慈恵icu勉強会hitとは heparin-induced thrombocytopenia...
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慈恵ICU勉強会2015/10/27
研修医2年目 北川友通
NEnglJMed2015;373:252-61
HITとは
Heparin-InducedThrombocytopenia(ヘパリン起因性血小板減少症)
ヘパリン療法のまれな合併症であり
血小板が活性化されることで血小板減少症や
血栓形成促進状態を誘導される病態デビットソン内科学 原著第1版 医歯薬出版株式会社
より一部抜粋
• 疫学
• 病態
• 診断
• 治療
• まとめ
Contents
• 疫学
• 病態
• 診断
• 治療
• まとめ
Contents
TheIncidenceofRecognizedHeparin-InducedThrombocytopeniainaLarge,TerIaryCareTeachingHospital CHEST2007;131:1644–1649
〈PaJents〉2003年4月〜2004年3月の間に1061床のアメリカの大学病院に入院していた患者58814人
〈Design〉retrospecJvestudy、院内データベース使用HITの診断にはELISA法を利用
〈Outcome〉期間内に未分画ヘパリンを投与された患者のHIT発症率
とその時の投与経路2013/1/22勉強会「HITの診断」より改訂
未分画ヘパリンを投与された24068人中、49人(0.2%)がHITを発症した。未分画ヘパリンを静注された5415人中、41人(0.76%)が新たにHITを発症した。未分画ヘパリンを皮下注(静注の有無は問わず)された14368人中、6人(<0.1%)がHITを発症した。内科的投与よりも外科手術時の投与の方が、HITを発症する頻度が高かった。
2013/1/22勉強会「HITの診断」より改訂
〈Results〉
• 疫学
• 病態
• 診断
• 治療
• まとめ
Contents
ヘパリンや細菌が血小板を活性化↓
血小板から第IV血小板因子(PF4)を放出
ヘパリン 細菌 核酸
と複合体を形成 → B細胞に提示
→ IgG抗体(HIT抗体)を産生
{PF4が
HIT抗体とPF4-ヘパリン複合体が
結合
↓
血小板表面の受容体(FcγRIIa)と結合
↓
血小板が活性化集合体を形成
血小板集合体を形成
↓
血小板数の減少
トロンビンが活性化
↓
血栓症を発症
PF4-ヘパリン複合体と結合したHIT抗体が
単球表面の受容体(FcγRI)
血管内皮
↓
組織因子(Jssuefactor)が形成
}に結合
↓
トロンビンを活性化
病態のまとめ
抗原(PF4とヘパリン、細菌、核酸との複合体)に接触
↓HIT抗体産生
↓血小板凝集、トロンビン活性化
↓血小板の減少、血栓の産生
(出血性合併症は稀)
• 疫学
• 病態
• 診断
• 治療
• まとめ
Contents
ヘパリン投与後に血小板減少and/or血栓症を発症したら・・・
→ → → 4Tsscoreでスコアリングする
4Tsscore
HITの可能性: 3点以下;low、4〜5点;intermediate、6点以上;high
Thrombocytopenia
Timing
Thrombosis
Othercausesofthrombocytopenia
Heparin-InducedThrombocytopenia NEnglJMed 2015;373:252-61
PredicJvevalueofthe4Tsscoringsystemforheparin-inducedthrombocytopenia:asystemaJcreviewandmeta-analysis
Blood.2012;120(20):4160-4167
〈DataBase〉PubMed、CochraneDatabase、WebofScienceで4Tsscoreの陽性的中率・陰性的中率を調べたメタアナリシス。
〈Results〉
総患者数:3068人high:253人(8.2%)、intermediate:1103人(36%)、low:1712人(55.8%)HIT有病率:0.11%(95%CI、0.07−0.17)陽性的中率:high0.64(0.4-0.82)、intermediate0.14(0.09-0.22)、highandintermediate0.22(0.15-0.31)陰性的中率:low0.998(0.97-1.00) (4Tsscore≦3)4Tsscoreのcutoffを≧4とすると、感度0.99(0.86-1.00)、特異度0.54(0.43-0.66)
2013/1/22勉強会「HITの診断」より
〈Conclusion〉
血液学的検査
1.免疫学的測定法・ELISA法・ラテックス免疫比濁法・化学発光免疫測定法
2.機能的測定法・血小板凝集試験(heparin-inducedplatelet
aggregaJontesJng:HIPA)・14C-セロトニン放出試験(serotoninreleaseassay:SRA)・マイクロパーティクル試験
免疫学的測定法・ELISA法 ・ラテックス比濁法
・化学発光免疫測定法
2013/1/22勉強会「HITの診断」より
定性反応IgG以外にIgM、IgAも測定され偽陽性が高くなる
定量検査実測値を計測することが可能OpJcaldensityが1未満であればHITである可能性は5%未満
QuanJtaJveinterpretaJonofopJcaldensitymeasurementsusingPF4-dependentenzyme-immunoassays
JournalofThrombosisandHaemostasis,6:1304–1312
機能的測定法
・血小板凝集法健常者血小板血漿と患者血漿を混和したものにヘパリンを添加し 大凝集率を測定する
・SRA法抗PF4/heparin抗体に血小板活性化能を持つかを測定する
2013/1/22勉強会「HITの診断」より
しかし・・・
免疫学的測定法でHIT抗体が陽性であっても機能的測定法でも陽性となるとは限らない
・・・
HIT抗体が存在していてもまだHITを発症していない可能性がある!!
