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[執行供託]総 説 Topic15 [供託] 供託法全般④

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1 [執行供託]総 説 【1】 執行供託とは (1) 意 義 執⾏供託とは、⺠事執⾏などの手続において、目的物の管理と執⾏当事者への交付を供託⼿続により⾏うことで、執⾏⼿続の円滑化および第三債務者の救済を図ることを目的とする供託のことです。要するに、⺠事執⾏の目的である⾦銭を当事者に交付するための供託です。 (2) 具体例 AがBに対して100万円の⾦銭債権[α債権]を有している場合に、Aの債権者である甲がα債権を差し押えたときは、Bはα債権につき、Aに弁済すべきだった100万円を供託することができます。 【2】 権利供託と義務供託 執⾏供託においてする第三債務者がする供託には、「権利供託」と「義務供託」の2つのパターンがあります。 (1) 権利供託 権利供託とは、第三債務者が差押えなどに係る⾦銭債権の額に相当する⾦銭を権利としてで.きる..供託のことをいいます。すなわち、「第三債務者が債務を免れるために供託によることもできる」のが権利供託です。 (2) 義務供託 義務供託とは、第三債務者が差押えなどに係る⾦銭債権の額に相当する⾦銭を義務としてし.なければならない........供託のことをいいます。すなわち、「第三債務者が債務を免れるために供託以外の方法を認めない」のが義務供託です。

Topic15 [供託] 供託法全般④

☑☑☑☑ 用語解説用語解説用語解説用語解説 ☑☑☑☑ この事例では、 Aを「執⾏債権者」、 Bを「執⾏債務者」、 Cを「第三債務者」、 α債権を「被差押債権」 と呼びます。 執行裁判所の振分けにより債権者に公平に配当する 執行債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行債権者 BBBB 第三債務者 100 α債権 差押え 供託所 供託

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【3】 管 轄 ★⾦銭債権に対する差押えなどによって第三債務者が供託をする場合[執⾏供託]、第三債務者はその債務の履⾏地の供託所に、これをしなければなりません(⺠執156条1項、2項、)。これは、第三債務者に負担をかけない趣旨です。 2 [執行供託]差押えがあった場合 【1】 単発の差押えがあった場合 (1) 結 論 ★⾦銭債権に対して差押えがあった場合、第三債務者は、➊差押えに係る部分に相当する⾦銭、または➋差押えに係る債権の全額を供託することができます[権利供託](⺠執156条1項、昭55.9.6⺠四5333号)。 (2) 具体例 甲が、AのBに対する100万円のα債権につき、その一部である60万円について差押えをした場合、Bは、「60万円」または「100万円」を供託することができます。 (3) 制度趣旨 上記のケースで権利供託とされているのは、⾦銭債権による差押えがされた場合、第三債務者は債権者である執⾏債務者に対する弁済が禁⽌されるところ、差押債権者が取⽴てに来ないときは、遅延損害⾦の発⽣を防ぐことができなくなるので、第三債務者の保護を図るために、供託による免責を認めたものです。 (4) 注意点 上記➊➋以外の任意の額を供託することはできません。上記➋が認められているのは、本来、第三債務者は1回の弁済で免責されたはずであるところ、差押⾦額とそれ以外の⾦額に分けて弁済をする⼆度⼿間を省く趣旨であるため、あえて複数回の弁済⾏為が必要となるような供託を認めるべきではないからです。

「執行供託」は多くの受験生が苦手とする分野ですが、出題のパターンはある程度決まっているので、「権利供託」か「義務供託」をパターン別に押さえていくことで、攻略することが可能です。

☑☑☑☑ 補足知識補足知識補足知識補足知識 ☑☑☑☑ α債権の全額である100万円について差押えがされたときは、その全額に相当する100万円について供託することができます[権利供託]。 執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

