最期を迎えるリハビリ~終末期の患者様に必要なこ...

13
第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢 5-10-1 ターミナルケア・終末期ケア(1) 最期を迎えるリハビリ~終末期の患者様に必要なこととは?~ 名南ふれあい病院 リハビリテーション部 いそべ めぐみ ○磯部 恵(作業療法士) < はじめに > 当院は介護療養型病棟 ( 以下、療養病棟 ) 60床を有する病院である。平均要介護度 4.4 と重度の患者様が 多数をしめ、当院で最期を迎えられる患者様も多い。療養病棟にて最期を迎える患者様に対し何が出来るのか? リハビリスタッフの役割と今後の課題について発表する。 < 症例 > 女性 101 歳 胃癌末期 食欲不振  < 経過 > 2 月中旬 食欲不振が続き胃癌を疑われたが治療は希望されず。看取り目的にて当院入院。ご家族の延命希望 はなく、当院にて可能な範囲の対応を希望される。リハビリは離床時間を確保し水分・間食の提供にて介入と なる。 3 月上旬 食事量は少ないながらも継続可能。車椅子にて離床を続け、会話も増加し家族に感謝する発言が聞 かれるようになる。リハビリでは水分・間食の摂取を継続。 3 月下旬 徐々に食事量減少し、離床拒否が増加。ベッド上での水分摂取・口腔ケアが中心となる。 4 月上旬 永眠 < 考察・課題 > 徐々に病状が悪化していく症例に対し、最期を迎えるまで必要なリハビリとは何なのか。延命や希望がない 患者様、ご家族の希望がない症例に対し、リハビリの目標設定が難しく、離床や水分・食事摂取が中心の介入 であった。終末期をどう過ごして頂くか、日々変化する状態に限られた対応しか行えず、介入した内容が症例 の満足できるものであったのか確認する手段はない。リハビリの役割が不明確に感じたことは、スタッフの経 験・知識が少ないことも要因に上げられる。 < おわりに > 終末期に取り組む機会が増加する中、終末期リハビリテーションはまだ歴史が浅く、スタッフの経験や力量 に介入方法が委ねられるところが大きい。患者様・家族から最期の思いを聞き取るコミュニケーション技術も 必要となる。療養病棟において、終末期リハビリテーションの必要性と質の向上を進めていきたい。

Upload: others

Post on 06-Jul-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-10-1 ターミナルケア・終末期ケア(1)最期を迎えるリハビリ~終末期の患者様に必要なこととは?~

    名南ふれあい病院 リハビリテーション部

    いそべ めぐみ

    ○磯部 恵(作業療法士)

    < はじめに > 当院は介護療養型病棟 ( 以下、療養病棟 ) 60床を有する病院である。平均要介護度 4.4 と重度の患者様が多数をしめ、当院で最期を迎えられる患者様も多い。療養病棟にて最期を迎える患者様に対し何が出来るのか?リハビリスタッフの役割と今後の課題について発表する。< 症例 >女性 101 歳 胃癌末期 食欲不振 < 経過 >2 月中旬 食欲不振が続き胃癌を疑われたが治療は希望されず。看取り目的にて当院入院。ご家族の延命希望はなく、当院にて可能な範囲の対応を希望される。リハビリは離床時間を確保し水分・間食の提供にて介入となる。3 月上旬 食事量は少ないながらも継続可能。車椅子にて離床を続け、会話も増加し家族に感謝する発言が聞かれるようになる。リハビリでは水分・間食の摂取を継続。3 月下旬 徐々に食事量減少し、離床拒否が増加。ベッド上での水分摂取・口腔ケアが中心となる。4 月上旬 永眠< 考察・課題 > 徐々に病状が悪化していく症例に対し、最期を迎えるまで必要なリハビリとは何なのか。延命や希望がない患者様、ご家族の希望がない症例に対し、リハビリの目標設定が難しく、離床や水分・食事摂取が中心の介入であった。終末期をどう過ごして頂くか、日々変化する状態に限られた対応しか行えず、介入した内容が症例の満足できるものであったのか確認する手段はない。リハビリの役割が不明確に感じたことは、スタッフの経験・知識が少ないことも要因に上げられる。< おわりに > 終末期に取り組む機会が増加する中、終末期リハビリテーションはまだ歴史が浅く、スタッフの経験や力量に介入方法が委ねられるところが大きい。患者様・家族から最期の思いを聞き取るコミュニケーション技術も必要となる。療養病棟において、終末期リハビリテーションの必要性と質の向上を進めていきたい。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-10-2 ターミナルケア・終末期ケア(1)介護養型医療施設におけるターミナルケアの取り組みについて

