トルコの石油・エネルギー産業jpec レポート 4 3. 石油 3.1. 製油所...

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JPEC レポート 1 平成 26 8 26 トルコの石油・エネルギー産業 米国 DOE・エネルギー情報局( EIA)のレポ ートを主なベースとして、トルコのエネルギー 産業について紹介する。 1. トルコの位置と地勢 1 にトルコの位置を示す。トルコはマルマラ海を挟んでアジア大陸とヨーロッパ大陸 に跨っている。アジア側のアナトリア半島全体と欧州側のバルカン半島東端の一部を領有 し、北は黒海・西にエーゲ海・南は地中海に面し、アジア側で 5 ヶ国(グルジア、アルメ ニア、イラン、イラク、シリア)・欧州側で 2 ヶ国(ギリシャ、ブルガリア)と接している。 首都アンカラはアジア側に位置する。 1 トルコ概略地図 トルコの国土は「トルコの海峡( Turkish Straits 、図 3 )」とマルマラ海によってアジア側 と欧州側に隔てられ、国土の約 95%および人口の 90%弱がアジア側にある。当該海峡は世 界で最も船舶往来の激しい水路の 1 つで、海上交易の要衝地帯となっている。「トルコの海 峡」とはボスポラス海峡とダーダネルス海峡を総称するもので、ボスポラス海峡は黒海と マルマラ海を繋ぐ長さ 30km、幅 700m の海峡で、トルコ最大の都市イスタンブールを貫い 2014 年度 1 10 0 1. トルコの位置と地勢.................... 1 2. トルコの一般情報 ........................ 3 3. 石油................................................... 4 4. 天然ガス.......................................... 9

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JPEC レポート

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平成26年8月26日

トルコの石油・エネルギー産業

米国DOE・エネルギー情報局(EIA)のレポ

ートを主なベースとして、トルコのエネルギー

産業について紹介する。

1. トルコの位置と地勢

図1にトルコの位置を示す。トルコはマルマラ海を挟んでアジア大陸とヨーロッパ大陸

に跨っている。アジア側のアナトリア半島全体と欧州側のバルカン半島東端の一部を領有

し、北は黒海・西にエーゲ海・南は地中海に面し、アジア側で5ヶ国(グルジア、アルメ

ニア、イラン、イラク、シリア)・欧州側で2ヶ国(ギリシャ、ブルガリア)と接している。

首都アンカラはアジア側に位置する。

図1 トルコ概略地図

トルコの国土は「トルコの海峡(Turkish Straits、図3)」とマルマラ海によってアジア側

と欧州側に隔てられ、国土の約95%および人口の90%弱がアジア側にある。当該海峡は世

界で最も船舶往来の激しい水路の1つで、海上交易の要衝地帯となっている。「トルコの海

峡」とはボスポラス海峡とダーダネルス海峡を総称するもので、ボスポラス海峡は黒海と

マルマラ海を繋ぐ長さ30km、幅700mの海峡で、トルコ最大の都市イスタンブールを貫い

JJJPPPEEECCC レレレポポポーーートトト 2014 年度 第第 1100 回回

1. トルコの位置と地勢 .................... 1

2. トルコの一般情報 ........................ 3

3. 石油 ................................................... 4

4. 天然ガス .......................................... 9

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ている。一方、ダーダネルス海峡はマルマラ海と地中海を繋ぐ長さ 68km、幅 1.2km の海

峡である。

アジア側のアナトリア半島は中央の広大な高原と海沿いの狭小な平地からなり、高原の

東部にはチグリス川、ユーフラテス川の源流がある。トルコは数多くの断層を持つ地震国

であり、近年(1999年)のイズミット地震でマルマラ海沿岸の人口密集地が大きな被害を

受けた。

図3 「トルコの海峡」の概略地図

(赤:ボスポラス海峡、黄:ダーダネルス海峡)

