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グローバル・バリューチェーンを通じた 削減貢献の⾒える化について 経済産業省 産業技術環境局 環境経済室 亀井 明紀

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Page 1: グローバル・バリューチェーンを通じた 削減貢献の …グローバル・バリューチェーンを通じた 削減貢献の える化について 経済産業省産業技術環境局環境経済室

グローバル・バリューチェーンを通じた削減貢献の⾒える化について

経済産業省 産業技術環境局 環境経済室

亀井 明紀

Page 2: グローバル・バリューチェーンを通じた 削減貢献の …グローバル・バリューチェーンを通じた 削減貢献の える化について 経済産業省産業技術環境局環境経済室

⽬次

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1. 国際動向

2. これからの温暖化対策の進むべき⽅向(三本の⽮)

3. 参考資料

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2012年

国連気候変動枠組条約 (1992年採択、1994年発効、197ヶ国・地域が参加。⽇本は1993年に批准)

京都議定書

・⽇本(▲6%(90年度⽐))、EU、ロシア、豪州等が参加。・⽶国は不参加、カナダは2012年に脱退。

・各国が⾃主的に2020年の⽬標を登録することに合意⽇本は、 ▲3.8%(05年度⽐)を登録(2013年11⽉)

※原発を含まない現時点での⽬標

パリ協定

国際交渉の⼤きな流れ・国連気候変動枠組条約(国連加盟国全てが参加)の下で、温室効果ガス削減の取組を実施。

具体的な国際取決めについて話し合うため、国連気候変動枠組条約締約国会議(Conference of the Parties)を1995年から毎年末に開催。

○究極の⽬的 ⇒ ⼤気中の温室効果ガス濃度の安定化。○全締約国の義務 ⇒ 温室効果ガス削減計画の策定・実施、排出量の実績公表。○先進国の追加義務 ⇒ 途上国への資⾦供与や技術移転の推進など。

(1997年に京都で開催したCOP3で採択、2005年発効。⽇本は2002年に批准)

・EU、豪州等が参加。・⽇本、ロシア、ニュージーランドは不参加。

第⼀約束期間

2008年

第⼆約束期間

COP16(2010年、メキシコ・カンクン)

COP17(2011年、南ア・ダーバン)COP17(2011年、南ア・ダーバン)・2020年以降の将来枠組に向けた検討開始に合意

(2015年11⽉30⽇〜12⽉13⽇ COP21@仏・パリで合意)(2016年11⽉4⽇ パリ協定 発効)

○先進国のみが条約上の数値⽬標を伴う削減義務を負う。

条約の実効性を⾼めるために

〜2013年

2020年

【第⼀約束期間】

【第⼆約束期間】

COP15(2009年デンマーク・コペンハーゲン)→合意不採択

約束草案(2020年以降の削減⽬標)を提出(2015年7⽉)・ 2030年度に2013年度⽐▲26.0%

COP22 (2016年11⽉7⽇〜18⽇、モロッコ・マラケシュ)・パリ協定の実施⽅針等を2018年までに策定することを合意

(2020年以降の将来枠組)

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●⻑期⽬標(2℃⽬標)・世界の平均気温上昇を産業⾰命以前に⽐べて2℃より⼗分低く保つとともに、1.5℃に抑える努⼒を追求。・出来る限り早期に世界の温室効果ガスの排出量をピークアウトし、今世紀後半に⼈為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成。

◆先進国、途上国を問わず、特定年次に向けての世界の削減数値⽬標は合意されなかった。

●プレッジ&レビュー・主要排出国を含む全ての国が⾃国の国情に合わせ、温室効果ガス削減⽬標(NDC︓Nationally Determined Contribution)を策定し、5年ごとに条約事務局に提出・更新。

・各国は⽬標の達成に向けた進捗状況に関する情報を定期的に提供。提出された情報は、専⾨家によるレビューを受ける。

◆先進国、途上国を問わず、特定の排出許容量をトップダウンで決める⽅式は採⽤されなかった。また、⽬標が未達の場合にクレジットを購⼊してオフセットするペナルティも導⼊されなかった。

●⻑期低排出発展戦略・全ての締約国は、⻑期的な温室効果ガスの低排出型の発展のための戦略を作成し、及び通報するよう努⼒すべきであるとされた。

◆COP21決定において、⻑期低排出発展戦略について、2020年までの提出が招請されている。

パリ協定のポイントCOP21(2015年12⽉)においてパリ協定が採択され、2016年11⽉4⽇に発効。

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国名 1990年⽐ 2005年⽐ 2013年⽐

⽇本 ▲18.0%(2030年)