    1 上條記念病院 看護部,2 上條記念病院

    ふじもり よしえ

    ○藤森 淑江(看護師)1,2,西窪 昌子 1,名取 茂美 1,畑中 晴美 1,上條 裕朗 1,上條 裕朗 2,上條 節子 2

    【はじめに】当院介護療養型医療施設では平成27年度介護報酬に伴い療養機能強化型 A を算定している。算定要件であるターミナルケアを1年間行ってきたので報告する。

    【取り組み】 まず当院ではターミナルケアを開始するにあり厚生労働省のガイドラインを参考に「人生の最終段階における医療の基本的な指針」「説明及び同意書」を作成した。H27 年1月1日より指針に沿ってターミナルケアを実施している。① 医師が医学的知見に基づき回復の見込みがないと判断した者② 入院患者・家族の同意を得て患者のターミナルケアに係る計画を作成③ 医師、看護師、介護職員等が共同して本人またはその家族への説明を行い同意を得てターミナルを行う。ターミナルケア対象者に①から③すべて実施。①から③いずれにも適合する者の占める割合が 100 分の 10 以上で、6名以上維持できている。ターミナルケアの流れ1.人生の最終段階における医療の基本的な指針 人生の最終段階における医療についての説明及び同意2.人生の最終段階における医療の担当者会議3.人生の最終段階における医療計画書4.実施5.人生の最終段階における医療のケアチェック・評価6. 2へ戻る

    【まとめ及び課題】 ターミナルケアに関わり、患者さんご家族様より満足したという声を頂いている。しかし課題も見えてきている。・的確な時期に医師からの IC を組む。・あまり来院しない家族はどうやって巻き込んでケアしていくか・ご家族を呼ぶタイミングについて・スタッフがターミナルや死という事に慣れてしまわないよう教育。・介護病棟におけるターミナルケアとしてさらに出来るケアとは。 今後課題を達成しながら満足して頂けるターミナルケアを継続して行っていきたいと考えている。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-10-3 ターミナルケア・終末期ケア(1)エンゼルメイクにホットパック・マッサージを導入した効果

    刈谷豊田総合病院高浜分院 看護介護部

    おがわ るみ

    ○小川 るみ(准看護師),杉浦 美恵子,村山 由貴子,泉 ゆかり

    【はじめに】A 病院で実施していたエンゼルメイクはファンデーションが粉浮きして表情も強ばっていることが多かった。エンゼルメイクにホットパック・マッサージを導入した結果、患者の皮膚の状態とエンゼルメイクの仕上がりがよくなり、スタッフのエンゼルメイクに対するやりがい感が向上したため報告する。

    【方法】対象:A 病院の病棟看護師 40 名・介護士 19 名期間:平成 27 年 1 月~平成 28 年 3 月方法:1,エンゼルメイクにホットパック・マッサージを追加し、実技講習を実施した。2,患者の皮膚の状態や表情、スタッフのエンゼルメイクに対する思いについて、実技講習前後 (以下、前・後とする)で同一のアンケート調査を実施し、結果を比較した。

    【結果】① 患者の皮膚の状態や表情については、「肌の乾燥が強い」前 43%・後 3%、「肌の張りが強い」前 14%・後 28%、「眼と口が閉じ、表情が穏やかになった」前 35%・後 75%であった。② スタッフの思いについては、「エンゼルメイクの手技に自信がある」前 3%・後 32%、「エンゼルメイクに関わりたい」前34%・後49%であった。

    【考察】クレンジング剤を用いて顔をマッサージしたことで皮脂による汚れが取れ、皮膚が潤い、ファンデーションの乗りが良くなった。ホットパックをしたことで顔面の筋緊張が解け、口や眼が閉じて表情が穏やかになった。家族は「今にもしゃべりだしそう」「こんな顔でした」と、生前の面影を思い出して涙を流されることもあり、エンゼルメイクの質のよい仕上がりは家族のグリーフケアにも役立つと感じた。スタッフはエンゼルメイクの仕上がりの変化を実感し、家族の反応を聞いたことで、やりがいを感じるようになった。

