地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 mri...

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筑波大学計算科学研究センターコロキウム 2005.6.23 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測 筑波大学計算科学研究センター 地球生物環境研究部門 田中

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Page 1: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

筑波大学計算科学研究センターコロキウム 2005.6.23

地球温暖化に伴う熱帯循環の強度変化の予測

筑波大学計算科学研究センター

地球生物環境研究部門

田中 博

Page 2: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

熱帯循環

• ハドレー循環: 放射過熱の南北差 軸対称循環

• ウォーカー循環: 海面温度の東西差 ENSOと連動• モンスーン循環: 海陸の温度差 季節的逆転

問題:

温暖化により、これらの循環強度はどうなる?

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ハドレー循環

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モンスーン循環

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ウォーカー循環

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循環強度の定量化

minmax χχ L∆

max

minmax

4

)(2L

2

:

L

χ

χχχχ

χχ

=

−=∆∆∆

=

∆∆

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LC

v

dltvCL

  

 速度ポテンシャル  

発散風   

循環  

L

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熱帯循環の分離

(1) ハドレー循環: 放射過熱の南北差 軸対称循環

(2) ウォーカー循環: 海面水温の東西差 ENSOと連動(3) モンスーン循環: 海陸の温度差 季節的反転

(3) (2) (1) ),,(),()],([

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*

χχχχ

χχχχ

 時間平均  

  東西平均

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′++=

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ハドレー ウォーカー モンスーン

Page 8: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

用いたデータ

• NCEP/NCAR 再解析• MRI CGCM-1温暖化実験

(Tanaka, Ishizaki, and Kitoh 2004, Tellus)

• 20世紀再現実験 (20C3M)• 21世紀予測実験 (SRES A1B)

(Tanaka, Ishizaki, and Nohara 2005, SOLA)

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速度ポテンシャル(気候値)),,( tyxχ NCEP/NCAR 再解析

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ハドレー循環成分 ),,()],([),,( * tyxtytyx χχχ +=

40

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渦動成分 ),,()],([),,( * tyxtytyx χχχ +=

Page 12: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

ウォーカー循環成分 ),,(),()],([),,( ** tyxyxtytyx χχχχ ′++=

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Page 13: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

モンスーン循環成分 ),,(),()],([),,( ** tyxyxtytyx χχχχ ′++=

80

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ウォーカー循環指数

エルニーニョ

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ENSO

Page 16: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

ハドレー循環指数

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モンスーン循環指数

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モンスーン循環の中心

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循環強度の定量化

NCEP/NCAR再解析を用いた結果によると

• ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の循環強度の比は 40:120:80である。

• ウォーカー循環指数はENSO指数と整合的であり、近年、低下傾向にある。つまり、エルニーニョは起こりやすくなった。

• ハドレー循環指数はDJFに対し、増加傾向にある。

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温暖化予測

MRI CGCM-1の解析(Tokioka et al. 1995)

CO2の年率1%増加150年ラン予測実験

海洋は昇温し応答の分布はラニーニャ的

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速度ポテンシャルの変化

Page 22: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

ウォーカー循環強度

Page 23: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

ハドレー循環指数

Page 24: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

モンスーン循環指数

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循環強度の変化予測

MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると

• ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の循環強度の比は世紀末で 35:100:70である。

• ハドレー循環指数はJJAに対し、25から35へ明瞭な強化傾向を示した。

• モンスーン循環指数はJJAに対し、90から70へ明瞭な減少傾向を示した。

Page 26: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

IPCC 20世紀再現実験(IPCC/20C3M)

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速度ポテンシャル

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速度ポテンシャル

Page 29: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

速度ポテンシャル

Page 30: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

速度ポテンシャル

Page 31: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

速度ポテンシャル

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速度ポテンシャル

Page 33: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

速度ポテンシャル

Page 34: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

速度ポテンシャル

Page 35: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

循環強度 IPCC 20世紀ラン

NCEP/NCAR

GISS

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IPCC 21世紀予測実験(IPCC/SRES A1B)

• SRES A1B: CO2は2100年までに720 ppmに増加しその後平衡状態に達するシナリオ

• 経済成長は急速で全球的に変化が進行する

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循環強度 時系列

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循環強度 時系列

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循環強度 時系列

Page 40: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

循環強度 時系列

MIROC

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循環強度 時系列

GFDL

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循環強度 時系列

Page 43: 地球温暖化に伴う熱帯循環の 強度変化の予測...循環強度の変化予測 MRI CGCM-1を用いた温暖化予測によると • ハドレー循環、ウォーカー循環、モンスーン循環の

循環強度の変化 21世紀ラン

GFDL

MIROC

9%減少 8%減少 14%減少

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まとめと考察

• 熱帯循環強度の定量化の結果、NCEP/NCAR 再解析ではハドレー、ウォーカー、モンスーン循環強度比は40:120:80であり、20世紀ランのモデル平均は35:97:66であった。

• モデルの循環強度が弱いのは、熱帯対流圏の静的安定度が大きいことによると推測される(Knutson and Manabe1995; Mitas and Clement 2005)

• IPCC SRES A1B シナリオに基づく21世紀予測ランによると、ハドレー、ウォーカー、モンスーン循環強度はモデル平均では9:8:14%減少すると予測された。

• 温暖化により大気中の水蒸気が増大し、対流圏の静的安定度がさらに増大することがその要因と推測される。