クラウドサービスが拡大する見通し - 株式会社アイフィス …...6月...

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アナリストレポート・プラットフォーム 1 売上高 百万円 前期比 営業利益 百万円 前期比 経常利益 百万円 前期比 当期純利益 百万円 前期比 EPS 2019/3 1,703 11.9 371 6.7 370 2.3 129 -45.1 32.29 2020/3 (2019 年 5 月発表) 1,950 14.5 446 20.0 445 20.1 300 131.1 74.61 アナリスト予想 1,960 15.0 450 21.1 449 21.2 303 133.4 76.55 2021/3 アナリスト予想 2,180 11.2 530 17.8 529 17.8 355 17.2 89.69 エイジア (2352・東証 1 部) (株)QUICK 前田 俊明 自社開発の CRM(Customer Relationship Management)ソフトウェ アを中心としたアプリケーションの企画・開発・販売・保守などを手 掛ける。パッケージシステムを用いるこ とで低価格・短期間での導入を可能と している。パッケージ導入版とクラウ ドサービスを提供する。CRM ソフトウ ェアは「WEBCAS(ウェブキャス)」ブ ランドでメール配信システム「WEBCAS e-mail」など各種製品を展開する。 19/3 期の連結業績は売上高が前期比 12%増の 17.0 億円、営業利益 は同 7%増の 3.7 億円。10 期連続の増収、4 期連続の営業増益だったも のの、営業増益率は増収率を下回った。製品開発の方針転換に伴い、 ソフトウェア資産への計上を想定していた一部を当期の費用として計 上したことが響いた。 同社は製品戦略を変更し、人工知能をはじめとするデータ分析ソリ ューションと連携する「メッセージ配信最適化ソリューション」へと 舵を切る。同社が長年培ってきたメール配信性能の技術優位性をさら に向上させるとともに、LINEでのパーソナライズ配信システム「WEBCAS taLk」やショートメッセージ配信システム「WEBCAS SMS」などのメー ル配信以外でのメッセージ配信ラインナップの機能強化などを通し て、「WEBCAS」シリーズ全体の製品力を向上する。 20/3期の連結業績について企業価値研究所は売上高 19.6億円(前期 比 15%増)、営業利益 4.5 億円(同 21%増)を予想。採用関連費用や 人員増に伴う人件費などが増加するものの、好採算のクラウドサービ スの拡大などで吸収する見通し。 営業利益率は引き続き 20%を上回ろう。 東京都品川区 美濃 和男 1995/4 322 百万円 (2019/3/31 現在) 2005/10/5 http://www.azia.jp/ 情報・通信業 クラウドサービスが拡大する見通し ベーシックレポート 2019年6月20日 主要指標 2019/6/18現在 1,196 円 年初来高値 1,464 円 (3/19) 年初来安値 1,020 円 (6/4) 発行済株式数 4,412,400 株 100 株 5,277 百万円 23.0 円 EPS 76.55 円 PBR 3.49 倍 メール配信システムなどを提供 「メッセージ配信最適化ソリューション」に製品戦略を変更 19/3 期で 10 期連続増収、4 期連続営業増益

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Page 1: クラウドサービスが拡大する見通し - 株式会社アイフィス …...6月 マーケティングオートメーション「WEBCAS Auto Relations」を発売 人工知能テキストマイニング「WEBCAS

アナリストレポート・プラットフォーム 1

業 績 動 向 売上高

百万円

前期比

営業利益

百万円

前期比

経常利益

百万円

前期比

当期純利益

百万円

前期比

EPS

2019/3 実 績 1,703 11.9 371 6.7 370 2.3 129 -45.1 32.29

2020/3

会 社 予 想 (2019 年 5 月発表)

1,950 14.5 446 20.0 445 20.1 300 131.1 74.61

アナリスト予想 1,960 15.0 450 21.1 449 21.2 303 133.4 76.55

2021/3 アナリスト予想 2,180 11.2 530 17.8 529 17.8 355 17.2 89.69

エイジア (2352・東証 1部)

(株)QUICK

前田 俊明

自社開発の CRM(Customer Relationship Management)ソフトウェ

アを中心としたアプリケーションの企画・開発・販売・保守などを手

掛ける。パッケージシステムを用いるこ

とで低価格・短期間での導入を可能と

している。パッケージ導入版とクラウ

ドサービスを提供する。CRMソフトウ

ェアは「WEBCAS(ウェブキャス)」ブ

ランドでメール配信システム「WEBCAS

e-mail」など各種製品を展開する。

19/3 期の連結業績は売上高が前期比 12%増の 17.0 億円、営業利益

は同 7%増の 3.7億円。10期連続の増収、4期連続の営業増益だったも

のの、営業増益率は増収率を下回った。製品開発の方針転換に伴い、

ソフトウェア資産への計上を想定していた一部を当期の費用として計

上したことが響いた。

同社は製品戦略を変更し、人工知能をはじめとするデータ分析ソリ

ューションと連携する「メッセージ配信最適化ソリューション」へと

舵を切る。同社が長年培ってきたメール配信性能の技術優位性をさら

に向上させるとともに、LINEでのパーソナライズ配信システム「WEBCAS

taLk」やショートメッセージ配信システム「WEBCAS SMS」などのメー

ル配信以外でのメッセージ配信ラインナップの機能強化などを通し

て、「WEBCAS」シリーズ全体の製品力を向上する。

20/3期の連結業績について企業価値研究所は売上高 19.6億円(前期

比 15%増)、営業利益 4.5 億円(同 21%増)を予想。採用関連費用や

人員増に伴う人件費などが増加するものの、好採算のクラウドサービ

スの拡大などで吸収する見通し。営業利益率は引き続き 20%を上回ろう。

会 社 概 要

所 在 地 東京都品川区

代 表 者 美濃 和男

設 立 年 月 1995/4

資 本 金 322百万円

(2019/3/31 現在)

