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Title 単板剥ぎ取り機械に関する研究-1 : ベニヤレースとロータリー単板切削

Author(s) 杉山, 滋

Citation 長崎大学教育学部自然科学研究報告. vol.57, p.35-42; 1997

Issue Date 1997-05-31

URL http://hdl.handle.net/10069/32128

Right

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

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長 崎大学教 育学部 自然科学 研究報告 第57号35~42(1997)

単 板 剥 ぎ取 り機 械 に関 す る研 究(1)

ベ ニヤ レー ス と ロー タ リー単板 切 削

杉 山 滋

長崎大学教育学部工業技術教室

(平成9年3月14日 受理)

Studies on Veneer Cutting Machine ( I )Peeling Processes with Veneer Lathe

Shigeru SUGIYAMA

Department of Technology, Faculty of Education,

Nagasaki University, Nagasaki 852

(Received March 14, 1997)

Abstract

The single most important machine in the plywood-making process is the

veneer lathe. The quality of veneer produced will affect many of the later opera-

tions. In this report, characteristics, structure and peeling processes on the veneer

lathe are explained.

1.は じ め に

林産物の主体である原木(丸 太)は その断面形状がほぼ円形で,樹 幹の軸方向に細長い

形状を有 しているため,柱 材や角材は各種の寸法のものが製材によって容易に得 られ,そ

れらの材の強度 も充分である。 しかし,製 材によって得 られる板材には寸法的には制限が

伴い,強 度的には木材特有の強い異方性のため,幅 広い強い板は得 られにくい。 これらを

補 う改良木質材料に合板(plywood)が ある。

合板の原材料は,単 板(ベ ニヤveneer)と 呼ばれる薄 く剥ぎ取 った板であ り,こ れを

互に繊維走向を直交 させ,奇 数枚接着 した板が合板であり,幅 広 く,任 意の厚 さで強度 も

大 きいものが得 られ,板 材料 としては最 もすぐれたものである。

このような合板の原材料となる単板を,原 木あるいは板子(ブ リッチflitch)か ら剥

ぎ取るための機械を単板剥ぎ取 り機械 という。この機械 は,ベ ニヤ レースとスライサが代

表的な機械であるが,そ の他にハーフラウンドベニヤ レース(あ るいはステイログレース)

および鋸(ベ ニヤソー)を 用いた単板製造機械もある。本稿では,こ れ らの機械のうち,

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36 杉  山 滋

代表的なベニヤレース(既報1)と本報で詳解)とスライサ(次報2)で詳解)をとりあげる。

2.単板の剥ぎ取り

 単板の剥ぎ取り(一般に, “単板切削”といわれている。)とは,加工物である被削母材(原木あるいはフリッ

チ)より単板を剥ぎ取る加工であるが,それは単板剥ぎ取り機械に設置された分断工具(ナイフ)の切れ刃を通し

て加工物の一定部分に集中的に力を加えて変形させ,その結果起る破壊によって加工物の一部(単板)を分離して

ゆく加工である。したがって,単板の分離現象,即ち単板および被削母材の変形や破壊が如何にして起るか(分断

機構),またその原因となる分断力が如何にして被削材に与えられ,そして内部へ伝達されてゆくか(分断力の解

析)を明確にすることが重要となる。とくに,分断力の解析を行うことは,分断機構を明確にし得るのみならず,

単板剥ぎ取りの結果,付随して起る諸現象,即ち分断工具,剥ぎ取り機械,被削母材および単板が如何なる状態に

なるか,などの理由,原理を求めるうえで重要となる。

 しかし,上記の分断力の解析や分断機構の解明は,各種の単板剥ぎ取り機械や被削材質との関連で論じなければ

ならないから,これらにっいては機械加工学の分野に譲り,ここでは代表的な単板剥ぎ取り機械(本報ではベニヤ

レースを,次報ではスライサをとりあげる。)の構造・機構およびそれら機械による単板分断の特徴(これまでに,

実用化され,利用されてきた実際例)を中心に詳解する。

2.1単板の剥ぎ取り方法とその機械の種類

 原木(丸太)あるいはフリッチから単板を剥ぎ取る代表的方法には,一定の長さの丸太

を回転させて,これに分断工具を押し当て同心円状に連続的に薄いストリップ(strip)