    【まとめ】エンゼルメイクにホットパック・マッサージを導入することでその人らしい表情づくりができ、家族のグリーフケアに役立ち、スタッフのエンゼルメイクに対するやりがい感が向上した。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-10-4 ターミナルケア・終末期ケア(1)

    「個」で看る家族看護の大切さを教わった事例 ~「家族」をひとくくりにしないで~

    柴田病院 看護部

    おくの めぐみ

    ○奥野 恵(看護師),黒田 有美子,西河 洋子

    1.私達医療者は、患者及び家族が様々な選択をしなければならない場面に遭遇する。その場面において両者の意見が完全に一致するということは少なく、S氏もまた同様だった。その関わりの中で家族内でも実は意見の相違があり、キーパーソンでありながら自分の気持ちを表出できないでいた三男の姿があった。S氏との相違があるまま進む治療に疑問を感じたことから、家族へのアプローチを行い、三男が家族代表としての意見ではなく「個」としての正直な気持ちを表出できるに至った過程から患者も家族も「個」で看る家族看護の大切さを振り返ることが出来た。2.患者紹介S氏 72 歳男性 Lt.LK(未告知)Rt.LK(Meta)DM S氏はすべての治療を拒否。長男・次男は対症療法のみ希望。キーパーソンは三男。3.プロセスレコード・考察S氏の状態が悪化するにつれ、S氏の意向で治療拒否にて中止になったり、家族の意向で再開されたりと定まらない日が続いたため、家族へS氏と話し合うように打診するも三男は逃げるように病院を後にする日々を繰り返した。S氏の限られた時間に焦りつつ、三男へ選択を迫らず傾聴のみ行う目的で声をかけると「僕は生きてほしい。そのための治療をしてほしい。」と声をかけた途端涙を流した。S氏に向き合えず苦しんでいた三男に自分の正直な気持ちを伝えてみる様すすめた。会話はできなかったが手を握り見つめ合う姿があった。三男は家族の決定ではなく自分の気持ちを私達に伝えることで、S氏に向き合うことができたのではないだろうか。又、言葉としてではなかったが。手を握り見つめ合うことで気持ちの疎通ができたと思われる。私達は家族と一括りにしてしまいがちだが、一人一人の気持ちを大切にすることで、永眠された後も悲しみの緩和・前に向く気持ちを支援することができたように思う。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-10-5 ターミナルケア・終末期ケア(1)終末期医療の在り方を考える

    (データーでみる高齢者の栄養摂取ルートの現状と課題)

    川千木病院 看護部

    たばた けいこ

    ○田端 恵子(看護師),高田 千嘉

    はじめに当院は500床の慢性期病院である。入院患者の平均年齢84.3歳、病名は脳血管性疾患が多く約半数。障害老人の日常生活自立度 C が83%。また入院患者の約8割が非経口摂取者であった。栄養摂取の方法でみると、H23年を境にPEGが減り、中心静脈栄養(TPN)が増えている。そこで栄養ルート別に見たそれぞれの特徴と、終末期の家族の意向を調査したので報告する。1)方法対象は H 23年、26年の退院者と現在入院している患者の合計943名。栄養摂取方法では、PEG、TPN、末梢点滴など。調査項目は、人数、使用期間(生存日数)アルブミン値、経口摂取の可能性、終末期の家族の意向と満足度など。2)結果PEG 使用者は H 21年の237名が現在は110名、TPN は85名が183名。末梢点滴は大きな差がない。使用期間別では、PEG が1年~10年以上。TPN では6か月~3年。末梢点滴1~2ヶ月。アルブミン値では 3.0mg/dl 以上は PEG が多く、TPN では約半数。末梢では全て 3.0 以下。経口摂取の可能性では、PEG、TPN ともに約半数が少量摂取可能。家族の意向調査では、終末期は自然な形で迎えさせたいが約8割を占め、その結果に満足しているであった。3)考察・まとめ以上から PEG は長く生きられ、延命につながりやすい。TPNは選択しやすい、しかし感染のリスクが高い。自然な形を選択では心残りがあるなど、様々な状況であるが、当院で最期を迎えた家族はほぼ満足していた。しかしそこまでの過程では大いに悩んでいるという。終末期医療はどうあるべきか、今後の課題である。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-10-6 ターミナルケア・終末期ケア(1)介護療養型医療施設における看取りケアを考える

