言葉と体験をつなぐ家庭科授業の在り方 · -3 -...

48
- 1 - 言葉と体験をつなぐ家庭科授業の在り方 -SNGを取り入れた「身近な消費生活と環境」の学習を通して- 研究の概要 本研究は,中学校技術・家庭科(家庭分野)「身近な消費生活と環境」において,中学生の身近な消 費行動と関わりのある具体的な内容として,コミュニケーション教育のツールとして開発されたSN Gを取り入れ,実際の売買を疑似体験させる。さらに,体験したことを表現することにより思考を深 め,より主体的に自分や家族の生活の仕方や消費の在り方を改善することなど,生徒一人一人が消費 者としての自覚をもち,課題解決能力を高めることにつながる,効果的な授業の在り方を検討する。 キーワード SNG 販売 購入 ウェビング図 県民生活センター Ⅰ 主題設定の理由 時代の要請から 中学校技術・家庭科(家庭分野)における「身近な消費生活と環境」は,平成 24 年度に全面実施と なる学習指導要領の改訂によって新たに設けられた領域である。ここでは,消費や環境に関する実践 的・体験的な学習活動を通して,消費生活と環境についての基礎的・基本的な知識及び技術を習得す るとともに,消費者としての自覚を高め,身近な消費生活の視点から持続可能な社会を展望して,環 境に配慮した生活を主体的に営む能力と態度を育てることをねらいとしている。 指導に当たっては,社会において主体的に生きる消費者としての教育を重視する視点から,消費者 としての自覚や環境に配慮した生活の工夫などに関わる学習について,中学生の消費生活の変化を踏 まえた実践的な学習活動を重視することが求められている。具体的には,単なる買物についての学習 にとどまらず,自分や家族の生活の仕方や消費の在り方を改善することなど,消費者としての自覚が もてるようにするために,「A家族・家庭と子どもの成長」「B食生活と自立」「C衣生活・住生活 と自立」の学習との関連を図って適切な題材を設定し,情報社会における消費生活の変化に対応して, 中学生の身近な消費行動と関わりのある具体的な事例を扱うことが求められている。 「中学校学習指導要領解説 技術・家庭科編」の中で内容の取扱いについて,自分や家族の消費生 活については,「小学校における物や金銭の使い方と買物の学習を踏まえ,自覚ある消費行動の基礎 として,自分の消費に使える金銭には限りがあることや,優先順位を考えた計画的な支出が必要であ ることなどに気付くようにする。」とあり,ロールプレイングを取り入れるなどの具体的な方法が示 されている。また,消費者の基本的な権利と責任については,「実際の消費生活と関わらせて具体的 に考えさせるとともに,消費者基本法の趣旨を理解できるようにする。例えば,中学生の消費行動と 関わらせて,商品を購入することは,選ぶ権利であるとともに,責任を伴うことなどについても理解 できるようにする。」とし,消費生活センターなどの各種相談機関やクーリング・オフ制度を取り上 げることが示されている。これらのことを踏まえ,消費生活に関心をもたせるとともに,生徒が主体 的に学習できるように,実践的・体験的な学習活動を工夫したい。 また,学習指導要領の「言語活動の充実に関する基本的な考え方」において,思考力・判断力・表 現力を育むために不可欠な学習活動として,「①体験から感じ取ったことを表現する。②事実を正確 に理解し伝達する。③概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活用したりする。④情報を分析・