を丸剥ぎする方法(この方法をロータリー分断rotary-cutまたはピーリングpeelingと

いう。)と,フリッチの一平面から遂次断続的に平削り的に分断する方法(この方法をス

ライシングslicingという。)とがある。前者の単板剥ぎ取り機械をベニヤレース(veneer

lathe,あるいはrotary lathe),後者のそれをスライサ(veneer slicer)という。

 その他,単板を剥ぎ取る方法には,丸太あるいはフリッチを円運動させて断続的に単板

を剥ぎ取る方法(この方法を半丸剥ぎまたはハーフラウンド分断half round-cutといい,

ベニヤレースにフリッチを取付けて分断する方法と,ハーフラウンドベニヤレースhalf-

round veneer latheあるいはステイログレースstay log latheなどの専用機械を用い

る方法とがある。)や,フリッチの一平面を鋸(ベニヤソー)で分断する方法がある。

2.2 単板の種類

 単板はその分断方法によって,ロータリー単板(丸剥ぎ単板),スライスド単板(平剥

ぎ単板),ハーフラウンド単板(半丸剥ぎ単板)およびソーン単板(鋸挽き単板)に分類

され,図1に示すように,種々の木目のものが得られる。

 普通合板の単板には,ベニヤレースで分断されたロータリー単板(rotary veneer)を

用い,我が国で生産される単板の95%以上を占めている。分断方法から考えて,木目は当

然板目模様を呈する。スライサで分断されたスライスド単板(sliced veneer)は,図2に

示すように,フリッチの木取りを変えることによって,美しい柾目や樹種特有の木目の単

板を採取することができるが,単板の大きさはフリ㌧チの大きさによって制限される。ハー

フラウンド単板(half-round veneer)はロータリー単板とスライスド単板の中間型で,

丸太やフリッチの回転中心位置およびフリッチの木取りを変えることにより,木目模様の

異なる単板を採取することができ,主として化粧用単板に用いられる(図3)。ソーン単

板(sawn veneer)は鋸(ベニヤソー)で挽いて作った単板であり,厚さの大きい化粧用

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単板剥ぎ取り機械に関する研究(1) ベニヤレースとロータリー単板切削 37

単板として利用されるが,現在では殆

ど生産されていない。

3.べニヤレース

 ベニヤレースは,ベニヤドライヤ,

ホットプレスとともに合板工場の主要

機機*の一っで,この機械の良否が

単板,したがって当然のことながら合

板の品質を大きく左右する。剥き出さ

れてくる単板用のストリップの厚さは

0.05mmから10皿m位までが可能である

が,現在製造されているものはO.5~

5m皿の範囲のものが主である。また,

その幅(繊維方向長さ)は4m位まで

可能な機械が作られているが,殆どが

1~2mである。

原木

年輪

回転

(a)ロータリー単板

 9

            ,

▲!プレッシャバー

  メナイフ

〆〆フリッチ

κ’,

・       フリッチ    鴨  ホルダ     ’」

柾目スライスド単板    板目スライスド単板

    (b)スライスド単板                 年輪ステイロ           ッチ

 3.1機械の構造・機構       1                 ゆロ ロベニヤレースは,図4および図51こ/1

                回転中心示すように,スピンドル駆動用大歯車

を内蔵する左右の強固なフレームとこ

れらを連結するベットが機体をなして

いる。フレームには,左右両スピンド

ル(主軸spindle)とその軸受が納め

られている。原木はその両木口面がス

ピンドル先端のチャック (chuck)で

締付けられたまま回転する。鉋台は分

断工具としてのナイフとプレッシャバー

(pressure bar)とから構成され,そ

れらの下部には工具角度調節のための

シヤバー 放射組織

年輪

     ナ フ 単板 逆剥ぎ取り      正規剥ぎ取り

(c)ハーフラウンド単板

放射組織単板

フリッチ

フリッチホルダ〆

(d)ソーン単板

図1 単板の製造法と種類

滑り台が取付けられている。鉋台は送り台に取付けられ,歩出し装置によって速度が調整

されながら原木に向って前進し,要求された厚さの単板を剥き出す。

 ベニヤレースの大きさは,普通,工具取付け面の長さおよび振り(加工できる原木の最

大直径をいう。)が用いられ,呼び寸法(工具取付け面の長さ×振り)で表される。日本

工業規格JIS B6542では,工具取付け面の長さ(1,300mm以上3,700mm以下)および振り

(600㎜以上2,100mm以下)の機械にっいて,機械精度や運転などを規定している。

* ベニヤレースには,付属機械として,原木の最適姿勢位置を決め,レースのスピンドル位置に供給するログチャー ジャ(レースチャージャ)と,単板用ストリップを巻き取るリーリング装置が前後に配置されるのが一般であ