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2. トルコの一般情報

2.1. トルコの主な一般情報

トルコの主な一般情報を表1に示す。

表1 トルコの主な一般情報

通称国名 トルコ

正式国名及び国旗 トルコ共和国

独立年 1924年(オスマン王家を追放してトルコ共和国を建国) 政体 共和制 首都 アンカラ 人口 7,667万人(2013年 国家統計庁推定) 公用語 トルコ語 通貨 トルコ リラ(TRY)

名目GDP 8,272億ドル(2013年実績)

2.2. トルコの各種エネルギー資源に関する概要

トルコの主なエネルギー情報を表2に示す。トルコは成長中のエネルギー消費国として、

世界のエネルギー市場における重要性が増してきている。ここ数年、トルコのエネルギー

需要は急速に増加している。この傾向は将来も続くであろう。過去3年間、トルコは経済

協力開発機構(OECD)加盟国中で最も速いエネルギー需要の成長を遂げた国となった。

国際エネルギー機関(IEA)は2015年から2030年まで年率およそ4.5%で成長を続けるだ

ろうと見ている。

さらに、トルコはエネルギー資源の各地域への移送拠点(Energy Transit Hub)としても

益々重要性が増してきている。現在、トルコはロシアとカスピ海地域および中東から欧州

への石油と天然ガス供給の通過地となっている。同時に、「トルコの海峡」を経由して欧州

市場へ送られるロシアとカスピ海地域からの石油のタンカー輸送量が増加している。さら

に、トルコの地中海沿岸のセイハン石油基地はイラク北部からの石油輸出およびアゼルバ

イジャンからの石油と天然ガス輸出に有効な役割を演じている。

表2 トルコの主なエネルギー情報

石油確認埋蔵量 2.95億バレル 石油の輸出入 純輸入国 原油精製能力 71.4万BPD 製油所数 6

天然ガス推定埋蔵量 68億m3 天然ガスの輸出入 純輸入国

特記事項 エネルギー資源小国ではあるが、エネルギー資源の各地域へ

の移送拠点としての重要性が増してきている。

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3. 石油

3.1. 製油所

2014年1月時点でトルコは6製油所を保有し、原油精製能力合計は71.4万BPDである。

各製油所の概要は表3に、製油所とパイプラインの場所を図3に示す。

Turkish Petroleum Refineries Corp.(TUPRAS)がトルコの有力な石油精製事業者で、トルコ

全体の精製能力の85%超を占有している。同社は又、トルコ全体の石油製品備蓄能力の約

59%を保有している。政府は1990年から国有製油所の株式を民間企業に売却し始め、2005

年に所有していたTurkish Petroleum Refineries Corp.(TUPRAS)の株式の51%をKoc-Shell

合同企業体に競売した。因みに、Koc-Shell合同企業体はKoc Holding、Aygaz、OPET、Shell

Overseas Investment、Shell Company of Turkeyで構成されている。

トルコには2本の国内向け石油パイプラインがある。1本は「Ceyhan-Kirikkaleパイプラ

イン」(全長447km、輸送能力およそ10万BPD)で、セイハン石油基地からトルコ中部の

Kirikkale 製油所へ原油を送っている。もう 1 本は「Batman-Dortyol パイプライン」(全長

515km)で、Batman エリアで産出した国産原油を地中海沿岸の Dortyol 石油基地へ送って

いる。

表3 トルコ国内の製油所と能力

原油精製能力

(BPD) 操業会社

Mersin製油所 95,000 Anadolu Tasfiyehanesi AS Narli製油所 6,000 Ersan Petrol Sanayii AS Izmir製油所 226,440 Turkish Petroleum Refineries Corp.(TUPRAS)

Batman製油所 22,015 Turkish Petroleum Refineries Corp.(TUPRAS) Izmit製油所 251,600 Turkish Petroleum Refineries Corp.(TUPRAS)

Kirikkale製油所 113,220 Turkish Petroleum Refineries Corp.(TUPRAS)