上 場 日 2005/10/5

U R L

http://www.azia.jp/

業 種 情報・通信業

ク ラ ウ ド サ ー ビ ス が 拡 大 す る 見 通 し

ベ ー シ ッ ク レ ポ ー ト

2019年 6月 20日

主 要 指 標 2019/6/18現在

株 価 1,196 円

年 初 来 高 値 1,464 円

(3/19)

年 初 来 安 値 1,020 円

(6/4)

発 行 済 株 式 数 4,412,400 株

売 買 単 位 100 株

時 価 総 額 5,277 百万円

予 想 配 当 ( 会 社 )

23.0 円

予 想 E P S ( ア ナ リ ス ト )

76.55 円

実 績 P B R 3.49倍

メール配信システムなどを提供

「メッセージ配信最適化ソリューション」に製品戦略を変更

19/3 期で 10 期連続増収、4 期連続営業増益

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アナリストレポート・プラットフォーム 2

会社概要

主に大企業・中堅企業向けに eメールを活用した販売促進ソリューション

を提供する。社名のエイジアはアジアに由来。創業当初より日本だけでなく、

海外展開を視野に入れていた。

経営者 代表取締役 美濃 和男氏

1989年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2005年、同社に入社し取

締役。09年、創業者である江藤晃氏に代わり代表取締役に就任、現在に至る。

経営方針

同社では、以下の経営方針を掲げ、社員・役員が遂行する全ての企業活動

の指針としている。

■経営理念

クライアントに満足を買ってもらいたい

当社では「クライアントの満足」を判断基準として、企業活動を推進してお

ります。

■ビジョン

「メールアプリケーションのエイジア」から

「eコマース売上 UPソリューションを世界に提供するエイジア」へ

多くのお客様は「売上を向上させるため」に当社のシステムやサービスを導

入します。ですから当社が目指すのは、真に売上向上に資するソリューショ

ン。システムに加えて、システムの効果を最大化するコンサルティングサー

ビスも併せて提供し、さらにお客様に貢献したいと考えています。このトー

タルソリューションを、世界へ拡げてまいります。

■ミッション

私たちは、IT技術とサービスで、人と企業の心の距離を縮めます

私たちの製品やサービスが目指すのは、企業と顧客の心の距離が今よりもっ

と近づいて、双方が幸せになれる世界です。当社が培った技術で、この世界

を実現できるよう尽力してまいります。

会 社 概 要

会社概要

会 社 概 要

経 営 者

経 営 方 針

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アナリストレポート・プラットフォーム 3

沿革

1995年 4月 ホームページ制作を主たる事業として、資本金 1,000

万円で東京都品川区大井にエイジアを設立

1997年 6月 ウェブサイトの受託開発を中心とした事業を開始

2001年 10月 メール配信システム「WEBCAS e-mail」を発売

2002年 2月 アンケートシステム「WEBCAS formulator」を発売

6月 「WEBCAS」ASP事業を開始

12月 「WEBCAS connector」「WEBCAS manager」を発売

2005年 10月 東京証券取引所マザーズに株式を上場

2006年 10月 メール共有管理システム「WEBCAS mailcenter」を発

2007年 10月 CMS「WEBCAS creator」を発売

2013年 6月 スマートフォン向けフォームデザイン最適化ツール

「SFO for WEBCAS」を発売

10月 FUCAを連結子会社化

12月 通知メール販促システム「 WEBCAS marketing

receipt」を発売

2014年 6月 データベース作成システム「WEBCAS DB creator」

を発売

電子レシートメール送信サービス「レシートメール」

を発売

2015年 5月 SMS 配信システム「WEBCAS SMS」を発売

CRM システム「WEBCAS CRM」を発売

11月 セグメント抽出型 LINE メッセージ配信システム

「WEBCAS taLk」を発売

12月 DM印刷・配送サービス「WEBCAS DM」を発売

2016年 1月 MARVELOUS INTERNATIONAL SDN.BHD.を連結子会社

化(17年 6月、AZIA MARKETING MALAYSIA SDN.BHD.

に社名変更)

6月 マーケティングオートメーション「WEBCAS Auto

Relations」を発売

人工知能テキストマイニング「 WEBCAS Sense

Analyzer」を発売

8月 上場市場を東証 2 部に変更

2017年 12月 上場市場を東証 1 部に変更

(出所)有価証券報告書、会社ホームページ

沿 革

会 社 概 要

会社概要

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アナリストレポート・プラットフォーム 4

●大株主(上位 10名)

(出所)株主総会招集通知書(19年 3月 31日現在)

株主名 持株数

(株)

持株比率

(%)

