世界の鉱業の趨勢 2014

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ベトナム

主要データ

国名〔英名〕 ベトナム社会主義共和国〔Socialist Republic of Vietnam〕

面積(km2) 331,210

海岸線延長(km) 3,444

人口(百万人) 93.4

人口密度(人/km2) 282.1

GDP(十億 US$) 170.57

一人当り GDP(US$) 1,901.7

主要鉱産物：鉱石 銅、鉛、亜鉛、錫、チタン、クロム、ボーキサイト等

主要鉱産物：地金 亜鉛、錫、銅

鉱業管轄官庁 天然資源環境省(MONRE: Ministry of Natural Resources and

Environment)、商工省(MOIT: Ministry of Industry and Trade)

鉱業関連政府機関

ベトナム地質鉱物総局(GDGMV: General Department of Geology

and Minerals of Vietnam)、鉱山冶金科学技術国立研究所

(VIMLUKI)、地球科学鉱物資源研究院(VIGMAL)、放射性及び希元

素技術院(ITRRE)等

鉱業法 新鉱物法(法律 No.60/2010/QH10)が 2011年 7月 1 日施行。施行細

則(No.15/2012/ND-CP)他

ロイヤルティ

2009年 11月 25 日付けロイヤルティ法 No.45/2009/QH12、2010

年 5月 14日付け政令 No.50/2010/ND-CP、2010 年 7月 13 日付け

通達 105/2010/TT-BTC、及び 2010年 4 月 19日付け国会常任委員

会決議 No.928/2010/UBTVQH12

外資法 2005年 11月 29 日付投資法 No.59/2005/QH11

環境規制法 (環境影響調査制

度、環境・排出基準の有無等)

環境保護法(2005)、環境保護法の実施に関するガイダンスを規定

した No.175/ND-CP(1994/10/8)、採掘活動の第三者預託に関する

ガイダンスについての内部 No.126/1999/TTLB-BTC-BCN-BKHCNMT

鉱業公社

ベトナム石炭鉱物産業グループ(Vinacomin: Vietnam Coal and

Minerals Industry Group)、

ベトナム国営鉱物鉱山公社(Vimico: Vietnam National Mineral

Corporation)

鉱業活動中の民間企業

Thai Nguyen Non-Ferrous Metals Co.、Ha Tinh Mineral and

Trading Co.(MITRACO HATINH)、Sin Quyen Copper Joint Venture

Enterprise、Thai Nguyen Tin Production Enterprise、Thai Nguyen

Tin Production Enterprise、Asian Minerals Resources 社(TSX-V

上場)、Besra Gold 社(TSX他上場)、Masan Resources 等

近年の鉱業関連問題 (資源ナシ

ョナリズム、労働争議、環境問題

等)

未加工の鉱物資源の輸出禁止等、国の鉱物資源戦略及びマスター

プランにより国家管理が強化され、外資による自由な鉱物資源開

発は事実上制限されている

2013 年のトピックス

2013年 6 月から、マンガン、銅、鉛、亜鉛、チタン等の輸出税が

40％に引上げ。また、採鉱に係るロイヤルティが引き上げられ、

2014年 2 月に施行された。

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1．鉱業一般概況

ベトナム国内には、銅、鉛、亜鉛、チタン、金、レアアースなど、多種多様な鉱物資源が賦存して

いる。規模的には、大型鉱山は少なく製錬所も小規模で、探査・開発は進んでいない。

2013年 6月末、ベトナム北部タイグエン省にある Masan Resources の Nui Phao 鉱山(タングステン)