HITの概念
未分画ヘパリン>低分子ヘパリンmajorsurgery>minorsurgery
女性>男性
HIT情報センター hgp://www.hit-center.jp
Riskforheparin-inducedthrombocytopeniawithunfracJonatedandlow-molecular-weightheparinthromboprophylaxis:ametaanalysis.Blood2005;106:2710-5.
TheseverityoftraumadeterminestheimmuneresponsetoPF4/heparinandthefrequencyofheparin-inducedthrombocytopenia.Blood2010;115:1797-803.
Riskofheparin-inducedthrombocytopeniainpaJentsreceivingthromboprophylaxis.ExpertRevHematol2008;1:75-85.
• 疫学
• 病態
• 診断
• 治療
• まとめ
Contents
治療
1.ヘパリン投与の中止−ヘパリンのフラッシュやコーティングも止める
2.短期的に代替的抗凝固薬投与を開始−抗トロンビン剤
・アルガトロバン−アンチトロンビン依存性Xa因子阻害剤
・ダナパロイド3.長期的に抗凝固薬の投与
EffectsofArgatrobanTherapy,DemographicVariables,andPlateletCountonThromboIcRisksinHeparin-
InducedThrombocytopeniaChest2006;129:1407-16
〈Design〉後ろ向き研究HITを発症したICU患者882人HIT診断方法:血小板数が100000/mm3未満or50%未満まで減少
その原因としてHIT以外に明らかな物がないHIT抗体が陽性である
患者群:アルガトロバンを投与した患者対照群:ヘパリン投与中止のみand/or抗血小板薬や
ワーファリンを投与した患者
〈Method〉
・アルガトロバンを投与量2μg/kg/minから開始する
・アルガトロバン投与上限を10μg/kg/min
APTT<100を満たしつつ 1.5〜3倍になるように
投与量調節をする
〈Outcome〉
新規血栓症、血栓症による死亡・四肢切断の発症率
〈Results〉
HIT発症患者 と 血栓症を合併しているHIT発症患者は 共に
アルガトロバン投与群の方が新規血栓症の発症率が有意に低かった
出血性合併症(Hbが2g/dL以上減少し2U以上輸血or頭蓋内出血・後腹膜内・人工関節内へ出血)
は有意差を認めなかった(患者群6%vs対照群7%:p=0.74)
本邦で唯一のHIT治療薬添付文書上では0.7μg/kg/minとなっており論文内での2μg/kg/minとは異なっている
3.長期的な管理として
〈PaJents〉1982年〜1998年にHamilton,Ontario,CanadaでHITと診断がついた243人の患者
〈Design〉後ろ向き観察研究
〈Methods〉HITの原因となったヘパリン投与開始日を第0日とし、HITを発症するまでの期間や血液学的検査が陽性と出る期間を
調べた。
TEMPORALASPECTSOFHEPARIN-INDUCEDTHROMBOCYTOPENIA
NEnglJMed2001;344:1286−92
長期的な抗凝固療法は・・
〈Results〉
ヘパリン投与後1日以内にHITを発症し
た患者は、今回のヘパリン投与
より直近100日以内にもヘパリン投与さ
れていた。
→直近のヘパリン投与時に感作された
HIT抗体が今回のヘパリン投与で
反応したと思われる。
ヘパリン投与後5〜10日に
HITの発症を も認めた。→HIT抗体産生までの
期間と思われる。
〈Results〉
HIT抗体検査陽性者数が50%以下となる時期→85日後
血小板機能測定陽性者数
が50%以下となる時期
→50日後
→ → → HIT抗体はヘパリンを投与した日から3ヶ月前後は存在している
ACCPガイドライン
CHEST2012;141(2)(Suppl):e495S–e530S
治療期間に関してエビデンスがなくDVTに準じた3ヶ月間に渡る抗凝固薬の投与によりPT-INRを2〜3を維持する事との記載がある
長期的な抗凝固療法に関する明確なエビデンスは存在しない
↓
HIT抗体が存在する3ヶ月前後が抗凝固療法継続期間として妥当であると思われる
ビタミンK拮抗薬はプロテインCを減少させ静脈性四肢壊疽や四肢欠損の危険があるため
血小板が150000/mm3を越えたことを確認する
まではビタミンK拮抗薬を投与しない
治療のまとめ
• ヘパリンを中止、アルガトロバンの投与開始
• 抗凝固薬の投与期間としては3ヶ月が妥当
• ビタミンK拮抗薬投与時は血小板数に注意
• 疫学
• 病態
• 診断
• 治療
• まとめ
Contents
≦3 4〜5 6≦
4Tsscore
PF4-ヘパリン IgG検査
機能的測定法
抗凝固薬投与DVTの除外
ヘパリン使用中の血小板減少や血栓症
lowprobability intermediateprobability highprobability
血小板計測ミスや他の血小板減少症により
スコアリングが困難
NO YES
陰性 陽性
HITを除外ヘパリンの再開or継続
陰性 陽性
疑いなし 強く疑う
強陽性(OD>1.0)
ヘパリンの中止 血液学的検査
MESSAGE
・ヘパリン投与だけでなく細菌感染後にも
血小板減少や血栓症を認めたらHITを疑う。
・4TsscoreでHITの検査前確率を見てから
血液学的検査の施行を検討する。
・HITと診断したらヘパリンを中止し抗凝固薬を投与する。
私見
• 血液学的検査でHIT抗体が陽性 =HIT発症を意味しない為
薬物療法の開始はしっかり検討するべきである。
• ヘパリン投与は一般病棟に置いても日常的に行われており
HITが疑われる時の対応は重要である。
• 特にICUではヘパリンを多量に投与する心臓・血管外科
手術後の患者の割合が高く、常に発症の可能性を念頭に
置くべきである。