Upload: lamhanh

Post on 26-Feb-2019

213 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

- 1 -

言葉と体験をつなぐ家庭科授業の在り方

-SNGを取り入れた「身近な消費生活と環境」の学習を通して-

研究の概要

本研究は,中学校技術・家庭科(家庭分野)「身近な消費生活と環境」において,中学生の身近な消

費行動と関わりのある具体的な内容として,コミュニケーション教育のツールとして開発されたSN

Gを取り入れ,実際の売買を疑似体験させる。さらに,体験したことを表現することにより思考を深

め,より主体的に自分や家族の生活の仕方や消費の在り方を改善することなど,生徒一人一人が消費

者としての自覚をもち,課題解決能力を高めることにつながる,効果的な授業の在り方を検討する。

キーワード SNG 販売 購入 ウェビング図 県民生活センター

Ⅰ 主題設定の理由

1 時代の要請から

中学校技術・家庭科(家庭分野)における「身近な消費生活と環境」は,平成 24 年度に全面実施と

なる学習指導要領の改訂によって新たに設けられた領域である。ここでは,消費や環境に関する実践

的・体験的な学習活動を通して,消費生活と環境についての基礎的・基本的な知識及び技術を習得す

るとともに,消費者としての自覚を高め,身近な消費生活の視点から持続可能な社会を展望して,環

境に配慮した生活を主体的に営む能力と態度を育てることをねらいとしている。

指導に当たっては,社会において主体的に生きる消費者としての教育を重視する視点から,消費者

としての自覚や環境に配慮した生活の工夫などに関わる学習について,中学生の消費生活の変化を踏

まえた実践的な学習活動を重視することが求められている。具体的には,単なる買物についての学習

にとどまらず,自分や家族の生活の仕方や消費の在り方を改善することなど,消費者としての自覚が

もてるようにするために,「A家族・家庭と子どもの成長」「B食生活と自立」「C衣生活・住生活

と自立」の学習との関連を図って適切な題材を設定し,情報社会における消費生活の変化に対応して,

中学生の身近な消費行動と関わりのある具体的な事例を扱うことが求められている。

「中学校学習指導要領解説 技術・家庭科編」の中で内容の取扱いについて,自分や家族の消費生

活については,「小学校における物や金銭の使い方と買物の学習を踏まえ,自覚ある消費行動の基礎

として,自分の消費に使える金銭には限りがあることや,優先順位を考えた計画的な支出が必要であ

ることなどに気付くようにする。」とあり,ロールプレイングを取り入れるなどの具体的な方法が示

されている。また,消費者の基本的な権利と責任については,「実際の消費生活と関わらせて具体的

に考えさせるとともに,消費者基本法の趣旨を理解できるようにする。例えば,中学生の消費行動と

関わらせて,商品を購入することは,選ぶ権利であるとともに,責任を伴うことなどについても理解

できるようにする。」とし,消費生活センターなどの各種相談機関やクーリング・オフ制度を取り上

げることが示されている。これらのことを踏まえ,消費生活に関心をもたせるとともに,生徒が主体

的に学習できるように,実践的・体験的な学習活動を工夫したい。

また,学習指導要領の「言語活動の充実に関する基本的な考え方」において,思考力・判断力・表

現力を育むために不可欠な学習活動として,「①体験から感じ取ったことを表現する。②事実を正確

に理解し伝達する。③概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活用したりする。④情報を分析・

- 2 -

評価し・論述する。⑤課題について,構想を立て実践し,評価・改善する。⑥互いの考えを伝え合い,

自らの考えや集団の考えを発展させる。」が例示された。本研究においても,これらの学習活動を効

果的に取り入れ,言語活動の充実を図ることを目指したい。

2 社会の変化への対応

一般に,中学生の時期には,自らの意思で商品やサービスを購入する機会が増える。それは,発育

とともに保護者からの自立意識が芽生え,また,交友関係や通学・生活圏が拡大するにつれて,社会

との関わりも増えるからである。

近年,中学生を取り巻く消費環境は大きく変化し,中学生を対象とした商品やサービスも多様化し,

かつ,多額化する傾向にある。この背景には,①携行型ゲーム機の開発や携帯電話・インターネット

の普及,②購買意欲を刺激する広告の氾濫,③ポイントカードやプリペイドカード等の疑似通貨(電

子マネー)の登場,④書籍・CD 等の中古市場の発達などが考えられる。現在の中学生は,商品やサ

ービスの買い手として,中古市場では売手として,さまざまなトラブルに直面する機会が増えている。

また,契約の概念なしに,好奇心からインターネット上でアクセスし,そのサイト運営者から契約義

務の履行を求められるといったトラブルも発生している。このように,中学生の時期には,自らの裁

量で消費できる範囲が広がる中,消費者としての判断力が未発達のまま日常的に購買意欲が刺激され,

さまざまなトラブルが発生しているのが現状である。

このような現状を踏まえ,消費者教育を行う上で重要なのは,抽象的な理解ではなく,消費生活を

営む生活実践力を培い,この生活実践力を生かすことができるような学習の展開を工夫することであ

る。つまり,サービスやものの選択・購入に際してのトラブル防止だけではなく,主体的に意思決定

できる能力の育成に重点を置くことが大切である。

そこで本研究では,具体的な商品の販売と購入という実感を伴った体験を通して,自分のこれまで

の消費行動を振り返り,これからの消費生活を展望する機会としたい。その中で,自らの経験やこれ

まで学習した知識を活用して行動し,体験から感じ取ったことを整理してまとめることで学習を深め

たいと考える。

Ⅱ 研究のねらい

中学校技術・家庭科(家庭分野)「D身近な消費生活と環境」の学習において,主体的な消費者と

して行動する能力を育成するために,SNG を取り入れた学習の有効性を明らかにする。さらに,言葉

と体験をつなぐ学習を意識し,言語活動を充実させることで,より効果的な消費生活の学習を目指す。

Ⅲ 研究の基本的な考え方

1 家庭科授業へのSNGの導入

SNGとは,「説得納得ゲーム」の略であり,コミュニケーション教育のツールとして愛知教育大

学杉浦(2003)を中心に開発された。特定のテーマに関するアイデアを他者に説得する役割演技(ロ

ールプレイング)の発想から開発された教育ゲームである。環境行動の普及をはじめ,消費者教育,

健康増進教育,行政の職員研修などで活用されるようになってきている。

SNGは,メーリングリスト(SNGフォーラム)によって情報共有が行われている。また,日本

- 3 -

シミュレーション&ゲーミング学会(JASAG)研究部会によって組織的に研究が進められてきた。使

用に当たっての制限はないが,その使用場面やルールの内容等について,メーリングリストで簡単な

フィードバックを行うことで,それぞれの実施上の工夫を共有し,新たな利用方法の考案につなげら

れるように組織的に発展させていくことを開発者である杉浦は提案している。

特にSNGの「販売編」における実践事例では,交渉の側面に焦点が当てられる。その交渉の側面

を体験することにより,消費者側の立場だけでなく,販売者側がどのようなことを考えているのかと

いうことを体験し,今後の消費生活の助けとし,消費者としての自らの行動を振り返ることが期待で

きる。すなわち,消費者教育のツールとして,主体的な生活者としての意思決定能力の育成を目指す

ことが期待できるのである。

SNGの家庭科授業への導入については,まだ実践事例は報告されていないが,本研究により,「D

身近な消費生活と環境」への導入の可能性と有効性を明らかにすることを目指したいと考える。

2 家庭科における言葉と体験

家庭科の目標を実現するに当たり,製作,調理などの実習や,実験,観察,見学,調査,研究など

の実践的・体験的な学習活動を通して学ぶことは,理論や考え方のみの学習に終わることなく,実習

や調査などの活動を通して具体的に学習することであり,そのことにより,学習した知識や技術が生

徒自らの生活に生かされることを意味している。つまり,家庭科では,実感の伴う具体的な学びを展

開することで学習の質を高め,教科目標の実現を目指しているのである。

家庭科の学習で用いる言葉には,日々の家庭生活を客観的に捉えたり,衣食住などの生活における

様々な事象のもつ科学性に気付き説明したり,価値判断が必要な生活場面を設けて生徒なりの解釈や

判断をしたことについてまとめたり,自分なりの解決策を探求したりするための言葉として「知的活

動の基盤としての言葉」がある。また,「A家族と家庭生活」の内容では,家族や幼児,地域の人々

など他者との関わりを考えて学習活動を行うため「他者とのコミュニケーションのための言葉」や「他

者と相互理解し高め合う言葉」の役割もある。さらに,生活に関連の深い様々な言葉があり,「生活

への感性を育むための基盤としての言葉」という役割もある。

このような役割をもつ言葉に触れ,目的をもって学習対象を観察したり,直接体験や製作,調理な

どの実習をしたり,インタビューや実験などの実践的・体験的な学習活動を行うことによって,生徒

は様々な驚きや感動を味わう。その過程で,ひとつひとつの言葉が生徒自身の生活の中で生きた言葉

へと変化し,人が生活を営むことのよさやその価値に触れ,生活への感性を高めていくことができる

のである。

家庭科では,これまでも実践的・体験的な学習活動を重視してきたが,一層質の高い体験を工夫し,

言葉と体験をつなぐ活動を意識していくことが望まれる。そのためには,体験したことを振り返り,

言語活動を通じて整理する等,活動と言葉が結び付くような場面を設定することで,体験学習の質を

高めるとともに,言語の能力を高める学習活動を指導計画に位置付け,言語活動の充実を図ることが

大切である。

Ⅳ 研究の仮説

中学校技術・家庭科(家庭分野)「D身近な消費生活と環境」の学習において,SNGを取り入れ

た学習活動を工夫することによって,主体的な消費者として行動しようとする態度を育成することが

できるだろう。

- 4 -

Ⅴ 研究の内容と方法

1 研究の内容

(1)新学習指導要領の全面実施に向けた学習指導計画の作成

新学習指導要領では,地域や学校の背景,生徒の実態を踏まえて,生徒に育てたい力を明らかにし,

3年間を見通したストーリー性のある年間指導計画を立てることが望まれている。また,学習内容が

整理され,小学校・中学校・高等学校の学習内容の系統性が示された。その中で中学校では,自己の

生活の自立を図り,これからの生活を展望する視点として「時間軸」を長くもつこと,また,小・中・

高の広がりの中で,自己と家庭,家庭と社会とのつながりを考え「空間軸」を広くもつことが大切で

あるとされる。

本研究では,これらを踏まえ,新学習指導要領によって新たに加えられた「D身近な消費生活と環

境」について,A~Cとの関連を図りながら3年間を見通した題材の指導計画を作成する。

(2)授業モデルの作成

研究対象領域の題材について,第2学年におけるSNGを取り入れた学習指導案及び教材を作成し,

検証授業を実施する。

(3)検証方法

研究の評価及び検証のため,学習事前調査・事後調査を実施する。事前調査では,生徒の実態を把

握するため,消費生活に関する意識や経験などを問う基本的な質問と,消費生活と環境に関する学習

前の知識について調査を行う。事後調査は,検証授業の内容や意識の変容に関する調査を中心に行う。

これらの調査に加え,授業時ワークシートの記述内容,及びウェビング図の記入状況から,本研究

による学習の深まりを質的に検証する。

2 研究の方法

(1)検証授業の対象

県内中学校第2学年 後期家庭科を履修している2クラス(80 名)

(2)検証授業の題材及び実施時期

ア 題材名 「わたしたちの消費生活」

イ 実施時期 平成 23 年 10 月~11 月

ウ 授業実施時数 検証授業4時間

○ 内容のまとまりごとの評価規準(国立教育政策研究所『参考資料』より)

「D身近な消費生活と環境 (1)家庭生活と消費」

【学習指導要領の内容】

ア 自分や家族の消費生活に関心をもち,消費者の基本的な権利と責任について理解すること。

イ 販売方法の特徴について知り,生活に必要な物資・サービスの適切な選択,購入及び活用ができ

ること。

生活や技術への

関心・意欲・態度

生活を工夫し創造する

能力 生活の技能

生活や技能についての

知識・理解

家庭生活と消費について関

心をもって学習活動に取り

組み,消費生活をよりよく

しようとしている。

家庭生活と消費について課

題を見付け,その解決を目

指して工夫している。

家庭生活と消費に関する基

礎的・基本的な技術を身に

付けている。

家庭生活と消費について理

解し,基礎的・基本的な知

識を身に付けている。

- 5 -

○ 題材の評価規準

生活や技術への

関心・意欲・態度

生活を工夫し創造する

能力 生活の技能

生活や技能についての

知識・理解

①自分や家族の消費生活に

ついて関心をもち,消費の

在り方を改善しようとして

いる。

①物資・サービスの選択,

購入及び活用について必

要な情報を収集・整理する

ことができる。

①消費者の基本的な権利

と責任,消費者基本法の趣

旨について理解している。

②身近な販売方法に関心を

もち,その利点と問題点に

ついて考えようとしてい

る。

①収集・整理した情報を活用

して物資・サービスの選択,

購入及び活用について考え,

工夫している。

②中学生に関わりの深い

販売方法の特徴について

理解している。

③物資・サービスの選択,

購入及び活用に関する知

識を身に付けている。

②SNGで販売する商品の

アイデアやリーフレットの

デザインを工夫している。

③SNGの販売方法を工夫

している。

②SNGにおいて,冷静な

判断のもとに金銭を計画

的に使うことができる。

④身近な消費者を支援す

る機関とその役割につい

て理解している。

3 授業実践の内容(略案,詳細は補助資料 p.5~)

流れ 学習活動 評価 備考

第1次

○若者の消費トラブルの現状を知ろう

・消費者の権利と責任,消費者を支える

しくみについて知る。

「契約とは」「クーリング・オフとは」

「県民生活センターの役割」

・身近に起きている消費トラブルについ

て知り,対応策を考える。

「架空請求」「ネットショッピング」

「お金の貸し借り」「未成年者の契約」

・ビデオ教材の視聴

知識・理解①④

知識・理解②③

関心・意欲・態度②

・山梨県民生活センター

の出前授業(外部講

師)

・事前調査データの活用

・パワーポイント資料

・○×クイズ

・ビデオ教材

・啓発パンフレット

・アンケート実施

↑ 授業開始の様子 ↑ ○×クイズに挑戦!

- 6 -

第2次

○SNGで販売と購入を体験しよう①

・SNG の目的・方法・ルールを理解する。

〔班活動〕

・商品開発を行い,販売リーフレットを作

成する。

・定価,目標売上金額を設定する。

・販売方法の工夫を考える。

・商品シールを作成する。

工夫・創造②

技能①

工夫・創造②

・SNGのルール説明

・価格,種類,販売対象な

ど販売条件の提示

・ワークシート

・リーフレット用紙

・カタログ,広告などの参

考資料

↑班活動の様子

↑生徒の作成したリーフレット

3~

4次

○SNGで販売と購入を体験しよう②

・方法,ルールの再確認

〔前半〕

・SNGで販売と購入を体験する。(20

分)

・振り返り(20 分)

〔後半〕

・役割を交代して同様に。

〔まとめ〕

・SNGで体験したことを振り返る。

・ウェビング図,学習感想の記入

技能②

工夫・創造②③

・疑似通貨,商品シールな

ど教材の工夫

・SNGのルールをしっか

り押さえる。

・トップセールス賞の決定

・ウェビング図の活用

- 7 -

4 指導計画と指導事例

3年間にわたる「D身近な消費生活と環境」の指導計画,各時間における学習指導案,学習シート

及び評価計画については補助資料に示す。

Ⅵ 研究結果と考察

県民生活センターの出前講座及びSNGを取り入れた,消費生活における実践的・体験的な授業を

行った。その結果,生徒たちの消費生活に対する興味・関心や意識が高まるとともに,消費生活に関

わる知識を広げることができた。ここでは,事前調査から明らかになった生徒の消費生活の実態,意

識,知識について概観し,それらをもとに授業実践後の生徒の変容について考察する。

1 事前調査から

検証授業を行う 2 クラス(80 名)について事前調査を行ったところ,次のような結果が得られた。

(1)消費生活に関わる生活実態

まず,買物をするときにどんな視点

で選んでいるかを記述させたところ,

も多かった回答は「値段・安さ」(63

名)であり,約半数(38 名)の生徒が

一番に回答していた。次いで「品質・

性能」「見た目・デザイン」が多かっ

たが,1年次の学習内容「食品の選び

方」「既製服の選び方」に関わって,

「賞味期限・消費期限」「産地・原産

国」「添加物・安全性」の記述も見ら

れた。(図1)

また,支払機能のあるカード(電子

事前調査:1(1)買い物をするときの視点(複数回答)

63

40

28

23

17

1310

7 6 5 5 4

13

38

3 4

12

6

14

0 1 20

24

0

10

20

30

40

50

60

70

①値

段・安

②品

質・性

③見

た目

・デザ

イン

・色

④賞

味期

限・消

費期

⑤産

地・原

産国

⑥数

⑦本

当に

必要

⑧メー

カー

・ブラン

⑨サ

イズ

・大き

⑩鮮

⑪添

加物

・安全

⑫お

いしさ

⑬そ

の他

人数

内1番に記入

N=80

(図1)買物をするときの視点

- 8 -

マネー)は 41 名(51.3%),携帯電話は 61 名

(76.3%)の生徒が「持っている」と回答した。

携帯電話の月々の使用料については,「1000 円

~4999 円」が 20 名,「5000 円~9999 円」が 15

名であったが,「分からない」と答えた生徒が

22 名であり,使用料金についての意識の低さが

うかがえた。(図2)

さらに,インターネット販売は 41 名,通信販売は 19 名の生徒が利用経験をもち,「サイズが合わ

なかった」「買ったけど使わなかった」のような買物の失敗経験も 37 名の生徒が「ある」と答えた。

また, 近自分でどんなものを買ったかを質問したところ,「電子ドラム:80,000 円」「パソコン:

80,000 円」「携帯電話:50,000 円」等,非常に高額の商品を含め,1 万円を超える商品を自分で選ん

で購入している生徒も多かった。

(2)消費生活意識調査より

消費生活に関わる意識の状況を調べ,「当てはまる」を2点,「やや当てはまる」を1点,「当て

はまらない」を0点として合計得点を算出した。(表1)その結果, も意識が低い項目は「⑧仲の

よい友だち同士でも,お金の貸し借りは絶対にいけないと思う。」「⑨自分は将来一人暮らしをした

ときでも,金銭の管理がしっかりできると思う。」の2項目であった。これは,友だち同士で安易に

金銭の貸し借りをしていたり,将来の金銭管理について不安を感じたりしている生徒が多いというこ

とを示している。

また,次に低かったのが,買物するときのレシート確認やマイバッグの持参といった意識に関す

る項目であった。買物学習は小学校で行っているが,学習したことが生活の中でしっかり意識化され

ていないと考えられる。

順位 質 問 項 目 合計

1 ⑧仲のよい友だち同士でも,お金の貸し借りは絶対にしてはいけないと思う。 88

1 ⑨自分は将来一人暮らしをしたときでも,金銭の管理がしっかりできると思う。 88

3 ②買物をしたときは,レシートを必ず確認する。 91

3 ③買物するとき,マイバッグの持参や,不要な割り箸などはもらわないこと等を心がけている。 91

5 ④自分のお金で買う物でも,高額の物については保護者に相談してから買う。 117

6 ⑦お年玉やお小遣いを銀行などに貯金している。 117

7 ①もらったお小遣いは無駄遣いしないように,大切に使っている。 123

8 ⑥店員さんに強く勧められても,いらないものははっきり断れる。 137

9 ⑤自分で買った物はできるだけ大切にし,長く使う。 142

(3)消費生活知識調査より

消費生活に関する知識を調べたところ,10 点満点中平均点は 4.1 点であった。特に正答率が高かっ

た問題は「リサイクル」を答える問題(100%)や「エコマーク」の意味を選択する問題(82.5%)で

あり,小学校家庭科だけでなく総合的な学習の時間等で環境教育が扱われていることなどが要因と考

えられるが,意識調査の結果と合わせて考えると,「知っている」けれども「実践していない」とい

う現状が浮かび上がってくる。そこで,消費生活意識得点と消費生活知識得点についてその相関を調

1(6)携帯電話の1ヶ月の使用料金は?

3

20

15

1

22

0 5 10 15 20 25

~999円

~4999円

~9999円

10000円~

わからない

n=61

(図2)携帯電話の 1 ヶ月の使用料金

(表1)消費生活意識調査合計得点(意識が低い順)

- 9 -

べたところ,相関係数r=0.15 であり,2つの間に相関は認められなかった。すなわち,たくさんの

消費生活知識をもっているからといって消費生活意識が高いわけではなく,学習経験によって得られ

た知識が実生活につながっていないと言える。したがって,より実生活に結び付くような教材や指導

方法を用いることが重要であると考える。

また,正答率が特に低かった問題は,「PL 法」を答える問題(0%)「キャッチセールス」を答え

る問題(1.3%),「クーリング・オフ」を答える問題(6.3%)であった。消費トラブルに関わる知

識は少なく,消費生活を支える法律や,失敗した場合の対処法などについては,授業の中できちんと

押さえて確実に習得させ,定着させなければならないと感じる。

(表2)消費生活知識調査結果

順位 正答率が高かった問題 正答率(%)

1 「3R」のうち「リサイクル」を答える問題 100

2 エコマークの意味を選ぶ問題 82.5

3 訪問販売でクーリング・オフできるかどうかを答える問題 66.3

4 JIS マークの意味を選ぶ問題 65.0

正答率が低かった問題 正答率(%)

1 「PL 法」を答える問題 0

2 「キャッチセールス」を答える問題 1.3

3 「クーリング・オフ」を答える問題 6.3

4 「県民生活センター」を答える問題 7.5

2 実践結果の分析と考察

事後調査により検証授業の有効性を量的に見取るとともに,事前・事後調査,ワークシート,ウェ

ビング図,学習感想等の記述により,本研究による学習の深まりを質的に検証する。

(1)事後調査より

事後調査では,5つの質問に対する答えを4件法で求めた。その結果を図3~7に示す。

まず,「授業を通して,自分自身の消費生活を振り返り課題を見付けることができましたか」とい

う質問に対し,「できた」と回答した生徒は 71.3%,「どちらかというとできた」が 28.7%であった。

(図3)また,「授業を通して,消費生活に関する知識は広がりましたか」に対し,「広がった」は

73.8%,「どちらかというと広がった」は 26.2%であった。(図4)このことから,今回の授業は消

費生活に関する知識を広げ,自分自身の消費生活を振り返り課題を見付けるために有効であったと言

える。

さらに,「授業を通して,消費生活に対する興味・関心は高まりましたか」という質問に対して,

「高まった」が 66.3%,「どちらかというと高まった」が 32.5%であったが,1 名(1.2%)だけ

「どちらかというと高まらなかった」と答えている。(図5)その生徒については,学習感想に,S

NGで売手となった際「苦労したわりに売れず,のどが疲れた。」という記述や,買い手となった際

「少し怖かった。」という記述があることから,SNGという自由度の高いコミュニケーションゲー

ムに対し,苦手意識や否定的な感情があったのではないかと思われる。

また,「授業内容は充実していたと思いますか」という質問に対しては 88.8%が,「この授業はこ

れからの生活に役立つと思いますか」に対しては 91.3%が,「そう思う」と回答し,どちらも「どち

らかというとそう思う」を合わせると 100%となる。(図6・7)授業を終えての学習感想の記述抜

- 10 -

粋が次の資料1であるが,学習の深まりや新たな発見,気付き等,肯定的な感想が非常に多く,この

ことからも,県民生活センター講師による出前授業やSNGを取り入れた今回の授業は,生徒にとっ

てとても新鮮であり,これからの消費生活に役立つ貴重な体験であったと言えるだろう。

(図3) (図4) (図5)

(1)自分自身の生活への振り返り

57

23

0

0ア:できた

イ:どちらかというとできた

ウ:どちらかというとできなかった

エ:できなかった

(2)知識の広がり

59

21

0

0ア:広がった

イ:どちらかというと広がった

ウ:どちらかというと広がらなかった

エ:広がらなかった

(3)消費生活への興味・関心

53

26

1 0

ア:高まった

イ:どちらかというと高まった

ウ:どちらかというと高まらなかった

エ:高まらなかった

(図6) (図7)

(4)授業内容の充実

71

9

0

0

ア:そう思う

イ:どちらかというとそう思う

ウ:どちらかというと思わない

エ:思わない

(5)授業が生活に役立つか

73

7

0

0ア:そう思う

イ:どちらかというとそう思う

ウ:どちらかというと思わない

エ:思わない

(資料1) 学習感想記述(抜粋)

・消費について今まで気付かなかったことに気付いた。売る側を体験してみて色々考えなければならないと知れて良かった。こ

れからの生活に生かしてお金を大事に使いたい。

・買物は簡単なものだと思っていたけど,考えることがあってちょっと難しかった。いろいろな発見があってこれからの生活に

生かそうと思った。

・買物についてとても考えさせられる授業だった。今までは買うだけだったが,売手に回ったり消費者トラブルを聞いたりして,

もっと賢い買物をしようと思いました。

・SNG やお話を通じて売手や買い手の立場や思いを感じられた。これから大人になっていくが,消費生活の在り方を考え,買う

こと,売ることの意味やお金の大切さも学んでいきたい。

・とても楽しく買物について学べた。消費者も物を買う時には注意深くいなくてはいけないと思った。

・買物は買い手と売手が説得して納得して買うことでよりよい買物が出来ると思った。県民生活センターの人の話もこれからす

ごく大事になってくるので,聞けてよかった。

・今回の授業で買い手と売手の両方を体験することができ,値引きや接客,視点など工夫する点やしている点を改めて実感する

ことが出来た。今後買物をするときは違った視点で見てみたい。

・今回の学習は自分たちの生活に役立つことをたくさん学ぶことが出来た。買物は自分の欲しいものを手に入れることが出来る

が,その分責任があり,消費者としてのきまりがあることが分かった。今後の生活に生かしていきたい。

・パソコンや携帯でちょっとした広告から変なページに飛ぶのを見たことがあり不安だったが,仕組みを理解することで「気を

つけよう」と思ったし,正確な判断が出来る気がした。大人になると自己責任の部分が大きいので,学んだことを生かしたい

と思う。

(2)事前・事後のウェビング図の比較

「買物」からイメージする言葉や事柄を事前調査の際にウェビング図に記述させたところ(図8),

全部で 1,014 個の記述があり,一人当たり平均 12.7 個であった。その内容を KJ 法により分類すると,

資料2のようになり,普段よく行く店の名称やよく買う商品の名称の羅列が多く,社会科等で学習し

- 11 -

た経済や環境に関する言葉の記述も見られた。

学習後,事前調査で記入したウェビング図に,「学習を通して広がった視点」を赤ペンで記入させ

たところ(図9),全 493 個の記述があり,一人当たり平均 6.2 個であった。その内容を KJ 法により

分類したものが資料3である。中でも「売手・販売者の視点」が も多く記述されており,SNG で売

手を体験したことで,これまで考えたことのなかった販売者側の視点を新たに得ることができたと言

える。また,事前調査では全体的に消費生活知識の得点は低かった(10 点中平均 4.1 点)が,「消費

生活知識」に関わる記述も多く見られ,生徒は授業を通してたくさんの知識を得ることができたと考

えられる。

お金に関する言葉価格,値段,銀行,おつり,値切り,定価,オープン価格,為替,株,金(きん),小銭,札束,ユーロ,円,

ドル,ウォン,財布,高額(高い),図書カード,貯金,安価(安い),クレジットカード,電子マネー,ナナコ,

SALE,バーゲン

商品に関する言葉文房具,機械類,食品,果実(果物),肉類,魚類,野菜,弁当,からあげクン,ご飯,インスタントラーメン,

本,ゲーム,衣類(洋服,和服),たまご,お菓子,日用品,総菜,がん具,医薬品,冷凍食品,食べ物,炭水

化物,穀類,量,品質,国産,外国産(中国産),駄菓子,ガリガリ君,返品,本,家具,ギフト,糖類,ファ

ッション,オーダーメイド,ブランド,カタログ

人に関する言葉おばさん,店員(アルバイト),主婦,お母さん,農家,客,サザエさん,消費者,フリーター,生物,セレブ

場所に関する言葉ショッピングセンター,デパート,スーパー,オギノ,イオン,ラザウォーク,イツモア,アピタ,サン宝石,

GAP,ユニクロ,コンビニ(セブンイレブン,ローソン,ファミリーマート),スターバックス,TSUTAYA,Amazon,

ショップ,ショッピングモール,無印良品,山交,岡島,いちやま,朗月堂,農協,DEPO,商店街,コムサ,

100 円ショップ,エクラン

景気に関する言葉インフレ,消費が上がる(下がる),会社が繁栄(破産,倒産)する,不安,売れる(売れない),物価高騰,給料

上がる,豊か,貧しい

環境に関する言葉レジ袋(ビニール袋,エコ袋,有料化),マイバッグ,ECO,環境破壊(排気ガス),エコ商品,リユース

行為や支払に関する言葉インターネット販売(Amazon),通販(パソコン,TV),試食,試着,おつかい,むだ遣い,接客,タイム

サービス,レジ,包装,衝動買い,レシート,一括,リボ,ボーナス,分割,ショッピング,万引き,泥棒(強

盗),詐欺

感情に関する言葉楽しい,わくわくする,るんるん,大変,大切

(図8)ウェビング図記述例(事前)