日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 286,400 7.11

GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 214,474 5.32

日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 164,400 4.08

美濃 和男 115,300 2.86

西田 徹 111,300 2.76

上田八木短資 100,000 2.48

北村 秀一 79,700 1.97

日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口 5) 77,200 1.91

日本マスタートラスト信託銀行(株式付与 ESOP信

託口・75960口) 71,274 1.76

システムインテグレータ 65,600 1.62

大 株 主

会 社 概 要

会社概要

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アナリストレポート・プラットフォーム 5

事業の内容

自社開発の CRM(Customer Relationship Management:顧客の購入・利

用履歴や苦情・意見など企業と顧客とのあらゆる接点での情報を統合管理す

る経営手法)ソフトウェアを中心としたアプリケーションの企画・開発・販

売・保守を手掛ける。CRMソフトウェアは「WEBCAS(ウェブキャス)」ブラン

ドで各種製品をシリーズ展開する。顧客毎にシステムを受託開発するのでは

なく、パッケージシステムを用いることで低価格・短期間での導入を実現。

パッケージ製品では対応していない機能要件に対しても顧客の要望に応じ

て個別カスタマイズを施すことができる柔軟な設計となっている。

提供形態は、サーバー導入型と月額課金をベースとするクラウドサービス

型の 2種類ある。サーバー導入型「WEBCAS」は保守サービスを提供する。

「WEBCAS」シリーズを活用したメールマーケティングのプランニングおよ

びメールコンテンツの企画・制作、「WEBCAS」シリーズの付加機能開発、ホ

ームページ・ウェブコンテンツの企画・制作、各種システムの受託開発・保

守なども提供する。

売上構成

アプリケーション事業を中核に、コンサルティング事業、オーダーメイド

開発事業、EC事業の 4事業部門。

アプリケーション事業は「WEBCAS」シリーズの企画・開発などを手掛け、

連結売上高の 75%を占める主力事業(19/3期)。コンサルティング事業は、

「WEBCAS」を効果的に活用したインターネットマーケティングのプランニン

グ・コンサルティング、メールコンテンツの企画・制作、アンケート設計や

顧客分析などを中心に展開する。オーダーメイド開発事業は、「WEBCAS」と

関係する業務システムやホームページなどを個別にオーダーメイドで開発

する。EC事業は事業譲受(18年 9月)に伴い新設した事業セグメントで 100%

子会社「ままちゅ」が自社 ECサイト「べびちゅ」を運営する。

事 業 の 内 容

売 上 構 成

事 業 概 要

会社概要

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アナリストレポート・プラットフォーム 6

「WEBCAS」シリーズは用途に応じて各種展開しており、メール配信システ

ム「WEBCAS e-mail」を中核製品として、アンケートシステム「WEBCAS

formulator」、メール共有システム「WEBCAS mailcenter」などがある。

「WEBCAS e-mail」は毎時 300万通を実現する高速メール生成機能やマー

ケティング成果を高めるための外部システム連携に加え、様々なデバイスへ

の対応を進めており、大規模運用から複雑な運用まで柔軟に対応できる。同

業他社の製品に比べ高性能を強みとし、特に大量の顧客データを扱う通信販

売業界との相性が良く業界大手向けでは高シェアを誇る。

「WEBCAS formulator」は、パソコン、スマートフォン、携帯電話に対応

したウェブアンケート、資料請求・問合せ、キャンペーンやイベント応募な

どのフォーム入力ページを作成できるウェブアンケートシステム。

「WEBCAS mailcenter」は、企業の問い合わせ窓口に届く大量のメールや

フォームからの問い合わせをサーバー上で一元管理することで、複数の部署

や担当者がグループウェアとして共有・管理することができるシステム。こ

れにより返信漏れ・二重対応を防ぎながら効率的に返信対応することが可能

な仕組み。

製品・サービスの種類

事 業 概 要

会社概要

75.3%

18.0%

0.8% 5.9%

図1.事業別売上構成比(19/3期)

アプリケーション

コンサルティング

オーダーメイド開発

EC(出所)決算短信より当研究所作成

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アナリストレポート・プラットフォーム 7

製品・サービスの特徴

「WEBCAS」シリーズは様々なオペレーティングシステム(OS)・データベ

ース・Webサーバー・Mail サーバーに対応しているため、導入の際にクライ

アントの使用環境に左右されにくい。顧客情報などの複数のデータベースと

も自由に接続・連携ができ、それぞれのデータベースから同一の条件で顧客

情報を抽出することができる。

「WEBCAS」シリーズは導入企業の予算や用途、運用環境などに応じ、自社

環境に導入できるパッケージ導入版からサーバー管理が不要なクラウドサ

ービスまで、幅広い提供形式・料金プランを用意する。EC(electronic

commerce:電子商取引)運営企業やメーカー、生命保険、金融機関、官公庁

など大手企業を中心に 4000社以上の採用実績がある。処理能力の高い高性

能な製品を特徴としていることから、主要取引先には性能要求が高い傾向が

ある大手企業がずらりと並ぶ。

クラウドサービスはインターネット経由でシステムを利用するのに対し、

パッケージ導入版は顧客の環境にシステムを構築・運用(オンプレミス型)