    奈良春日病院 看護部

    いわもと めぐみ

    ○岩本 恵(介護福祉士),島津 和代,阿多 るり子

    【はじめに】当院は 344 床の高齢者医療を担う慢性期病院である。当病棟は 59 床で療養機能強化型 A を取得し、一年間で 59 名の看取りを行った。終末期状態の時、看取りケアはどうあるべきなのか、死に逝く人の残り僅かな人生を支えるために何ができるのか、その人らしく居られる場所や状況で、尊厳を支えさせて頂くために何が求められているか真摯に心を持って看取りケアを行いたいとスタッフ間で共有出来たので、取り組みを報告する。

    【目的】看取りケアを充実させる事で、患者、家族に寄り添ったケアが提供でき看護、介護の質の向上に繋げる。【期間】平成 27 年 4 月~現在【方法】1) 接遇の共感性確認シートの活用 2) 自己点検チェックリストの使用 3) 看取りやターミナルケアの研修 4) 医師、スタッフに対するアンケート調査 5) 患者、家族への聞き取り調査 6) 看取り計画書の作成 7) 定期的なカンファレンス【結果】接遇の共感確認シ - トを使用し、言葉遣いや対応が統一されて来た。又、その人らしい看取りについて医師、看護師、介護職員、家族にアンケート調査を行った結果 「苦痛の無い最期を」 という思いは同じであった。このアンケートを基に、研修会を行いスタッフの意識を高めた。定期的なカンファレンスは家族との信頼関係を深め、同時に看取り計画書が作成でき、家族の希望とその人が望むケアが提供できたと実感できた。この事により終末期のカンファレンスは有効であったと思う。この期間中 「その人らしい看取りができた」 又、家族への聞き取り調査で 「家族が心の準備ができた」 と発言があった。看護職、介護職で振り返りの思いに違いがなかった。【まとめ】人生の最期をどう迎えるかは本来自分自身が決定するものであるが、患者は寝たきりや認知症の方が多く自己決定が難 しい。だからこそ家族とコミュニケーションを図り、その人の人生や家族の想いを聞く事で、その人らしさを知る事ができる。今後、家族とのカンファレンスの中で想いを引き出せるコミュニケーションスキルを高め、スタッフ間で共有し患者、家族に寄り添ったケアの提供に繋げていきたい。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-10-7 ターミナルケア・終末期ケア(1)当院一般病棟における死亡症例から見た看取りの実態

    宜野湾記念病院

    すぎもと みかる

    ○杉本 みかる(看護師),宮良 富子,上原 美由紀,湧上 聖

    【背景・目的】当院一般病棟(66 床)において平成 27 年度退院患者 1042 名中、死亡症例は 42 名(4%)であり、死亡症例から看取りの実態を調査した。【対象・方法】平成 27 年度 1 年間で当院に入院し死亡した全 42例について、性別、年齢、入院疾患、死因、入院から死亡までの日数、紹介元、入院時主訴、食形態、経管栄養の有無、DNR、看取りの状況を後方視的に調査し、得られたデータを単純集計した。【結果】性別は、男性16 例、女性 26 例で、死亡時平均年齢は 88,7 ± 8,8 歳。当院における死亡順位は、第 1 位が肺炎(誤嚥性肺炎含む)13 例、悪性新生物 6 例、心疾患 5 例の順。主傷病死では、肺炎が 11 例(52%)と最も多く、次いで悪性新生物 6 例(29%)。入院から死亡までの日数は 1 ヶ月未満が 23 例(55%)、うち6例(14%)は 1 週間以内。紹介元は特別養護老人ホーム 38%、自宅 17%、他老健・居宅施設。入院時主訴は発熱 16 例(38%)、食思低下 10 例(29%)であった。入院時に DNR が確認されていたのは 37 例、確認中または急変による CPR 実施は 4 例、人工呼吸器管理が行われたのは 2 例であった。【考察】ターミナルケアや施設入居者は高齢を理由に家族は DNR を選択し、自然な看取りが行われていた。経口摂取が困難になると経管栄養を希望し移行するが2週間前後の延命であることから、死因の半数を占める誤嚥性肺炎予防が必要と考える。入院時に DNR が確認できない家族は、治癒、延命を希望し CPR が行われていたが、人工呼吸器装着後に自然な看取りを望む家族もあり、家族が望む「本人が苦しまない」形で看取りが行われるように、その意思決定を支える一般病棟の医療関係者の役割は重要と思われる。【結論】死亡症例は施設又は自宅からの高齢者で、肺炎・誤嚥性肺炎が多く、発熱・食思低下を主訴に入院していた。自然な見取りを行う症例もあるが、急変により最後の選択をすることもあり患者・家族の意思決定を支える役割が重要である。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-11-1 ターミナルケア・終末期ケア(2)家族と職員の看取りに対する思いを知る ~看取り介護についての意識調査から~