(資料2)「買物」からイメージする言葉や事柄の分類(事前)

(図9)ウェビング図記述例(事後)

・・・は授業後広がった視点

- 12 -

買い手・消費者の視点(81)買い手を表す言葉(40):買い手,買う人,買う側,消費者,客

買い方・行為を表す言葉(41):買う,値切る,納得,選ぶ,考える,交渉,消費,無駄遣い,必要か,

説明を見る,購入

売手・販売者の視点(137)売手を表す言葉(55):売手,売る人,売る側,店員さん,企業,お店,作る人,販売者

売り方・行為を表す言葉(82):売る,販売,売り方,値下げ,値引き,割引,サービス,説明,

説得,工夫,PR,広告,対応,チラシ,接客,声だし,利益,損,

アイデア

消費生活知識(124)知識を表す言葉(37):消費者センター,県民生活センター,クーリング・オフ,契約,保証,省庁の認定,

マーク,税金,返品,JIS,リユース,リデュース

悪質商法に関わる言葉(45):悪質商法,悪徳商法,不当請求,トラブル,被害,詐欺,泣き寝入り,おどす,

しつこい,リスク

借金に関わる言葉(10):借金,クレジットカード,サラ金,ヤミ金

無店舗販売に関わる言葉(32):インターネット,携帯,通信販売,サイト,ネット通販,PC,電話

商品選択の視点(69)値段に関わる言葉(29):価格,値段,安い,高い,安さ,高さ

品質・安全性に関わる言葉(28):性能,機能,多機能,品質,使いやすい,質,安全,安心

デザインに関わる言葉(8):見た目,デザイン,おしゃれ,かわいい

産地に関わる言葉(4):日本製,生産地

その他の視点(82)金・商品に関わる言葉(18):お金,金,お小遣い,商品,物,アイデア商品

感情を表す言葉(20):楽しい,難しい,大切,便利,苦しい,やばい,怖い

その他(44):家族,食事,信用,節約,計画,必要,電化製品,方法

(3)生活意識(事前)とSNGにおける消費行動との関連性

事前調査「①もらったお小遣いは無駄遣いしないように,大切に使っている。」について,「そう思

う」と回答した生徒(54 人)をグループ1,「ややそう思う」と回答した生徒(15 人)をグループ2,

「そう思わない」と回答した生徒(11 名)をグループ3とし,SNGの買い手となった際いくら使っ

たかを比較したところ,図 10 に示すとおり,事前調査で「自分は無駄遣いをしている」という意識を

もっていた生徒は,SNGにおいても購入金額が多いという結果が得られた。

また,事前調査「⑧仲のよい友だち同士でも,お金の貸し借りは絶対にしてはいけないと思う。」に

ついて,「そう思う」と回答した生徒をグループA,「ややそう思う」と回答した生徒をグループB,

「そう思わない」と回答した生徒をグループCとし,SNGにおいて借金をした者の割合を比較する

と,表3のとおり,グループAでは借金をした

生徒の割合が 11.1%に対し,グループBでは 38.

5%,グループCでは 55.6%に増加している。

これらのことからも,普段の金銭に関する意

識が,SNGにおける消費行動にも反映されて

いたと言える。すなわち,SNGでの販売と購

入の体験は,実感を伴った理解となって,自分

のこれまでの消費行動を振り返り,主体的に意

思決定できる能力の育成へとつながると考えら

れる。

(資料3)授業後ウェビング図に見られる広がった視点の分類

SNGにおける購入金額の平均

9879

9600

13000

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

グループ1

グループ2

グループ3

(図 10)普段の無駄遣いとSNGでの消費行動

- 13 -

Ⅶ 研究のまとめ 1 研究の成果

本研究は,新学習指導要領で新たに設けられた「D

身近な消費生活と環境」の学習において,主体的な消

費者として行動する能力を育成するために,SNGを

取り入れた学習の有効性を明らかにし,さらに,言葉

と体験をつなぐ学習を意識し,学習の質を高めることにより,本教科の目指す「生きる力」を育む学

習活動の充実を図ることを目的として行った。検証授業では,生徒たちは非常に生き生きと楽しそう

に授業に取り組む姿勢が見られた。結果を見ても,4時間の検証授業を通して生徒たちの消費生活に

対する興味・関心や意識を高めるとともに,消費生活に関わる知識を広げることができたと言える。

また,実践的・体験的な学習活動から感じたことや考えたことをワークシートにまとめたり,事前

調査で記入したウェビング図に広がった視点を加筆したりする作業を通して,生徒は自分自身の生活

と照らし合わせて考え,知識の広がりや意識の高まりを自覚することができた。このように,言語活

動を充実させることで,主体的な消費者として行動しようとする態度を育てる効果的な学習となった。

2 学習ゲームを取り入れたことの意義

SNGは,従来家庭分野の学習に取り入れられてきたロールプレイング等に比べ,比較的自由度の

高い学習ゲームである。役割を「演じる」のではなく,与えられた条件の中で,素の自分のまま行動

することができる。したがって結果からも分かる通り,生徒の日常の金銭感覚や消費行動がゲームの

中でも反映されやすく,普段の自分自身の消費行動を振り返ることができる。また,日常生活では体

験することのない「売手」を体験することにより,学習前にはなかった「販売者」としての視点をも

つことができるようになる。

さらに事前調査では,多くの消費生活知識をもっているからといって消費生活意識が高いわけでは

なく,学習経験によって得られた知識が実生活につながっていないことが明らかとなったが,SNG

を取り入れた本研究では,学習後ほとんどの生徒が授業内容を「充実していた」とし,「日常生活に

生かせる内容だった」と回答している。このことからも,SNGの導入により,主体的な消費者とし

ての行動につながる,より効果的な消費生活の学習を行うことができたと言える。

3 SNGを中学校家庭分野の授業に取り入れるときの工夫点と留意点

本研究では,初めてSNGを中学校家庭分野の学習に取り入れたが,導入にあたり,何点か工夫し

た点がある。まず,これまでの「販売編」における実践事例では,個人間の売買のみであったが,本

研究では,1つのグループを1つの会社とみなし,商品開発は個人で行うが,会社の中で話合い,協

力して販売できるようにした。これは,中学生という発達段階に考慮し,他者とのコミュニケーショ

ンやリーフレットのデザイン等,苦手な生徒にとって負担にならないように配慮したものである。

また,ゲームがスムーズに進行できるよう,前半・後半でワークシートや現金シールの色を変えたり,

「買い手」の順路を明示したりするなど,教材にも様々な工夫を加えた。さらに,生徒の生活により

身近な商品を扱うことができるよう,開発する商品にはある程度自由度をもたせ,実際に興味のある

ものや商品のカタログや広告を収集させて資料とすることで,全ての生徒がより興味をもってゲーム

に参加できるようにした。

しかし前述したように,他者とのコミュニケーションがうまくとれない生徒や,自分の意見や考え

を主張することが苦手な生徒もいるので,授業者はSNGを行っている間,注意深く観察し,適宜指

導を行う必要がある。また,心ない言葉で相手を傷つけたりすることがないよう,事前に細かな約束

人数 借金をした人数(割合)

グループA 36 4(11.1%)

グループB 26 10(38.5%)

グループC 18 10(55.6%)

(表3)友だちとのお金の貸借意識とSNGでの借金

- 14 -

事(ルール)を決めておく必要もある。

4 今後の課題

本研究では,授業で用いたワークシートや検証授業後の事後調査のみを分析対象としたが,学びに

よる生徒の知識や行動の変容の見取りが不十分であった。授業後の知識を問う客観テストや行動レポ

ートなどの課題を実施すれば,能力や態度の育成が図れたかどうかがより明確に示すことができただ

ろう。今後の課題としたい。

また,今回はまず県民生活センター講師による出前授業を行い,消費生活に関わる知識を広げ,消

費生活における意識もある程度高まったところでSNGを行ったが,出前授業の実施が困難な場合,

どのような授業展開がより有効であるか,今後検討していきたい。

さらに,今回は「D消費生活と環境」の学習を他の領域と絡め3年間を通して行う計画を立てたた

め,「環境」に関する内容は他学年で扱うこととし,2学年の学習内容には入れなかった。しかし,

SNGで扱う商品に「環境に配慮した」などの条件を付ければ,消費者としてもう一つ大切な視点を

加えることができ,より内容を充実させることができたかも知れない。加えて,今回のSNGでは,

店舗販売と現金による即時払いのみを扱ったが,事前調査からも明らかになった通り,生徒たちはイ

ンターネット販売等で多くの買物をしており,電子マネーやカードを使用している生徒も少なくない。

今後はこれらに関わるトラブルの増加も予想されるため,これらを含めて疑似体験できるような教材

の開発も検討していきたい。

後に,研究協力校の校長先生をはじめ,協力員の先生方には,多忙な中検証授業等において,多

大なる御協力をいただいた。心より感謝申し上げたい。

【参考文献】 『教員・講師のための消費者教育ティーチングガ

イド』 平成20年 3月 財団法人消費者教育支援センター

『評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のた めの参考資料(中学校 技術・家庭)』 平成23年 7月 国立教育政策研究所 『中学校学習指導要領解説 技術・家庭編』 平成20年 7月 文部科学省

『生活をつくる家庭科 第2巻』

日本家庭科教育学会編

平成19年 6月 ドメス出版

『評価規準の作成のための参考資料(中学校)』

平成22年 11月 国立教育政策研究所

『平成21年度研究紀要』

『平成22年度研究紀要』

山梨県総合教育センター

『説得納得ゲームを用いた悪質商法に関する学

習教材の開発』 平成17年 杉浦淳吉

消費者教育vol.27

『高校生の消費者意識と消費者知識の実態』

平成22年8月 三宅元子

家政学会誌vol.61

【研究協力校】 山梨大学教育人間科学部附属中学校

校長 佐藤 一郎 【研究協力員】 清田 礼子 甲府市立東中学校教諭 河野 美由紀

山梨大学教育人間科学部附属中学校教諭

平成23年度 山梨県総合教育センター 執 筆 者 副主幹・研修主事 赤岡 玲子

-補助資料 1 -

主事研究補助資料

中学校技術・家庭【家庭分野】

1. 各時間の指導案及び評価計画‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2

2. 事前調査とその結果‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10

3. 事後調査とその結果‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥17

4. 生徒の学習感想記述から‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥22

5. ワークシート‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23

6. 協力員部会より‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥33

-補助資料 2 -

1.各時間の指導案及び評価計画

○ 内容のまとまりごとの評価規準(国立教育政策研究所『参考資料』より)