 る。これらの付属機械にっいての詳解は,別の機会に譲り,本稿では,チャージャについて簡単に述べるにと

 どめる。

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38 杉  山

    (a)       (b)

一(c)

貞 年輪

(d〉

縦突きの場合横突き(板目取り)の場合  放射組織

亀こ一』放射組織

年輪

(e) (f) (9)

横突き(柾目取り)の場合

      図2 スライスド単板の剥ぎ取り例と分断方向の順逆

(a)1繊維に対して順目;(b)1繊維に対して逆目;(c),(ω:年輪に対しては左半分が順目,右半分が逆

目,放射組織に対しては左半分が逆目,右半分が順目;(e):放射組織に対しては順目,年輪に対して

は逆目1(f):放射組織に対しては逆目,年輪に対しては順目;(9):放射組織に対しては上半分が順目,

下半分が逆目,年輪に対しては上半分が逆目,下半分が順目

(i) スピンドル(主軸)

 原木の両木口面を締付けて保持し,

回転させるためのもので,ベアリン

グによって支えられた中空軸内に嵌

め込まれ,チェイン車あるいは歯車

によって駆動する。スピンドルは通

常50~200rpm位の範囲で無段変速

分断曲線 ↓ 、.   分断方向  \   \甑

      プレッシャバー冒

分断曲線

1垂

1運転される。中空軸には,特殊な合チャック

金のブッシュが取付けられ,摩耗の

都度交換が可能であり,常にスピン

ドルの振動を防止できるようになっ

ている。原木の締付けを

行うためのスピンドルの 伝導装置

出入れ(軸方向移動)に

際しては,従来,電動機

やチェインなどによって

行われていたが,最近で

はスピンドルの外側に取

           伽付けられた油圧装置によっ

て迅速に行われている。

この油圧機構を利用する

ことにより,原木径や材

質に応じたチャッキング

()O

年輪 ナイフ

チャック

()

OO

年輪

ナイフ

図3 ハーフラウンド単板の製造法の一例

駆動ギヤ(大歯車)

  チャック 鉋台スピンドル

。oo666‘ooφoロo

D・』》四副:

スピンドル出し入れ用

手動ハンドル

、/0  0

qG950  1塾

ρ1騒呂

  7

フレーム 主駆動軸 ベット

図4(a)ベニヤレースの構造(外観図)

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単板剥ぎ取り機械に関する研究(1) ベニヤレースとロータリー単板切削 39

圧力が得られるようになった。

また,原木の剥き芯径を150

mm以下までにも小さくし,歩

止りを向上させるために,二

重構造のスピンドル(ダブル                    ε  eスピンドルdoublespindle)     。 o

が出現し(図6)・原木径の0 碑大きいうちは大スピンドルで

ll鷺ll難鴬冶             鉋台  ベットに剥ぎ取りを行い得る機構の   主駆動軸

ものが用いられている。

                   図4(b)

鳳スピンドル

ボックス型フレーム

鉋台送り軸

●  ●

鉋台歩出し用フレーム

ベニヤレースの構造(外観図)

⑨⑥ ⑦

④  ⑥⑦

灘⑧

…謙 幅躍蝿撫.需, 望・難翔

“⑧。雛 籔 鑓 一襲、,

蓑灘

iil ⑬

 建 iii…幣:繋

欝「醸・

難撃.聴

畿騰縫張、 1論

} 蘭 ⑮

      図5 ベニヤレースのスピンドル回転および鉋台歩出し機構

①:ベット1②:ボックス型フレーム;③:鉋台;④:主駆動軸;⑤:モータ1⑥:スピンドル;⑦:チャック1⑧:スピンドル出入れ用油圧シリンダ;⑨:スピンドル駆動用大歯車;⑩~⑬:鉋台歩出し用伝導装置(⑩:クラッチギヤ;⑪:クラッチレバー;⑫:減速機; ⑬:歩出し変換用ギヤ群);