差押え 【60】 差押【60】 【100】 被差押債権の全額➠100万円 差押金額➠60万円 権利供託

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【2】 差押えの競合があった場合 (1) 結 論 ★⾦銭債権に対して差押えが競合した場合、第三債務者は、被差押債権の全額に相当する⾦銭を供託しなければなりません[義務供託](⺠執156条2項)。 (2) 具体例 AのBに対する100万円のα債権につき、甲がその一部である70万円について差押えをした後、乙がα債権の50万円について差押えをした場合、Bは、「100万円」を供託しなければなりません。 (3) 制度趣旨 上記のケースで義務供託とされているのは、1⼈の債権者による独占的な取⽴てを阻⽌して、執⾏裁判所の関与のもとで、債権者間の公平な配当を確保し、その配当⼿続で債権者平等の原則を実現する趣旨です。 (4) 注意点 そもそも第三債務者に弁済する義務がない場合には、供託の義務は課せられません。すなわち、★被差押債権の弁済期が未到来のときや、反対給付と同時履⾏の関係にあるときは、供託する義務を負いません。第三債務者が関与しない他⼈間の執⾏⼿続に巻き込まれたことによって、本来は弁済する義務のない場合にまで供託の義務が課されるのは不合理だからです。

執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

差押え 【70】 乙

執行 債権者 競合 差押【70】 差押【50】 【100】 α債権の全額 ➠100万 義務供託 差押え 【50】

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【3】 配当要求があった場合 (1) 結 論 ★⾦銭債権の⼀部の差押えがされ、その差押えに対して配当要求があった場合も、差押債権者による独占的な取⽴てを阻⽌するために、第三債務者は、その差押えに係る部分........に相当する⾦銭を供託しなければなりません[義務供託](⺠執156条2項)。 (2) 具体例 AのBに対する100万円のα債権につき、甲がその一部である60万円について差押えをした後、乙がα債権の甲による差押えについて配当要求をした場合、Bは60万円を供託しなければなりません。 (3) 制度趣旨 上記のケースで義務供託とされているのは、1⼈の債権者による独占的な取⽴てを阻⽌して、執⾏裁判所の関与のもとで、債権者間の公平な配当を確保し、その配当⼿続で債権者平等の原則を実現する趣旨です。

☑☑☑☑ 補足知識補足知識補足知識補足知識 ☑☑☑☑ この場合、被差押債権の全額である100万円について供託することもできます(民執156条1項)。

配当要求は他人の差押えに便乗する手続なので、差押範囲は拡大しません。そのため、第三債務者に義務供託が課されるのは、あくまで「差押えに係る部分」であることに注意しましょう。 執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

差押え 【60】 乙

配当要求 権者 配当 要求 差押【60】 【100】 α債権の全額 ➠100万 配当要求 差押額 ➠60万 義務供託

供託可

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3 [執行供託]仮差押えがあった場合 【1】 単発の仮差押えがあった場合 (1) 結 論 ★⾦銭債権に対して仮差押えがあった場合、第三債務者は、➊仮差押えに係る部分に相当する⾦銭、または➋仮差押えに係る債権の全額を供託することができます[権利供託](⺠保50条5項、⺠執156条1項、昭55.9.6⺠四5333号)。これは、⾦銭債権に対して単発の差押えがあった場合と同様の取扱いです。 (2) 具体例 甲は、AのBに対する100万円のα債権につき、その一部である60万円について仮差押えをした場合、Bは、「60万円」または「100万円」を供託することができます。 【2】 仮差押えと差押えの競合があった場合 (1) 結 論 ★仮差押えと差押えが競合しているときは、仮差押えと差押えの前後を問わず、第三債務者は、債権の全額の相当する⾦銭を供託しなければなりません[義務供託](⺠保50条5項、⺠執156条2項)。 (2) 具体例 AのBに対する100万円のα債権につき、甲がその一部である70万円について差押えをした後、乙がα債権の50万円について仮差押えをした場合、Bは、「100万円」を供託しなければなりません。

☑☑☑☑ 補足知識補足知識補足知識補足知識 ☑☑☑☑ α債権の全額である100万円について仮差押えがされたときは、その全額に相当する100万円について供託することができます[権利供託]。

