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MP 01240 蛍光 Ca2インジケーター
製品情報
2011 年 2 月 2 日改訂
蛍光 Ca2+インジケーター
はじめに
1989 年に発表されて以来 1、fluo-3 イメージングに
よって、Ca2+シグナル伝達の多くの基本プロセスの
空間的動態が明らかにされてきました 2-4。それに加
え、fluo-3 はフローサイトメトリー5、「ケージド (caged)」キレート剤、セカンドメッセンジャー、お
よび神経伝達物質の光活性化を行う実験 6, 7、および
細胞ベースの薬理学的スクリーニング 8 に広く利用
されてきています。これらの研究における fluo-3 の
も重要な特長として、吸収スペクトルがアルゴン
イオンレーザー源による 488 nm での励起に対応し
ていること、および Ca2+の結合により蛍光強度が著
しく増加することが挙げられます。 fluo-4 は fluo-3 の 2 個の塩素置換基をフッ素で置
き換えた類似体です。このごくわずかな構造変化に
よって 488 nm における蛍光励起が増大し、その結果
共焦点顕微鏡、フローサイトメトリー、およびマイ
クロプレートスクリーニングのシグナルレベルが向
上します。また、fluo-5F、fluo-5N、fluo-4FF は、Ca2+
への結合親和性を低下させた fluo-4 の類似体であり、
fluo-3 や fluo-4 の応答を飽和させる可能性のある 1 µM から 1 mM の範囲の細胞内カルシウムレベルを
検出するのに適しています。
fluo-4 dextran は、fluo-4 を生物学的に不活性なデ
キストランキャリアー(分子量 1 万)と結合させた
もので、不均一な線維束中の長い軸索投射によるシ
ナプス前終末における過渡 Ca2+の測定法として、新
規で大きな可能性を秘めたツールを提供します 9。
Molecular Probes には、fluo-4 iodoacetamide および
fluo-4 cadaverine という 2 種類の活性型 fluo-4 が含ま
れます。fluo-4 iodoacetamide は、タンパク質、ペプ
チド、およびチオール修飾表面などのスルフィドリ
ル基と反応し、ユニークな蛍光性の Ca2+感受性プロ
ーブを形成します。アミン基を持つ fluo-4 cadaverineは、アルデヒド、ケトン、および活性エステルと反
応します。
試薬 Fluo-3、Fluo-4、Fluo-5F、Fluo-5N、および Fluo-4FF
fluo-3、fluo-4、fluo-5F、fluo-5N、および fluo-4FFは、水溶性塩、デキストラン、カダベリン、あるい
はチオール反応性のヨードアセトアミド、さらに細
胞浸透性のアセトキシメチル(AM)エステルとし
て提供しています。以下に詳細を示します。 Fluo 製品 1 mg 塩 • F1240 および F3715 Fluo 製品 500 µg 塩 • F14200、F14221、F14203、および F23980 Fluo-4 dextran • Fluo-4 dextran は、5 mg 単位の固体状で提供して
います。(F14240 および F36250) Fluo-4 cadaverine • Fluo-4 cadaverine は、500 µg 単位で提供していま
す。(F36201) Fluo-4 iodoacetamide • Fluo-4 iodoacetamide は、500 µg 単位で提供してい
ます。(F36200) Fluo-3, AM • F1241 は、1 mg 単位の固体状で提供しています。 • F1242 は、50 µg 入りのバイアル 20 本のセットで
提供しています。 • F14218 は、DMSO 中 1 mM の既成溶液 1 mL とし
て提供しています。 • F14242 は、ハイスループットスクリーニング用
に大量の提供が可能です。1 mg 入りのバイアル
40 本のセットで提供しています。 • F23915は、HPLC純度規格98%以上のFluoroPure™
グレード製品で、50 µg 入りのバイアル 10 本セッ
トで提供しています。
ひと言 製品受領後直ちに下記の条件下で保
存してください。 • -20˚C 以下 • 乾燥条件 • 遮光
蛍光 Ca2インジケーター 2
Fluo-4, AM • F14201 は 50 µg 入りのバイアル 10 本のセットで
提供しています。 • F14202 はハイスループットスクリーニング用に
大量の提供が可能です。1 mg 入りのバイアル 5本のセットで提供しています。
• F14217はDMSO中 1 mM の既成溶液 500 µLとし
て提供しています。 • F23917 は HPLC 純度規格 98%以上の FluoroPure™