▲25.4%(2030年)

▲26.0%(2030年)

⽶国 ▲14〜16%(2025年)

▲26〜28%(2025年)

▲18〜21%(2025年)

EU ▲40%(2030年)

▲35%(2030年)

▲24%(2030年)

中国2030年までに、2005年⽐でGDP当たりの⼆酸化炭素排出を-60〜-65%(2005年⽐)2030年頃に、⼆酸化炭素排出のピークを達成ほか

韓国 +81%(2030年)

▲4%(2030年)

▲22%(2030年)

◆ ⽶国は2005年⽐の数字を、EUは1990年⽐の数字を削減⽬標として提出◆ 韓国は「2030年(対策無しケース)⽐37%削減」を削減⽬標として提出

各国の約束草案の⽐較

フィリピン2030 年までにGHG 排出量を 2000 〜2030 年のBAU ⽐70%削減を⽬指す。削減は⼊⼿可能な技術開発・移転及びキャパビルを含む資⾦源の度合いによる。

メキシコ

2030年にGHG及び短寿命気候汚染物質の排出量をBAU⽐25%削減(うち、GHGのみでは22%削減)。ただし、技術協⼒、低コスト資⾦源へのアクセス等に対応するグローバルな合意次第では、最⼤40%(うち、GHGのみでは36%)まで削減可能。

インドネシア2030年までにGHG排出量をBAU⽐29%削減。ただし、技術開発・移転や資⾦提供等の⼆国間協⼒も含むグローバルな合意を条件に、最⼤41%まで削減可能。

バングラデシュ2030年までに電⼒、交通、産業分野でGHG排出量をCO2換算でBAU⽐1200万トン(5%)削減。ただし、追加的な国際⽀援を条件に、CO2換算で3600万トン(15%)まで削減。

イラン2030年にBAU⽐で4%削減。国際的な資⾦援助や技術移転、炭素クレジットの交換等を条件として、さらに8%(合計12%)の削減ポテンシャルがある。

インド2030年までにGDPあたり排出量を2005年⽐33-35%削減。ただし成功裏の実施は、先進国によって提供される実施⼿段を含む野⼼的なグローバル合意次第と付記。

主要排出国の約束草案 途上国の約束草案

• 京都議定書では先進国のみが削減⽬標を負っていたが、パリ協定では、途上国を含め、全ての国が削減⽬標を設定。• 途上国は、約束草案の中で先進国からの国際⽀援を期待。

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今後のスケジュール2017年 6⽉1⽇

6⽉7⽉8⽉4⽇9⽉15-16⽇11⽉6-17⽇12⽉12⽇

⽶国によるパリ協定脱退表明G7環境⼤⾂会合 (於︓伊・ボローニャ)G20サミット(於︓独・ハンブルグ)⽶国国務省がパリ協定脱退の意向に関する声明を発出加・中・EU共催閣僚級⾮公式会合(於︓加・モントリオール)COP23(於︓独・ボン、議⻑国︓フィジー)気候変動に関する⾸脳会合(於︓仏・パリ)

2018年 6⽉9⽉秋11⽉6⽇12⽉3-14⽇

G7サミット(於︓加・シャルルボワ)IPCC「1.5℃気温上昇に関する特別報告書」発出G20サミット(於︓アルゼンチン・ブエノスアイレス)⽶国中間選挙COP24(於︓ポーランド)︓パリ協定実施指針の策定期限緩和に関する全体努⼒の促進的対話(COP21決定)

2019年 春秋11⽉4⽇11⽉11-22⽇12⽉-20年2⽉

G7サミット(於︓仏)G20サミット(於︓⽇本・東京)パリ協定(のみ)から脱退する場合の、最速で通告可能となる⽇COP25(於︓ブラジル)(遅くともCOP26の9〜12ヶ⽉前までに)NDC提出・更新

2020年 11⽉3⽇11⽉4⽇

⽶国⼤統領選パリ協定(のみ)から脱退する場合の、最速で脱退可能となる⽇⻑期低排出発展戦略の提出期限

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⽬次

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1. 国際交渉の現状

2. これからの温暖化対策の進むべき⽅向(三本の⽮)