する違いがある。提供対象別では、クラウドサービス(SaaS型)は主に大

手企業から中堅企業、クラウドサービス型(ASP型)は主に中堅企業から中

小企業、パッケージ導入版は主に大手企業を中心に中堅企業までとなってい

る。

クラウドサービスはパッケージ導入版より低価格での導入が可能。共有ア

プリケーションを利用することで安価かつ迅速に導入可能な ASP型と、

表1.WEBCAS製品ラインナップメッセージを届ける

メール配信システムe-mail

LINE配信システムtaLkSMS配信システム

SMSDM印刷・郵送システム

DM声を集める・理解する

アンケート・フォーム作成システムformulator

問い合わせに対応する問い合わせメール共有システム

mailcenter会員登録の仕組みをつくる

顧客管理システムCRM

(出所)会社ホームページより当研究所作成

問い合わせメールを複数人で一元管理できるメール共有・メール管理システム

業界最高レベルの高速配信と抜群の到達環境を実現したメール配信システム

自社の会員データと連携してパーソナライズLINEメッセージ配信を実現するシステム

メール配信システムのデータベースと連動し、モバイルにショートメッセージを配信するシステム

DMハガキを1通から、インターネットで印刷・郵送できるシステム

PC・モバイル対応、高セキュリティのアンケート・フォーム作成システム

会員を集めて管理し、メルマガやアンケートでコミュニケーションができるお手軽CRM

製品・サービスの特徴

事 業 概 要

会社概要

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アナリストレポート・プラットフォーム 8

カスタマイズにも対応する SaaS型を提供する。パッケージ導入版は導入費

用が高くなるが、個人情報をクラウド環境に預けられない、クラウド環境で

はセキュリティ要件が満たせないといった顧客に向く。自社環境にシステム

を構築するため個人情報などを厳重に管理し易い。

メール配信システム「WEBCAS e-mail」の場合、表 2 のような提供形式・

価格体系を用意している。

営業活動

営業活動は、同社の営業部門であるセールスマーケティンググループが営

業および販売を担う。こうした直接販売のほか、一部で販売協力契約を締結

したパートナー企業(販売代理店)を通じた間接販売も行う。直接販売では

多くの場合、商談への入り口となる Web経由での問い合わせから始まる。

表2.「WEBCAS e-mail」の提供形式・価格体系パッケージ導入版

ASP型 SaaS型 導入型

概要

「WEBCAS」の各機能を、インターネットを

通じて、顧客が利用期間に応じてレンタル

できるサービス。顧客企業が共有でアプ

リケーションを利用するため、安価かつ迅

速に利用できる。

「WEBCAS」の各機能を、インターネットを

通じて、顧客が利用期間に応じてレンタル

できるサービス。顧客専用のアプリケー

ションを用意することができるため、大規

模運用や他システムとの連携、カスタマイ

ズが可能。

「WEBCAS」をパッケージとして提供する

形式。自社サーバーに導入して運用する

ことができるため、自社環境で個人情報

を厳重に管理することが可能。

初期費用:3万円~ 初期費用:50万円~ ライセンス費用:200万円~月額費用:1万円~ 月額費用:10万円~ 保守費用:別途

利用開始まで2営業日

契約期間は最短1カ月

(出所)会社ホームページ、有価証券報告書より当研究所作成

自社の既存システムとフレキシブルに連

携可能

VPN等で自社のデータベースとも接続可

能自社のセキュリティポリシーに対応可能

形式クラウドサービス(月額課金)

費用

特徴など

クラウド環境ながら必要な機能をカスタマ

イズで拡張可能

事 業 概 要

会社概要

営 業 活 動

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アナリストレポート・プラットフォーム 9

同社の主力製品であるメール配信システムは取り扱う事業者が国内に数

多くある。同社の製品よりも低価格で提供する事業者も多いが、同社では低

価格路線から距離を置いている。同社の製品は大規模配信などが可能な高性

能を特徴としており、信頼性や機能性、柔軟性などシステム性能に対する要

求水準が高い大手企業~中堅企業を中心に据えている。中小企業も対象とし

ているものの、高機能を前面に押し出すことで、価格競争に巻き込まれない

ようにしている。高機能・高価格帯の市場に対応した製品を供給可能な業者

は限られる模様で、実質的な競合先はそれほど多くない。

システムの所有から利用というクラウドサービスの流れが強まる中で、提

供方法をクラウドサービスのみに絞る同業他社も増えており、オンプレミス

型を希望する顧客は必然的に同社製品を採用するケースが増えているよう

だ。同社は顧客要望への対応があり、残存者利益が享受できるパッケージ導

入版の提供を続けつつ、クラウドサービスを重点強化している。

同社と直接競合する上場企業は限られることから、ここでは同社と事業領

域が近い類似企業と財務比較をしてみたい。対象企業は、クラウド型の情報

資産プラットフォームを提供するパイプド HD(3919)、交通費・経費精算シ

ステム、問い合わせメール共有・管理システムをクラウドで提供するラスク

(3923)、インターネット広告の配信、集客に係るシステムを提供するジー

ニー(6562)の 3社。会社によって決算月が異なるため、実績はすべて直近

本決算ベースとする(表 3参照)。

競 合 分 析

会社概要

高性能を武器に低

価格製品と一線を

画す

エイジアと類似企

業との財務比較

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アナリストレポート・プラットフォーム 10

各社の直近本決算の業績を見ると、事業規模ではジーニーが大きく、次い

でラスク、パイプド HD、エイジアの順。一方、営業利益率は好採算のクラ

ウドサービスを牽引役にエイジアが 21.8%で群を抜き、ラスクも 16.8%と

利益率が高い。パイプド HD は 7.3%、ジーニーは M&A などの投資を実施し

ていることもあり営業赤字だった。ジーニーは 18/3期の営業利益率も 3.7%

にとどまり、事業規模こそ大きいが利益率が低い。

各社の今期の業績計画をみると、各社(非開示のラスクを除く)ともに増

収、営業増益(ジーニーは黒字転換)の計画。エイジアは好採算のクラウド

サービスの拡大などを見込む。パイプド HD は前期までの積極採用による人

件費の増加を増収効果で吸収する見込み。ジーニーは採算改善を見込んでい

る。

表3.類似企業の財務比較 単位:百万円

19/3期 20/3期 19/2期 20/2期 19/3期 20/3期 19/3期 20/3期売上高 1,703 1,950 5,419 6,500 8,743 - 14,954 15,572営業利益 371 446 394 1,200 1,468 - -310 23

営業利益率 21.8% 22.9% 7.3% 18.5% 16.8% - -2.1% 0.1%経常利益 370 445 390 1,190 1,474 - -330 7純利益 129 300 140 700 1,018 - -544 -39 総資産 1,688 - 5,877 - 6,142 - 4,635 -

うち現預金 845 - 2,423 - 2,236 - 1,618 -(総資産に占める割合) 50.1% - 41.2% - 36.4% - 34.9% -

有利子負債 0 - 2,188 - 0 - 251 -ネットキャッシュ 845 - 235 - 2,236 - 1,367 -自己資本 1,357 - 2,413 - 4,593 - 2,707 -

自己資本比率 80.4% - 41.1% - 74.8% - 58.4% -D/Eレシオ 0.0 - 0.9 - 0.0 - 0.1 -ROE 9.1% - 5.9% - 24.5% - -18.4% -

