱す

リスクがないわけではありません。アルバイトにどのくらいの時間を費やすか、どんなアルバイトが

向いているか、報酬はどう使うか、周辺環境が子どもに適切かなど、里親子でよく相談して始めましょう。

年齢が上がり行動範囲が広がると、友人とのお金のやりとりが生じる機会もあります。友人であって

もお金の貸し借りはしない、他人にお金をあげることももらうこともしないなど、トラブル防止に気

を配りましょう。

金銭感覚は育つ過程で自然と身につくものです。何かを買うときにいくらだったら高いと感じるか、

生活の中でどんなことにお金を使いたいか、家庭によって価値観や基準は違います。里親家庭から

自立して暮らすようになったときのことも見据え、将来自分の身の丈に合った生活が送れるよう

「お金」とのつき合い方を日々培うことが大切です。

アルバイト

子どもにとって将来自立した人間として生きていく際に、「お金」に関することは大切な問題です。

子どもはお金の価値、使い方、管理のしかたなどを自立までに学ぶ必要があります。

日常生活では、値段が高い安い、無駄づかいをしない、将来のために貯金するなど

お金についていろいろなことを学んで育ちますが、自分のお小遣いを計画的に使う

ことやきちんと保管することが難しい子どももいます。

委託児童にかかる子ども手当(平成23年10月~平成24年3月)・児童手当(平成24年4月

以降)については、厚生労働省令に則り管理しなければなりません。里子養育に必要な費用は基本

的に養育委託費でまかなわれています。したがって、児童手当は子どものためにどうしても必要

だが養育委託費から捻出できないものに限って使うことになります。

児童手当は委託児童の貴重な財産です。自立の際やその後の生活にお金が必要なことを考えると、

極力口座に蓄えておくことが望ましいでしょう。児童手当のお金を使用したい場合には、ひとまず

児童相談所担当者へ相談しましょう。

子どもと学び4

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「子どもにとって大切なこと」を軸にまとめました。

とはいえ新しく家族になる喜びと難しさは、まだまだ

奥が深く、足りないところもたくさんあります。これ

からも皆さんと一緒に考えながら、この2冊をもっと

充実したものに育てていきたいと考えています。ご意

見をお聞かせいただけたら嬉しいです。

社会福祉法人二葉保育園二葉乳児院 二葉・子どもと里親サポートステーション

平成 29 年度 植山つる児童福祉研究奨励基金(研究 B・専門研究) 助成

「児童福祉施設等 里親支援機関の専門性を活かした里親養育支援のあり方に関する研究」

執筆者あとがき 研究者・執筆担当

分担執筆

青山学院女子短期大学 教授 横堀 昌子

学識者

「子どもと里親研究会」に参加していただきました

里親支援専門相談員のみなさま

里親交流支援員のみなさま

地域子育て支援センター二葉のみなさま

二葉乳児院のみなさま  他

長田 淳子 :

河村 千代 :

今福 アカネ :

原 裕子 :

宮内 珠希 :

鷲尾 彩織 :

第1章・2章「里親さんと出会った頃の子どもの気持ち」「子どもと食事」「子どもの健康」・第 3 章「子どもと本」

第2章「子どもを迎えたら」「トイレトレーニングや排泄のこと」「子どもと安全」・第3章「子どもと遊び」第4章「子どもの学びを支援する」

第2章「子どもと安全」

第3章「子どもと遊び」「子どもと本」

第2章「子どものグリーフに寄り添うこと」第3章「子どもの発達とその支援」

「発達に課題のある子どもと社会資源 MAP」・第4章「子どもにとって学びとは」

第3章「子どもの発達とその支援」・第4章「子どもとお金のこと」

宮内 珠希 | 社会福祉士

里親さんや子どもたちに教わってきたたくさんのこと

から、2冊のハンドブックができました。不十分なと

ころもあると思いますが、この中に書かれたことのひ

とつでも、里親さんの心に残り、そして子どものため

になることがあったらいいなと思います。

鷲尾 彩織 | 臨床心理士 | 保育士

里親養育に関係者としてかかわる中で学ばせていただ

いたことをもとに書かせていただきました。子どもの幸

せを願う気持ちを感じられる環境の中で、取り組ませて

いただけたことをとても感謝しております。

今福 アカネ | 臨床心理士

2007 年に、家庭的養護推進モデル事業の一つとして、

里親勉強会テキスト「すくすく」「のびのび」を作成し

ました。あれから 10 年を経て作ることとなったハンド

ブック。そして、支援機関事業を二葉乳児院が受託して、

10 年の節目となる年に発行できたことは、私たちの振

り返りと、これまでの取り組みのまとめとして大切な機

会となりました。これまで、たくさんの子どもたちと里

親さんから教えてもらったことを少しでもこのハンド

ブックに紡いでいけたらと思いました。

どうか、子どもと里親さんを支えるひとつになりますよ

うに。

長田 淳子 | 臨床心理士 | 精神保健福祉士| 保育士

このハンドブックを手に取ってくださって、ありがと

うございます。これからも里親さん、関係者の皆さん

とつながりながら、さらに「子どもにとって」大切な

ことを考えていけたらと思います。

河村 千代 | 社会福祉士 | 保育士

保育士として子どもたちと関わるうえで、自身が大切

にして関わってきたことや学んだこと、子どもたちが

夢中になって楽しそうに遊んでいたことを思い浮かべ

ながら書きました。不十分な点もあると思いますが、

少しでもお役に立てたらうれしいです。

原 裕子 | 保育士

子どもと里親のためのサポートハンドブック2

発行:社会福祉法人二葉保育園二葉乳児院 二葉・子どもと里親サポートステーション

〒160-0012 東京都新宿区南元町4番地  TEL:03-3359-4578 FAX:03-3359-4596

発行日:2018月10月初版・2019年2月一部改訂