3. 参考資料

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・⼈為起源の温室効果ガス排出量は、1970年から2010年の間にかけて増え続けている。直近の10年間(2000〜10年)の排出増加量は平均して2.2%/年であり、これは途上国の排出増によるもの。・我が国の温室効果ガスの排出量シェアは2.7% 。約95%がCO2 (エネルギー起源CO2︓約90%)。

各国別の温室効果ガス排出量シェア

+1.3%/年1970-2000

+2.2%/年2000-2010

2000年から2010年 +93億トン附属書Ⅰ国 ▲6億トン⾮附属書Ⅰ国 +99億トン

温室効果ガス排出の世界的動向と我が国の位置づけ

温室効果ガスの種類■ Fガス(代替フロン等3ガス)■ 亜酸化窒素■ メタン■ 林業・その他⼟地利⽤による

⼆酸化炭素■ 化⽯燃料と産業プロセスから

の⼆酸化炭素

【出典】IPCC第5次報告書第三作業部会報告書 【出典】CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION2016 (IEA)

米国13.6% (67.3)

EU‐28 10.0% (49.5)

ロシア5.1% (25.1)

日本2.7% (13.4)

カナダ1.5% (7.3)

その他

付属書I国3.6% (17.9)

中国23.2% (114.6)

インド5.1% (25.1)

インドネシア3.8% (18.9)

ブラジル3.2% (16.1)

コンゴ

民主共和国2.3% (11.1)

イラン1.4% (7.1)

韓国1.3% (6.6)

その他

非付属書I国23.1% (114.0)

⾮附属書Ⅰ国63%(313.4)附属書Ⅰ国37%(180.5)

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地球温暖化対策計画

○我が国の地球温暖化対策の⽬指す⽅向

• 2030年度において、2013年度⽐26.0%減(2005年度⽐25.4%減)の⽔準にする中期⽬標(2030年度削減⽬標)の達成に向けた取組

• パリ協定を踏まえ、全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際枠組みのもと、主要排出国がその能⼒に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成⻑を両⽴させながら、

• ⻑期的⽬標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を⽬指す。• このような⼤幅な排出削減は、従来の取組の延⻑では実現が困難である。• したがって、抜本的排出削減を可能とする⾰新的技術の開発・普及などイノベーションによる解決

を最⼤限に追求するとともに、国内投資を促し、国際競争⼒を⾼め、国⺠に広く知恵を求めつつ、⻑期的、戦略的な取組の中で⼤幅な排出削減を⽬指し、また、世界全体での削減にも貢献していくこととする。

⻑期的な⽬標を⾒据えた戦略的取組

• 地球温暖化対策と経済成⻑を両⽴させる鍵は、⾰新的技術の開発である。• 「エネルギー・環境イノベーション戦略」に基づき、⾰新的技術の研究開発を強化していく。• 我が国が有する優れた技術を活かし、世界全体の温室効果ガスの排出削減に最⼤限貢献。

世界の温室効果ガスの削減に向けた取組

三条件

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三原則

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• 80%削減という⽔準は、仮に、①業務・家庭部⾨をオール電化⼜は⽔素利⽤とし、②運輸部⾨をゼロエミッション⾞に転換し、③再エネ・原⼦⼒・CCS付⽕⼒で電⼒を100%⾮化⽯化したとしても、農林⽔産業と2〜3の産業しか許容されない⽔準。

• 現在の技術を前提として国内でやるとすれば、社会インフラを総⼊れ替えする程の巨額のコスト負担と、痛みを伴う産業構造の⼤転換を意味している。(外交・防衛、財政健全化、社会保障、エネルギー安全保障等の多様な政策⽬的との整合性も不可⽋)

• 80%削減という⽔準は、仮に、①業務・家庭部⾨をオール電化⼜は⽔素利⽤とし、②運輸部⾨をゼロエミッション⾞に転換し、③再エネ・原⼦⼒・CCS付⽕⼒で電⼒を100%⾮化⽯化したとしても、農林⽔産業と2〜3の産業しか許容されない⽔準。

• 現在の技術を前提として国内でやるとすれば、社会インフラを総⼊れ替えする程の巨額のコスト負担と、痛みを伴う産業構造の⼤転換を意味している。(外交・防衛、財政健全化、社会保障、エネルギー安全保障等の多様な政策⽬的との整合性も不可⽋)