執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

差押え 【70】 乙

執行 債権者 競合 差押【70】 仮差押【50】 【100】 α債権の全額 ➠100万 仮差押え 【50】

義務供託

執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

仮差押え 【60】 仮差押【60】 【100】 α債権の全額➠100万円 仮差押金額➠60万円 権利供託

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(3) 制度趣旨 上記のケースで義務供託とされているのは、差押債権者の逃げ切りを防⽌する趣旨です。供託をさせずに差押債権者が債権を取り⽴てることができるとすると、その後に仮差押債権者が本案訴訟で勝訴をしても、仮差押債権者は自己の取り分を十分に確保できないおそれがあります。だからこそ、第三債務者に供託の義務を課しているのです。 【3】 仮差押えの競合があった場合 (1) 結 論 ★⾦銭債権に対して仮差押えが競合した場合、第三債務者は、被差押債権の全額に相当する⾦銭を供託することができます[権利供託](平2.11.13⺠四502号通達)。 (2) 具体例 AのBに対する100万円のα債権につき、甲がその一部である70万円について仮差押えをした後、乙がα債権の50万円について仮差押えをした場合、Bは、「100万円」を供託することができます。 (3) 制度趣旨 上記のケースで権利供託とされているのは、競合するのがいずれも仮差押えの場合には、どちらの仮差押債権者も債権の取⽴てをすることができないところ、債権の取り合いになるわけではないので、公平な配当を実現させるために供託を義務付ける必要性はないからです。

執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

仮差押え 【70】 乙

執行 債権者 競合 仮差押【70】 仮差押【50】 【100】 α債権の全額 ➠100万 仮差押え 【50】

権利供託

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4 [執行供託]滞納処分があった場合 【1】 意 義 滞納処分とは、租税債権の強制的実現を図るため(租税債権を私債権に優先させる)、滞納者の財産の差押えとその換価を経て配当に終わる手続をいいます。また、滞納処分において租税債権の徴収を担当する職員のことを徴収職員といいます。 強制執⾏等としての競売と滞納処分との調整を図るため、滞納処分と強制執⾏等との⼿続の調整に関する法律[滞調法]が定められています。 【2】 単発の滞納処分による差押えがあった場合 (1) 結 論 ★⾦銭債権に対して滞納処分による差押えのみがあった場合、第三債務者は、供託をすることができません(国税徴収8条、67条1項参照)。 (2) 具体例 国が、AのBに対する100万円のα債権につき、その一部である60万円について差押えをした場合、Bは供託をすることができません。 (3) 制度趣旨 上記のケースで供託ができないとされているのは、第三債務者は、滞納処分による差押⾦額について、徴収職員の取⽴てに応じて弁済をすれば⾜りるからです。 【3】 強制執行による差押えと滞納処分による差押えの競合が 生じない場合 (1) 結 論 ★強制執⾏による差押えと滞納処分による差押えが競合していない場合、➊第三債務者は、滞納処分による差押⾦額....について供託をすることができませんが、➋被差押債権の⾦額から滞.納処分による差押⾦額を控除した額................または強制執⾏による差押えの差押⾦額...............ついては、供託をすることができます(⺠執156条1項、昭55.9.6⺠四5333号)。 (2) 具体例 AのBに対する100万円のα債権につき、甲がその一部である60万円について強制執⾏によ

執行 債務者 AAAA

国国国国

B 第三 債務者 100 α債権 滞納処分による差押え 【60】 滞納処分の 差押【60】 【100】 徴収職員に直接支払うべき➠供託できない× 供託NG

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る差押えをした後、国がα債権の30万円について滞納処分による差押えをした場合、Bは、➊滞納処分による差押えを受けた30万円について供託することはできませんが、➋被差押債権の100万円から滞納処分による差押⾦額の30万円を差し引いた70万円または強制執⾏による差押えの差押⾦額の60万円を供託することができます。 (3) 制度趣旨 強制執⾏による差押えと滞納処分による差押えが競合していない場合、第三債務者は、滞納処分による差押⾦額について、徴収職員の取⽴てに応じて弁済をすれば⾜りるため、その分を除いて、強制執⾏による差押えがあったと捉える処理になっています。 【4】 強制執行による差押えと滞納処分による差押えの競合① ~滞納処分による差押えが先行する場合~ (1) 結 論 ★➊⾦銭債権の⼀部につき滞納処分による差押えがされた後、➋強制執⾏による差押えがされ、競合が生じた場合、第三債務者は、差押えに係る債権の全額を供託することができます[権利供託](滞調20条の6第1項)。 (2) 具体例 AのBに対する100万円のα債権につき、①国がその一部である70万円について滞納処分による差押えがされた後、②甲がα債権の50万円について強制執⾏による差押えをした場合、Bは、「100万円」を供託することができます。