財務レバレッジ 1.2 - 2.3 - 1.4 - 1.7 -総資産回転率 1.0 - 1.0 - 1.5 - 2.9 -売上高純利益率 7.6% 15.4% 2.6% 10.8% 11.6% - -3.6% -0.3%

営業CF 209 - 458 - 1,120 - 203 -営業CFマージン 12.3% - 8.5% - 12.8% - 1.4% -

投資CF -217 - -383 - -463 - -995 -財務CF -268 - 431 - -141 - -137 -FCF -8 - 75 - 657 - -792 -(注1)各社の業績は、直近実績→今期の会社計画。ラスクは計画の開示なし(注2)D/Eレシオ:負債資本倍率=有利子負債÷自己資本(注3)CF:キャッシュフロー、FCF:フリーCF=営業CF+投資CF、営業CFマージン=営業CF÷売上高、    ネットキャッシュ=現預金-有利子負債、ROE:自己資本利益率(分解式は表3補足を参照)(出所)各社決算短信より当研究所作成

2352 3919 3923 6562

エイジア パイプドHD ラスク ジーニー

表3補足.ROEの3分解式

財務 総資産 売上高

レバレッジ(倍) 回転率(回) 純利益率(%)

純利益 総資産 売上高 純利益

自己資本 自己資本 総資産 売上高

ROE = × ×

= × ×

競 合 分 析

会社概要

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アナリストレポート・プラットフォーム 11

財務面をみると、エイジアとラスクの財務体質の良さが目立つ。自己資本

比率はエイジアが 80.4%、ラスクが 74.8%で続く。ジーニーは 58.4%、パ

イプド HDが 41.1%。エイジア、ラスクは有利子負債がなく自己資本比率の

高さに繋がっている。パイプド HDとジーニーは有利子負債を活用しており、

D/E レシオはパイプド HD が 0.9 倍、ジーニーが 0.1 倍。ただ、両社ともに

現預金が有利子負債を上回るネットキャッシュ(いわゆる実質無借金。有利

子負債が現預金を上回るとネットデット)であり、エイジア、ラスクを含め

各社ともに財務体質は健全とみなせる。

次に、株主の持分である株主資本(≒自己資本)を使って効率的に利益を

稼いだかをみるために、ROE(自己資本利益率)を比較する。ROEは 8%を上

回ることが目安とされる。ラスクが 24.5%で他社を引き離し、エイジアも

9.1%で目安を上回る。パイプド HDは 5.9%にとどまり、ジーニーは最終赤

字のため ROEがマイナスだった。最終赤字は株主資本の毀損を意味する。

EOE は 3分解して要因を探ることが多い。エイジアと各社を比較(ジーニ

ー以外)すると、高 ROE のラスクは負債活用の程度を示す財務レバレッジ、

効率性を示す総資産回転率、純利益率のいずれも高く、ROEの差になってい

る。パイプド HD は財務レバレッジこそ上回るが、純利益率が低い。なお、

エイジアは営業利益率でラスクを上回る半面、純利益率は下回る。これは一

過性の特別損失を計上したため。純利益は一過性の特別損益などでその水準

が変わることから、本業の儲けである営業利益と純利益の乖離が大きいよう

なら、その要因も確認しておきたい。パイプド HD も特別損失の計上などが

利益水準を押し下げ、ROE の低下に繋がった。

以上からエイジアの特徴として、事業規模こそ類似企業より小さいが、ク

ラウドサービスの着実な拡大で営業利益率は 20%を上回り高収益。強固な

財務基盤にも優位性がある。一方、総資産回転率はもう少し高める余地があ

りそうだ。総資産のうち現預金が 5割を占めており、運転資本を差し引いた

余剰資金は有効活用できよう。活用手段として、M&A(合併・買収)を含め

た投資拡大、配当性向の引き上げ(20/3 期の会社計画 30%)や自社株買い

による株主還元などが考えられる。なお、同社は研究開発投資や M&A、株主

還元に取り組んでおり、19/3 期は M&A に加え、自社株買いと自己株式の消

却を実施した。引き続きこうした取り組みに注目したい。

19/3 期の ROE は一過性の要因で 10%を下回ったが、こうした要因がなく

なる 20/3 期は 2 桁に乗る見通しで、当研究所は効率的な事業運営がなされ

ていると評価している。

各社ともに財務体

質は健全

エイジアは規模こ

そ小さいが収益性

が高く、強固な財

務基盤に優位性

競 合 分 析

会社概要

エイジアの ROE は

9.1%

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アナリストレポート・プラットフォーム 12

業績解説

19/3期の連結業績は売上高が前期比12%増の17.0億円、営業利益は同7%

増の 3.7億円。10期連続の増収、4期連続の営業増益だったものの、営業増

益率は増収率を下回った。製品開発の方針転換(後述)に伴い、ソフトウェ

ア資産への計上を想定していた一部を当期の費用として計上したことが響

いた。減損損失の計上により純利益は同 45%減の 1.3億円となった。

同社のソフトウェア開発投資は主に人件費(開発人件費)であり、用途に

応じて労務費(売上原価)、研究開発費(販売管理費)、無形固定資産のソフ

トウェア(ソフトウェア仮勘定含む)に分けて計上する(図 2参照)。労務

費、研究開発費は当期の費用となるが、ソフトウェアは費用計上が繰り延べ

られ、ソフトウェアの販売に伴って減価償却費として複数年にわたって費用

計上する。今回の方針転換により、これまで計上していた一部のソフトウェ

アの資産性が低下したことから、減損損失を計上。また、ソフトウェアへの

計上を想定していた投資額も当期の費用として処理したことから、利益を押

し下げた。

表4.業績動向 単位:百万円18/3期通期

A B B/A B-A売上高 1,523 1,703 11.9% 181

アプリケーション 1,228 1,282 4.4% 54コンサルティング 272 305 12.3% 34オーダーメイド開発 21 14 -35.4% -8 EC - 100 - -