2050年▲80%の含意

間接排出を含めると、鉄鋼の排出量は2.0

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経済産業省では、2030年以降の⻑期の温室効果ガス削減に向けて、論点を整理するとともに、海外の実態などファクトを徹底的に洗い出すべく、産官学からなる「⻑期地球温暖化対策プラットフォーム」を設置し、本年4⽉に報告書をとりまとめた。

「国際貢献」、「グローバル・バリューチェーン」、「⾰新的技術のイノベーション」で我が国全体の排出量を超える地球全体の排出削減(カーボンニュートラル)に貢献する『地球温暖化対策3本の⽮』を基礎とした『地球儀を俯瞰した温暖化対策』を⻑期戦略の核としていく。

①国際貢献でカーボンニュートラルへ

②グローバル・バリューチェーンでカーボンニュートラルへ

③イノベーションでカーボンニュートラルへ

⽇本による世界の削減量を定量化し、我が国全体の排出量を超える国際貢献を⾏い、これを積極的に発信する。こうした取組を通じて、各国が貢献量の多寡を競い合う新たなゲームへ。

中⻑期の削減ポテンシャルは、JCMパートナー国を中⼼としたアジア、中南⽶、中東地域の主要排出国10か国を対象とした試算で、2030年に約29億トン、2050年に97億トン。

製品ライフサイクルで⾒ると、使⽤段階での排出が⼤半を占めており、素材・製品・サービスの⽣産部⾨での削減から、グローバル・バリューチェーンでの削減へと視野を広げることが重要。

我が国の産業界は、低炭素製品・インフラを国内外に普及させることで、2020年度に約10億トン以上、2030年度に約16億トン以上の地球規模の削減に貢献しうる。

「エネルギー・環境イノベーション戦略」で特定した技術分野を合わせると、全世界で数10〜100億トン規模の削減ポテンシャルが期待される。

有望10分野に関するロードマップを作成し、政府⼀体となった研究開発体制を構築。 新たなプロジェクトの⽴ち上げの検討や産業界主体の取組 を促すべく、産学官連携の下、研究者・技術者間で

ボトルネック課題の特定を⽬指すための新たな場(「ボトルネック課題研究会」)を設置。

⽇本の削減貢献量の全体

JCM/CDM協⼒的クレジット

制度に基づく移転可能な削減量

グローバル削減貢献量

我が国の地球温暖化対策の進むべき⽅向(「⻑期地球温暖化対策プラットフォーム報告書」)

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日化協ガイドライン(2012年)

ICCA・WBCSD国際ガイドライン(2013年)住宅用断熱材消費電力削減

炭素繊維複合材軽量化

LED照明消費電力削減

インバータエアコンホール素子による消費電力削減

【ガイドライン策定参加組織】AkzoNobel, 旭化成, BASF, Dow, DSM, DuPont, Eastman, Evonik, ExxonMobil, Henkel, 三菱化学, SABIC, Shell, SOLVAY, 東レ, WBCSD, ICCA, Arthur D. Little

海水淡水化プラント膜技術による省エネ

地球全体の温室効果ガスの⼤幅排出削減を図っていく上で、世界の排出削減に貢献していくことが地球温暖化問題に対する⽇本産業界の重要な貢献のあり⽅。⽇本の⻑期戦略においても、製品・サービス等におけるグローバル・バリューチェーンを通じた産業界の貢献を定量的に把握し、打ち出していくべき。

例えば、化学業界では、⽇本化学⼯業協会が整理した考え⽅がベースとなって、ICCA※1とWBCSD※2により、化学素材のグローバル・バリューチェーンにおけるCO2削減貢献量を算定するための国際的なガイドラインが策定されている。

化学業界などの先進的な取組を他業界にも横展開していくためには、定量的に把握・算定する際に基本となる考え⽅を整理することが必要。

事例集

出典︓第1回グローバル・バリューチェーン貢献研究会 ⽇本化学⼯業協会提出資料(資料4)

化学業界の事例 日本企業の貢献評価事例

※1 国際化学⼯業協会協議会※2 持続可能な開発のための世界経済⼈会議

グローバル・バリューチェーンでカーボンニュートラルへ

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産業界は「低炭素社会実⾏計画」において、「低炭素製品・サービス等による他部⾨での削減」「海外での削減貢献」に取り組み、⼀部の業界はグローバル・バリューチェーンを通じた削減貢献量の定量化を実施。⼀⽅、定量化の取組は、各業界に委ねられており、数字・試算⽅法の考え⽅や根拠の説明に差異があった。