もともと、被差押債権の100万円から滞納処分による差押金額の30万円を差し引いた、「70万円の債権だった」と考え、そこに単発の差押えがされたものと考えると分かりやすいでしょう。 国国国国

滞納処分による差押え 【30】 執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

差押え 【60】 差押【60】 【100】 α債権全額-滞納処分の差押金額➠70万円 差押金額➠60万円 滞納処分の 差押【30】 権利供託

国国国国

①滞納処分による差押え 【70】 執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

②差押え 【50】 競合 【100】 α債権の全額 ➠100万 ①滞納処分の 差押【70】 ②差押【50】 権利供託

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(3) 制度趣旨 租税債権は私債権に優先するので(国税徴収8条)、第三債務者は、供託をせずに徴収職員の取⽴てに応じて弁済をすれば⾜りるところ(国税徴収67条1項、滞調20条の5参照)、「公平な配当の確保のために、執⾏裁判所に関与させる」という義務供託の趣旨が妥当しないから、義務供託とはなりません。 しかし、第三債務者は1回の弁済で免責されたはずであるところ、滞納処分の差押⾦額とそれ以外の⾦額に分けて弁済をする⼆度⼿間を省く趣旨であるため、差押えに係る債権の全額の供託を権利供託として認めています。 【5】 強制執行による差押えと滞納処分による差押えの競合② ~強制執行による差押えが先行する場合~ (1) 結 論 ★➊⾦銭債権の⼀部につき強制執⾏による差押えがされた後、➋滞納処分による差押えがされ、競合が生じた場合、第三債務者は、差押えに係る債権の全額を供託しなければなりません[義務供託](滞調36条の6第1項)。 (2) 具体例 AのBに対する100万円のα債権につき、①甲がその一部である70万円について強制執⾏による差押えをした後、②国がα債権の50万円について滞納処分による差押えをした場合、Bは、「100万円」を供託しなければなりません。 (3) 制度趣旨 上記のケースで義務供託とされているのは、差押債権者の逃げ切りを防⽌する趣旨です。すなわち、供託をさせずに強制執⾏の差押債権者が債権を取り⽴てることができるとすると、「租税債権は私債権に優先する」というルールと矛盾します(国税徴収8条参照)。そこで、第三債務者に供託の義務を課すことによって(滞調36条の6第1項)、執⾏裁判所の関与により両⼿続が調整され、上記のルールに沿った公平な配当を確保する仕組みがとられています。

国国国国

②滞納処分による差押え 【50】 執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

①差押え 【70】 競合 ①差押【70】 【100】 α債権の全額 ➠100万 ②滞納処分の 差押【50】 義務供託

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【6】 仮差押えと滞納処分による差押えの競合 (1) 結 論 ★仮差押えと滞納処分による差押えが競合しているときは、仮差押えと滞納処分による差押えの前後を問わず、第三債務者は、債権の全額の相当する⾦銭を供託することができます[権利供託](滞調36の12第1項・20条の6第1項)。 (2) 具体例 AのBに対する100万円のα債権につき、①甲がその一部である70万円について仮差押えをした後、②国がα債権の50万円について滞納処分による差押えをした場合、Bは、「100万円」を供託することができます(②➠①の順序の場合も同様)。 (3) 制度趣旨 仮差押債権者については、直接取⽴権を有さず、配当⼿続も⾏われないことから、滞納処分が先⾏して競合するか、仮差押が先⾏して競合するかで結論に違いは⽣じません。すなわち、租税債権は私債権に優先するので(国税徴収8条)、第三債務者は、供託をせずに徴収職員の取⽴てに応じて弁済をすれば足りるところ(国税徴収67条1項、滞調20条の5参照)、「公平な配当の確保のために、執⾏裁判所に関与させる」という義務供託の趣旨が妥当しないから、義務供託とはなりません。 しかし、第三債務者は1回の弁済で免責されたはずであるところ、滞納処分による差押⾦額とそれ以外の⾦額に分けて弁済をする⼆度⼿間を省く趣旨であるため、差押えに係る債権の全額の供託を権利供託として認めています。

