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エネルギー分野の長期展望 東洋大学 経済学部

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エネルギー分野の長期展望

東洋大学 経済学部

小 川 芳 樹

報 告 内 容

1.世界的エネルギー需給の見通し

2.アジアのエネルギー需給の見通し

3.アジアの石油需要増と液体燃料の供給源

4.エネルギー効率改善の重要性

5.自動車用エネルギーの今後の展望

6.消費地としてのアジアの課題

1.世界的エネルギー需給の見通し

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030

(石油換算億トン)

DOE-Ref

DOE-High

DOE-Low

IEAIEEJ

実績

世 界

アジア

20.0%

33.5%

36.2%

最近の長期エネルギー需給見通し

(出所)

IEA2004: World Energy Outlook 2004, DOE2004: International Energy Outlook 2004IEEJ2004: Asian Energy Outlook 2004

1‐1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1971 1986 2002 2010 2020 2030 2010 2020 2025 2010 2020 2030

(%)

実  績 IEA見通し 米DOE見通し EU見通し

石油

石炭

ガス

原子力

水力他

各長期見通しにおけるエネ源構成

1‐2(出所)IEA2004, US.DOE2004, EU2003のデータから作成

各長期見通しにおけるCO2排出量

(出所)IEA2002, US.DOE2003, EU2003のデータから作成

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1971 1986 2002 2010 2020 2030 2010 2020 2025 2010 2020 2030

(10億t-CO2)

実  績 IEA見通し 米DOE見通し EU見通し

先進国

移行国

途上国14.0

19.9

23.6

27.8

33.2

38.2

27.7

33.5

37.1

29.4

36.7

44.5

1‐3

2030年までのエネ供給構造の変化は?

• 過去の対応で過度の石油依存からはすでに脱却⇒ 世界の石油依存も73年の46%から2002年の36%へ低下⇒ 日本の石油依存は73年の78%から2003年の49%へ低下⇒ 石油は得意分野の役割に特化 今後も依存度は増加せず

• 2030年まで継続が見込まれる化石燃料の時代⇒ IEA、米国DOE、EUと異なる機関が2030年まで長期見通し⇒ 現状から2030年まで化石燃料のシェアが80%以上で推移⇒ 石油のシェアも2030年まで34~39%で推移し現状と変化なし

• 適材適所のエネ・ミックス実現が基本の考え方⇒ 特定のエネ源を排除する強い考え方はグローバルにみてない⇒ 経済成長、エネ安全保障、環境保全いずれを重視しても同じ⇒ 原油価格高騰は石油特定の問題ではなくエネ全体の問題

1‐4

2.アジアのエネルギー需給

の見通し

世界とアジア途上国のエネ需給の推移と見通し

(出所)IEA, “World Energy Outlook 2004” のデータから作成

0

2

4

6

8

10

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18

1971 1980 1990 2002 2010 2020 2030

(石油換算10億トン)

実 績 見通し

石炭

石油

ガス

水力他

原子力

世 界

0

1

2

3

4

5

1971 1980 1990 2002 2010 2020 2030

(石油換算10億トン)

実 績 見通し水力他

原子力

ガス

石油

石炭14%

15%

19%

23%

26%

28%

30%アジア途上

2‐1

世界とアジア途上国のエネ構成の推移と見通し

(出所)IEA, “World Energy Outlook 2004” のデータから作成

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1971 1980 1990 2002 2010 2020 2030

(%)

実 績 見通し

石炭

石油

水力他

ガス

原子力

世 界

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1971 1980 1990 2002 2010 2020 2030

(%)

実 績 見通し

石炭

石油

水力他

ガス原子力

アジア途上

2‐2

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2010 2020 2030

(100万B/D)