各業界のグローバル・バリューチェーンを通じた貢献の取組の透明性を向上するとともに、こうした取組を更に広げていくために、「各業界が貢献量を試算し、対外的に説明する際に参考とできる汎⽤性のあるガイドライン」を策定することを⽬指し、昨年12⽉に「グローバル・バリューチェーン貢献研究会」を⽴ち上げた。

12⽉6⽇ 第1回【済】︓業界団体の取組事例等について 2⽉2⽇ 第2回【済】︓ガイドラインの主要論点について 3⽉12⽇ 第3回(最終回)︓ガイドライン案について

⇒貢献量算定ガイドラインとりまとめ

⽒名 所属秋元 圭吾 地球環境産業技術研究機構 システム研究グループリーダー稲葉 敦 ⼯学院⼤学先進⼯学部環境化学科 教授内⼭ 洋司 筑波⼤学 名誉教授⼯藤 拓毅 ⽇本エネルギー経済研究所 研究理事<オブザーバー>⽇本経済団体連合会・関係業界

先進的な取組を⾏っている業界は、どのような考えに基づいて削減貢献量を算定しているか。 各業界の削減貢献を⾒える化するために、どのようなガイドラインとしていくことが必要か。 海外産業界の巻き込みをどのように図っていくべきか。

※50⾳順・敬称略

検討課題

参加メンバー 検討スケジュール(予定)

地球温暖化対策に対する産業界の貢献の定量化に向けた取組

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⽬次

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1. 国際交渉の現状

2. これからの温暖化対策の進むべき⽅向(三本の⽮)

3. 参考資料

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1.ガイドライン策定の⽬的・背景2.ガイドラインの位置づけ3.本研究会における「削減貢献量」4.ガイドラインの主要論点

-算定範囲-ガイドラインの構成-排出量の累積⽅法-ベースライン

第2回グローバル・バリューチェーン貢献研究会資料(⼀部抜粋)

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1.ガイドライン策定の⽬的・背景• 地球全体の温室効果ガスの⼤幅排出削減を図っていく上で、世界の排出削減に貢献していくことが地球

温暖化問題に対する⽇本産業界の重要な貢献のあり⽅。• 省エネ対策等の⾃部⾨での排出削減だけでなく、企業・業界ごとの強み(環境性能の⾼い製品・部品・

素材サービス・技術など)を⽣かした「他部⾨での削減」や「海外での削減貢献」を含めた排出削減に貢献していくことが産業界に期待される重要な役割。

• 各企業・業界は、バリューチェーンにおける⾃らの製品・サービス等の強み・貢献度合いを認識し、さらなる貢献を果たすことを⽬指していくべき。

• 以上を踏まえ、バリューチェーンにおける国内外の貢献を定量的に把握・算定する際に基本となる考え⽅を整理したガイドラインを策定し、各企業・業界のバリューチェーンにおける削減貢献量の⾒える化を促進。

• 各企業・業界は、バリューチェーン上のステークホルダー(ユーザー、サプライヤー、消費者など)に対して⾃らの削減貢献を主張することが可能。

15

対象となる温室効果ガス

COP17・CMP7で合意された7つの温室効果ガス(⼆酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、⼀酸化⼆窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)、六フッ化硫⻩(SF6)、三フッ化窒素(NF3))

評価対象 バリューチェーン上で温室効果ガスの削減効果を発揮する製品・部品・素材・サービス(製品・サービス等と記載)

ガイドラインの活⽤者 組織

ガイドライン活⽤の場⾯例

ステークホルダーに対する貢献の主張例︓低炭素社会実⾏計画の「他部⾨貢献」「海外貢献」における記載・発信例︓CSR報告書での記載・発信 15

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2.ガイドラインの位置付け• 本ガイドラインは各企業・業界が⾃らの製品・サービスによる削減貢献量を定量化する際

の、基本的な考え⽅・フレームワークを⽰すもの。各企業・業界は本ガイドラインに沿って、製品・サービス等ごとの削減貢献量を算定。(算定された削減貢献量のクレジット化(排出権)をするものではない。)