6製油所合計 714,275

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図3 トルコの主な製油所、パイプライン

3.2. 石油関連の組織と法人

トルコではエネルギー天然資源省(MENR)や石油事務総局(General Directorate of

Petroleum Affairs)を含む多くの機関が石油分野に関わっている。エネルギー天然資源省は

エネルギー政策の立案と実現に責任があり、石油事務総局はMENR内の主要な政策作成機

関で、且つ石油と天然ガス分野における探査と生産活動を規制している。他の取り締まり

機関として、石油と天然ガス市場に対する独立した監督機関であるエネルギー市場監督局

(Energy Markets Regulatory Authority)、市場での吸収合併を規制する競合監視局

(Competition Authority)、国の開発計画の準備を支援し且つ公共投資プロジェクトを評価し

資金の充当およびその実行を監視する国家計画機構(State Planning Organization)などがあ

る。

トルコでは数多くの国際企業が活動しているが、石油の探査と生産にトルコ国営石油ガ

ス会社(Turkiye Petrolleri Anonim Ortakligi: TPAO)が最優先権をもっている。且つ上流分

野の事業へのいかなる外国投資もTPAOとの合弁に限定される。

3.3. 石油の生産、消費、輸入

トルコの石油生産量は 1991 年にピーク(8.5 万 BPD)に達し、その後毎年減少し 2004

年にはボトム(4.3 万BPD)まで落ちた。2004 年以降は毎年僅かながら上昇しているもの

の、国内消費量には遥かに及んでいない(図4参照)。

図4のとおり、2013年の石油および他の液体燃料の消費量合計は73.48万BPDであった。

原油消費量の90%以上およびかなりな量の石油製品を輸入に依存している。EIAはトルコ

の原油輸入量は今後 10 年間に倍増すると予測している。図 5 のとおり、2012 年の輸入原

油の多くはイラン産(35%)で、嘗て最大であったロシア産(10%)はイラク産(17%)

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とサウジアラビア産(13%)に押され第4位に落ちている。

トルコは原油の純輸入国であるのに加え、国内の精製能力が不足しているため石油製品

についても純輸入国である。2012年実績では製油所能力合計は燃料油の内需の52%、LPG

の内需の21%しか満たしていない。

図4 トルコの石油と他の液体燃料の消費量と生産量(2001年~2013年)

図5 トルコの原油供給元 (2012年)