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②滞納処分による差押え 【50】 執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

①仮差押え【70】 競合 ①仮差押【70】【100】 α債権の全額 ➠100万 ②滞納処分の 差押【50】 権利供託

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5 [執行供託]供託の性質と手続等 【1】 弁済供託と執行供託の違い (1) 弁済供託の手続 ア 払渡請求 弁済供託がされた場合、被供託者は供託を受諾して還付請求権を⾏使することができ、供託者は供託不受諾を理由として取戻請求権を⾏使することができます。 イ 手 続 弁済供託をする場合には、被供託者が還付請求権を取得することとの関係で、供託の申請の際に提出する供託書の被供託者欄には被供託者の住所・氏名を記載することを要し、被供託者に対する供託通知が必要となります。 (2) 執⾏供託の⼿続 ア 払渡請求 ① 執⾏債権者の還付請求権(支払委託) 第三債務者による執⾏供託がされた場合、債権者に対して公平な配当を⾏うため、払渡⼿続は執⾏裁判所の配当の実施としての⽀払委託に基づいて⾏われます(⺠執166条1項1号、156条1項)。 具体的には、執⾏裁判所の裁判所書記官は、⽀払委託書を作成し、これに供託書正本を添付して供託所に送付するとともに(⺠執規145条・61条)、払渡請求権者に対しては支払証明書を交付します。そして、★払渡請求権者は、供託物払渡請求書に支払証明書を添付して、供託所に払渡請求をします(供託規則30条2項)。そのため、供託の時点では、被供託者として還付請求権を有する者は存在しないことになります。

☑☑☑☑ 用語解説用語解説用語解説用語解説 ☑☑☑☑ 『 支払委託 』 執行裁判所の配当により供 託 物 を 払 い 渡 す 場 合に、その執行機関が主導権を握って行われる払渡手続のこと。 供託所 供託金 【100万円】

AAAA BBBB 被供託者 100 100 取戻請求権 還付請求権 供託者 供託通知

債権者に公平 に割り振り 支払委託に 基づいて配当 供託所 AAAA 支払請求者

執行裁判所 ➊支払委託 ➌提出 ➋支払証明書 を交付 Aに50万円、Bに100万円を配当して 払渡 請求書 50 支払 証明書 50

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② 第三債務者の取戻請求 第三債務者による執⾏供託がされた場合、第三債務者は、供託により債務を履⾏して免責を受けたところ、取戻請求を認める実益がないため、取戻請求をすることができません(昭55.9.6⺠四5333号参照)。 イ 手 続 ① 事情届 第三債務者による執⾏供託がされた場合、第三債務者は、執⾏裁判所に対して、供託書正本を添付して、供託した旨を届けなければなりません[事情届]。執⾏供託の払渡しは裁判所の配当の実施として⽀払委託に基づいて⾏われるところ、事情届を供託者に義務付けることで、供託された事実を執⾏裁判所に知らせるようにしているのです。 ② 被供託者の記載・供託通知の要否 供託の時点では、被供託者として還付請求権を有する者が存在しないこととの関係で、供託書の被供託者欄にも被供託者の住所・氏名を記載することを要しません。また、被供託者に対する供託通知も不要です。 【弁済供託と執行供託の比較】 弁済供託 執行供託 払渡請求 【被供託者】還付請求可 【供 託 者】取戻請求可 【執行債権者】支払委託で執行 裁判所から配当 【第三債務者】取戻請求不可 手 続 ・供託書に被供託者を記載 ・供託通知が必要 事情届を執行裁判所等に提出 【2】 差押えに基づく執行供託 (1) ⾦銭債権の⼀部に差押えがされ、全額が供託された場合 【基本事例】 甲が、AのBに対する100万円のα債権につき、その一部である60万円について差押えをした場合において、Bがα債権の全額である「100万円」を供託した。 ア 性 質 ⾦銭債権の⼀部に差押えがされて、その被差押債権の全額が供託された場合、差押⾦額に相当する部分は「執⾏供託」、差押⾦額を超える部分は「弁済供託」の性質を有します。 【事例】 差押金額である60万円の性質が「執行供託」、それ以外の40万円の性質が「弁済供託」となります。