「D 身近な消費生活と環境 (1)家庭生活と消費」

【学習指導要領の内容】

ア 自分や家族の消費生活に関心をもち,消費者の基本的な権利と責任について理解すること。

イ 販売方法の特徴について知り,生活に必要な物資・サービスの適切な選択,購入及び活用がで

きること。

生活や技術への

関心・意欲・態度

生活を工夫し創造する

能力 生活の技能

生活や技能についての

知識・理解

家庭生活と消費につい

て関心をもって学習活

動に取り組み,消費生活

をよりよくしようとし

ている。

家庭生活と消費につい

て課題を見付け,その解

決を目指して工夫して

いる。

家庭生活と消費に関す

る基礎的・基本的な技術

を身に付けている。

家庭生活と消費につい

て理解し,基礎的・基本

的な知識を身に付けて

いる。

○ 題材の評価規準

生活や技術への

関心・意欲・態度

生活を工夫し創造する

能力 生活の技能

生活や技能についての

知識・理解

①自分や家族の消費生

活について関心をもち,

消費の在り方を改善し

ようとしている。

①物資・サービスの選

択,購入及び活用につい

て必要な情報を収集・整

理することができる。

①消費者の基本的な権

利と責任,消費者基本法

の趣旨について理解し

ている。

②身近な販売方法に関

心をもち,その利点と問

題点について考えよう

としている。

①収集・整理した情報を

活用して物資・サービス

の選択,購入及び活用に

ついて考え,工夫してい

る。

②中学生にかかわりの

深い販売方法の特徴に

ついて理解している。

③物資・サービスの選

択,購入及び活用に関す

る知識を身に付けてい

る。

②SNGで販売する商

品のアイデアやリーフ

レットのデザインを工

夫している。

③SNGの販売方法を

工夫している。

②SNGにおいて,冷静

な判断のもとに金銭を

計画的に使うことがで

きる。

④身近な消費者を支援

する機関とその役割に

ついて理解している。

「D 身近な消費生活と環境 (2)家庭生活と環境」

【学習指導要領の内容】

ア 自分や家族の消費生活が環境に与える影響について考え,環境に配慮した消費生活について工

-補助資料 3 -

夫し,実践できること。

生活や技術への

関心・意欲・態度

生活を工夫し創造する

能力 生活の技能

生活や技能についての

知識・理解

環境に配慮した消費生

活について関心をもっ

て学習活動に取り組み,

よりよい生活を実践し

ようとしている。

環境に配慮した消費生

活について課題を見付

け,その解決を目指して

自分なりに工夫し創造

している。

消費生活と環境とのか

かわりについて理解し,

基礎的・基本的な知識を

身に付けている。

○ 題材の評価規準

生活や技術への

関心・意欲・態度

生活を工夫し創造する

能力 生活の技能

生活や技能についての

知識・理解

③自分や家族の消費生

活が環境に与える影響

について関心をもち,環

境に配慮した消費生活

を実践しようとしてい

る。

④自分や家族の消費生

活を点検し,環境に配慮

した消費生活について

考えたり,実践を通して

自分なりに工夫したり

している。

⑤自分や家族の消費生

活が環境に与える影響

について理解している。

⑥環境に配慮した消費

生活に関する知識を身

に付けている。

題材の指導計画

〈1学年〉

流れ 学習活動 評価 備考

第1次 ○家庭生活と消費について考えよう

・生活に必要なものの流れを知り,消費

者として物資・サービスの購入につい

て考える。

・商品の値段の違いについて話し合う。

・様々な販売方法と支払い方法を調べ,

その利点と問題点を考える。

関心・意欲・態度①

知識・理解①

関心・意欲・態度②

知識・理解②

生活の技能①

知識・理解③

・夏休みの課題の活用

(食材の購入を含めたクッ

キングチャレンジ)

・小学校の学習の想起

・身近な商品の値段調べ

・小学校の学習を踏まえ,優

先順位を考えた計画的な

物資やサービスの購入を

意識させる

第2次 ○環境に配慮した生活をしよう

・自分や家族の消費生活と環境への影響

について考える。

・家庭生活で使用している水やガス,電

気などの節約,ゴミの減量化を工夫す

る。

関心・意欲・態度③

知識・理解⑥

工夫・創造④

・生活チェック表の活用

・調理実習・被服実習時のデ

ータの活用

(ワークシート)

・「B 食生活と自立」「C

衣生活・住生活と自立」の

学習と関連させて扱う

-補助資料 4 -

〈2学年〉

流れ 学習活動 評価 備考

第1次 ○若者の消費トラブルの現状を知ろう

・消費者の権利と責任,消費者を支える

しくみについて知る。

・身近に起きている消費トラブルについ

て知り,対応策を考える。

関心・意欲・態度②

知識・理解①④

・山梨県民生活センターの出

前授業(外部講師)

・事前調査データの活用

第2

~4次

○SNGで販売と購入を体験しよう

・商品開発を行い,販売リーフレットを

作成する。

・SNGで販売と購入を体験する。

・SNGで体験したことを振り返る。

工夫・創造②③

生活の技能②

・価格,種類,販売対象など

販売条件の提示

・疑似通貨,商品シールなど

教材の工夫

・SNGのルールをしっかり

押さえる

・販売王の決定

・ウェビング図の活用

〈3学年〉

流れ 学習活動 評価 備考

第1次

○よりよい消費生活のために

・エネルギーの消費量について考える。

・暮らし方を見直し,家庭でできる節約

について話し合う。

関心・意欲・態度③

工夫・創造④

関心・意欲・態度③

知識・理解⑤

・やかんの湯沸かし比較実験

・地球規模の視点で考えさせ

・我が家の節約実践レポート

(課題)の活用

第2次

○環境に配慮した生活をしよう

・わたしたちの生活の環境への影響を考

える。

・地球規模の視点で環境問題を話し合い,

自分たちにできることを発表する。

○学習のまとめ

関心・意欲・態度③

知識・理解⑥

・「B 食生活と自立」「C

衣生活・住生活と自立」の

学習と関連させて扱う

-補助資料 5 -

2学年の学習の流れと学習指導案

【題材① 若者の消費トラブルの現状を知ろう】 1/4 時間目

(1)対象学年・教科 第2学年 技術・家庭科(家庭分野)

(2)題材 「若者の消費者トラブルの現状を知ろう」(県民生活センターによる出前授業)

(3)本時の目標(ねらい)

・消費者としての権利と責任,心構えについて考えようとしている。

・契約とは何かを理解し,身近な消費者トラブルの現状を理解している。

・県民生活センターの役割を理解している。

(4)指導と判断のめやす

A十分満足と判断さ

れる状況

Bおおむね満足と判

断される状況

C努力を要する生徒

への支援 評価方法

○ 消費者としての権利

と責任,心構えについ

て,自分自身の消費生

活と照らし合わせて

積極的に考えている。

消費者としての権利

と責任,心構えにつ

いて積極的に考えて

いる。

契約,自己責任など

のキーワードを用い

てまとめさせる。

ワークシー

○ 契約とは何かを知り,

身近な消費者トラブ

ルの現状について,具

体的な例を挙げて説

明することができる。

契約とは何かを知

り,身近な消費者ト

ラブルの現状につい

て,説明することが

できる。

パワーポイント及び

配付資料をもとに,

具体的に考えさせ

る。

ワークシー

観察

○ 県民生活センターの

役割とその活用方法

を十分理解している。

県民生活センターの

役割を理解してい

る。

パワーポイント資料

をもとに振り返らせ

る。

ワークシー

(5)展開

段階 指 導 内 容 学 習 活 動 評価の観点 留意点

(3)

本時の目標確認

(講師紹介)

・本時の目標を確認する。

(講師について)

県民生活センター

小林千澄先生

プロジェクター

ノートPC

(小林 T持参)

スクリーン

(大きいもの)

契約とは

クーリング・オフ

について

消費者トラブルは

なぜ起きる

・契約とは何かを知り,契約が成立

しているかいないかを,具体的な

事例から考える。

・クーリング・オフとは何かを知り,

どのようなときに適用されるか

を考える。

・消費者トラブルがなぜ起きるのか

を知り,消費者力を高めるにはど

知識・理解④

パワーポイント

資料

クーリング・オフ

資料

-補助資料 6 -

(40)

県民生活センター

の役割

事例から考えよう

中学生の消費トラ

ブル

まめまめ情報

うしたらよいかを考える。

・県民生活センターの役割を知り,

その活用方法を理解する。

・事例1:友だちとのゲームソフト

の売買でのトラブル事例を考え

る。

・事例2:おばあちゃんへのプレゼ

ントで買った洋服を返品したい

という事例を考える。

・中学生に多いトラブルについて知

り,具体的な事例で考える。

(架空請求,ネットショッピング

など)

・チェーンメールやスマートフォン

について知る。

知識・理解④

知識・理解④

関心・欲態・

態度②

知識・理解①

○×用紙

ビデオ教材

(7)

講義のまとめ

次時の学習

・小林先生に質問しよう。

・講義の内容を振り返り,まとめを

しよう。

・お礼の言葉(学級長)

・次時の学習内容と持ち物を確認す

る。

出前講座アンケ

ート回収

【題材②SNGの商品開発をしよう】 2/4 時間目

(1)対象学年・教科 第2学年 技術・家庭科(家庭分野)

(2)題材 「SNGの商品開発をしよう」

(3)本時の目標(ねらい)

・SNGの目的と方法を理解している。

・SNGで販売する商品のアイデアやリーフレットのデザインを工夫している。

(4)指導と判断のめやす

A十分満足と判断さ

れる状況

Bおおむね満足と判

断される状況

C努力を要する生徒

への支援 評価方法

○ 販売する商品につい

て,必要な情報を収

集・整理し,購入者の

立場を考えてリーフ

レットを作成してい

る。

販売する商品につい

て,必要な情報を収

集・整理し,リーフ

レットを作成してい

る。

視点を与えて資料を

読ませるとともに,

班での協力を促す。

ワークシー

リーフレッ

観察

○ SNGで販売する商 SNGで販売する商 まず資料を見なが リーフレッ

-補助資料 7 -

品のアイデアやリー

フレットのデザイン

を,消費者側(買い手)

の立場に立って様々

な視点から考え工夫

している。

品のアイデアやリー

フレットのデザイン

をいくつかの視点か

ら考え工夫してい

る。

ら,必要な視点を考

えさせる。

観察

○ 資料を活用しながら,

積極的にアイデアを

提案するなど意欲を

もって取り組んでい

る。

積極的にアイデアを

提案するなど意欲を

もって取り組んでい

る。

資料を見ながら,班

内でアドバイスし合

ったり,協力し合っ

たりして考えさせ

る。

観察

(5)展開

段階 指 導 内 容 学 習 活 動 評価の観点 留意点

(5)