が生産を開始した。同鉱山は年間 350 万 t の鉱石を採掘し、タングステン 4,100 t、蛍石 21 万 t、ビ

スマス 2,300 t、及び銅 6,500 t を生産する。同国においては鉱石・精鉱の輸出は基本的に認められて

いないが、同鉱山は 2012 年 12 月 24 日付け鉱物輸出に関する通達(No.41/2012/TT-BCT)により、一定

の品質を満たせばタングステン及び銅の精鉱輸出を 2015 年末まで認められている。また、Nui Phao

鉱山と独 H.C.Strack 社が 51：49 の合弁会社を設立し、同鉱山が生産するタングステン精鉱の全量を

タングステンの化学品に加工する。最初にタングステン酸ナトリウムの生産を 2013年 8月から開始し、

更に付加価値を高めたパラタングステン酸アンモニウム(APT)及びブルー酸化タングステンの生産は

2014 年からとなる見込み。合弁会社は三酸化タングステンとして年間 6,500 t の生産能力を持ち、生

産物の多くを H.C.Starck 社が自社製品に使用するため引き取る予定。

北部ラオカイ省にある Sin Quyen 銅鉱山は、ベトナム商工省が 2013 年 5 月 8 日に決定した 2910

/QD-BCTにより、粗鉱生産量を年間 110万 tから 250万 tに引上げる。同鉱山はベトナム国営石炭鉱物

産業会社(Vinacomin)傘下のベトナム国営鉱物会社(Vimico)が 2008 年より操業しており、浮遊選鉱に

より銅品位 25％の銅精鉱を生産し、Tang Loong 工業団地にある銅製錬所で年間 1万 t程度の銅カソー

ドを生産している。今回の決定は 2008 年 6 月 5 日付け商工省決定 11 /2008 /QD-BCT「2025 年を見据

えた、2015 年までのベトナムの金鉱石、銅鉱石、ニッケル鉱石及びモリブデン鉱石の探査、採掘、加

工及び使用計画の承認」(いわゆるマスタープラン)を変更するもので、2015 年までに同鉱山を拡張す

ることになる。

2013 年 6 月 29 日、ベトナム北部ソンラ省にある Ban Phuc ニッケル鉱山が正式に開山した。同鉱山

はベトナム初のニッケル鉱山で、坑内掘りによりニッケルと銅の硫化物を採掘し、浮遊選鉱により硫

化物の精鉱を生産する。年間生産量はニッケルが 6,600 t、銅が 3,300 t以上を目指しており、精鉱に

はコバルトも含まれる。Asian Mineral Resources Ltd.の発表によれば、ニッケルのカットオフ品位

0.4％で推定及び確定埋蔵量は 169 万 t、ニッケル品位 2.68％、銅品位 1.16％となっている。Asian

Mineral Resources 社はトロントの TSX-V に上場されており、操業会社である Ban Phuc Nickel Mines

LLC の 90％を保有している。なお、鉱物資源の輸出を規制する 2012 年 12 月 24 日付け通達

No.41/2012/TT-BCT によれば、ニッケル品位が 9.5％以上の精鉱の輸出は認められている。

2．鉱業政策の主な動き

ベトナム財務省は通達 No.44/2013/TT-BTC により、マンガン、銅、鉛、亜鉛、チタン等の輸出税を

30％から 40％に引上げ、新たな税率は 2013年 6月 9日から適用された。対象となる金属鉱物の詳細は

表 2-1.のとおり。今回の変更は、2013 年 2 月 4 日に施行となった鉱物輸出に関する新しい通達

(No.41/2012/TT-BCT)により、輸出在庫を抱えて困窮する鉱山の一部は例外的に鉱物輸出を認められた

が、その場合でも輸出税は引上げられ、未加工の鉱物輸出を制限する 2012 年 1 月 9 日の首相指示

(No.02/CT-TTg)に沿った措置である。

またベトナム財務省は、再生不可能な鉱物資源の採掘を抑制して国内産業の利用のため保護し、国・

企業・地元住民間における利益の調和を図るため、ロイヤルティの再度引き上げを提案したが、これ

は常任委員会の同意を得るには至らなかった。同省は、引き上げにより 2012 年に 41 兆ドンであった

ロイヤルティが 2 兆ドン増加すると主張し、国会財務予算委員会は引上げの提案に同意したが、常任

委員会の過半は鉱山の操業が立ち行かなくなるとして同意には至らなかった。Hung 国会議長は、2 兆

ドン以上の歳入増加は大きいが、鉱業活動への影響を注意深く検討し、議論と調査を続けて次回会合

への提案前に最良の選択の総意を得ると結論付けた。なお、ベトナムビジネスフォーラム鉱業部会長

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及びベトナム鉄鋼協会はこの引上げの提案に強く反対していた。

ベトナム国会常任委員会は、金属鉱物資源の採掘量に応じて支払うロイヤルティについて新たに定

めた決議 No.712/2013/UBTVQH13 を、2013年 12 月 16日付けで採択した。ロイヤルティ引上げが検討さ

れた鉱種について、率の推移を表 2-2に示す。引上げ前のロイヤルティは、2009年 11 月に採択された

ロイヤルティ法に基づき、2010年 4 月、国会常任委員会決議 No.928/2010/UBTVQH12 によって定められ

た率であった。当初財務省は 7 つの鉱種について大幅な引上げを提案したが、地方政府や操業鉱山等

によるロビー活動により、鉱種により明暗が分かれた結果となった。なお、今回の新たな決議により、

無煙炭や一部の工業原料鉱物も率が引き上げられた。新しいロイヤルティは 2014 年 2月 1日より適用

された。

表 2-1．主要鉱種の輸出税率

No. 鉱種・形態 コード等 税率％

16 マンガン鉱石及びマンガン精鉱(鉄を含有する鉱石及び

精鉱を含みマンガン品位は乾重量で最低 20％)

