gr014 窒化物半導体結晶成長の物理化学とプロセス創製 ·...

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窒化物半導体結晶成長の物理化学とプロセス創製 課題番号: GR014 助成額:169 百万円 平成23年2月10日 ~平成26年3月31日 専門分野 材料物理化学 キーワード 素材精製/結晶育成/融体・凝固/エコマテリア ル化/化学熱力学/材料プロセッシング WEB ページ hp://www.tagen.tohoku.ac.jp/modules/ laboratory/index.php?laboid=17 グリーン ・ イノベーション 理工系 福山 博之 Hiroyuki Fukuyama 東北大学多元物質科学研究所 教授 窒化アルミニウムなどの III 族窒化物半導体は, 次世代の発光素子,太陽電池およびハイパワー 半導体素子として注目され,世界的に開発競争 が激しい研究分野である.結晶成長の観点から, 素子として適応できる窒化物半導体の組成領域 を拡大し,その性能を最大限に発揮させるために は,高品質窒化物基板の開発が急務である. 液相成長技術の確立 Ga-Al 系フラックス中に,窒化サファイア基板を浸 漬し,AlN 膜を成長させた.得られたAlN 膜は転位 密度の低い良好な結晶性を有している.このように 本液相成長法を用いれば,常圧で高品質なAlN 膜を成長させることが可能である. 液相成長機構の解明 窒化サファイア基板とAlN 膜界面において取り込 まれた酸素によって化学的に不安定な窒素極性 から安定なAl 極性へ反転し,これが結晶成長に重 要な役割を果たしていることを明らかにした. 大口径基板上への AlN 膜の作製に成功 当初,部分的なAlN 結晶の侵食も見られたが,窒素ガス の吹き込み方法ならびに酸素濃度について検討した結 果,2.5インチサファイア基板上全面への AlN 成長技術を 確立することができた. 本研究では,窒化物半導体の結晶成長に起因 する課題を克服するため,結晶成長および物性 評価の観点から多元的な研究を進め,飛躍的な 素子の性能向上を目指す.対象とする結晶は,窒 化アルミニウム単結晶であり,窒化アルミニウム 結晶成長に関する物理化学的な知見を蓄積し ながら,新たな結晶成長プロセスを創製する. 代表論文:Metallurgical and Materials Transactions, A, 45, 3, 1112-1123, (2014), JOM, in press, (2014) 特許出願:PCT/JP2011/66146「窒化アルミニウム結 晶の製造方法」、PCT出願 (2011 年 7月) 受賞: 第7回日本学術振興会賞、独立行政法人日本学術 振興会(2011 年 3月) 新聞: 科学新聞 「第 7 回日本学術振興会賞に25 氏 日 本の学術研究担う若き精鋭」 (2011 年 3月3日) 窒化物半導体は,水銀フリーの次世代照明, 光触媒用光源,超高効率太陽電池やハイパ ワー高電子移動度デバイスなど,環境,医療, バイオ,情報,エネルギー,ナノテク分野など 新産業創出と科学技術発展の両面から幅広 い応用が期待される. 図1 Ga-Alフラッ クスを用いた液 相 成 長 法により 得られた AlN 膜 の透過型電子 顕微鏡断面図 . 図 2 AlN 膜 の 極性反転機構  成長界面で酸素 原 子によりAlN 膜の極性反転が 生じている. 図 3 レーザー顕微鏡による表面観察  2.5インチサファイア基板全面にAlN膜が成長している.

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Page 1: GR014 窒化物半導体結晶成長の物理化学とプロセス創製 · から安定なAl極性へ反転し,これが結晶成長に重 要な役割を果たしていることを明らかにした.

2030年の

  応用展開

20

研究背景

研究成果

研究目的

研究の特色

研研

実績

窒化物半導体結晶成長の物理化学とプロセス創製課題番号:GR014助成額:169百万円

平成23年2月10日~平成26年3月31日

専門分野材料物理化学

キーワード素材精製/結晶育成/融体・凝固/エコマテリアル化/化学熱力学/材料プロセッシング

WEBページhttp://www.tagen.tohoku.ac.jp/modules/laboratory/index.php?laboid=17

グリーン・イノベーション

理工系福山 博之

Hiroyuki Fukuyama

 東北大学多元物質科学研究所 教授

窒化アルミニウムなどのIII族窒化物半導体は,次世代の発光素子,太陽電池およびハイパワー半導体素子として注目され,世界的に開発競争が激しい研究分野である.結晶成長の観点から,素子として適応できる窒化物半導体の組成領域を拡大し,その性能を最大限に発揮させるためには,高品質窒化物基板の開発が急務である.

液相成長技術の確立Ga-Al系フラックス中に,窒化サファイア基板を浸漬し,AlN膜を成長させた.得られたAlN膜は転位密度の低い良好な結晶性を有している.このように本液相成長法を用いれば,常圧で高品質なAlN膜を成長させることが可能である.

液相成長機構の解明窒化サファイア基板とAlN膜界面において取り込まれた酸素によって化学的に不安定な窒素極性から安定なAl極性へ反転し,これが結晶成長に重要な役割を果たしていることを明らかにした.

大口径基板上へのAlN膜の作製に成功当初,部分的なAlN結晶の侵食も見られたが,窒素ガスの吹き込み方法ならびに酸素濃度について検討した結果,2.5インチサファイア基板上全面へのAlN成長技術を確立することができた.

本研究では,窒化物半導体の結晶成長に起因する課題を克服するため,結晶成長および物性評価の観点から多元的な研究を進め,飛躍的な素子の性能向上を目指す.対象とする結晶は,窒化アルミニウム単結晶であり,窒化アルミニウム結晶成長に関する物理化学的な知見を蓄積しながら,新たな結晶成長プロセスを創製する.

代表論文:Metallurgical and Materials Transactions, A, 45, 3, 1112-1123, (2014), JOM, in press, (2014)特許出願:PCT/JP2011/66146「窒化アルミニウム結晶の製造方法」、PCT出願(2011年7月)受賞:第7回日本学術振興会賞、独立行政法人日本学術振興会(2011年3月)新聞:科学新聞 「第7回日本学術振興会賞に25氏 日本の学術研究担う若き精鋭」 (2011年3月3日) 窒化物半導体は,水銀フリーの次世代照明,

光触媒用光源,超高効率太陽電池やハイパワー高電子移動度デバイスなど,環境,医療,バイオ,情報,エネルギー,ナノテク分野など

新産業創出と科学技術発展の両面から幅広い応用が期待される.

図1 Ga-Alフラックスを用いた液相成長法により得られたAlN 膜の 透 過 型 電 子顕微鏡断面図.

図 2 AlN 膜 の極 性 反 転 機 構 成長界面で酸素原子によりAlN膜の極性反転が生じている.

図3 レーザー顕微鏡による表面観察 2.5インチサファイア基板全面にAlN膜が成長している.