本時の目標確認

・本時の目標と持ち物を確認する。

・前時の授業を想起する。

(40)

SNGについて

商品開発とリーフ

レット作成

販売方法の工夫や

売り上げ目標の決

商品シール作成

・SNGの目的と方法を確認する。

・SNGで販売する商品を考え,値

段やデザインを決める。

・リーフレットを作成し,販売方法

の工夫や売り上げ目標について

考える。

・商品名を工夫し,商品シールを作

成する。

(終わらなければ次回までの課

題とする。)

知識・理解⑤

工夫・創造②

関心・欲態・

態度②

ワークシート

リーフレット用

紙(中厚紙)

新聞広告や製品

のカタログなど

の資料準備

作業シート

ペン類の準備

(5)

進行状況の確認

次時の内容と持ち

物の確認

・途中でも区切りをつけ,片付けを

行う。

・提出物を班ごとに集める。

・次時はSNGを行うことを確認

し,持ち物を確認する。

完成したリーフ

レットは班ごと

のファイルに回

収しておく。

持ち帰り用クリ

アファイル

-補助資料 8 -

【題材②SNGで販売と購入を体験しよう】 3~4/4 時間目

(1)対象学年・教科 第2学年 技術・家庭科(家庭分野)

(2)題材 「SNGで販売と購入を体験しよう」(TTによる)

(3)本時の目標(ねらい)

・SNGにおいて,売り手として販売方法を工夫している。

・SNGにおいて,買い手として冷静な判断のもとに金銭を計画的に使っている。

・SNGの学習に意欲的に取り組んでいる。

(4)指導と判断のめやす

A十分満足と判断さ

れる状況

Bおおむね満足と判

断される状況

C努力を要する生徒

への支援 評価方法

○ SNGの売り手とし

て,買い手の反応を見

ながら販売方法をと

ても工夫している。

SNGの売り手とし

て,販売方法を工夫

している。

買い手の意見を聞い

て,値段を下げる,

機能を追加するな

ど,具体的に改善点

を考えさせる。

観察

○ SNGの買い手とし

て,冷静な判断のもと

に金銭を計画的に使

い,いらないものにつ

いては上手に断って

いる。

SNGの買い手とし

て,冷静な判断のも

とに金銭を計画的に

使っている。

時間の経過を伝え,

迷っているものは後

で購入するようにさ

せる。

観察

○ SNGの学習に意欲

的に取り組み,自分自

身の消費行動と照ら

し合わせて考えてい

る。

SNGの学習に意欲

的に取り組んでい

る。

振り返りシートの記

入状況を観察し,自

分自身の普段の消費

行動と照らし合わせ

て考えさせる。

観察

振り返りシ

ート

(5)展開

段階 指 導 内 容 学 習 活 動 評価の観点 留意点

(5)

本時の目標確認

・本時の学習内容について知る。

・持ち物を確認する。

必要な物品はあら

かじめ班ごとに準

備しておく。

SNGの方法とル

ール 5分

SNG(前半) 20 分

・SNGの方法とルールを確認す

る。

・売り手と買い手に別れ,SNG に取

り組む。

1・2・3・4班:売り手

・リーフレットを使い,販売方法を

工夫・創造③

生活の技能②

ワークシート

リーフレット

現金シール

商品シール

クリップボード

クレジット会社

-補助資料 9 -

(45)

振り返り 20 分

工夫して売り込む。

5・6・7・8班:買い手

・各班を約4分でまわる。

・途中で現金シールが無くなったと

きは,クレジット会社に借りに行

く。

・班で集計し,報告書を提出する。

・振り返りシートの記入。

(T2)

ストップウォッチ

物品の回収

(10) (休憩) 後半の準備

(40)

SNG(後半) 20 分

振り返り 20 分

・前半同様に,売り手と買い手に別

れ,SNG に取り組む。

1・2・3・4班:買い手

5・6・7・8班:売り手

・班で集計し,報告書を提出する。

・振り返りシートの記入。

工夫・創造③

生活の技能②

物品の回収

(5)

事後調査

学習のまとめ

・事後調査に記入する。

・事前調査で記入したウェビング図

に,広がった視点を赤で記入す

る。

・学習感想

事前調査

(ウェビング図)

事後調査

-補助資料 10 -

2.「消費生活」学習事前調査(結果) 10 月 4 日実施

調査対象:県内中学校 2 年 2 クラス(80 名) 回答数:80名

1. 次の質問に答えてください。

(1) あなたは普段買い物をするとき,どんな視点で商品を選んでいますか。

思いつくことをいくつでも書いてください。

事前調査:1(1)買い物をするときの視点(複数回答)

63

40

28

23

17

1310

7 6 5 5 4

13

38

3 4

12

6

14

0 1 20

24

0

10

20

30

40

50

60

70

①値

段・安

②品

質・性

③見

た目

・デザ

イン

・色

④賞

味期

限・消

費期

⑤産

地・原

産国

⑥数

⑦本

当に

必要

⑧メー

カー

・ブラン

⑨サ

イズ

・大き

⑩鮮

⑪添

加物

・安全

⑫お

いしさ

⑬そ

の他

人数

内1番に記入

N=80

(2)あなたは支払い機能のあるカード(電子マネー)を持っていますか。持っている人は,それは

何というカードですか。(例:Suica,バスカード,など) (N=80)

(n=42)

① バスカード 31人

② Suica 21 人

③ nanaco10 人

④ WAON 2人

⑤ おサイフケータイ

2人

⑥ PASMO 1人

⑦ Web マネー 1人

事前調査1(2)電子マネーを持っていますか

4238

持っている

持っていない

-補助資料 11 -

(3)あなたは 近どんな買い物をしましたか。(おおよそ夏休み以降について)自分で選んで買った

物を高額のものから3つ以内で思い出して書いてください。(1 万円以上,高額の物から)

順位 買った物 金額 順位 買った物 金額

1 電子ドラム 80,000 13 マンガ30冊 15,000

1 パソコン 80,000 13 時計 15,000

3 携帯電話 50,000 13 服 15,000

4 携帯電話 30,000 16 ミュージックプレイヤー 14,000

5 iPod 27,000 17 服 13,000

6 電子辞書 25,000 18 サッカースパイク 12,000

7 携帯電話 23,000 18 めがね 12,000

8 鉄道模型 20,000 20 サッカースパイク 11,700

8 ホームベーカリー 20,000 21 ゲーム機 10,000

8 めがね 20,000 21 服 10,000

8 競泳用水着 20,000 21 服 10,000

12 ペンタブレット 17,000 21 袴 10,000

(4)あなたは,通信販売やインターネット販売で買い物をしたことがありますか。あると答えた人

は,何回ぐらい,主に何を買いましたか。 (N=80)

①ない ②ある 買った物

通信販売 60 20 服(9),アクセサリー(2),スポーツ用品,テレビ

文房具,本,チケット,など

インターネット 39 41

服(12),カバン類(6),ゲームソフト(6),

スポーツ用品(4),CD(4),アクセサリー(3)

本(3),靴,ストラップ,時計,など

(5)あなたは,買い物で失敗をした経験がありますか。あると答えた人は,どんな失敗だったか,

どのように対処したかを簡単に書いてください。 (N=80)

②ない ①ある どのような失敗(主なもの) どのように対処したか(主なもの)

43 37 ・ゲームソフトを買ったが,つ

まらなかった

・買ったけど使わなかった

・安い時計を買ったら動かなか

った

・靴のサイズが大きかった

・消しゴムを買ったが,まだ古

いものがあった など

・対処なし(14)

・お店に持っていって換えてもらった。

・捨ててしまった。

・家族にあげた

・売った

など

-補助資料 12 -

(6)あなたは,ケータイ電話を持っていますか。持っていると答えた人は,月々の使用料はおおよ

そいくらですか。 (N=80)

②持っていない ①持っている 月々のおおよその使用料金 人数

~999 円 3

~4,999 円 20

~9.999 円 15

10,000 円以上 1

19 61

わからない 22

2.買い物やお金に関する次の①~⑩について,当てはまると思うものには○,やや当てはまるもの

には△,当てはまらないものには×をつけてください。

○:2 点 △:1 点 ×:0 点 平均点

①もらったおこづかいは無駄遣いしないように,大切に使っている。 ( 153 )

②買い物をしたときは,レシートを必ず確認する。 ( 1.14 )

③買い物するときはマイバッグの持参や,不要な割り箸などはもらわないこと

などを心がけている。 ( 1.14 )

④自分のお金で買う物でも,高額の物については保護者に相談してから買う。 ( 1.46 )

⑤自分で買った物はできるだけ大切にし,長く使う。 ( 1.78 )

⑥店員さんに強く勧められても,いらないものははっきり断れる。 ( 1.71 )

⑦お年玉やお小遣いを銀行などに貯金している。 ( 1.46 )

⑧仲のよい友だち同士でも,お金の貸し借りは絶対にしてはいけないと思う。 ( 1.10 )

⑨自分は将来一人暮らしをしたときでも,金銭の管理がしっかりできると思う。 ( 1.10 )

消費生活意識調査

24

26

47

62

64

51

33

37

54

40

36

23

13

14

15

25

17

15

16

18

10

5

2

14

22

26

11

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

質問①

○当てはまる

△やや当てはまる

×当てはまらない

N=80

-補助資料 13 -

3.「消費生活」に関わる次の問題に挑戦してみてください。(相談せずに自分の力で。わからなけれ

ば空欄で構いません。) (模範解答)

番号 問 題 解 答

1 今,環境に配慮した生活への実践として「3R」ということば

をよく耳にしますが,「3R」とは「リデュース(不要な物は買わ

ない)」「リユース(使える物は捨てないでくり返し使う)」と,

もうひとつは何でしょうか。

リサイクル

2 訪問販売や街頭販売などで,つい買ってしまったとき,一定の

期間であれば無条件で解約できる制度があります。その制度をな

んといいますか。

クーリング・オフ

制度

3 路上で,「アンケートに答えて」などと声をかけ,販売目的を

かくしてことば巧みに営業所などに連れて行き,高額な商品など

を購入させる悪質な商法をなんといいますか。

キャッチセールス

4 1995 年に施行された,製品の欠陥による事故など不都合が生

じた場合の,製造者などの責任を定めた法律を何といいますか。

P L 法

(製造物責任法)