日本

中国韓国・台湾

東アジア

南アジア

東南アジア

14.4

4.5

2.0

19.1

26.9

34.1

アジアにおける石油輸入の増大

(出所) BP 統計およびIEA, “World Energy Outlook 2002”のデータから作成 2‐3

3.アジアの石油需要増と

液体燃料の供給源

石油の究極可採埋蔵量の推移

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010

石鉱連の評価

キャンベルの評価

マスターズ等の評価

究極可採資源量(兆バレル)

世界石油会議2000年

楽観論と悲観論の分水嶺

3‐1

在来・非在来資源と原油価格の関係

0

10

20

30

40

50

60

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

(ドル/バレル)

既生産量

残存確認埋蔵量

埋蔵量の成長

競争力ある非在来型石油 未

発見量

EOR回収率50%まで

EOR回収率60%まで

超重質油

オイ

ルサン

ビチュ

メン

オイルシェール

(出所)USGS、Shell、Chevron等の    データに基づいて作成

(兆バレル) 3‐2

石油資源の潜在ポテンシャル~価格水準・技術水準・非在来資源・GTL~

• 在来石油の埋蔵量は価格と技術の水準で増加⇒ 90年代の革新技術普及で「埋蔵量の成長」-大幅上方修正⇒ 原油価格水準が上がればEOR技術進展-回収率50~60%⇒ 究極可採埋蔵量も絶対的限界でない-価格と技術で変化

• 待機する非在来石油の豊富な資源量⇒ カナダのオイルサンド、ベネズエラのオリマルジョン 競争力有⇒ 20ドル以下で供給できる非在来石油1兆バレル (シェル評価)⇒ 原油価格水準が上がれば技術進展し非在来石油が本格参入

• 石炭・ガス等からも液体燃料-GTL技術の参入⇒ コストを下げて市場競争力を増すGTL技術⇒ 2010年までに天然ガスからのGTLプラント計画が実現見込み⇒ 石炭、バイオマス、廃棄物と広がりを持つGTLプラントの原料

3‐3

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

2000

2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030

(10億バレル)

中東 残存確認埋蔵量

中東 残存確認埋蔵量+埋蔵量成長

中東 残存究極可採埋蔵量(回収率37%)

中東 残存究極可採埋蔵量(回収率60%)

中国 累積純輸入中東 累積生産

中国 累積純輸入2倍

中東の石油埋蔵量と中国の輸入拡大

3‐4

4.エネルギー効率改善の重要性

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001

中国

米国

日本

EU-15

インドネシア

(kg-OE/1995-US$(PPP))

エネルギー原単位の推移と国際比較

4‐1

物理的なエネルギー効率の国際比較中 国 インドネシア 日 本 米 国 西 欧

電力

鉄鋼

紙パルプ

セメント

発電効率 (%)所内率 (%)送配電ロス率 (%)

37.3%8.2%6.9%

33.9%3.7%11.3%

41.7%5.8%3.6%

38.0%5.8%5.7%

43.6%4.8%6.2%

粗鋼原単位 (高炉)(Mcal/t)

粗鋼原単位 (電炉)(Mcal/t)

7,028(1.30)

2,740(1.83)

5,400(1.00)1,500(1.00)

6,480(1.20)

5,940(1.10)

製紙原単位

(Mcal/t)6,090(1.29)

8,100(1.71)

4,730(1.00)

6,811(1.44)

5,865(1.24)

燃料原単位

(Mcal/t)電力原単位

(kWh/t)エネ原単位

(日本=1.0)

1,297(1.68)110

(1.16)

(1.52)

847(1.10)126

(1.33)

773(1.0)95

(1.0)

(1.00) (1.77) (1.30)

(出所)IEA, “Energy Balances of Non-OECD and OECD Countries,” 産構審資料のデータから作成 4‐2

SOx排出量の抑制要因の分析

4‐3

5.自動車用エネルギーの

今後の展望

各長期見通しにおける部門構成

(出所)IEA2004, US.DOE2004, EU2003のデータから作成

0

10

20

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50

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70

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100

1971 1986 2002 2010 2020 2030 2010 2020 2030

(%)