    おおやま病院 看護科

    よねざわ ひろみ

    ○米澤 廣美(看護師),福村 佐英子,黒川 明美,竹山 司

    〔はじめに〕 介護病棟には、様々な事情で自宅介護が困難なため入院しているケースが多く、ほとんどの家族は最期までお願いしたいと考えている。家族はどんな「看取り」を考えているのか。また私達職員は、患者さんの終末期に関わる「看取り」に対してどんな思いを持っているのか。看取り介護に対する意識調査から見えてきた結果を報告する。

    〔研究方法〕対象:介護病棟 58 床 利用者家族30名 職員(NS,CW)34 名期間:X 年8月~ 10 月方法:アンケート(選択・複数・記述回答)

    〔結果〕 「家族として病棟スタッフに望むこと」では、『苦痛を取り除いてほしい』や、『延命治療をせず自然に任せてほしい』や、『心落ち着く雰囲気や環境を整えてほしい』などが多かった。「家族が出来ること」への回答では『出来るだけそばにいる』『手や足を優しくマッサージする』。「看取りに対しての印象は」の回答では『辛い淋しい』『穏やかであることを願う』『悔いが残らないようにそばにいて静かに見守りたい』などがみられた。

    「エンゼルケアを家族と一緒に行うことについて」という職員への質問にでは、『家族に対しての声かけや失礼な行動・仕草・言葉使いをしていないか』などといった不安が多く挙げられた。 〔考察〕 看取るとは、もともと看病そのものを指し、必ずしも最期を看るという意味ではないのだが、現在では人生の最期を見送るときに使われる表現になっている。今回のアンケートの結果から看取りに対して本人のみならず、その家族に寄り添った看護、介護が必要だと改めて痛感したスタッフが多かった。エンゼルケアを家族と行うことに職員は不安を抱えているが、家族に声かけをし、一緒に行った例が当院でも増えている。今後も他職種間で定期的に検討を加え、より良い看取りにつなげていきたいと思います。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-11-2 ターミナルケア・終末期ケア(2)看取りの介護を考える

    山の上病院 南館 2 階病棟

    ごとう えりこ

    ○後藤 恵理子(介護福祉士),松永 由季子,佐藤 和希

    1.はじめに 高齢者社会が進み、医療体制の著しい変化に伴い慢性期医療で終末期を迎えるケースが増えてきている。ターミナルケアは看護師が中心となり行うもので、介護職は補助的役割として認識していた。そのため、エンゼルケアについては個々のスタッフの知識、技術で対応しており不十分であると考えられた。介護職が基本的な技術ができるようマニュアルを作成を行ったのでここに報告する。2.方法 病棟職員 12 名にアンケート調査を実施。エンゼルケアの方法や必要物品の問題点を抽出し、マニュアルを作成する。エンゼルケアとメイクについて研修会を実施した。3.結果 新人やエンゼルケア未経験者の職員であっても、その対応と手順が理解できた。一人であっても基本的技術ができるようになった。4.考察 エンゼルケアのマニュアル作成により基本的な対応ができるようになった。介護職にとってエンゼルケアのマニュアルは日々のケアの延長線上にあると考え必須である。今回の取り組みの中で、マニュアル作成をきっかけに故人の尊厳を守るケアの提供や大切な人を失う御家族に寄り添う介護のあり方について考えるきっかけになったと言える。人の死に対して経験の浅い介護職にとって最期をケアするということは本当に辛く悲しいものである。これからの時代、病院で死を迎えるだけでなく、施設や在宅等で死を迎える機会がふえると考える。そのため、対応する介護職が正しい知識を持ち、個々に合わせたケアを提供できることで、患者や御家族が満足できるエンゼルケアに繋げたいと考える。5.終わりに 今回の取り組みは他病棟の関心を高めた。一部の介護職だけに終わらせることなく、介護職の中で研修会を重ね、質の高いケアの提供に繋げたい。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-11-3 ターミナルケア・終末期ケア(2)療養病棟におけるターミナルカンファレンスの取り組み

