月刊現代ギター (gendaiguitar) - 2014年11月号

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This is a free sample of 月刊現代ギター (gendaiguitar) issue "2014年11月号" Download full version from: Apple App Store: https://itunes.apple.com/us/app/id930013902?mt=8&at=1l3v4mh Google Play Store: https://play.google.com/store/apps/details?id=com.presspadapp.gendaiguitar Magazine Description: クラシック・ギターの専門誌、月刊「現代ギター」は、現在国内外のギターを愛する人々に広く読まれており、特に毎月のユニークな特集記事や貴重な楽譜はたいへん好評です。取り上げる記事もルネサンスから現代音楽までと幅広く、フラメンコ、古楽、ウクレレ関係も連載されています。もちろん、国内ニュースや海外の話題、新刊書や新譜CDの案内、コンサートガイ... You can build your own iPad and Android app at http://presspadapp.com

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Page 1: 月刊現代ギター (gendaiguitar) - 2014年11月号
Page 2: 月刊現代ギター (gendaiguitar) - 2014年11月号

12 特 集

トレモロ奏法の歴史と演奏法  クラシックギターにおけるトレモロの歴史(原 善伸)  トレモロ奏法 攻略法(新井伴典)

CONCERT PHOTO REPORT

33 コンサート・フォトレポート 木村 大 新堀ギターフィルハーモニーオーケストラ 和尋(寺田和之&田口尋夢)、田口洋美 アルポリール・ギタートリオ  (新井伴典、坪川真理子、キム・ヨンテ) 細井 智

REPORT

28 第 9回 Hakuju ギターフェスタ 201431 名古屋ギターフェスティバル 201432 大阪ギターサマー 201457 第 25回 JGAギター音楽祭60 第 15回全日本アマチュア・ギターコンクール64 谷辺昌央:パルス・トレーニング講座

INTERVIEW

40 Jiro'sBar ~濱田滋郎対談〔20〕  野谷文昭(ラテンアメリカ文学研究家)44 大萩康司47 ミロシュ48 マルコ・トプチィ50 マヌエル・バビローニ

READING / ESSAY / LECTURE

36 愛器を語る[68]    キム・ヨンテ(デイク・トラファーゲン)

52 ポインツ・オブ・ギターテクニック[8]    マルシン・ディラ66 奇蹟のギタリスト(手塚健旨)   フアンホ・ドミンゲス

70 オールド・ポップス・コレクション〔8〕   ラ・クンパルシータ(ロドリゲス)(たしまみちを)

INFORMATION

63 コンクール・インフォメーション74 めもらんだむ96 新譜案内98 外盤案内100 新刊案内104 今月の見どころ聴きどころ106 ギター名曲講座108 各地から112 イベント&コンサートガイド

ENSEMBLE

102 アンサンブルの広場

SCORE

129 今月の楽譜解説130 エリカの花(佐藤弘和)137 田原坂(熊本県民謡~天満俊秀)138 TWOHEARTS(佐藤正美)

Vol.48 No.12 November2014 No.611 November

竹内太郎&セーヌ・エ・サロン

●表紙 大萩康司

●写真提供 ビクターエンタテインメント

75 ポピュラー・ヒット・レパートリー〔20〕 ひまわりの約束~映画『STANDBYMEドラえもん』      より(秦 基博)              (小関佳宏)79 キネマ楽園〔8〕(鈴木大介) ムーンライト・セレナーデ(ミラー)~映画『グレン・ミラー      物語』より

82 遡行ギター音楽史年表〔8〕(朝川博)84 atempo 日記〔56〕(渡辺和彦)86 セゴビアとパキータ〔44〕        (A.エスカンデ/訳:坪川真理子)90 ロンドン便り〔59〕(ワシリー・サバ/訳:関塚亮司)92 レパートリー充実講座〔236〕(猪居信之)   大序曲 Op.61 ①(ジュリアーニ)

※『現代ギター』2014 年 11 月号(No.611)に掲載の楽譜中島みゆき〈糸〉、ミニョーネ〈街角のワルツ第 8 番〉は、著作権権利者の意向によりダウンロード販売が認められていないため、本電子版には掲載しておりません。