産業部門

輸送部門

民生部門

転換部門

31%

15%

29%

25%

24%

18%

26%

32%

23%

19%

25%

32%

25%

16%

29%

30%

実  績 IEA 見通し EU 見通し5‐1

部門でみたエネ需要構成の変化

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

71 00 30 71 00 30 71 00 30 71 00 30

(%) 産業部門交通部門 発電部門 民生部門

石油

石炭

原子力・水力

天然ガス

電力

その他

(出所)IEA/WEO2004のデータから作成 5‐2

北米規模へ拡大-アジアの輸送部門

(出所)IEA/WEO2004のデータから作成

0

200

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600

800

1000

1200

1400

1600

1800

2000

1971 2002 2010 2020 2030 1971 2002 2010 2020 2030

(100万TOE)

北米

西欧

旧ソ連他

アジア

ラテン他

684(80%)

1202(66%)

1803(55%)

173(20%)

624(34%)

1471(45%)

5‐3

日米欧の自動車排ガス規制の強化

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0

jimokuhyou

PM (g/kWh)

NOx (g/kWh)

現在:長期

1998~

日本

米国

2003:新短期

2005:新長期

EU

2004~(NOx+NMHC)

2007~

EURO2(~1999)

EURO3(2000~)

EURO4(2005~)EURO5(2008~)

2009:次目標

5‐4

自動車に係わる環境対策の展望●現在から2010年まで

-自動車の排ガス対策(PM, NOx)が中心

-燃料技術、燃焼技術、後処理技術の組み合わせ

-輸送燃料の硫黄分低減 50 ppm → サルファー・フリー

●2010年から2020年まで

-CO2問題への対応で燃費の改善に力点

-ガソリン車か燃費の良い軽油車かの選択

-ハイブリッド車、燃料電池自動車など 総合効率ではどうか

●2020年以降

- CO2問題への対応のさらなる強化

-化石燃料から再生可能エネルギー、水素への展開

将来像に関するグラウンド・デザインの議論が必要5‐5

将来の自動車用燃料の可能性

S freeガソリ

S freeディーゼル

CNG LPG FT軽油

DME バイオエタ

ノール

バイオディーゼル

再生エネ水素

エネ供給 ○△ ○△ ○△ × ○ ○ × × ○

走行距離 ○ ○ × △× ○ △× △ ○ ×

インフラ整備 ○ ○ × △ ○ × × × ×

有害排ガス △ △ ○△ ○△ △ ○△ △ △ ○

総合効率 △ ○ △ △ △ △× △× ○ ○

CO2排出 × △× △ △× × × ○ ○ ○

経済性 ○ ○ △× △ △ △ △× △× ×

5‐6

6.消費地としてのアジアの課題

消費地としてのアジアの課題

①緊急時用石油備蓄の整備と協調利用システムの構築

②石油市場の整備

③消費地における燃料転換のフレキシビリティの強化

④最終使用者レベルの石油在庫の整備

⑤旧ソ連の石油ガス資源の開発と供給網の整備

⑥域内資源である石炭の有効利用技術の開発

⑦省エネルギー、環境保全技術の開発と普及

⑧競争力ある再生可能エネルギー、新エネルギー技術の開発

6‐1

石油市場のグローバルリンク

石油製品価格のリンク

原油価格のリンク原油の流れ

6‐2

中東とアジアの石油市場整備の重要性

• エネルギー価格のアジア・プレミアム問題⇒ 92年代頃からの長期間で原油1~1.5ドル、LNG5.7ドル割高⇒ LPGも一方的な価格の押し付け エネ全体で価格割高問題⇒ アジアの国際競争力という視点からは大きなハンディキャップ

• 中東による原油スポット取引とマーカー価格形成⇒ 欧米のマーカー原油は供給面では限界的な存在⇒ 中東原油(特にサウジ原油)がグローバル供給の代表⇒ スポット取引でグローバルな裁定によるマーカー価格形成へ