• さらに、⾃らの特性を踏まえた「業種別ガイドライン」を位置付けることも可能。

本ガイドライン

業種別ガイドライン

製品

A

製品

B

製品

C

製品

X

製品

Y

サー

ビスZ

業種別ガイドライン

サー

ビスA

サー

ビスB

サー

ビスC

O業界 P企業 Q業界 16

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3.本研究会における「削減貢献量」• 「削減貢献量」について国際的に明確な定義はないが、本研究会では、既存ガイドライン

等で整理されている定義を踏まえ、削減貢献量の定義を「ベースラインと⽐較して、製品・サービス等の環境性能の向上と供給の推進により、グローバル・バリューチェーン※を通じた温室効果ガスの排出削減・抑制への貢献分を定量化したもの」としてはどうか。

※⻑期地球温暖化対策プラットフォーム報告書では、グローバル・バリューチェーンを「国内外、社内外を問わず、原材料の調達から製品・サービスが顧客・ユーザーに届き、それらが使⽤、消費、廃棄されるまでの⼀連の流れに関わる企業活動」と整理。

原材料調達原材料調達 ⽣産⽣産 販売販売 使⽤・消費使⽤・消費 廃棄・リサイクル廃棄・リサイクル

輸送

組織・業界 ガイドライン上の記述

⽇本LCA学会ガイドライン削減貢献量とは、環境負荷の削減効果を発揮する製品等の、原材料調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体を考慮し、温室効果ガス排出量をベースラインと⽐較した温室効果ガスの排出削減分のうち、当該製品の貢献分を定量化したもの

電機・電⼦(『電機・電⼦業界 低炭素社会実⾏計画 実施要領(抜粋版)』、2017年5⽉18⽇版)

排出抑制貢献量とは、設定した基準(ベースライン)と⽐較して、当該製品の効率向上と供給の推進により、CO2の排出を抑制することに貢献したと考えられるCO2換算量

化学(『温室効果ガス削減に向けた新たな視点』、2014年3⽉)

他産業および消費者で使⽤される時に排出されるGHGに着⽬し、化学製品を使⽤した完成品と、⽐較製品を使⽤した完成品とのライフサイクルでの排出量を⽐べ、その差分をその化学製品がなかった場合に増加する排出量と考え、正味の排出削減貢献量として算出

経済産業省・環境省 サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等に関する調査・研究会(2011)

従来使⽤されていた製品・サービスを⾃社製品・サービスで代替するバリューチェーン上の出来事により回避される排出量

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原材料の調達 ⽣産 輸送 使⽤ 廃棄・リサイクル

バリューチェーン上で、いくつかの段階で排出が多い

↓⽣産、使⽤、廃棄・リサイクル段階での排出削減が重要

製品・サービス等B

原材料の調達 ⽣産 輸送 使⽤ 廃棄・リサイクル

4.ガイドラインの主要論点(①算定範囲)• ライフサイクル全体の影響も考慮しつつ、組織の事情・特性※に応じて、特に影響の⼤き

い特定の段階における貢献分のみ算定することができるようにしてはどうか。

ライフサイクル評価に対する姿勢 組織・業界 ガイドライン上の記述(概要)

ライフサイクル考慮 The GHG protocol for Project Accounting

⼀次的な影響のほか、⼆次的影響(川上・川下を含む)の影響を考慮する。ただし、完全なライフサイクル評価の実施を求めるものではない。

ライフサイクル原則

⽇本LCA学会ガイドライン ライフサイクル全体における評価結果を⽐較することが必要である。

電機・電⼦(IEC TR 62726)

GHG削減の重要な影響を特定するために、評価対象製品と⽐較対象製品のライフサイクル段階のGHG排出量を⽐較することを推奨する。

化学(ICCAガイドライン)

全てのライフサイクルが考慮されることが必要。⽐較相⼿と同⼀のプロセスは除外してもよい。(除外理由を明記)

鉄鋼(⽇本鉄鋼連盟の事例) 鉄鋼製造、鋼材輸送、製品製造、製品利⽤について分析・評価を実施。

※組織の事情・特性の例製品・サービス等A

バリューチェーン上で、使⽤段階での排出が⼤半を占める

↓使⽤段階での排出削減

が重要

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4.ガイドラインの主要論点(②ガイドラインの構成)• 削減貢献量のガイドラインを検討する上で、「LCA」と「ベースライン&クレジット」の2つの