グレード製品で、50 µg 入りのバイアル 10 本セッ
トで提供しています。 Fluo-5F, AM、Fluo-5N, AM、および Fluo-4FF, AM • それぞれ 50 µg 入りのバイアル 10 本のセットで
提供しています(F14222、F14204、および F23981)。 MP 01240 蛍光 Ca2+インジケーター
以上の製品は、受領後直ちに乾燥・遮光条件下、
-20˚C 以下で保存してください。AM エステルは(特
に溶液中において)加水分解を受けやすい試薬です
が、お届けしたバイアル中で 低 6 ヵ月間は保存可
能です。 AM エステルは無水ジメチルスルホキシド
(DMSO)を用いて溶液とし、分解による細胞内ロ
ーディング能の損失を防ぐため、直ちに(1 週間以
内に)使用してください。AM エステルの DMSO ス
トック溶液は、冷凍状態で遮光・乾燥条件下におい
て保存してください。塩のストック溶液は、蒸留水
あるいは水溶性バッファーを用いて調製し、冷凍状
態(-20˚C 以下)で遮光条件下において保存してく
ださい。上記のストック溶液は、 低 6 ヵ月間は安
定です。 AM エステルが分解しているかどうかを、以下に
示す蛍光光度計を用いた簡単な試験で確認すること
ができます。少量の AM エステルストック溶液を一
定量採り、カルシウムフリーバッファーで 終濃度
が約 1 µM となるように希釈します。この溶液をキ
ュベットに移し、適正な波長設定にて(485 nm 励起、
520 nm 放射)、蛍光度を測定します。カルシウムを
各試薬の飽和濃度まで(fluo-3 および fluo-4 におい
ては 5 µM 以上、fluo-5F、fluo-5N、および fluo-4FFにおいては 1 mM 以上)加え、再び蛍光度を測定し
ます。両者の蛍光度に有意な差は生じないはずです
(注:いずれの蛍光度も極めて低いはずです)。カル
シウム添加による蛍光度(2 回目の測定値)の著し
い増加は、AM エステルの一部が加水分解されてい
ることを示します。
特性
fluo-3、fluo-4、およびそれらの誘導体はすべて、
Ca2+に結合すると大きな蛍光度増加を示します。UV光励起型インジケーターである fura-2 および indo-1で見られるようなスペクトルシフトは起こりません。
Ca2+結合による蛍光度増加は通常 100 倍を超えます10。fluo-3 および fluo-4 の物理的および分光学的特性
を表 1 に示しています。fluo-5F、fluo-5N、および
fluo-4FF の特性は、イオン解離定数が高い点を除い
て、fluo-4 によく似ています。表1と同条件下で測
定した fluo-5F、fluo-5N、および fluo-4FF のイオン解
離定数 Kd (Ca2+)は、それぞれ 2.3 µM、90 µM、およ
び 9.7 µM です。fluo-4 dextran に関しては、Kd (Ca2+)が遊離型のインジケーターと比較して幾分高く、高
アフィニティ型の Kd (Ca2+)は約 600 nM、低アフィニ
ティ型の Kd (Ca2+)は約 3 µM です(各バッチに関す
る値はラベルに印刷されています)。 アプリケーション 細胞ローディングのガイドライン
水溶性塩型 Ca2+インジケーターの細胞ローディン
グには、マイクロインジェクション 7、パッチピペ
ット溶液への添加 11、あるいは当社の Influx™飲作用
細胞ローディング試薬(I14402)を使用することが
可能です。fluo-4 dextran は、濃度 20% w/v(200 µg/µL)までの水溶液として、マイクロインジェクションを
用いた細胞ローディングに使用可能です。fluo-4 の
蛍光度は、Ca2+が存在しない場合は本質的に弱いた
め 9、標識細胞の初期同定にレファレンスマーカー
(例えば、Texas Red で標識した分子量 1 万のデキス
トランである D 1828)を同時に注入する必要が生じ
る可能性があります。細胞浸透性 AM エステルを用
いて細胞ローディングを行う場合の、入門ガイドを
以下に示します。さらに詳しい方法に関しては、他
の文献等 12, 13をご参照ください。
蛍光 Ca2インジケーター 3
表 1. fluo-3 と fluo-4 の比較
* Ca2+の解離定数は、100 mM KCl、10 mM MOPS、および 0~10
mM CaEGTA を含む pH 7.2 の溶液中 22 C で算出。Molecular Probes の The Handbook: A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Tenth Edition (2005) においては、fluo-3の Kdは 390 nM と報告されています。† 100 mM KCl、10 mM MOPS、39.8 µM の遊離 Ca2+を含む pH 7.2 の溶液中での値。‡ QY は、蛍光量子収率を表します。J Biol Chem 264, 8171 (1989) に報告されている fluo-3 の QY は 0.18 です。§ 溶液アッセイ
