【6.複素積分】 - persianblue.net · ・複素関数の積分...

31
�������� ����������������������������������������� ��������������������������������Cauchy ������ ���������������������������������������� ����������� �������� ����������������������������������� CauchyRiemann(���������)���� ������������������������(����)������������ ���������������� ���� ) , ( ) , ( ) ( y x iv y x u z f { iy x z { ���� ������� ) (z f z ����������� z z f z z f z f dz d z ' ' o ' ) ( ) ( lim ) ( 0 ������������� z y x, �������� y x, ������������������������� y i x z ' ' ' ����� ( x ����) x v i x u x y x iv y x u y x x iv y x x u x w w w w ' ' ' o ' ) , ( ) , ( ) , ( ) , ( lim 0 �� � ( y ����) y v y u i y i y x iv y x u y y x iv y y x u y i w w w w ' ' ' o ' ) , ( ) , ( ) , ( ) , ( lim 0 �� � ������� ? y v x u w w w w �� x v y u w w w w ��������� ) (z f ������� ������ CauchyRiemann ��������

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Page 1: 【6.複素積分】 - PersianBlue.net · ・複素関数の積分 複素関数を扱う上で基本的な知識が必要で、幾つかの関係式を証明しておく。 ・Cauchy-Riemann(コーシー・リーマン)の関係式

【6.複素積分】 この項では複素関数の積分、「複素積分」について述べる。特異点があるような関数の積分

は実数空間だけでは限界がある。複素空間で考えれば「留数定理」や「Cauchyの主値積分」等の方法で求められるものがある。これらの方法と複素関数の解析に必要な基本的な知識

を見ていくことにする。

・複素関数の積分 複素関数を扱う上で基本的な知識が必要で、幾つかの関係式を証明しておく。 ・Cauchy-Riemann(コーシー・リーマン)の関係式 この関係式の意味は、複素関数が考える領域にて正則(微分可能)であるための条件である。 複素関数の微分について考えよう。 複素関数

),(),()( yxivyxuzf    iyxz とする。 微分の定義より )(zf を z平面にて微分することは

z

zfzzfzfdzd

z

)()(lim)(0

が収束することを意味する。 zは yx, の関数であるから yx, どちらの微分も等しくならなければならない。従って、 yixz を考慮して ( xについて)

xvi

xu

xyxivyxuyxxivyxxu

x

),(),(),(),(lim0

     ―― ①

( yについて)

yv

yui

yiyxivyxuyyxivyyxu

yi

),(),(),(),(lim0

     ―― ②

①=②とすると

yv

xu

かつ xv

yu

この関係を満たせば )(zf は正則である。

この関係式を Cauchy-Riemannの関係式と言う。

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・Cauchyの積分定理 この項では線積分と Stokesの定理の知識が必要である。(詳しくはベクトル解析を参照) 複素関数 )(zf を積分路Cに沿って積分することを考える。

Cz dzzfI )(

)(zf は

),(),()( yxivyxuzf    iyxz と書けることを考えると積分 zI は

CCC

Cz

udyvdxivdyudxidydxivu

dzzfI

   

)(

である。 積分路Cが閉じていた場合を考えると積分 zI は

CCz udyvdxivdyudxI

となるから、右図の様に積分路Cに囲まれた領域をSとし (※)Stokesの定理を用いれば、

CCz udyvdxivdyudxI

SS

dxdyyv

xuidxdy

yu

xv)(

複素関数 )(zf が正則ならば Cauchy-Riemannの関係式より

0)(Cz dzzfI

となる。これを Cauchyの積分定理という。

※Stokesの定理

SSsdArdA vvvv A

v:ベクトル場

S:領域Sを囲む経路

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・Cauchyの積分公式 積分路Cが閉曲線であるとし囲まれた領域をSとする。領域Sにて正則な複素関数 )(zf を

考え、S内部に点 aがあるとする。(図1) 次のような周回積分を考える。

Cdz

azzf )(

点 aを除くような経路に考えると図2のようになる。

点 aの周りを半径 で避けるように経路 1C を考え、点 aに近づくための経路を 2C とし領域 Sを作る経路を 0Cとすると、全経路Cは 210 CCCC である。 1C の“-”は 0C に対して逆回転を意味する。 ところで 2C は上下の経路があり打ち消しあうと考え、0結局、積分する全経路Cの正味は 10 CCC Cauchyの積分定理を考えると