第三債務者が供託する金銭のうち、差押金額の部分についてされた供託は「執⾏供託」、これを超える部分についてされた供託は「弁済供託」の性質を有します(∵差押えの効力が及んでいないから)。

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イ 払渡請求 ① 弁済供託の性質を有する部分 差押⾦額を超える部分については、弁済供託の性質を有するため、★被供託者である執⾏債務者は、供託を受諾して還付請求をすることができ、供託者である第三債務者は、供託不受諾を理由として、取戻請求をすることができます(昭55.9.61⺠四5333号、⺠496条)。 ② 執⾏供託の性質を有する部分 差押⾦額については、執⾏供託の性質を有するため、★執⾏債権者は、⽀払委託により還付を受けることができますが、第三債務者は取戻請求をすることができません(昭55.9.6⺠四5333号、⺠執166条1項1号)。 なお、供託後に差押命令が失効した場合であっても、第三債務者は、供託原因の消滅を理由として取戻請求をすることができません。第三債務者は、供託により債務を履⾏して免責を受けたところ、取戻請求を認める実益がないからです。 【事例】 弁済供託の性質を有する40万円の部分に関して、Aは被供託者として供託を受諾して還付請求をすることができ、Bは供託不受諾を理由として取戻請求をすることができます。 執行供託の性質を有する60万円の部分に関して、甲は、支払委託により還付を受けることができますが、Bは取戻請求をすることができません。 ウ 手 続 差押⾦額については、執⾏供託の性質を有するため、第三債務者は、執⾏裁判所に対して、供託書正本を添付して、供託した旨を届け出なければなりません[事情届]。 差押⾦額を超える部分については、弁済供託の性質を有するため、★被差押債権の全額を供託する場合には、供託書の被供託者欄には執⾏債務者の住所・⽒名を記載することを要し(規13条2項6号)、執⾏債務者に対する供託通知も必要となります。 【事例】 Bは、供託の際に、執行裁判所に対して事情届をしなければなりません。また、供託書の被供託者欄にはAの住所・氏名を記載することを要し、Aに対する供託通知も必要となります。

執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

差押え 【60】 60【執⾏供託】 40【弁済供託】 差押【60】 供託【100】 α債権の全額100万円を供託

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(2) ⾦銭債権にされた差押えが競合し、全額が供託された場合 【基本事例】 AのBに対する100万円のα債権につき、甲がその一部である70万円について差押えをした後、乙がα債権の50万円について差押えをした場合において、Bがα債権の全額である「100万円」を供託した。 ア 性 質 ⾦銭債権にされた差押えが競合し、全額が供託された場合、債権全額が差押⾦額に当たるため、「執⾏供託」の性質のみを有します。 【事例】 供託された100万円全額が「執行供託」の性質となります。 イ 払渡請求の可否 債権全額につき執⾏供託の性質を有するため、執⾏債権者は、⽀払委託により還付を受けることができますが、第三債務者は取戻請求をすることができません(昭55.9.6⺠四5333号、⺠執166条1項1号)。 【事例】 執行供託の性質を有する100万円の全額に関して、甲は、支払委託により還付を受けることができますが、Bは取戻請求をすることができません。 ウ 手 続 ★債権全額につき執⾏供託の性質を有するため、第三債務者は、執⾏裁判所に対して、供託書正本を添付して、供託した旨を届けなければなりません[事情届]。 しかし、弁済供託の性質を有する部分はないため、供託書の被供託者欄には執⾏債務者の住所・⽒名を記載することを要しませんし、執⾏債務者に対する供託通知も不要となります。 【事例】 Bは、供託の際に、執行裁判所に対して事情届をしなければなりません。