での Ca2+結合による蛍光強度の増加。
1. DMSO ストック溶液(1~5 mM)の一定量を、
終濃度が 1~5 µM になるように、生理的緩衝液で希
釈します。非イオン性洗浄剤である Pluronic® F-127を添加することで、非極性の AM エステルを水溶性
溶媒に分散させることができます。これは少量の
AMエステルのDMSOストック溶液の一定量を同量
の 20% (w/v) 濃 度 の Pluronic の DMSO 溶 液
(P3000MP)と混合し、ローディング溶媒で希釈し
て Pluronic の 終濃度を約 0.02%とするという簡単
な操作で実行可能です。Molecular Probes は、10% (w/v)滅菌水溶液 30 mL(P6866)あるいは 2 g の固体
(P6867)の Pluronic F-127 をご用意しています。 2. 脱エステル化したインジケーターの流出を減ら
すため、有機アニオントランスポーターの阻害剤で
あるプロベネシド(1~2.5 mM)あるいはスルフィ
ンピラゾン(0.1~0.25 mM)を細胞培地に添加する
ことも可能です 12, 14。スルフィンピラゾンおよびプ
ロベネシドのストック溶液は、必然的に非常に強い
アルカリ性であるため、これらを添加した溶媒の pHを再調整することが重要です。 3. 細胞は通常、AM エステルと共に 20~30˚C で 15~60 分間インキュベーションされます(注 A)。正
確なローディング濃度、時間、および温度は経験的
に決定する必要がありますが、一般には、十分なシ
グナル対ノイズ比を持つ蛍光シグナルを得るために
必要な、 小限の色素濃度を使用することが推奨さ
れています。AM エステルのローディング技術にお
ける問題点である細胞内区画化は、一般にインキュ
ベーション温度を下げることで軽減されます。
4. 蛍光度の測定を開始する前に、細胞をインジケー
ターフリー溶媒(該当する場合は、アニオントラン
スポーター阻害剤を含む溶媒)で洗浄し、細胞表面
に非特異的に結合している色素を除去し、その後さ
らに 30 分間インキュベーションし、細胞内の AMエステルを完全に脱エステル化します。インジケー
ターの流出によるバックグラウンド蛍光は、実験開
始の直前に抗フルオレセイン抗体(A889)を細胞外
溶媒に添加することで消すことが可能です 15。 表 2. Molecular Devices の FLIPR システムにおける fluo-4
および fluo-3 を用いた並列性能値比較
* ラットのムスカリン性 M1 受容体で安定的に形質転換した
CHO 細胞に、fluo-3 AM および fluo-4 AM を Molecular Devices社のプロトコールに従ってローディング。但しローディング
溶媒中のインジケーター濃度およびインキュベーション時間
は記載値に変更しました。† マイクロプレートのバックグラ
ウンドを差し引いた、相対蛍光度。‡ 細胞はムスカリン性ア
ゴニストであるカルバコール(50 µM)を添加して刺激しまし
た。§ 刺激型蛍光度と基底蛍光度の比。
レスポンスキャリブレーション 吸光(蛍光励起)、および蛍光放射の 大波長を表
1に示してあります(fluo-5F、fluo-5N、および fluo-4FFにおける波長は、基本的に fluo-4 と同じです)。蛍光
顕微鏡アプリケーションでは、 fluo-3 の検出に
Omega®バンドパスフィルターセット XF104 あるい
は XF23、および Chroma®セット 41028 あるいは
31001 を推奨しています。fluo-4、fluo-5F、fluo-5N、
および fluo-4FF の検出には Omega セット XF100 あ
るいは XF23、および Chroma セット 41001 あるいは
31001 を推奨いたします。Omega フィルターは
Omega Optical 社(www.omegafilters.com)、Chromaフ ィ ル タ ー は Chroma Technology 社
(www.chroma.com)から提供されています。 レスポンスキャリブレーションは、遊離 Ca2+の正
確な濃度が既知の溶液中における、テトラカルボン
酸型インジケーターの蛍光度を測定して行うことが
できます。Molecular Probes の Calcium Calibration Buffer Kitsには、EGTA Ca2+緩衝 16,17を利用した、種々
の簡便なフォーマットのキャリブレーション溶液が
用意されています。イオン解離定数(Kd)は、以下
の式を用いて算出してください。
特性
基底蛍光度 †
刺激型蛍光度 † ‡
増加倍率§
インジケーター/濃度/時間*
蛍光 Ca2インジケーター 4