    蒲郡厚生館病院 リハケア部

    いしはら りか

    ○石原 梨花(看護師),高畑 佳世,農塚 栄美,今村 真澄

    【背景】終末期における患者様・家族に対するケアの向上と統一した看護をしていく為に、療養病棟勤務の看護師が、終末期看護に対してどのように捉えているのかを明らかにし、ターミナルカンファレンスに視点をあてて取り組んだ。

    【対象と方法】アンケート対象者は、療養病棟に勤務する看護師・准看護師 21 名。構成的質問紙、半構成的質問紙にてデータ収集し、単純集計。自由回答については内容分析を行った。

    【結果】 終末期ケアに対しての気持ち、終末期患者様に対する恐怖心を抱いていないか、家族看護に対する意識を調査した。調査の結果、現在の看護ケアに対して前向きであり、家族へのアプローチも視野に入れていることが判明した。

    「ターミナルカンファレンスの実施は今後のケアに活かされているか」という質問に対して、「はい」が47.6%。「いいえ」の意見を分析し、業務改善として取り組んだ。ターミナルカンファレンス用紙を一新し、ターミナルカンファレンス実施の時期を決定し、用紙の定位置を決めた。新しい決定事項から 2 ヵ月後に同じ質問をしたところ、「はい」が 76.2% となった。

    【考察】看護師自身の中に葛藤を抱えることもあるが、ターミナルカンファレンスにより話し合える場があり、1人で抱え込まなくてもいい環境が整っている。死を迎えるまで患者様が人生を積極的に生きてゆけるよう、愛のある看護・ケアを提供していきたい。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-11-4 ターミナルケア・終末期ケア(2)ハッピーエンドオブライフのために音楽療法ができること ~「歌手になりたい」という夢を実現~

    1 介護老人保健施設 大誠苑 まちづくり部,2 内田病院

    たかはし あやか

    ○髙橋 彩花(音楽療法士)1,髙橋 由貴子 1,田中 志子 2

    【対象者および目標】A 氏:95 歳女性。老人保健施設入所。介護度 5、認知症度Ⅳ、慢性心不全の終末期であり、施設でのエンドオブライフケアを実施していた。病前より歌を好み、施設の常勤音楽療法士による集団音楽療法に参加していたが、難聴・認知機能の低下により楽しむことが困難となった。そこで、個別なアプローチを行い A 氏が歌う楽しみを持ち続けられることを目標とした。

    【方法】音楽療法室にて、個別音楽療法を週 1 回約 45 分計 16 回実施。ジェスチャーや筆談を用い、好みの曲の歌唱や回想を促し会話促進を図る。手遊び歌で肩や手に触れ、A 氏のペースに合わせ進行する。評価方法は、音楽療法中、及び日常生活での A 氏の言動の変化について記録・分析を行った。

    【経過および結果】個別で静かな空間である音楽療法室でのセッションを続けるうちに自分の想いを語られるようになり、懐かしい歌から家族の話、幼少期や子育て時代の話を涙を流しながら話された。A 氏の楽しみを大切にするという現場職員と家族の共通の意向から、体調の様子を見ながらセッションを継続。

    「歌手になりたかった」との発言を受けて、コンサートの開催を提案。開催すると約 80 名以上の施設利用者や職員、A 氏の娘が観客として訪れ、思い出の曲を緊張しつつも大きな声で歌唱し、感謝の気持ちを聴衆に伝えた。1 カ月後、逝去された。

    【考察】A 氏は難聴や認知機能の低下により、歌を楽しむ機会が得られにくくなっていたが、個別の音楽療法へシフトしたことにより、自分のペースで自分の好きな歌を楽しむことができたと考える。懐かしいメロディーと会話を存分に楽しめる働きかけが可能なセッションを繰り返すうち、回想法の効果とセラピストの信頼関係の構築により過去の夢を語ることができた。その思いを叶えるため、家族や職員とチームで協力体制を取る事ができ、A 氏のハッピーエンドオブライフを支える事ができたのではないかと考える。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-11-5 ターミナルケア・終末期ケア(2)ターミナルがん患者へのアロママッサージの試み 患者・家族・看護師のアンケートより得られたこと