5 商品についている①~④のマークの意味を,下のa~dから選

び,記号で答えなさい。

① ② ③ ④

a.日本通信販売協会会員の業者で製造した商品である。

b.製品の生産から廃棄までを通して,環境に配慮された製品

である。

c.品質,性能,安全条件などが日本工業規格に適合している

衣料品,文房具,台所用品などに付けられる。

d.日本農林規格に適合した農・林・水産物およびその加工品

などに付けられる。

① c

② d

③ a

④ b

6 2 週間前に,訪問販売で 9800 円の英語の教材を購入しました。

しかし,使ってみると難しすぎるので返品したいと思いました。

この場合,問題2の制度は適用されるでしょうか。

*どちらかに○を

(される・されない)

7 消費者がトラブルにあったとき相談にのってくれたり,消費者に

情報を提供してくれたりする公共の相談機関はどこでしょうか。

県民生活センター

(消費生活センター)

-補助資料 14 -

問題ごとの正答人数・正答率

集計表

問題 1 2 3 4 5-① 5ー② 5-③ 5ー④ 6 7

○ 80 5 1 0 31 30 52 66 53 6

× 0 75 79 80 49 50 28 14 27 74

正答率 100.0% 6.3% 1.3% 0.0% 38.8% 37.5% 65.0% 82.5% 66.3% 7.5%

消費生活知識調査正答人数

80

5 1 0

31 30

52

66

53

6

0102030405060708090

問題

1

問題

2

問題

3

問題

4

問題

5-①

問題

5ー②

問題

5-③

問題

5ー④

問題

6

問題

7

【正答率が高かった問題】

1 「3R」のうち「リサイクル」を答える問題(100%)

5-④ エコマークの意味を選ぶ問題(82.5%)

6 訪問販売でクーリングオフできるかどうかを答える問題(66.3%)

5-③ JIS マークの意味を選ぶ問題(65.0%)

【正答率が低かった問題】

3 「PL 法」を答える問題(0%)

4 「キャッチセールス」を答える問題(1.3%)

2 「クーリングオフ」を答える問題(6.3%)

7 「県民生活センター(消費生活センター)」を答える問題(7.5%)

N=80

-補助資料 15 -

学習前 10月4日

*これから「買い物」に関する学習を行いますが,「買い物」からイメージする言葉や事柄を,

ウェビング図に記入してみましょう。

全記述個数:1,014 個 1 人あたり平均記述個数:12.7 個

商品に関する言葉

衣類,文房具,機械類,食品,果実(果物),肉類,魚類,野菜,弁当,からあげクン,ごはん,インスタントラーメン,

衣服(洋服,和服,はかま),たまご,お菓子,日用品,おそうざい,がん具,医薬品,冷凍食品,食べ物,炭水化物,

穀類,量,品質,国産,外国産(中国産),駄菓子,ガリガリ君,返品,本,家具,ギフト,糖類,ファッション,オー

ダーメイド

お金に関する言葉

価格,値段,銀行,おつり,値切り,定価,オープン価格,為替,株,金(きん),小銭,札束,ユーロ,円,ドル,ウ

ォン,財布,高額(高い),図書カード,貯金,安価(安い),クレジットカード,電子マネー,ナナコ,SALE,バーゲ

人に関する言葉

おばさん,店員(アルバイト),主婦,お母さん,農家,客,サザエさん,消費者,フリーター

場所に関する言葉

ショッピングセンター,デパート,スーパー,オギノ,イオン,ラザウォーク,イツモア,アピタ,サン宝石,GAP,

ユニクロ,コンビニ(セブンイレブン,ローソン,ファミリーマート),スターバックス,TSUTAYA,Amazon,シ

買い物

-補助資料 16 -

ョップ,ショッピングモール,無印良品,山交,岡島,いちやま,朗月堂,農協,DEPO,商店街,コムサ,100 円

ショップ,エクラン

景気に関する言葉

インフレ,消費が上がる(下がる),会社が繁栄(破産,倒産)する,不安,売れる(売れない),物価高騰,給料上がる,

豊か,貧しい

環境に関する言葉

レジ袋(ビニール袋,エコ袋,有料化),マイバッグ,ECO,環境破壊(排気ガス),エコ商品,リユース

行為(支払い)に関する言葉

インターネット販売(Amazon),通販(パソコン,TV),試食,試着,おつかい,むだ遣い,接客,タイムサービス,

レジ,包装,衝動買い,レシート,一括,リボ,ボーナス,分割,ショッピング

その他の言葉

ブランド,万引き,泥棒(強盗),詐欺,カタログ,楽しい,わくわくする,るんるん,セレブ,趣味,品揃えが良い(デ

パート),行きやすい(コンビニ),生物,大変,大切

記述例)

-補助資料 17 -

3.「消費生活」学習事後調査(結果) 10 月25・28日実施

★次の(1)~(5)について,当てはまるものに○を付けてください。

(1)今回の「消費生活」の授業を通して,自分自身の消費生活を振り返り,課題を見付けることが

できましたか。 ア できた イ どちらかというとできた ウ どちらかというとできなかった

エ できなかった

ア イ ウ エ

人 57 23 0 0 % 71.3 28.7 0 0

(1)自分自身の生活への振り返り

0%

0%

71.3%

28.7%

ア:できた

イ:どちらかというとできた

ウ:どちらこというとできなかった

エできなかった

(2)今回の「消費生活」の授業を通して,消費生活に関する知識は広がりましたか。 ア 広がった イ どちらかというと広がった ウ どちらかというと広がらなかった

エ 広がらなかった

ア イ ウ エ

人 59 21 0 0 % 73.8 26.2 0 0

(2)知識の広がり

73.8%

26.2%

0%

0%

ア:広がった

イ:どちらかというと広がった

ウ:どちらこというと広がらなかった

エ:広がらなかった

-補助資料 18 -

(3)今回の「消費生活」の授業を通して,消費生活に対する興味・関心は高まりましたか。 ア 高まった イ どちらかというと高まった ウ どちらかというと高まらなかった

エ 高まらなかった

ア イ ウ エ

人 53 26 1 0 % 66.3 32.5 1.2 0

(3)消費生活への興味・関心

0%1.2%

32.5%

66.3%

ア:高まった

イ:どちらかというと高まった

ウ:どちらこというと高まらなかった

エ:高まらなかった

(4)今回の「消費生活」の授業内容は,充実していたと思いますか。 ア そう思う イ どちらかというとそう思う ウ どちらかというと思わない

エ 思わない

ア イ ウ エ

人 71 9 0 0 % 88.8 11.2 0 0

(4)授業内容の充実

0%

0%11.2%

88.8%

ア:そう思う

イ:どちらかというとそう思う

ウ:どちらこというと思わない

エ:思わない

-補助資料 19 -

(5)今回の「消費生活」の授業は,これからの生活に役に立つと思いますか。 ア そう思う イ どちらかというとそう思う ウ どちらかというと思わない

エ 思わない

ア イ ウ エ

人 73 7 0 0 % 91.3 8.7 0 0

(5)授業が生活に役立つか

0%

0%8.7%

91.3%

ア:そう思う

イ:どちらかというとそう思う

ウ:どちらこというと思わない

エ:思わない

★ 事前調査で記入したウェビング図に,学習を終えて広がった視点を,赤で記入してく

ださい。最後に,全体を通しての学習感想を書いてください。(事前調査用紙へ)

-補助資料 20 -

・・・学習後,広がった視点

-補助資料 21 -

ウェビング図(事後)に見られる広がった視点 大カテゴリー 小カテゴリー 数 言 葉

買い手を表す言葉 40 買い手,買う人,買う側,消費者,客 買い手・消費

者の視点 買い方・行為を表

す言葉 41 買う,値切る,納得,選ぶ,考える,交渉,消費,

無駄遣い,必要か,説明を見る,購入 売り手を表す言葉 55 売り手,売る人,売る側,店員さん,企業,お店,

作る人,販売者 売り手・販売

者の視点 売り方・行為を表

す言葉 82 売る,販売,売り方,値下げ,値引き,割引,サー

ビス,説明,説得,工夫,PR,広告,対応,チラシ,

接客,声だし,利益,損,アイデア 消費生活知

消費生活に関わる

知識を表す言葉 37 消費者センター,県民生活センター,クーリングオ

フ,契約,保証,省庁の認定,マーク,税金,返品,

JIS, リユース,リデュース

悪質商法に関わる

言葉 45 悪質商法,悪徳商法,不当請求,トラブル,被害,

詐欺, 泣き寝入り,おどす,しつこい,リスク

トラブル・借

借金に関わる言葉 10 借金,クレジットカード,サラ金,ヤミ金 無店舗販売 無店舗販売に関わ

る言葉 32 インターネット,携帯,通信販売,サイト,ネット,

ネット通販,PC,電話 値段に関わる言葉 29 価格,値段,安い,高い,安さ,高さ 品質・安全性に関

わる言葉 28 性能,機能,多機能,品質,使いやすい,質,安全,

安心 デザインに関わる

言葉 8 見た目,デザイン,おしゃれ,かわいい

商品選択の

視点

産地に関わる言葉 4 日本製,生産地 金・商品 金・商品に関わる

言葉 18 お金,金,お小遣い,商品,物,アイデア商品

感情 感情を表す言葉 20 楽しい,難しい,大切,便利,苦しい,やばい,怖

い その他 その他 44 全記述個数 493 個,一人当たり 6.2 個増加

-補助資料 22 -

4.生徒の学習感想記述から(抜粋)