執行 債務者 AAAA

甲甲甲甲

執行 債権者 B 第三 債務者 100 α債権

差押え 【70】 乙

執行 債権者 100【執⾏供託】 差押【70】 差押【50】 供託【100】 差押え 【50】

α債権の全額100万円を供託

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【3】 仮差押えに基づく執行供託 【基本事例】 甲は、AのBに対する100万円のα債権につき、その一部である60万円について仮差押え(仮差押解放⾦:50万円)をした場合において、Bがα債権の全額である「100万円」を供託した。 (1) みなし解放⾦ 仮差押に基づいてされた第三債務者による供託は、本来はその債権者である仮差押債務者に対して⽀払うべき⾦銭の供託です。そのため、★第三債務者が仮差押えの執⾏がされた⾦銭債権の供託をした場合には、仮差押債務者が仮差押解放⾦に相当する⾦銭を供託したものとみなされます[みなし解放⾦](⺠保50条3項)。 この場合、第三債務者の供託によって、その債権者である仮差押債務者が還付請求権を取得し、仮差押えの執⾏の効⼒は、仮差押解放⾦の限度で仮差押債務者の有する還付請求権の上に移⾏します(平2.11.13⺠四5002号)。 【事例】 Bが供託した100万円のうち、仮差押解放金として定められている50万円については、Aが仮差押解放金を供託したものとみなされます。そして、Aは100万円の還付請求権を取得し、仮差押えの執行の効力は、仮差押解放金の50万円の限度で、Aの還付請求権の上に移行します。 (2) 性 質 第三債務者が供託した⾦額のうち、仮差押の執⾏の部分は、執⾏供託の性質を有します。この部分に関しては、仮差押の執⾏の効⼒が及ぶものの、仮差押債務者が還付請求権を取得する関係で、弁済供託的な要素もあります。これに対して、仮差押えの執⾏の効⼒が及ばない部分は、弁済供託の性質を有します。 【事例】 仮差押解放金である50万円の性質は「執行供託(+弁済供託)」となり、それ以外の50万円の性質は「弁済供託」となります。

☑☑☑☑ コメントコメントコメントコメント ☑☑☑☑ 仮差押解放金は、本来は執行債務者自身が供託すべきですが、第三債務者が仮差押えによる供託をした場合にも、仮差押解放金が供託された扱いにしているのです。

仮差押の執行の部分は、仮差押の執行の効力が及ぶものの、仮差押債務者が還付請求権を取得する関係で、弁済供託的な要素もあります。そのため、試験対策上、「執⾏供託(+弁済供託)」の性質を有すると考えるとよいでしょう。

執行債権者 甲甲甲甲 A 執行債務者 60 α債権 100 B 第三債務者 100万円を供託 【みなし解放⾦】 還付請求権 【100】 仮差押【60】

仮差押の執行【50】 ☚還付請求権の上に移行 裁判所 仮差押解放金は 50万円とする

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(3) 払渡請求の可否 ア みなし解放⾦に相当する部分 みなし解放⾦に相当する部分に関しては、仮差押債権者が本案訴訟で勝訴して本執⾏として差押えをした場合、供託⾦の払渡しは、執⾏裁判所の配当の実施としての⽀払委託に基づいて⾏われます(平2.11.13⺠四5002号、⺠執166条1項1号・156条1項、2項)。 イ 仮差押の執⾏の効⼒が及ばない部分 仮差押えの執⾏の効⼒が及ばない部分は弁済供託の性質を有するため、★被供託者である仮差押債務者は、供託を受諾して還付請求をすることができ、供託者である第三債務者は、供託不受諾を理由として、取戻請求をすることができます(平2.11.13⺠四5002号、⺠496条)。 【事例】 みなし解放金に相当する「50万円」に関しては、甲が本案訴訟で勝訴して差押えをした場合、執行裁判所の支払委託に基づいて甲に払渡しがされます。 仮差押えの執行の効力が及ばない「50万円」に関しては、Aは供託を受諾して還付請求をすることができ、Bは供託不受諾を理由として、取戻請求をすることができます。 (4) 手 続 仮差押に基づいて第三債務者が供託した場合、みなし解放⾦に相当する⾦銭につき、仮差押債務者が還付請求権を取得する関係で、★供託書の被供託者欄には仮差押債務者の住所・氏名を記載することを要し(規13条2項6号)、被差押債務者に対する供託通知も必要となります(平2.11.13⺠四5002号)。 【事例】 Bは、供託の際に、執行裁判所に対して事情届をしなければなりません。また、供託書の被供託者欄にはAの住所・氏名を記載することを要し、Aに対する供託通知も必要となります。 6 [執行供託]差押禁止債権に対する差押えがあった場合 【1】 序 説 退職手当その他給与に関する債権[給与債権]に関しては、原則として、その4分の1に相当する部分についてのみ、差押えをすることができます[差押禁止債権](⺠執152条1項2号、同条2項)。これは、労働者に最低限度の⽣活を保障するという社会政策的な観点から、債権の差押えが一部禁止されているのです。 【2】 重要先例 ➊ ★退職手当債権のうち差押えが許容される部分について差押えが競合する場合には、差し押えに係る債権の全額に相当する⾦銭を供託することができます(昭58.11.22⺠四6653号)。