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3.4. 石油の輸送

3.4.1. 「トルコの海峡」を通過する石油

トルコは石油を豊富に産する旧ソ連諸国および中東諸国との交差路に位置し、欧州諸国

への石油の移送拠点として戦略的に重要な役割を演じている。

石油タンカーのチョークポイントとなっている「トルコの海峡」の混雑状況はロシアが

一部バルト海沿岸の港からの出荷にシフトしたため、2004年のピーク(340万BPD)から

2006 年には 260 万BPD に減少したが、近年アゼルバイジャンとカザフスタンからの原油

輸出量が増え、再び通過量が増加している。2013 年には「トルコの海峡」を 300 万 BPD

の石油(原油250万BPD、石油製品50万BPD)が通過した。

3.4.2. 「トルコの海峡」の迂回ルート

過去10年間に亘り「トルコの海峡」の渋滞を緩和するため各国(トルコ、ブルガリア、

ルーマニア、ウクライナ)が迂回ルートを探し求め、数多くの「トルコの海峡迂回オプシ

ョン」が検討されてきた。現時点において「Baku-Tbilisi-Ceyhan(BTC)パイプライン」が

唯一実現したルートである(図3参照)。

他にも検討されたが実現していない計画が数多くあり、その概要は次のとおりである。

・ Samsun-Ceyhanパイプライン

トルコの黒海沿岸のサムスン(Samsun)港から地中海沿岸のセイハン港までのパイ

プライン。サムスンの受入基地とセイハンの輸出基地および備蓄基地を含む全長

563km のパイプライン(当初輸送能力 100 万BPD、最終的に 150 万BPD まで増強可

能)である。

・ Kiyikoy-Ibrikbabaパイプライン

黒海沿岸のKiyikoyからエーゲ海沿岸のIbrikbabaまでのパイプライン(輸送能力120

万BPD)。6年以上前に計画されたがほとんど進捗していない。

・ Agva-Izmitパイプライン

黒海とTurkish Petroleum Refineries社(TUPRAS)のIzmit製油所を結ぶパイプライン。

・ イスタンブール運河

トルコの欧州側(バルカン半島)に黒海とマルマラ海をつなぐ長さ 48km の水路を

造成し、ボスポラス海峡のみを迂回するもの。事業規模と関連費用からみて望ましく

なく実現性の最も低いオプションである。

・ Kurdish Regional Government(KRG)パイプライン

イラクのTaq Taq 油田から Fishkhabur までの独立したパイプラインを経由してトル

コへ延伸するパイプライン。イラクのクルド自治政府は既に当該パイプライン(輸送

能力 30 万 BPD)を完成したが、イラク政府はトルコに対しイラク政府の公式承認な

しにクルド自治政府から石油を買えば起訴すると脅迫している。

3.4.3. 国際石油パイプライン

現在、トルコ国内を2本の国際石油パイプライン、「Baku-Tbilisi- Ceyhan(BTC)パイプ

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ライン」と「Kirkuk-Ceyhan パイプライン」(図 3 参照)が走っている。これらのパイプラ