2602 00 00 40

17 銅鉱石及び銅精鉱 2603 00 00 40

21 鉛鉱石及び鉛精鉱 2607 00 00 40

22 亜鉛鉱石及び亜鉛精鉱 2608 00 00 40

28 チタン鉱石及びチタン精鉱(その他*) 2614 00 00 40

* 還元イルメナイト(TiO2<56％)、チタンスラグ(TiO2<85％)、合成ルチル(TiO2<83％)

表 2-2．ロイヤルティの推移

主な鉱種 2013年決議 2013年 5 月

当初案 2010年決議

鉄 12％ 15％ 10％

チタン 16％ 16％ 11％

金 15％ 25％ 15％

タングステン・アンチモン 18％ 18％ 10％

銅 13％ 15％ 10％

ニッケル 10％ 15％ 10％

3．主要鉱産物の生産・輸入・消費・輸出動向

(1)主要金属鉱石生産量

表 3-1．金属鉱石生産量

鉱 種 2011年 2012年 2013年 対前年

増減比（％）

世界シェア

（％）

ランク

（位）

錫(千 t) 0.01 0.01 0.01 0.00 1.7 8

チタン(千 t) 288.3 353.7 200.0 -43.5 4.1 8

クロム(千 t) 25.2 1.9 25.0 1215.8 0.1 16

銅(千 t) 11.9 11.3 13.2 16.81 0.1 38

鉛(千 t) 6.4 7.0 6.0 -14.29 0.1 29

亜鉛(千 t) 36.0 36.0 36.0 0.0 0.3 23

ボーキサイト(千 t) 95.2 95.2 95.2 0.0 0.0 22

ニッケル - - - - - -

タングステン - - - - - -

金 - - - - - -

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(出典：World Metal Statistics Yearbook 2014)

(2)主要金属地金生産量

表 3-2．金属地金生産量

鉱 種 2011年 2012年 2013年 対前年

増減比（％）

世界シェア

（％）

ランク

（位）

亜鉛(千ｔ) 15.6 15.6 15.6 0.0 0.1 29

錫(千ｔ) 5.4 5.4 5.4 0.0 1.6 9

銅(千ｔ) 8.0 9.0 9.0 9.0 0.0 38

(出典：World Metal Statistics Yearbook 2014)

(3)主要金属消費量

表 3-3．金属地金消費量

鉱 種 2011年 2012年 2013年 対前年

増減比（％）

世界シェア

（％）

ランク

（位）

銅(千ｔ) 135.1 88.5 89.9 1.6 0.4 25

鉛(千ｔ) 38.5 51.9 56.9 9.6 0.5 22

亜鉛(千ｔ) 62.8 59.9 79.5 32.9 0.6 22

錫(千ｔ) 2.0 2.0 3.6 80.0 1.0 15

アルミニウム(千ｔ) 101.9 101.9 101.9 0.0 0.2 41

ニッケル(千ｔ) 1.2 1.2 1.2 0.0 0.1 32

(出典：World Metal Statistics Yearbook 2014)

(4)主要金属輸出量

データなし

(5)主要金属輸入量

データなし

4．鉱山・製錬所状況

表 4-1．鉱山一覧

鉱山名 権益所有企業(権益：％) 鉱種 生産量 備考

Sin Quyen鉱山 Vietnam National Mineral

Corporation(VIMICO) (100)

銅(精鉱中含量)

金(精鉱中含量)

鉄(精鉱中含量)

- 年産能力

銅精鉱(精鉱中含量) 1万 t

金 0.3t

鉄精鉱 9万 t

Cho Dien鉱山 VIMICO(100) 鉛(精鉱中含量)

亜鉛 (精鉱中含

量)

- 年産能力

亜鉛精鉱(精鉱中含量) 5万

t

Quy Hop鉱山 VIMICO(100) 錫(精鉱中含量) - 年産能力

粗鉱 7万 t

Nui Nua鉱山 VIMICO(100) クロム - 年産能力 1万 t

Phuoc Son鉱山

Bong Mieu鉱山

Besra社(85)