営業利益 348 371 6.7% 23営業利益率 22.9% 21.8% - -

経常利益 361 370 2.3% 8純利益 236 129 -45.1% -106 (注)EC事業は子会社設立に伴い19/3期から追加(出所)決算短信などより当研究所作成

19/3期通期

業 績

会社概要

19/3 期は 12%

増収、7%営業増

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アナリストレポート・プラットフォーム 13

中核のアプリケーション事業は売上高が前期比 4%増の 12.8億円。ライ

センス販売は大型案件の失注から落ち込んだが、好採算かつ、継続的に収益

貢献するストック型ビジネスのクラウドサービス(ネット経由型サービス)

が順調に推移した。クラウドサービスでは、同一環境を複数の顧客が共同利

用する低価格帯の「ASPプラン」は短期利用の割合が増加し月額売上が伸び

悩んだものの、顧客専用環境を用意する高価格帯の「SaaSプラン」が営業

体制の再編・強化などから大幅に伸びた。

コンサルティング事業は売上高が同 12%増の 3.1億円。既存の大規模顧

客向けメールコンテンツ案件に加え、子会社 FUCA(フーカ)が推進してき

た Webの戦略提案から入る営業施策、体制構築が奏功した。オーダーメイド

開発事業は売上高が同 35%減の 14百万円。優先順位の高いアプリケーショ

ン事業での製品開発に社内エンジニアを優先投入しており、新規の受注活動

を積極的には展開せず、利益率の高い案件のみ手掛けた。EC事業は売上高

が 1億円(前期比較なし)。事業譲受(18年 9月)に伴い新設した事業セグ

メントで 100%子会社「ままちゅ」がベビー服・ベビー用品の通販サイト「べ

びちゅ」を運営する。EC事業は「WEBCAS」シリーズの製品開発の強化を狙

い、ECビジネスのマーケティングノウハウを吸収し、製品企画や機能要件

等に反映させる目的を持つ。

19/3期末の従業員数(図 3参照)は全体で前期末比 21名増の 144名体制

(前期末比 17%増)。同社単体では退職者が出たことから 1名減少したもの

の、子会社「ままちゅ」の従業員数が加わったことなどから大幅に増加した。

製品開発の方針を転換したが、開発体制はこれまで通り拡大路線を維持する

ことから、20/3期も従業員数が増加する見通し。

図2.開発投資の計上区分

主に労務費 損益

(売上原価) 計算書

開発投資額 研究開発費 損益(主に人件費) (販管費) 計算書

ソフトウェア 貸借

ソフトウエア仮勘定 対照表

減価償却費 損益

(売上原価) 計算書

減損損失 損益

(特別損失) 計算書

(出所)会社資料をもとに当研究所作成

個別案件のカスタマイズ対応を中心に売上計上案件にかかる稼働分

既存製品の機能改善や改修等のマイナーバージョンアップにかかる稼働分

新製品やメジャーバージョンアップにより将来的な収益獲得に資する開発案

件にかかる稼働分

ソフトウェア製品の販売開始に伴い費用化

ソフトウェア資産の資産性が低下したことにより取り崩し

アプリケーション事

業は 4%増収

業 績

会社概要

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アナリストレポート・プラットフォーム 14

● 会社計画

同社は製品開発の方針を転換する。「クロスチャネルマーケティングプラ

ットフォームの構築」を掲げ、マーケティングオートメーション(MA)「WEBCAS

Auto Relations」の開発に重点的に取り組んできた。18年 12月には「WEBCAS

Auto Relations」Ver.3.0 を発売し、既に数 10件の受注も獲得した。しか

し、Ver.3.0に続くバージョン開発の是非について検討を重ねた結果、競合

製品に追いつくことが困難とみて次期バージョンの開発を断念。総花的な製

品開発で開発リソースを分散させるより得意領域に集中し、MA市場への参

入は他社 MA製品と連携した形で行うことが合理的な戦略と判断した。

今後の製品戦略は従来の「クロスチャネルマーケティングプラットフォー

ム」から、人工知能をはじめとするデータ分析ソリューションと連携する「メ

ッセージ配信最適化ソリューション」へと舵を切る。同社が長年培ってきた

メール配信性能の技術優位性をさらに向上させるとともに、LINEでのパー

ソナライズ配信システム「WEBCAS taLk」やショートメッセージ配信システ

ム「WEBCAS SMS」などのメール配信以外でのメッセージ配信ラインナップ

の機能強化などを通して、「WEBCAS」シリーズ全体の製品力を向上する。長

期的には「顧客企業の売上アップ」を支援できる新しいソリューションを開

発する。

20/3期は、メール配信システム「WEBCAS e-mail」と「WEBCAS taLk」

のバージョンアップを実施する。「WEBCAS e-mail」では、標準版のメール

配信システムに多様な言語で海外外国人向けメール配信が行えるようにす

る。また、操作画面を全面的にリニューアルしてデザイン性を高めるととも

に、メール本文(特に HTML メールの本文)を簡単に編集できる機能を新た

に搭載する。「WEBCAS taLk」は新たに会員データの連携パターンを拡充

製品開発の方針を

転換

58 62 69 74 82 81

0

40

80

120

160

14/3期末 15/3期末 16/3期末 17/3期末 18/3期末 19/3期末

(人)