インを経由してトルコの地中海沿岸のセイハン石油基地に送られた原油はその後セイハン

港でタンカーに積み込まれ欧州市場に輸出されている。

「Baku-Tbilisi-Ceyhan(BTC)パイプライン」は全長1,770kmのトルコで最長のパイプラ

インで輸送能力は120万BPDである。アゼルバイジャンのアゼリ、チラグ、グナシリ油田

からの原油をグルジア経由でセイハンに移送している。2008年からカザフスタン産原油も

当該パイプライン経由で出荷されている。

一方、「Kirkuk-Ceyhan パイプライン」はイラクのキルクークからトルコのセイハンに至

る全長 965km の 2 本の併設配管からなるパイプライン(輸送能力 165 万 BPD)で、イラ

ク北部油田産の原油を運んでいる。しかし現在、2 本の併設配管のうち 1 本しか稼動して

おらず、最大輸送能力は40万BPDに落ちている。頻繁な当該パイプラインへのテロ攻撃

が稼動に混乱をもたらし、2012年における実際の輸送量は僅か30万BPD程度であった。

3.4.4. セイハン石油基地

トルコはセイハンをエネルギーハブとして確立しようとしている。同国を通過する石油

の通過料からの収益に加え、複数の民間の投資家がセイハン石油基地にいくつかの製油所

を建設することも承認している。現在、セイハン港はカスピ海地域の原油とキルクークか

らのイラク原油を輸出する重要な出口になっている。同港には4本の原油積み出しバース

があり、外側の2本のバースは最大30万DWT(載貨重量トン)級のタンカーに対応でき、

内側の 2 本は 15 万 DWT 級のタンカーまで対応できる。2012 年、セイハン石油基地から

アゼリ原油60万BPD超とイラク原油およそ30万BPDが欧州諸国と米国へ輸出された。

近年、セイハン石油基地は原油に加えイラク産の輸出用コンデンセートの受入れを開始

した。2012年9月、クルド自治政府はコンデンセートの初荷(10.5万バレル)をローリー

車でセイハンに運び込んでいる。

3.5. 石油の探査

2014年1月時点のトルコの石油確認埋蔵量は2億9,500万バレルと僅かである。その大

部分は同国の南東部に埋蔵されている。米国地質調査所(USGS)はトルコ南部の内陸に

未発見石油資源が約 4 億 3,800 万バレル存在すると見積もっている。ただし、これらは技

術的には採掘可能だが経済的に実行可能かは不明瞭であるとしている。

オフショアの堆積層がトルコの石油供給源になるかもしれない。エーゲ海の海底にかな

りの石油資源が眠っていると見られている。けれども、この海域がギリシャとの間の領土

論争が進行中のため確認されていない。黒海も又、トルコにとって重要な石油生産の可能

性を秘めている。トルコ国営石油ガス会社(TPAO)が黒海のトルコ水域を探査し、70~

100 億バレルの石油の存在を推定している。同社は黒海に加え、地中海での炭化水素資源

開発も計画している。一方、エネルギー天然資源省は2016年までに黒海での石油の商業生

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産を開始したいとしている。

4. 天然ガス

4.1. 天然ガスの確認埋蔵量

2014 年 1 月時点のトルコの天然ガス推定埋蔵量は 68 億m3 と僅かである。図 6 のとお

り、天然ガス生産量もほんの僅かで、自国産は国内消費量の 1%に過ぎない。2012 年に 6

億m3の天然ガスを生産したが、内需を満たすため専ら輸入に依存している。過去10年間、

トルコの天然ガス消費量は急速に伸びている。2009年に一時的に減少したが、2012年には

453 億 m3 のピークを記録した。同時に、エネルギーミックスにおける天然ガスのシェア

が石油を上回り、今や天然ガスが最も重要な燃料となっている。

図7のとおり、2011年に発電分野が天然ガス消費量合計の半分弱(48%)を占め、産業

分野は21%、家庭用は20%を占めた。電力消費量の上昇と新設される発電所が需要を喚起

し続けるため、発電分野の天然ガス消費量の伸びは今後も続くと予想される。

図6 トルコの天然ガス生産量と消費量 (2001~2013年)

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図7 トルコの分野別天然ガス消費割合 (2011年)

4.2. 天然ガスの輸入

4.2.1. 天然ガスの輸入元

図8のとおり、2012年にト

ルコは輸入天然ガスの56%を

ロシアから、18%をイランか

ら受け入れた。そのほかにア

ゼルバイジャン、アルジェリ

ア、カタールなどからも輸入

している。ロシア、イラン、

アゼルバイジャンからはパイ

プライン経由で受け入れてい

る。トルコには LNG 受入基

地が 2 ヶ所あり、5 ヶ国(ア

ルジェリア、ナイジェリア、

カタール、エジプト、ノルウ

ェー)から LNG を輸入して

いる。2012 年にはLNG が天

然ガス供給総量(国産天然ガ

ス+輸入天然ガス)の16%を

占めた。

図8 トルコの天然ガス供給元 (2012年)

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4.2.2. 参入している天然ガス企業

2007 年に地中海地域からトルコ東部のエルズルムに至る「Baku-Tbilisi-Erzurum(BTE)

ガスパイプライン」(図9参照、South Caucasusガスパイプラインとも言う)が開通し、カ

スピ海地域からトルコ国内へ天然ガスが送気され始めた。2012年、トルコは当該ガスパイ

プライン経由でアゼルバイジャンから天然ガスを34億m3輸入した。しかし、トルコの天

然ガス輸入インフラはしばしばテロリストの攻撃目標になっており、ガス供給が停止する

ような危険性を孕んでいる。「Baku-Tbilisi-Erzurum ガスパイプライン」も攻撃対象となり

2012年には2回停止した。

図9 右上の黒線は開通した「Baku-Tbilisi-Erzurumガスパイプライン」

赤線は不採用となった「Nabuccoガスパイプライン」計画

「Baku-Tbilisi-Erzurumガスパイプライン」の開通はトルコがカスピ海地域産天然ガスを

欧州諸国に送るエネルギーハブとしての足掛かりを得たことになる。2002年に欧州諸国の

ロシア産天然ガスへの過度の依存を避けるため、ロシアを外したルートで計画開始された

トルコからオーストリアまでの「Nabucco ガスパイプライン」計画(図 9 参照)は競合に

負け不成功に終わった。開発企業体は2013年6月に「Nabuccoガスパイプライン」の代わ

りに競合プロジェクトであるトルコからギリシャとアルバニアを経てイタリアに至る

「Trans Adriaticガスパイプライン(TAP)」(図10参照)を選択した。配管長がより短く建

設費が安いことが最大の選定理由のようである。同時に、トルコとアゼルバイジャンは

「Trans Anatolianガスパイプライン(TANAP)」敷設で合意しており、これらのプロジェク

トは 2014 年に着工され、2018 年からアゼルバイジャン産天然ガスを欧州諸国へ送り始め

る予定となっている。

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図10 「Trans Adriaticガスパイプライン(TAP)」の経路図