(Bong Mieu は 80)

金 43,698oz

16,489oz

2013年生産量

Nui Phao鉱山 Masan Resources(80) タングステン

蛍石

ビスマス

銅

2013年 6月生産開始

年産能力

タングステン 4,100t

蛍石 21万 t

ビスマス 2,300t

銅 6,500t

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Ban Phuc鉱山 Asian Mineral Resources(90) ニッケル

銅

コバルト

2013年生産開始

年産能力（目標）：

ニッケル 6,600t

銅 3,300t

コバルト 200t

Tan Rai鉱山 Vinacomin(100) ボ ー キ サ イ ト

（アルミナ）

2013年 9月操業開始

年産能力：65万ｔ（アルミナ）

(出典：各社ホームページ等)

表 4-2．製錬・精錬所生産状況

権益所有企業(権益：％) 鉱種・形態 生産量 備考

Tang Loong 製錬所 VIMICO(100) 銅カソード 10,000t 年産能力 銅カソード 1.1万t

Ta Pan 製錬所 Zijin Mining Group Co

Ltd

亜鉛地金 - 年産能力 亜鉛地金 0.6万 t

Thai Nguyen亜鉛製錬所 VIMICO(100) 亜鉛地金 10,000t 年産能力 亜鉛地金 1万 t

Thai Nguyen錫製錬所 Thai Nguyen Nonferrous

Metal Co(100)

錫地金 - 年産能力 錫地金 0.2万 t

(出典：VIMICO等ヒアリング)

図 4-1．主要鉱山位置図

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5．探鉱状況

Aurasian Mineral Plc(2014 年 7 月に Triple Plate Junction plc から改名)は 10％保有する Lai Chau

省の Pu Sam Cap 金銅鉱床の探査権を更新した。現在、Pu Sam Cap 鉱床の権益はベトナム政府 10％、

Aurasian Mineral 10％、個人(Bill Howell 氏)60％となっており、Howell 氏とそのチームが引き続き

調査を継続している。Axiom Mining Ltd(ASX 上場)はラオスの Sepon 銅金鉱山と国境を挟む地域におい

て Quang Tri の金探鉱プロジェクトを進めている。Quang Tri では、ボーリングターゲットを選定する

ため、地化学探査（土壌調査）を実施中である。

6．我が国との関係

(1)日本への輸出

表 6-1．日本への精鉱及び地金輸出量(マテリアル量)

鉱 種 2011年 2012年 2013年 対前年増減比（％）

アンチモン地金(千 t) 0.8 0.8 0.8 -7.2

金地金(kg) 32.6 28.3 35.4 25.2

ジルコニウム鉱石（千ｔ） 0.1 0.7 0.1 -80.5

錫地金(t) 947.6 742.4 854.1 15.1

タングステン

地金(t) 5.0 9.0 4.1 -54.4

APT (t) 60.0 21.0 20.0 -4.8

フェロタングステン(t) 523.5 636.0 983.6 54.7

マンガン

フェロシリコマンガン(千 t) 21.5 21.3 30.1 41.5

鉱石(千 t) 1.2 1.1 1.1 1.8

モリブデン鉱石(千 t) 0.6 0.6 0.9 41.96

希土類原料・製品(千 t) - 1.5 2.2 50.34

(出典：財務省貿易統計)

(2)日本企業による投資状況等

①昭和電工は、2010年 5 月に磁石合金用レアアース原料工場を Ha Nam 省に完成させ、高性能レアアー

ス磁石の原料となるジジム及びジスプロシウムメタルを合わせて年間 800t生産中。

②信越化学工業は、レアアースマグネット製造工場の建設を決定し、2014年 10月に着工、第 1 期分は

2015年 9 月に年産 1,000t、第 2 期分は 2016年 9 月に年産 1,000tの工場が完成する予定。同社は 2013

年に分離精製工場の操業を開始しており、新工場は当該工場からの原料供給を受けることになってい

る。

③中電レアアース（中央電気工業の 100％子会社）は、2011 年にネオジム磁石等の工程内スクラップ

からのネオジムメタルおよびジスプロシウムメタル生産を開始（年産 200ｔ）。また、2012年 6月には

米国等の酸化物原料からのランタンおよびセリウムの生産を開始した（年産 800ｔ）。この他、2013年

3 月には米 Molycorp 社とレアアース酸化物の調達および磁石合金用レアアースメタルの委託製造に関

する合意書に調印している。

7．その他トピックス

特になし

(2014.8.31 ジャカルタ事務所 山本耕次)