(注)従業員、子会社従業員は契約・派遣社員を含む

(出所)会社資料より当研究所作成。計画は会社

図3.役職員数の推移

子会社従業員 子会社役員

従業員 役員

9688

74

144

105

123

業 績

会社概要

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アナリストレポート・プラットフォーム 15

し、より多くの企業がスムーズに導入できるようにする。従来「WEBCAS Auto

Relations」の開発に割いていたエンジニアリソースを既存製品の機能改善

へ振り向け、スピーディーに顧客ニーズに応える開発体制にする。同時に、

これまで研究してきた人工知能の活用成果の汎用化、水平展開の企画、長期

的な成長へ向けた新しいソリューションの企画を推進する。

20/3期の連結業績について会社側は売上高 19.5億円(前期比 14%増)、

営業利益 4.5億円(同 20%増)を計画。採用関連費用や人員増に伴う人件

費などが増加するものの、好採算のクラウドサービスの拡大などで吸収する

見通し。事業別売上高では、アプリケーション事業は同 10%増の 14.1億円

を計画。クラウドサービスが拡大するほか、ライセンス販売も前期を上回る

見通し。コンサルティング事業は同 8%増の 3.3億円を計画。コンサルティ

ングサービスが大幅に伸び、前期の一過性の大型案件の反動減を吸収する見

通し。オーダーメイド開発事業は同微減の 14百万円を計画。アプリケーシ

ョン事業での製品開発にエンジニアを優先投入し、保守案件のみ継続する方

針。EC事業は前期から加わった EC子会社が通期で寄与することに加え、販

売施策のてこ入れなどもあり、同 98%増の 2億円を計画。

当研究所予想

20/3期の連結業績について当研究所では売上高 19.6億円(前期比 15%増)、

営業利益 4.5億円(同 21%増)を予想する。コンサルティングサービス事

業のみやや強めにみているが、概ね会社計画と同水準を見込む。

表5.業績見通し 単位:百万円19/3期実績

A B B/A C C/A D D/C売上高 1,703 1,950 14.5% 1,960 15.0% 2,180 11.2%アプリケーション 1,282 1,406 9.6% 1,406 9.6% 1,546 10.0%コンサルティング 305 330 7.9% 340 11.1% 380 11.8%オーダーメイド開発 14 14 -0.8% 14 -0.8% 14 0.0%EC 100 200 98.3% 200 98.3% 240 20.0%

営業利益 371 446 20.0% 450 21.1% 530 17.8%営業利益率 21.8% 22.9% - 23.0% - 24.3% -

経常利益 370 445 20.1% 449 21.2% 529 17.8%純利益 129 300 131.1% 303 133.4% 355 17.2%

(出所)会社資料などより当研究所作成

会社 当研究所 当研究所20/3期予想 21/3期予想

20/3期は 15%増

収、21%営業増

益を予想

20/3 期は 14%

増収、20%営業増

益を計画

業 績

会社概要

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アナリストレポート・プラットフォーム 16

子会社の増加もあり人件費負担は増えているが、開発要員の戦力化が進み

開発体制は充実している。アプリケーション事業に比べ収益性が劣るオーダ

ーメイド開発事業を戦略的に縮小するなど、メリハリの利いた経営資源の配

分も評価できる。前期は一部製品の開発方針の変更に伴い研究開発投資に係

る費用が増加したが、今期は通常の費用計上の流れに戻る。営業利益率は引

き続き 20%を上回る見通し。

当研究所は 21/3期の連結業績について、売上高 21.8億円(前期比 11%

増)、営業利益 5.3億円(同 18%増)を予想する。アプリケーション事業は

クラウドサービスが伸びる見通し。コンサルティング事業、EC事業も伸長

する見通し。人員増による人件費の増加などを想定するが吸収する見込み。

同社は株主優待制度を導入しており、100株(1単元)以上保有の株主に

対して一律クオカード 1000 円分を提供していた。今回、中長期的な保有を

促すため株主優待制度を変更し、「エイジア・プレミアム優待倶楽部」を新

設する。新制度では 200株(2単元)以上保有する株主を対象とし、保有株

式数、保有期間に応じてインセンティブが働くよう制度設計した(表 6参照)。

「株主優待ポイント表」に基づいて、基準日の株主に対し株主優待ポイン

トを進呈する。株主優待ポイントは株主限定の特設インターネットサイト

「エイジア・プレミアム優待倶楽部」で食品、電化製品、ギフト、旅行・体

験などに交換できる仕組み。「エイジア・プレミアム優待倶楽部」は 19年

11 月に開設する予定。

表6.株主優待ポイント表

初年度(年間) 2年目以降(年間)200株~299株 2,000ポイント 2,200ポイント300株~399株 3,000ポイント 3,300ポイント

400株~499株 5,000ポイント 5,500ポイント500株~699株 7,000ポイント 7,700ポイント700株~以上 10,000ポイント 1,1000ポイント(出所)会社資料より当研究所作成

保有株式数保有期間

21/3 期は 11%

増収、18%営業増

益を予想

業 績

会社概要

株主優待制度を変

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アナリストレポート・プラットフォーム 17

2017/3 2018/3 2019/3 2020/3予

(アナリスト)