一方、ロシア産天然ガスのほとんどは「Blue Streamガスパイプライン」(図11参照)を

経由して輸入されている。2012年、トルコは当該パイプラインを経由してロシア産天然ガ

スを255億m3輸入した。

図11 「Blue Streamガスパイプライン」の経路図

2012年、トルコは隣国イランの最北部Tabrizからトルコ東端Agri県のDogubayazitに至

る「Tabriz Dogubayazitパイプライン」を経由してイラン産天然ガスを82億m3輸入した。

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当該パイプラインに対するクルド反政府軍による攻撃が増え、2012年には何回も停止して

いる。

<出典および参考資料>

(1) 米国DOE、エネルギー情報局 (EIA)レポート 、Turkey Country Analysis Brief、

http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=TU

(2) Wikipedia 、Turkey http://en.wikipedia.org/wiki/Turkey

(3) Wikipedia 、Turkish Straits http://en.wikipedia.org/wiki/Turkish_Straits

(4) Wikipedia 、Ceyhan http://en.wikipedia.org/wiki/Ceyhan

(5) Wikipedia 、Baku-Tbilisi-Ceyhan pipeline

http://en.wikipedia.org/wiki/Baku%E2%80%93Tbilisi%E2%80%93Ceyhan_pipeline

(6) Wikipedia 、Oleoduc Bakou-Tbilissi-Ceyhan

http://fr.wikipedia.org/wiki/Ol%C3%A9oduc_Bakou-Tbilissi-Ceyhan

(7) Wikipedia 、Kirkuk-Ceyhan pipeline

http://en.wikipedia.org/wiki/Kirkuk%E2%80%93Ceyhan_Oil_Pipeline

(8) Wikipedia 、Mersin Province

http://en.wikipedia.org/wiki/Mersin_Province

(9) Wikipedia 、Kahramanmaras Province

http://en.wikipedia.org/wiki/Kahramanmara%C5%9F_Province

(10) Wikipedia 、Narli http://en.wikipedia.org/wiki/Narl%C4%B1

(11) Wikipedia 、Izmir Province http://en.wikipedia.org/wiki/Izmir_Province

(12) Wikipedia 、Batman Province http://en.wikipedia.org/wiki/Batman_Province

(13) Wikipedia 、Kocaeli Province http://en.wikipedia.org/wiki/Kocaeli_Province

(14) Wikipedia 、Kirikkale Province

http://en.wikipedia.org/wiki/K%C4%B1r%C4%B1kkale_Province

(15) Wikipedia 、South Caucasus Pipeline

http://en.wikipedia.org/wiki/Baku-Tblisi-Erzerum_Pipeline

(16) Wikipedia 、Nabucco Pipeline http://en.wikipedia.org/wiki/Nabucco_pipeline

(17) Wikipedia 、Blue Stream http://en.wikipedia.org/wiki/Blue_Stream

(18) INVEST IN TURKEY

http://www.invest.gov.tr/en-US/infocenter/news/Pages/270613-tanap-to-connect-to-tap.aspx

(19) Wikipedia 、Trans Adriatic Pipeline (TAP)

http://en.wikipedia.org/wiki/Trans_Adriatic_Pipeline

(20) Wikipedia 、Trans Anatolian Pipeline (TANAP)

http://en.wikipedia.org/wiki/Trans-Anatolian_gas_pipeline

(21) 外務省ホームページ、各国情勢 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html

以上

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本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析

したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected] までお願いします。

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次回の JPECレポート(2014年度 第11回)は

「環境保護の最前線へと押し出される中国の製油所」

を予定しています。