☑☑☑☑ 補足知識補足知識補足知識補足知識 ☑☑☑☑ みなし解放金に相当する部分を除く仮差えの執行の部分に関しては、仮差押債務者は供託を受諾して還付請求をすることができますが、第三債務者は取戻請求をすることができません(平2.11.13民四5002号)。

50【執⾏供託】 40【弁済供託】 仮差押解放金【50】 供託【100】 10 仮差押【60】

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➋ ★給与債権のうち差押えが許容される部分に対して差押えがされた場合において、第三債務者は、給与の全額を供託することができます(⺠執156条1項、昭55決議)。 7 払渡請求権に対する強制執行 【1】 意 義 供託物の払渡請求権(取戻請求権・還付請求権)は実体上の債権であるため、強制執⾏の対象となり、通常の債権執⾏と同じ⼿続で強制執⾏が⾏われます。 すなわち、払渡請求権に対する差押えの執⾏は、執⾏裁判所が発する差押命令を第三債務者(供託所)および債務者に送達する⽅法によって⾏われます(⺠執145条3項)。 【2】 払渡請求の可否 (1) 差押えの競合が生じていない場合 ★払渡請求権に差押えがされた場合において、競合が生じていないときは、差押債権者は、差押命令に基づく取⽴権を⾏使し(⺠執155条1項)、または転付命令を得て(⺠執159条)、供託所に対して供託⾦の払渡請求をすることができます(昭⺠四5333号)。 (2) 差押えの競合が生じている場合 払渡請求権にされた差押えが競合した場合や、差押えと配当要求があった場合には、供託所は払渡しをすることができません。この場合、複雑な配当⾦の計算を裁判所に委ねるため、★第三債務者に当たる供託官は、先に送達された差押命令を発した執⾏裁判所に事情届をしなければなりません(昭55.9.6⺠四5333号、平2.11.13⺠四5002号通達、⺠執156条2項、3項、⺠執規138条3項)。

☑☑☑☑ 補足知識補足知識補足知識補足知識 ☑☑☑☑ ➋の場合、供託がされた給与債権の4分の3については、執行債務者が還付 請 求 権 を 取 得 し ま すが、他の債権者は、その残部に係る還付請求権を差し押さえることができません。これは、生活保障のために給与債権の4分の3について差押えを禁止した趣旨を没却させないためです。 差押禁止債権に対する差押えがあった場合に関しては、「差押えが許容される部分(4分の1)が全額の債権」と捉えて、これに対して、差押えがされた場合と差押えが競合する場合と考えると分かりやすいでしょう。

☑☑☑☑ 補足知識補足知識補足知識補足知識 ☑☑☑☑ 民法上、質権者は、質権の目的である債権について、第三債務者から直接に取り立てることができます[直接取立権]。そのため、払渡請求権に質権の設定を受けた質権者は、債権執行に方法により供託金の払渡しを請求す る ほ か 、 質 権 に 基 づき、供託所に対して直接に供託金の取立てをすることができます(民366条1項)。

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