⑭:鉋台送り用ネジ;⑮:鉋台後退用モータ

(ii) チャック/1\スピンドルチャック

 スピンドルの先端(チャック)には,

多数の針状金具(つめ)が取付けられてスピンドル

                  中心いる・これらのチャックやっめには・原\

木に割れを発生させず,分断中に原木の 一一

掴みにゆるみを発生させず,強固な構造

で破損が少なく,しかも耐久性が大きい

ことなどが要求される。したがって,原

木径や材質に応じて,チャックの大きさ

やっめの形状を使い分けることが必要と

一   一   }   一  ■

小スピンドル

   大スピンドルチャック

大スピンドル

     (㊥ト

     鯵》ト

     チャック っめ

(a) ダブルスピンドル (b)チャックとっめ

図6 ダブルスピンドル

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40 杉  山 滋,

なる。チャックとっめの一例を図6に

示した。             ⑧

 (iii) ベンディング防止装置

 長尺の小径木,あるいは大スピンド

ルでの剥き芯材などを小スピンドルを  ⑥

                 ⑮

至灘”雛盤論翠持し,歩止りの向上をはかるために,

分断力のかかる反対側から原木中央部

をバックアップロールで押える装置が

付けられている。このようなベニヤレー

スの装置をベンディング防止装置とい

う。

 (iv)歩出し装置

 スピンドルの回転運動を鉋台に伝え,

鉋台の歩出し(前進速度の決定)を行

い,単板の厚さを決めるための装置を

歩出し装置という。・歩出しの切替えに

o o

O O

4

7

⑤ ’

⑬\⑩

⑪ ⑯

   /⑰

 図7 ベニヤレースの断面の一例

①:丸太(原木);②1チャック1③:プレッシャバー;④:プレッシャバー固定用ボルト1⑤:プレッシャバー垂直方向微調節用ネジ1⑥:プレッシャバー出入れ用ネジ;⑦:プレツシヤバー押え1⑧:プレッシヤバー台;⑨:単板(ベニヤ)1⑩:ナイフ;⑪:ナイフ固定用ボルト;⑫:ナイフ出入れ用ネジ;⑬:ナイフホルダ1⑭:ナイフ台;⑮1鉋台送り軸;⑯:工具角度調節用滑り台1⑰:下部滑り台;⑱:歩出し変換用ギヤ群;⑲:主駆動軸

行えるようになった。                   (単位、,、)

 (v)鉋台                    図8 ベニヤレース用ナイフ 鉋台は,ナイフを固定するためのナ

イフ台(knife carriage)とノーズバーなどのプレッシャバーを固定するためのプレッシャ

バー台(pressure bar carriage)とから構成されている(図7)。鉋台で重要なことは,

ナイフ台へのナイフの取付けおよびプレッシャバー台のあり方,即ち,どのようなプレッ

シャバーを採用するかおよびその取付けの仕方をどのようにするか,である。ナィフの取

付け方法には,予めセットした刃物ホルダをナイフ台に取付ける方法と,刃物ホルダを適

当に分割してナイフの押え金として使用する方法などがあるが,後者はセッティングに時

間を要するので殆ど使用されていない。最近では,刃物ホルダの締付けに油圧機構が採用

されている。

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単板剥ぎ取り機械に関する研究(1) ベニヤレースとロータリー単板切削 41