    総泉病院 看護部

    なかむら なつみ

    ○仲村 夏美(看護師),西岡 弘子,平岡 静重

    1.はじめに  当病棟では、ここ数年ターミナルのがん患者が増えてきている。身体的、精神的またスピリチュアルな面の苦痛をもち、薬物療法だけでは限界をきたすこともある。苦痛が緩和されない時や不安を訴える場合、対応に困惑するスタッフも少なくない。補完代替療法として、近年広まりつつあるアロママッサージを看護ケアの一環として取り入れてみてはどうかと考えた。がん性疼痛、死を前に現れる不安、看取りを控えた家族の葛藤に対しての援助、信頼関係の確立、手から伝わる温もりの重要性について学ぶことが出来た事例であるためここに報告する。2.研究目的①ターミナルがん患者 2 名を対象としたアロママッサージを定期的に看護ケアの一環として提供する。②患者及び、看護師にアンケートを実施。両者のアンケートを基に、今後の課題を明確にする。3.方法  週 2 回アロママッサージ(四肢)を 15 分~ 20 分程度実施する4.結果  血流が改善され、ウトウトしたりとリラックスされていた。疼痛やしびれに関しては、マッサージのみでは十分な効果は見出すことは難しかったが、触れてもらえることが嬉しい、気持ちをほぐしてもらえてうれしかったという思いを話された。5.考察  今回のアロママッサージでは、死を迎える患者に対して患者、家族、看護師と共にゆっくりとした時間を設けられたこと、普段口にできずに深い所に閉まっていた思いを語った事は、看護師との信頼関係が確立されたからであると考える。看護ケアの一環としてアロマセラピー(=香り)、手から伝わる温もりを通し、同じ時間を患者と共に共有できたなら、両者が癒される素晴らしい時間である事は間違いないと考えられる。6.まとめ  患者及び支える家族が穏やかに残された日々を当院で療養できるように、ケアの一環としてアロママッサージを提供できることを期待したい。

  • 第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢5-11-6 ターミナルケア・終末期ケア(2)家に帰りたい ~がんリハチームで支援した取り組み~

    北中城若松病院

    ひが かずとみ

    ○比嘉 一富(理学療法士),上地 加奈江,真栄城 健,町田 恵美,新城 かずさ

    【はじめに】終末期の方々が住み慣れた地域で生活の質を重視した医療を提供する必要がある。今回、末期がん患者の在宅支援をがんのリハビリテーションチームで取り組んだので報告する。

    【症例紹介】疾患名:左腎細胞癌、70 代男性。妻、長男家族と同居。退職後は農業の傍ら地域の子供達に野菜の植え付けや種植えなどの指導をしていた。ニード:自宅療養に向けた環境調整をお願いしたい。性格:頑固、真面目、神経質【経過】63 歳左腎腫瘍、65 歳左腎摘出、71 歳左肺門リンパ節腫大で転移あり、72 歳腰部から両下肢痛で歩行困難。放射線照射終了し在宅療養調整目的で H27 年 12 月中旬、一般病棟へ入院される。入院時は酸素 2L 使用し伝い歩きで居室内トイレ自立。費用等に対して神経質になっていた。クリスマスは 2 時間程自宅で過ごされた。1 回目の退院は本人、家族の不安が強かった為、3 日間の退院とし訪問看護導入して年末年始を家族と過ごされた。2 回目の退院もまだ不安があり 2 週間の予定としたが、退院 3 日目の早朝に呼吸苦の増悪で緊急入院となる。家族と一緒に過ごせる部屋の希望があり、H28 年 1 月中旬、一般病棟から特殊疾患病棟特別室へ転棟。週 1 回カンファレンスを開催し、状態の共有、役割の確認、退院に向けての調整を行った。リハプログラムはリラクセーション、ポジショニング、自宅療養に向けた環境調整を行いまた、病室でスタッフによるミニコンサートを開催し、想い出作りを支援した。看取りに向け退院は孫受験後の 3 月上旬を予定していたが退院日の午前、永眠された。

    【考察】退院後の急変時に再入院できるフォロー体制をとった事、訪問看護との連携を図った事、また、チームで退院に向けた情報の共有を密に行った事で在宅支援が行えた。

    【まとめ】終末期の患者、家族が生活の質を重視した療養生活が行えるようにチームで支援することが重要である。