・消費について今まで気付かなかったことに気付いた。売る側を体験してみて色々考えなければならないと知れて良かった。これ

からの生活に生かしてお金を大事に使いたい。

・買い物は簡単なものだと思っていたけど,考えることがあってちょっと難しかった。いろいろな発見があってこれからの生活に

生かそうと思った。

・買い物についてとても考えさせられる授業だった。今までは買うだけだったが,売り手に回ったり消費者トラブルを聞いたりし

て,もっと賢い買い物をしようと思いました。

・SNG やお話を通じて売り手や買い手の立場や思いを感じられた。これから大人になっていくが,消費生活の在り方を考え,買う

こと,売ることの意味やお金の大切さも学んでいきたい。

・とても楽しく買い物について学べた。消費者も物を買う時には注意深くいなくてはいけないと思った。

・買い物は買い手と売り手が説得して納得して買うことでよりよい買い物が出来ると思った。県民生活センターの人の話もこれか

らすごく大事になってくるので,聞けてよかった。

・上手にお金をつかえたから,実際買うときも上手に使いたい。もしインターネットなどで買うときは,よく利用規約など細かい

ところの説明をしっかり読んで,納得したら購入したい。

・今回の授業で買い手と売り手の両方を体験することができ,値引きや接客,視点など工夫する点やしている点を改めて実感する

ことが出来た。今後買い物をするときは違った視点で見てみたい。

・今回の学習は自分たちの生活に役立つことをたくさん学ぶことが出来た。買い物は自分の欲しいものを手に入れることが出来る

が,その分責任があり,消費者としてのきまりがあることが分かった。今後の生活に生かしていきたい。

・パソコンや携帯でちょっとした広告から変なページに飛ぶのを見たことがあり不安だったが,仕組みを理解することで「気をつ

けよう」と思ったし,正確な判断が出来る気がした。大人になると自己責任の部分が大きいので,学んだことを生かしたい。

・買い物は簡単なものだと思っていたけど,考えることがあってちょっと難しかった。いろいろな発見があってこれからの生活に

生かそうと思った。SNG を行って,新しい視点が見つかり,充実した授業だった。

・今回の授業は今の僕の生活に非常に関わってくるものだと思った。電話の使い方やネットで商品を買うとき気をつけたい。

SNGでは売り手,買い手の立場を経験することで,新しい発見をすることができた。これらをしっかり日常に生かしたい。

・上手にお金をつかえたから,実際買うときも上手に使いたい。もしインターネットなどで買うときは,よく利用規約など細かい

ところの説明をしっかり読んで,納得したら購入したい。楽しく学べた。

・物を買う時に注意して商品を見た方がいいということを改めて学んだ。相手の気持ちも考えて商品を売買することができた。今

回の授業を通して学んだことがこれからの生活にしっかりと生かせる様にしていきたい。

・自分で想像してアイデアを出すのはとても難しかったけど,やっぱりアイデアが良ければ良いほど売れると分かった。買い手よ

りも売り手の方が大変である。売り手は買い手に買ってもらうことを優先して,商品を考えなくてはならないと思った。

・SNGや県民生活センターの方の話を通して,自分の生活を見直すことが出来た。危険なサイトにつなげないようにしたい。「お

金の貸し借り」について,SNGでも消費者金融ではなるべく借りすぎないようにしたが,実際もお金を大切にしたい。

・消費について学んで,自分たちが商品を売るのは大変だし,工夫がないと買いたいと思ってくれないと分かった。買う方も必要

かどうかしっかり考えて買わないとお金がなくなってしまうし,同じようなものでも値段が違ったりトラブルがあったりすると

思った。消費に関するトラブルは,たくさんあるしすごく身近なものだと思う。お金は大切だから,しっかり考えて買い物した

い。

・SNGをやってみて初めて売り手側の面白さや難しさが分かった。買い手は計画することが重要だと分かった。消費者として今

回のことを忘れずにしていきたい。

-補助資料 23 -

5.家庭科学習シート綴

2年( )組( )番 氏名【 】

家庭生活と消費

-補助資料 24 -

家庭科学習シート 学習日 月 日

SNG で「販売」と「購入」を体験しよう 2 年( )組( )番

氏名【 】

1.目的

商品の販売者(売り手),消費者(買い手)の両者を体験することで,自分の消費生活を振り返り,

問題点や課題を明らかにする。

2.流れ

(1)できるだけ多くの人に買ってもらえそうな商品を開発する。(前時:終わらなかったら宿題)

商品を決める→値段を設定する→リーフレットの作成→売り方の工夫を考える→

目標販売個数,売上額の設定→商品シール作成

(2)売り手と買い手に別れて売買を行う。(20分)

1・2・3・4班:売り手・・・商品を売り込み,売れたら代金シールをもらって

かわりに1枚商品シールを渡す。

5・6・7・8班:買い手・・・商品について説明を受け,買いたいと思ったら代金シールを

払って購入する。1つの商品を購入したら1枚商品シールを

もらう。

(3)振り返り(20分)

売り手として・・・商品を売った数,売り上げ金額を計算し,なぜ売れたか,売れなかったか

を考える。→班の報告書提出

買い手として・・・商品を買った数,買った合計金額を計算し,どんな商品をどのように販売

されたとき買ったかを考える。→班の報告書提出

(4)役割を交代する。(20分)

1・2・3・4班:買い手

5・6・7・8班:売り手

(5)振り返り(20分)前半と同様に

前半,後半それぞれの「販売王」「購入王」を決定する。

3.ルール

(1)売り手:班の店舗スペース(調理台)で販売する。

・できるだけたくさんの人が買ってくれそうな商品を考える。(班で相談可)

・値段は500円~3000円で設定する。

・できるだけたくさん買ってもらえるように,販売方法を工夫する。

・ひとつ買ってくれた人にひとつ商品シールを渡し,現金シールを受け取る。

・買ってもらえなかった理由をメモしておくとよい。

・“おどす”など悪質な売り方は厳禁!あくまでも“商品”で勝負すること。

(2)買い手:各店舗を順番にまわり,購入する。

・所持金は 10000 円(シール)。商品を買ったら販売者にその金額の現金シールを支払う。

・買い物の学習なので,必ず3つ以上は商品を購入すること。

SNG とは・・・

-補助資料 25 -

・ひとつ買ったら商品シールをひとつもらう。

・所持金がなくなってしまったら,クレジット会社から借りることもできる。

4.用意するもの

〈売り手〉販売商品リーフレット,商品シール(20 枚),売り手用ワークシート,筆記用具

〈買い手〉購入商品リストシート(買い手用ワークシート),クリップボード,筆記用具

現金シール 10000 円(1000 円×8,500 円×4)

5.準備

販売する商品を考えよう

リーフレット図案

販売方法の工夫

目標販売個数 目標売り上げ額

個 円

商品名 値段

-補助資料 26 -

売り手用ワークシート

販売状況(買ってくれた人の名前)

売り上げ(現金シール添付らん)

買ってもらえなかった理由(メモしておこう)

氏名【 】

商品名 値段

-補助資料 27 -

売り手用振り返り用紙

1.販売個数 個 売上額 円

目標達成:( できた ・ できなかった )

2.自分の商品がたくさん売れた理由,あまり売れなかった理由を考えよう。

3.「売り手」を体験して気が付いたこと,考えたことなど,感想を書こう。

4.自己評価

・みんなが買いたくなるような商品を開発することができた。 A B C

・販売方法を工夫し,積極的に商品を PR することができた。 A B C

2 年( )組( )番 氏名【 】

-補助資料 28 -

買い手用ワークシート

購入商品リスト 商 品 名 金 額 販売者 その商品を買った理由

*商品シールを添付する

MEMO (余った現金シールはここへ)

氏名【 】

-補助資料 29 -

買い手用振り返り用紙

1.商品購入個数 個 購入総額 円

2.どんな商品を,どのように販売されたとき,購入したかを考えよう。

3.「買い手」を体験した感想を書こう。

4.自己評価

・自分の欲しいもの,納得できる商品を購入することができた。 A B C

・自分の所持金(シール)を大切にし,むだ遣いはしなかった。 A B C

2 年( )組( )番 氏名【 】

-補助資料 30 -

班集計用紙(報告書) 売り手用

*売り上げ金額が多い順に報告してください。

順位 氏 名 商 品 名 売り上げ個数 売り上げ金額

( )組( )班

班集計用紙(報告書) 買い手用

*購入金額が多い順に報告してください。

順位 氏 名 購入数 購入金額

( )組( )班

-補助資料 31 -

「消費者金融サコム」お客様リスト(前半)

No. お客様氏名 貸 付 金 額 (円)

10

-補助資料 32 -

「消費者金融サコム」お客様リスト(後半)

No. お客様氏名 貸 付 金 額

10

-補助資料 33 -

6.【研究協力員部会より】(10月25日授業後)

【教材について】 ○消費生活の授業はとても難しく,また,あまり時間もとれないので,どうしてもビデオ教材等で済

ませてしまっていたが,今回の授業はたった4時間なのに,非常に中身が濃く,生徒にとって大変

貴重な経験になったと思う。 ○SNG は様々な中学生の授業で行う際の工夫がなされていて,大変勉強になった。班単位で協力して

商品を販売している班もあり,グループ活動のよさも発揮されていたと思う。 ○販売する側になり,そちらの立場を経験することで新たな発見も多く,いろいろな勉強ができたと

思う。 ○短時間の中で,出前授業や SNG の導入など様々な工夫があり,充実した授業だった。 ○SNG の活動を通して,たくさん売ったり買ったりすることで,様々な視点をもつことができ,目標

の達成になっていたと思う。 ○売買後,すぐに活動を振り返ることで,何がよかったのか,悪かったのかに気付くことができてい

たと思う。 短時間の中で多くを学び,研究のねらいは達成することができたと考える。SNG の導入で,言語活動

を充実させることができ,言葉と体験をつなぐことができた。 【生徒の様子から】 ○全員の生徒が本当に楽しそうに活動していたのが心に残った。買い物はそもそもとても楽しいこと

であると再認識した。商品を売ることも,買ってくれる人がいると楽しいことなんだと思う。 ○2時間の中で,ひとりひとりが大きな声を出して授業に一生懸命参加していた。 ○前時に考えた自分の商品を必死に売り込むところはすさまじい勢いだった。まるで年末の築地市場

のような盛り上がりだと感じた。 ○生活の中では体験することのなかった「売り手」の体験ができ,より興味をもって取り組めていた

と思う。 ○おとなしい生徒は,売り手となったときなかなか客を呼び込むことができず,買ってもらえないよ

うだったが,売るためには大きな声を出さなければ,という考えはきちんともてたようだった。 ○男女関係なくきちんと取り組んでいて,値切るのも楽しそうだった。 ○消費者が積極的に商品を買っていた。自分でたくさん質問をしている生徒が多数見られ,納得して

購入しようとする姿勢がよかった。 ○じゃんけんで勝ったら割引,2つ購入すれば 3.000 円,など,売り手の工夫もたくさん見られた。 ○買ってくれた人に対して“ありがとう”と必ず言っている生徒がいてすごいと感じた。 ○生徒の中には,商品が考えられない,売るのが恥ずかしい,という生徒もいると思うが,グループ

活動を利用して,班ごとに店を回ったり,班ごとに商品を開発したことで,どの生徒も売買に参加

することができていた。 生徒にとって,とても新鮮な体験となり,皆意欲的に授業に参加していた。グループ活動を取り入れ

たことで,苦手な生徒も無理なく参加することができていた。

-補助資料 34 -

【改善点】 ○時間がやや少なく,全員の「買い手」から商品の説明を聞くことができなかった生徒も見られた。 ○買い手側では,お金がなくなったら借りるだけでなく,銀行なども入れて,自分の貯金から使える

お金を出してもおもしろいのではないか。 ○生徒の活動を見て,売買は人間関係で成り立っていることもわかる教材だと感じた。どうしても仲

のよい友だちからは買ってしまう場面が多かったように思う。 時間設定がやや短かった。SNG の売買では,生徒の様子を見ながら少し時間を延長するなどの措置が

あってもよい。「借金」の扱いは注意が必要。自分のお金がなくなったら借りればいいという意識はも

たせない方がよいので,「貯金を使う」といった条件を入れるのもいいだろう。日常の人間関係が反映

されてしまうことがないように,ルールは設定したつもりであったが,実際の生活場面で買い物する時

にも人間関係に左右されることもあるので,そのようなことにも気付かせることができればよかったか

も知れない。