 プレッシャバー台は,鉋台の上部に取付けられ,前進,後退用の移動装置によって移動

可能となっている。プレッシャバー台の先端には,プレッシャバーが取付けられている

(一般に,プレッシャバーとノーズバーとは混同されて使用されているが,本文ではプレッ

シャバーという用語を用いる。我が国で一般に用いられているノーズバーは,プレッシャ

バーの一つの形態と解釈する方式をとることとする)。プレッシャバーには,現在,ノー

ズバー(シャープバーとダブルフェイスバーとがある。)やローラバーが用いられている。

プレッシャバーとして他に考えられるものとしては,圧搾空気バーやウォータジェットバー

などが考えられているが,それらは実用化の段階までには至っていない。なお,ノーズバー

やローラバーなどのプレッシャバーでは,分断中にプレッシャバーへの負荷が極めて大き

くなり,これによるプレッシャバーの後退を防ぐため,最近では,圧搾空気や油圧による

プレッシャバーの締付けが採用されている**。

 なお,単板の剥ぎ取りでは,切屑として単板を分断する加工ではないから,ナイフの角

度(刃物角とその取付け角度(切削角))はできる限り小さくして襖の作用を充分に働か

せる必要がある。しかし,刃物角は刃物材質の剛性に制約され,極端に小さくすると刃先

にびびりが生じ,単板の厚さむらの原因となる。一般に,刃物角は18~240の範囲が用い

られている。また,プレッシャバーの強い圧縮作用はナイフ刃先にびびりを生じさせるの

みならず,プレッシャバーの後退などを発生させ,それらは単板の厚さむらの原因となる

から,ナイフとプレッシャバーとは一体に強固に保持されなければならない。

 (vi) ナイフ

 ベニヤレース用ナイフには,台金部と刃部とで鋼種が同一のものと異なるものとがある。

前者(全鋼ナイフ)は,ナイフ全体として剛性にすぐれ,剥き肌を比較的問題としない荒

剥き,厚剥き,高速剥きに適している。後者(鍛接ナイフ)は,剥き肌はよいが,剛性に

やや欠ける。普通,広く使用されているナイフの一例(鍛接ナイフ)を図8に示す。同ナ

イフは,台金部に軟鋼,刃部に工具鋼を用い, これらを鍛接したもので,刃物角は18~

240程度で,機械に取付けるときの刃物ホルダの型により,スロットのあるものとないも

のとがある。刃部の工具鋼には,合金工具鋼(SKSやSKD)や高速度鋼(SKH)などが

用いられる。ナイフの機械への取付け方式は,いずれのナイフの場合も表刃方式(単板が

刃裏面に沿って出る方式をいう。次報2)参照)が採用される。

 なお,ベニャレース用ナイフについては,材料,形状,寸法,品質および検査などが

JIS B4708に規定されている。

 ベニヤレースには,上記のナイフの他に,単板の幅(繊維方向長さ)を一定に決めるた

め,また幅を2分するためにケビキナイフがある。それは鉋台とは独立して,原木の両端

部や中央部に突き刺さるように取付けられる。

 (vii) プレッシャバー

 (これについては,既報1)に詳解済みである。既報1)参照)

 (viii) ログチャージャ(レースチャージャ)

 原木をベニヤレースヘ供給する機械をログチャージャ(10g charger)あるいはレース

**ナイフやプレッシャバーの取付け面の真直度,鉋台運動の真直度,および左右両スピンドル中心線,ナイフ台

 取付け面,プレッシャバー取付け面の相互の平行度などについては,JIS B6542で規定している。この精度

 検査にしたがって,鉋台の精度を維持することが大切である。

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42 杉  山 滋

チャージャ(lathe charger)という。従来,原木をベニヤレースに取付ける場合,チェ

インブロック,ホイストなどで吊り上げ,左右の高さを調整しながらスヒ。ンドルに取付け

ていたが,原木径が大きいときはとくに芯出し作業(チャッキングの際の中心決めをいう。)

が困難であるとともに,災害の危険性が極めて大きかった。ベニヤレースの大型化,高速

化が進むにっれ,その稼動率を高めるために,ログチャージャが出現し,芯出し作業(原

木の木口にプロジェクタを照射し,ベニヤレースのスピンドルの中心に原木芯を合わせる

ものが多い。)が短縮し,取付けの際の偏心率が減少し,単板の荒剥きの節減ならびに単

板収率の向上に役立っている。

 ログチャージャには,種々の構造のものがあるが,最近では,ベニヤレースの稼働率や

歩止りの向上をはかるために,原木にスキャニング装置を作用させ,原木複数個所の断面

形状を測定し,原木芯を瞬時に算出する,いわゆる原木の自動芯出し,ならびにベニヤレー

スヘの原木の自動供給を行うのに,コンピュータシステムが採用されている。

3.2 ベニヤレースによる単板の剥ぎ取り

  (これについては,既報1〉に詳解済みである。既報1)参照)

原木から単板を剥ぎ取る場合,最も重要なことは,剥き始めから終りまで常に単板の厚さが一定であると同時に,

質の変らない単板が得られなければならない。そのためには,まず,丸い原木を剥いてそれを平面に展開したとき,

常に厚さが一定になるための最も望ましい切断曲線を求めることが必要となる。さらに,ベニヤレースによる単板

の剥ぎ取りで重要なことは,単板の剥ぎ取られてゆく速度(切削速度)を一定に保つこと,即ち単板の生産能率を

落さないことも大切である。これにっいては,既報1)において,ベニヤレースの単板切断曲線,剥ぎ取り速度など

について詳解している。

文 献

1)杉山 滋:単板切削現象の変化に及ぼすプレッシャバー一ナイフー被削材相互の位置関係の影響(解析と実

 験)(1) ロータリー単板切削にっいて,長崎大学教育学部自然科学研究報告,No.56,33~40(1997).

2)杉山 滋:単板剥ぎ取り機械に関する研究(H)  スライサとスライスド単板切削,長崎大学教育学部自

 然科学研究報告,No.57,43~49(1997).