ここで、Fmin はカルシウム非存在下でのインジケー
ターの蛍光度を、Fmax はカルシウム飽和時のインジ
ケーターの蛍光度を、そして F は中間のカルシウム
濃度における蛍光度を表します。Kd が既知の場合、
同式を用いて測定値 F から実験サンプルの[Ca2+]free
が得られます。 蛍光インジケーターのカルシウム結合特性および
分光学的特性が、細胞環境によって極めて顕著に異
なり得るという事実を認識することは重要です。例
えば、通常のインジケーターおよび Ca2+濃度条件下
において、核質内での fluo-3 の蛍光度は、細胞質内
の2倍であることが知られています 18。さらに、fluo-3や fluo-4 のような BAPTA 型のインジケーターは、
種々の重金属陽イオン(例えば、Mn2+、Zn2+、Pb2+)と、Ca2+よりも著しく高い親和性で結合します。カ
ルシウム測定におけるこれら重金属イオンの存在に
よる摂動は、重金属選択性キレーターである TPEN(T1210)を用いて制御することが可能です 19。細胞
内インジケーターの in situ レスポンスキャリブレー
ションでは、通常 in vitro 実験での結果より有意に高
い Kd値が得られます 10。in situ キャリブレーション
は、ローディングした細胞を A-23187 (A1493)や4-bromo A-23187 (B1494)の様なイオノフォア、ある
いはイオノマイシン(I24222)の存在下で、コント
ロールされた Ca2+バッファーに曝露することにより
行います 15。イオノフォアの存在下で、2 mM の Mn2+
を細胞外溶媒に加えることにより、細胞内インジケ
ーターを Mn2+で飽和させるという代替方法も使用
できます 12,20。この場合、Mn2+で飽和したインジケ
ーターの蛍光度(FMn)との既知の数式関係から Fmin
および Fmax を算出します(注 B)。 細胞内インジケーター濃度のばらつきによって、
細胞間の Ca2+非依存性の蛍光度に有意な差が存在す
ると、fluo-3、fluo-4、および一連のインジケーター
を用いた Ca2+の定量測定の障害となります。Ca2+結
合によるスペクトルシフトが存在しないため、これ
らのばらつきをレシオメトリック検出法で除外する
ことは不可能です 21。この問題は、スペクトル的に
差のある一対のインジケーター(通常 fluo-3 と Fura Red™)を、両インジケーターの相対的な細胞内濃度
が細胞間で一定になる様に、細胞に同時にローディ
ングすることで解決されます 22,23。時間に応じたCa2+
の変化を、別途に求めた Ca2+の基底濃度(刺激前濃
度)に対して、キャリブレーションすることができ
ます 24。 ハイスループットスクリーニング
96ウェルおよび 384ウェルのマイクロプレートを
用いた細胞内 Ca2+測定は、ハイスループット薬理学
的スクリーニングには欠かせないツールです 8,25,26。
マイクロプレートウェル内の細胞サンプルの AM エ
ステル型インジケーターによるローディングは、本
稿の細胞ローディングのガイドラインに記載された
方法と基本的には同様の方法によって行われます。
Molecular Devices の FLIPR™(Fluorometric Imaging Plate Reader)システムにおける fluo-4 および fluo-3を用いた測定値の同時比較から、fluo-4 は形質転換
CHO 細胞内でのカルバコール刺激による Ca2+活性
に相当する蛍光反応を、fluo-3 の半分のローディン
グ濃度およびインキュベーション時間で達成するこ
とが示されています。fluo-3 AM を直接 fluo-4 AM に
置き換えると(即ち、同一のローディング法を用い
ると)蛍光シグナルは少なくとも 2 倍に増加します
(表 2)。 チオール反応 チオール反応性 fluo-4 iodoacetamide に関する反応
条件は、製品情報シート Thiol-Reactive Probes, mp00003 に記載されています。当該文献のコピーは、
当社のウェブサイト(probes.invitrogen.com)、カスタ
マーサービス、あるいはテクニカルサービスから入
手可能です。 注 [A] 付着した培養液はローディングのために取り
除く必要はありません。 [B] 本法のアプリケーションを記載した文献では、
一般に fluo-3 においては FMn = Fmax/5 および
Fmax/Fmin = 40 と仮定しています。一方、現在の
生産バッチを用いると、一般に Fmax/Fmin は、100を超える値が得られています(表 1)10。
蛍光 Ca2インジケーター 5
製品リスト 現在の価格は、当社のウェブサイトあるいは当社カスタマーサービス部から入手いただけます。 カタログ番号 製品名 サイズ
蛍光 Ca2インジケーター 6