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12 Gendai Guitar

●トレモロ=「震わす」→「持続させる」 クラシックギターのトレモロ曲と言えば、なんといっても〈アランブラの想い出〉が思い起こされます。流れるような旋律がアルペジョの伴奏を伴って奏でられる。しかもひとりの奏者によって。多くの人がその魔術を聴いたとたんクラシックギターのとりこになりました。わたしもそのひとり。以来 50 年、その魔術に魅せられて弾き続けています。 さて今日は、〈アランブラの想い出〉に代表されるトレモロ奏法が、いつ頃クラシックギターに取り入れられ、どのように変化、発展したかを考えてみようと思います。 そのまえに、まずトレモロとは何かを確認しておきましょう。トレモロ tremolo とはイタリア語で「震える」ことを意味します。現在この用語は、通常 1 つの音または和音を、音価を限定せずに素早く反復させることとされています。ですから厳密に言えば、音価が通常 16 分音符か 32 分音符に限定されるギターのトレモロ奏法はトレモロではないことになってしまいます。これは、ギターのトレモロが音を「震わす」のではなく「持続させる」ために考えられた奏法だからです。しかしそうは言っても、上手なギターのトレモロを聴いていますと、旋律が「震えている」ようにも感じられますので、あながち間違いとは言えません。まあ、厳密な規定は音楽学者にお任せして、本稿では〈アランブラの想い出〉で使われる p 指による低音と a m i(他の運指もありうる)による

高音の同音反復による奏法を「ギターのトレモロ音型」と考え、それがどのようにギターやリュートなどの撥弦楽器の作品に使われて来たかを見て行こうと思います。

●最も古いトレモロ曲~ルネサンスからバロック期 15 世紀中ごろドイツのグーテンベルクによって開発された印刷術は、またたくまにヨーロッパ全土に広まりました。その恩恵によって 16 世紀になりますと各国で楽譜の出版が始まります。それまで筆写によるしかなかった楽譜が多くの人々に共有されるようになり、今日に伝えられました。ギター、リュート、ビウエラなどの楽譜や教則本もフランス、イタリア、ドイツ、スペインなど各国で次々に出版されていきます。しかし、それらの中から「トレモロ音型」はなかなか見つけられません。 今日知られる最も早い例は、16、7 世紀イギリスの作曲家 J. ダウランドの〈ファンシー〉です(譜例 1)。 曲の終盤、低音が主要な動きを奏で、主音を持続音として 1 弦の開放弦で同音反復させています。メロディーを持続させている訳ではありませんが、音量を増す効果もあり高揚感を持って終結部に向かっています。

 バロック時代になっても用例はあまりありません。数少ない例として、J.S. バッハと同世代、S.L. ヴァイスの

〈シャコンヌ〉を挙げておきます。ここでは上声を同音反復することでその動きを際立たせ情感を高めています

クラシックギターにおけるトレモロの歴史

The History of Tremolo in Classical Guitar

by Yoshinobu Hara

原 善伸

特集 トレモロ奏法の歴史と演奏法

ギターを奥田紘正、K.H. ベットナー、佐々木 忠各氏に師事。1972 年日本ギタリスト協会新人賞受賞。

1973 年岩下志麻朗読の LP「マレー乙女マニアナの歌える」の音楽を任されギター一本で作曲録音する。同年、第一生命ホールにてデビューリサイタルの後ドイツへ留学。

1976 年ドイツ国立ケルン音楽大学を首席で卒業。1979 年帰国、各地で演奏活動を開始する。

ドイツ・ブレーメン音楽大学、日本大学芸術学部、熊本大学教育学部の講師を歴任。現在、洗足学園音楽大学教授。ALM Records より独奏をはじめ様々なスタイルの CD を多数リリースしている。

特集:トレモロ原.indd 12 2014/10/06 17:04:19

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28 Gendai Guitar

今や夏の風物詩となった荘村清志&福田進一プロデュースによる「Hakujuギター・フェスタ」が8月22日(金)~24日(日)にかけて「フランス」をテーマに行なわれた。今年はコンサートだけでなく、爪の相談コーナー、バロックギター体験コーナー、楽器の展示や各種物販などのブースが集まった「ギター・マルシェ」も併催され、より一層の賑わいを見せた。

22日【王宮のギター~バロック】Hakujuギター・フェスタ2014のトップバッターはロンドン在住の古楽器の名手、竹内太郎。この日は、これまでにも共演を重ねているバロック・ダンサーの市瀬陽子と、彼女の主宰する「セーヌ・エ・サロン」によるダンスとともに音楽を楽しむという趣向を凝らした作り。優雅に洗練されつつもほど良い興奮を感じさせるリズミカルな音楽と、身振りも服飾も表情も美しいダンスとのコラボレーションにより、あたかも宮廷でステージを楽しんでいるかような華やかな世界へと聴衆たちを誘