株 価 推 移

株価(年間高値) 円 1660.0 1971.0 1810.0 -

株価(年間安値) 円 785.5 911.0 985.0 -

月間平均出来高 百株 23,090 13,290 10,134 -

業 績 推 移

売 上 高 百万円 1,330 1,523 1,703 1,960

営 業 利 益 百万円 287 348 371 450

経 常 利 益 百万円 291 361 370 449

当 期 純 利 益 百万円 176 236 129 303

E P S 円 43.04 57.98 32.29 76.55

R O E % 15.1 17.6 9.1 20.3

貸 借 対 照 表

主 要 項 目

流 動 資 産 合 計 百万円 1,136 1,370 1,168 -

固 定 資 産 合 計 百万円 368 480 519 -

資 産 合 計 百万円 1,505 1,851 1,688 -

流 動 負 債 合 計 百万円 269 315 274 -

固 定 負 債 合 計 百万円 29 36 48 -

負 債 合 計 百万円 299 352 323 -

株 主 資 本 合 計 百万円 1,190 1,375 1,268 -

純 資 産 合 計 百万円 1,206 1,498 1,364 -

キャッシュフ

ロ ー 計 算 書

主 要 項 目

営業活動による CF 百万円 239 349 209 -

投資活動による CF 百万円 -167 -54 -217 -

財務活動による CF 百万円 -122 -51 -268 -

現金及び現金同等

物 の 期 末 残 高 百万円 878 1,122 845 -

(注)17年 3月 29日を権利落ち日として、株式分割(1株→2株)を実施。株価、月間平均出来高、EPSはこれを遡及修正

(出所)㈱QUICK

上記チャート図の一部又は全部を、方法の如何を問わず、また、有償・無償に関わらず第三者に配布してはいけません。

上記チャート図に過誤等がある場合でも㈱QUICK 社及び東京証券取引所は一切責任を負いません。

上記チャート図の複製、改変、第三者への再配布を一切行ってはいけません。

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アナリストレポート・プラットフォーム 18

事業に関するリスク

※競合他社について

自社開発アプリケーション「WEBCAS」シリーズが属する CRM市場は、ベン

チャー企業を中心に多数の企業が参入している分散型市場となっている。し

かし、資金力、ブランド力を有する大手企業の参入や全く新しいコンセプト

および技術を活用した画期的なシステムを開発した競合他社が出現した場

合には、同社の事業に影響を及ぼす可能性がある。

※法的規制について

電子メールによる一方的な商業広告の送りつけ(いわゆる迷惑メール)の

問題に対応するため、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」が

制定されている。主要製品「WEBCAS e-mail」に制約を受ける事実はないが、

悪徳業者が迷惑メール等に利用できないよう、「WEBCAS e-mail」が接続す

るメールサーバーには技術的制限をかけている。これにより、悪徳業者がメ

ールサーバーを意図的に変更し、制限を避けてメール配信をすることができ

ない仕組みになっている。

販売先に対しては、「メール配信を行う際は、顧客からメールを受け取る

許可を必ず得ること」を確認または指導してから販売しているほか、迷惑メ

ールの配信業者への販売防止のため、納入先を調査している。しかし、

「WEBCAS e-mail」が悪徳業者に利用され、信用の失墜が生じた場合には、

同社の業績に影響を及ぼす可能性がある。

※納期遅延等

アプリケーション事業では、自社製品「WEBCAS」のカスタマイズを行って

おり、サービスソリューション事業でも顧客からの個別仕様に基づきウェブ

サイトや企業業務システムの開発、コンテンツ制作などを行う。その際、開

発案件で想定外の工数増加や納期遅延等が生じた場合には、同社の業績に影

響を及ぼす可能性がある。

リ ス ク 分 析

会社概要

事 業 に

関 す る リ ス ク

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アナリストレポート・プラットフォーム 19

デ ィ ス ク レ ー マ ー

会社概要

<指標の説明について>

本レポートに記載の指標に関する説明は、東京証券取引所ウェブサイトに掲載されております。

参照 URL ⇒ https://www.jpx.co.jp/listing/ir-clips/analyst-report/index.html

1.本レポートは、株式会社東京証券取引所(以下「東証」といいます。)が実施する「アナリストレポー

ト・プラットフォーム」を利用して作成されたものであり、東証が作成したものではありません。

2.本レポートは、本レポートの対象となる企業が、その作成費用を支払うことを約束することにより作

成されたものであり、その作成費用は、当該企業が東証に支払った金額すべてが、東証から株式会社 QUICK

(以下「レポート作成会社」といいます。)に支払われています。

3.本レポートは、東証によるレビューや承認を受けておりません(ただし、東証が文面上から明らかに

誤りがある場合や適当でない場合にレポート作成会社に対して指摘を行うことを妨げるものではありま

せん)。

4.レポート作成会社及び担当アナリストには、この資料に記載された企業との間に本レポートに表示さ

れる重大な利益相反以外の重大な利益相反の関係はありません。

5.本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的として作成されたもので、有価証券の

取引及びその他の取引の勧誘又は誘引を目的とするものではありません。有価証券の取引には、相場変

動その他の要因により、損失が生じるおそれがあります。また、本レポートの対象となる企業は、投資

の知識・経験、財産の状況及び投資目的が異なるすべての投資者の方々に、投資対象として、一律に適

合するとは限りません。銘柄の選択、投資判断の最終決定は、投資者ご自身の判断でなされるようにお

願いいたします。

6.本レポート作成にあたり、レポート作成会社は本レポートの対象となる企業との面会等を通じて、当

該企業より情報提供を受けておりますが、本レポートに含まれる仮説や結論は当該企業によるものでは

なく、レポート作成会社の分析及び評価によるものです。また、本レポートの内容はすべて作成時点の

ものであり、今後予告なく変更されることがあります。

7.本レポートは、レポート作成会社が信頼できると判断した情報に基づき記載されていますが、東証及

びレポート作成会社は、本レポートの記載内容が真実かつ正確であり、そのうちに重要な事項の記載が

欠けていないことやこの資料に記載された企業の発行する有価証券の価値を保証又は承認するものでは

ありません。本レポート及び本レポートに含まれる情報は、いかなる目的で使用される場合におきまし

ても、投資者の判断と責任において使用されるべきものであり、本レポート及び本レポートに含まれる

情報の使用による結果について、東証及びレポート作成会社は何ら責任を負うものではありません。

8.本レポートの著作権は、レポート作成会社に帰属しますが、レポート作成会社は、本レポートの著作

権を東証に独占的に利用許諾しております。そのため本レポートの情報について、東証の承諾を得ずに

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