• アジアによる石油市場の整備と欧米とのリンク⇒ アジアは欧米と肩を並べる規模を持つ消費市場⇒ 欧米に比べ国際石油市場の機能が未成熟⇒ 市場を整備して消費地のシグナルを発信 欧米とのリンクも

6‐3

最新の石炭火力発電所

バース

閉鎖系ベルトコンベアー

サイロ

6‐4

石炭に関する技術開発の長期戦略像

(注)3TENs:硫黄酸化物、窒素酸化物をそれぞれ10 ppm以下、煤塵を10 mg/Nm3 以下という3つの“10”の目標を指す。

(出所)(財)石炭利用総合センター、「コール・サイエンス・ハンドブック2002」

高効率化第一世代◆PFBC◆PCF/USC

環境制約     CO2削減率:10%     10%~20%     20%~30%

      1990          2000          2010          2020

     30%~40%  >40%

資源制約石油供給タイト化

2030

技術戦略

高効率化第二世代◆石炭燃焼・ガス化複合 サイクル発電(IGCC等)◆溶融還元製鉄技術(DIOS) 石炭高度転換コークス 製造技術(SCOPE21)◆エミッション低減-3TENs

高効率ハイブリッド世代◆石炭ガス化燃料電池発電◆発電と化学原料ガス併産◆石炭から水素製造 (CO2回収・固定)◆エミッション低減-ゼロへ

ゼロエミッション世代◆石炭から水素-燃料電池 水素タービン複合サイクル 発電、水素自動車◆石炭新産業構想-エネルギー ・鉄鋼・化学融合センター◆CO2転換利用

※PFBC:加圧流動床燃焼複合発電技術※PCF/USC:超々臨界圧微粉炭火力発電技術※年数は開発課題の実用化時期を示す。※CO2削減率は開発課題の実用化時期の削減率を示す

6‐5

エネルギーのボーダーレス化と総合エネルギー産業

一次エネルギー

採掘権市場

一次エネルギー

市場

二次エネルギー

卸売市場

二次エネルギー

小売市場

エネルギー

最終需要

上流部門 下流部門 需要端

原油

LPG

LNG

パイプライン天然ガス

石炭

液体燃料販売

ガス販売

電力販売

石油化学

Gas to Liquid

石油精製

ガス化技術

発電

ハイブリッド自動車

燃料電池

ESCO

マイクロガス・タービン

6‐6

ガス化プロセスの利用

天然ガス

随伴ガス

重質残渣油

石炭・コークス

バイオマス

産業廃棄物

合成ガス製造工程

液体燃料合成工程 液体燃料精製工程

メタノール合 成

メタノール蒸 留

DME合 成

蒸 留 DME

FT合 成

ナフサ

ワックス

蒸 留

水素化分解 蒸 留

改 質 ガソリン

中間留分

GTL以外の利用

ガス化合成ガス

CO + H2

発 電 電 力

工業ガス

化学原料

GTLとしての利用

6‐7

消費地の強みを発揮するには~技術開発とエネルギー・ミックス~

• 消費地におけるフレキシビリティの追求⇒ これまでは個別のエネ需要を固定し供給面の対策を工夫⇒ これからは消費地における需要面のフレキシビリティも重要⇒ 原油と製品のミックス、燃料転換フレキシビリティ等

• 技術開発による強みの創造⇒ エネ消費を不用意に拡大しない省エネ技術の高度化⇒ 多様なエネ源の有効活用技術 クリーンコール、ガス化炉など⇒ 消費地の強さを高める技術開発の工夫でアジアの優位性を

• エネミックスの追求と総合エネ産業の確立⇒ 規制緩和でエネ産業間のしきいが外れボーダーレス化⇒ エネ源選択は消費地の強みを出す源泉 多様な選択肢必要⇒ 各エネ産業が強みを生かして総合エネ産業への脱皮が重要

6‐8