考え⽅が参考になるが、前⾴の算定範囲の検討も考慮すると、LCAの考え⽅をベースに、ベースライン&クレジットの考え⽅も取り⼊れながら、必要な修正を加えていくことで検討してはどうか。

評価対象製品・サービス等

⽐較製品・サービス等

原材料の調達 ⽣産 輸送 使⽤・消費 廃棄・リサイクル

削減貢献量

概要 相違点(本研究会での整理)

LCA ・原材料調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体を評価する。

・機能単位が同⼀ではない製品・サービス等との⽐較も可能。・必ずしもライフサイクル全体の評価を求めない。

ベースライン&クレジット(CDM等)

・プロジェクト実施の場合と実施しない場合のそれぞれの排出量を算定し、その差分を削減量とする。

・クレジット化は求めない。・追加性は考慮しない。

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4.ガイドラインの主要論点(③排出量の累積⽅法)• ストック・フローの2つの考え⽅を提⽰し、組織が削減貢献量を算定する⽬的に応じて、

選択できるようにしてはどうか。

フローベース ストックベース

⻑所 評価年の⽣産量に対応するCO2排出量のポテ

ンシャル評価が可能。 データ(評価年の⽣産量)の⼊⼿が⽐較的容

易。

評価年の排出量に対応する削減貢献量を算定可能(時制が⼀致)。

過去の情報によりベースラインを設定出来るため、将来予測がなく、⽐較的不確実性が低い。

短所 評価年の排出量に対応する削減貢献量の算

定不可(時差が存在)。 将来のベースラインを設定する必要があるため、

⽐較的不確実性が⾼い。

過去にさかのぼって⽣産・販売された製品の累積稼働量等の各種データ収集が困難。

2つの評価⽅法を併記①対象年1年間に製造が⾒込まれる製品を、ライフエンドまで使⽤したときのCO2排出削減貢献量を評価する。②対象年度までに普及し稼働している製品総台数が、対象年1年間に稼働することによるCO2排出削減貢献量を評価する。 貢献量算定の⽬的に応じ

て採⽤。

2つの評価⽅法を併記①報告の対象年度1年間の新設(供給)及び出荷台数等による排出抑制貢献量。②稼働(使⽤)年数での排出抑制貢献量を対象年度に全量報告。 上記2種類で評価結果を

報告。

<⽇本化学⼯業協会の例> <電機・電⼦温暖化対策連絡会の例>

出典︓IEC TR 62726(2014)出典︓⽇本化学⼯業協会『温室効果ガス削減に向けた新たな視点』(2014)

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4.ガイドラインの主要論点(④ベースライン)• ベースラインとなる⽐較製品・サービス等は、評価対象製品・サービス等によって異なるた

め、既存ガイドラインも参照する形で、ベースラインを設定する際の考え⽅をいくつか例⽰してはどうか。

組織・業界 ガイドライン上の記述(概要)

The GHG protocol for Project Accounting

ベースラインについて主に以下の3つの観点を考慮 プロジェクト導⼊の地域、時間的範囲 法的な基準への適合 実際に使⽤されている内容(特定プロジェクト型のみ)

⽇本LCA学会ガイドライン

機能単位が同⼀であることが必要 ⽐較対象選定の参照例として以下を⽰している 業界平均を実現する製品等 ⾃社の直近の旧製品等 法⼜は制度等による基準値を実現する製品等 新たな技術が開発される従前の製品等

電機・電⼦(IEC TR 62726)

ベースラインについて、主たる2つの考え⽅(シナリオ)とその例を提⽰◎効率向上シナリオ(Performance standard procedure)e.g. 法⼜は制度等による基準値、業界平均値の製品・システム等との⽐較

◎代替シナリオ(Project specific procedure)e.g. 評価製品により代替される特有の製品・システム等の⽐較

化学(ICCAガイドライン)

削減貢献量についての要求事項(⼀部抜粋) 同⼀の機能を提供する製品 評価期間・地域の市場で流通している製品 品質基準の点で置き換えられること 理想的には実際に置き換わる製品 市場の平均的製品、具体的な製品、シェアの⾼い製品などは置換わる製品とみなしてよい

鉄鋼(⽇本鉄鋼連盟の事例) 機能性を有しない鋼材(普通鋼)をベースラインとして⾼機能材との差を評価。 普通鋼を⽤いない分野は、2001年度当時の置き換え対象と想定される製品をベースラインとする。21