いざな

った。プログラム:シャコンヌ(コルベッタ)、組曲ニ短調~プレリュード、マスカラード、ブーレ、サラバンド、メヌエット(バッハ/振付:市瀬

陽子)*、ロンド「修道女モニク」(クープラン)、スペインのフォリアによる即興演奏(振付:ペクール、フィエ)*、竹内/ロンド風ガヴォット(バッハ~竹内)、コントルダンス「レ・マンシュ・ヴェルト(グリーンスリーヴス)」(伝承曲/振付:フィエ)* *はダンスと共演【ギターで聴く近現代フランス音楽の神髄】1日目第 2部は両プロデューサーによるソロの公演。福田はサティの人気作品のギター編曲と、パリ国立高等音楽院で学んだ邦人作曲家 2人のフランス風な趣のある作品を披露した。昨年惜しまれつつ他界した三善 晃が 1985 年に芳志戸幹雄のために書いた〈5つの詩〉は極めて珍しい実演の機会となったが、深淵な広がりと親しみやすい音楽性を両立させた不思議な作品で、これからさらに取り上げられる機会が増えていくことが望まれる。続く荘村は、ギター愛好家に馴染み深いレパートリーで真っ向勝負。フランス・バロックの2作品と人生の大半をパリで過ごしたタンスマンの作品を、端正でありながらも味わい深く演奏して聴衆を魅了した。プログラム:福田/グノシェンヌ第 1番(サティ~ディアンス)、ジムノペディ第 1番(サティ~パーニクング)、ギターのための挽歌(原 博)、ギターのための「5つの詩

うた

」(三善 晃)、荘村/メヌエットⅠ・Ⅱ(ラ

第 9回 Hakuju ギターフェスタ2014Hakuju Guitar Festa 2014 写真:三好英輔

22日 第 1部【王宮のギター】:竹内太郎(バロックギター)、セーヌ・エ・サロン(バロック・ダンス)22日 第 1部【王宮のギター】:竹内太郎(バロックギター)、セーヌ・エ・サロン(バロック・ダンス) 22日 第 1部:竹内太郎、市瀬陽子(バロッ22日 第 1部:竹内太郎、市瀬陽子(バロック・ダンス)ク・ダンス)

22日 第 2部【ギターで聴く近現代フランス音楽の神髄】:荘村清志22日 第 2部【ギターで聴く近現代フランス音楽の神髄】:荘村清志 22日 第 2部:福田進一22日 第 2部:福田進一

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36 Gendai Guitar

愛器を語る

キム・ヨンテ ◆デイク・トラファーゲン

(2010)

Kim Yong-Tae13 歳よりギターを始め、大谷 環、尾尻雅弘、福田進一に師事。95 年に渡仏、パリ・エコールノルマル音楽院にてアルベルト・ポンセに師事、97年に審査員全員一致の第1位で修了、翌 98 年には同音楽院の演奏家ディプロマを審査員全員一致の首席で取得。聖徳大学、GG 学院、村治 昇ギター早期才能教育教室講師。2006 年 10 月に発表したソロ CD「ヴァリエ2 内なる想い」はレコード芸術誌にて特選盤に選ばれる。

写真:木田新一

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Page 6: 月刊現代ギター (gendaiguitar) - 2014年11月号

 1976 年、ポーランドのホジュフ生まれ。1995 ~ 2000 年、カトヴィッツェ国立音楽院でヴァンダ・パラツに師事。スイス・バーゼル音楽院でオスカー・ギリア、ドイツ・フライブルクでソーニャ・プルンバウアー、オランダ・マーストリヒト音楽院でカルロ・マルキオーネに学ぶ。アルハンブラ国際ギターコンクール(2000 年)、ホアキン・ロドリーゴ国際ギターコンクール(2002 年)、GFA 国際ギターコンクール(2007 年)など、欧米の 19 の国際ギターコンクールで優勝を果たす。以後、米国カーネギー・ホールやウィーンのコンツェルト・ハウスなど、名門ホールでのリサイタル、世界各地のオーケストラとの共演を重ねている。2006 年にはロドリーゴの遺族の指名により、新たに発見されたギター作品〈ギターのためのトッカータ〉をマドリッドで世界初演した。 現在、故国のクラクフ、カトヴィッツェの両音楽院で後進の指導にあたっている。音楽祭への盛んな出演や録音 CD でも注目を集める、文字通りの世界的名手。HP http://www.marcindylla.com/

マルシン・ディラMarcin Dylla

2014 年 8 月 25 日 GG サロン/ゲスト:朴 葵姫/写真:宮島折恵/翻訳:森井英朗取材・構成:中里精一、渡辺弘文、安藤政利(編集部)

No.8

 今月の「Points of Guitar Technique」は、ポーランドの世界的名手マルシン・ディラが登場。アルハンブラ国際、GFA国際など世界の主要なギターコンクールを総なめにし、NAXOS のアルバムやロドリーゴ〈トッカータ〉の世界初演でも耳目を集めたディラだが、8 月下旬の初来日では噂に違わぬ演奏で本邦ギター界に衝撃を与えた。GG サロンで開催されたマスタークラスの直前に、彼の大ファンだという朴 葵姫も同席してのインタビューの様子をお伝えしたい。

ギターを勉強するにあたって、使った教則本はありますか?

 私の最初の先生は教則本を使うよりも何か面白い曲を与えて生徒を満足させてくださる方でしたので、特定の教則本を使った覚えはありません。しかし、ギターを弾くことに関しては非常にシビアで演奏動作の正確性を要求されました。そのお陰で学生になってから自分のテクニックが他の学生に比べて勝っていることに気付きました。先生はオーストリアへ移住したため長らく音信不通でしたが、facebook が契機となり、私がウィーンでコンサートをした際に再会出来ました。――その先生のお名前は? クシュシトフ・バルシュチェフスキー

(Krzysztof Barszczewski)、ポーランドでも最も難しい名前の 1 つです(笑)。彼はギタリスト兼エンジニアで、自身のテクニックを見直すために、エンジニアの視点から指を一種の機械と考え、その動作

や負荷について分析したそうです。彼のそうした考察は学習の初歩の段階では非常に役立つと思います。技術的にも音楽的にも「正確である」ことが最も重要だというその哲学は、私が自分の生徒に伝えていることでもあります。――お薦めの教則本はありますか? 教則本がすべての問題を解決してくれるとは思えません。上達するために最も大事なのは「自分の弱点は何か?」「何を良くすべきなのか?」と自問することです。知性的かつ客観的な視点から自分を見据えることが肝要です。――練習曲は何か弾かれましたか? カルカッシやソル、カルッリ、ジュリアーニなどを弾いたと思います。特定のものに限らず、様々な種類の練習曲に取り組むのが良いと思います。

毎日の練習はどれくらい、どのようにやっていますか?

 出来るだけ多く練習するようにしていますが、年齢を重ねるにつれて練習というのはギターを弾くだけではなく、音楽に時間を有効的に使うことだと分かってきました。演奏家や音楽家にとって「音楽を聴く」ということは単純な楽しみではなく他の演奏家の表現や技術を学ぶ

「練習」であり、暗譜の作業や素早く集中出来る方法を学ぶこともすべて練習だと思います。重要なことは、自分の集中について常に気を配ることです。何の制限もない長時間の練習の場合、結果としてあまり進歩がみられないことがありま

す。一方、どうしても時間が取れない時に、集中力が増し良い練習が出来たりします。集中するためには自身の課題を見極め明確な目標を設定する必要があります。それが的確であるほど練習は効率的になります。「上手く弾けないので何とかしたい」というのでは漠然としすぎています。「何が問題なのか」を分析しなければなりません。「このパッセージは右手がとても難しいから指使いを見直してみよう」など、明確な問題提起と目標設定が効率的な練習に結びつくのです。弾くのをただ楽しんでいるのは、練習ではなくて遊んでいるだけなのです。

テクニック上達のために特に工夫したことはありますか?

 テクニックを上達させる唯一の方法は、自分の演奏を限りなく「正確」に近づけることだと思います。多くの学生が何か魔法のような練習法でテクニックが上達すると信じていますが、そのようなものは存在しません。マスタークラスで

「このパッセージが速く弾けない」と訴える人がいますが、自分がどのような右手の指使いでそれを弾いているのかさえ分かっていないというケースが多々あります。我々の指は所詮ただの指です。難しいパッセージはどうやっても難しいのですが、指を安定させたり、速く動かしたり、適確なコンビネーション、音色のコントロールによって、それを軽減させることは可能で、それには「何が必要か?」を分析することが重要です。

52 Gendai Guitar

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