0)(C

dzaz

zf

0)()(10 CC

dzaz

zfdzaz

zf

10

)()(CC

dzaz

zfdzaz

zf 

この式の重要な事は、全経路Cとほぼ同等の大きさを持つ経路 0C の周回積分と 1C での結果が等しいと言うことである。 1C について考えてみよう。

1C は aを中心とし、半径 の円であるから

ieaz と書き表すことが出来る。 deidz i

より積分は

2

0

2

01

)( daefideeiaefdz

azzf i

i

ii

C

ここで 0とすると )(afaef iとなるので

)(2)(2

0

2

0

afidafidaefi i  

つまり領域Sに含まれる全ての点において経路Cとの関係が存在し

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C

dz

fi

zf )(21)(

と出来る。これを Cauchyの積分公式という。 ※幾つかの複素関数の参考書を調べるとこの辺りで Lauent(ローラン)展開の説明が出てくる。この「複素積分」では複素積分を中心にするため、Lauent展開については最後に載せる。 ・Goursat(グルサ)の公式 この公式は Cauchyの積分公式の拡張である。 Cauchyの積分公式を zについて微分してみると、

C

dz

fi

zfdzd

2)()(

21)( L,

)()(

22)( 32

2

  C

dz

fi

zfdzd

と続いていくので結局n回微分すると

C nn

n

dz

fi

nzfdzd

1)()(

2!)(

と出来る。この式を Goursatの公式と言う。 Goursatの公式は領域Sにて解析的であることを主張している。一階微分可能な関数 )(zfは n階微分可能でかつ n階微分の )(zf もまた領域Sにて解析的であること意味する。 ・留数定理 今まで示してきた定理、公式を用いて「留数定理」なるものを明らかにしよう。ここまで

の知識は本当に必要な物だけである事に注意したい。厳密に正しいとするにはもっと詳細

について語らなければならない。しかしながらそれらは数学の参考書に譲るとする。 Cauchyの積分公式と同様な経路を考える。 点 aの周りを半径 で避けるように経路 1C を考え、領域Sを作る経路を 0C とすると、全経路Cは 10 CCC と出来た。このような領域Sにて関数 )(zf の積分

10)()()(

CCCdzzfdzzfdzzf を考える。

複素関数 )(zf は領域Sにて正則とする。 先と同様に結果(Cauchyの積分定理より)

10)()(

CCdzzfdzzf となるので経路 1C に注目して積分を考える。

ieaz と出来る事と Cauchyの積分公式の形を踏まえて次の変形してみる。

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11)()(

CCdz

azazzfdzzf

2

0

deie

azaef ii

i

2

0

)( dazaefi i

0とすると )(afaef iとなる。この極限は az でもある。

すなわち関数 )(zf は領域Sにて正則であるからこの極限で収束する。 Aazzf ))(( 極限の結果ある値Aに至ったとしよう。そうするとこの積分は

1

)(C

dzzf2

0

)( dazaefi i AiAdi 22

0

と出来る。この値 Aを留数(residue)と呼ぶ。点 aは領域Sより留めた点であり、除かれた点である。特に関数 )(zf において点 aが特異点であり解析的では無いならば除外したい。 留数Aを ]),([ azfesRA と書くことにする。 以上をまとめると

1

)(C

dzzf ]),([2))((lim2 azfesRiazzfiaz

である。

まだ留数の正体がわからないので意味が無い。留数の正体に迫ってみよう。 留数 ]),([ azfesRA が存在する、つまり

AazfesRazzfaz

]),([))((lim

と値をもつ場合、関数 )(zf は一位の極 aを持つと言う。一般に aがm位の極を持つ場合

AazfesRazzf m

az]),([))((lim

という意味である。 ここでm位の極を持つ関数 )(zf について考えたいので

mazzgzf

)()()( )(zg :領域Sにて正則な関数

についての留数を考えよう。 Goursatの公式より

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C mm

m

dz

gi

mzgdzd

)()(

2)!1()(1

1

C

m

m daaz

ag

im 1

)()(

2)!1(

11 1)(11

aaza

azazQ

)()!1(

12 1

1

zgdzd

mi m

m

C

m

m daaz

ag 1

)()(

するとここで )(zf を代入すると

m

m

m

azzfdzd

mi ))((

)!1(12

C

m

daazf 1)(

極限 az を考えると 0aaz

より

C

df )( mm

m

azazzf

dzd

mi ))((lim

)!1(12 1

1

よって

C

dzzf )( mm

m

azazzf

dzd

mi ))((lim

)!1(12 1

1

]),([2 azfesiR

となる。留数は

]),([ azfesR mm

m

azazzf

dzd

m))((lim

)!1(1

1

1

で表される。

結局、留数定理は 『積分を微分と極限で表現できる』という計算手法なのである。 ・複数の極を持つ留数定理 特異点が n個あることを考えると

Cdzzf )(

n

kkazfesRi ]),([2

と書ける。これは右図と Cauchyの積分定理より 明らかであろう。省略して書く。

LL210210

0CCCCCCC        

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・複素積分(例題) さて留数定理の原理を見てきたが、もちろんこのままでは使い物にならない。例題を解き

使い方を習得しよう。 ・基本例題1(留数定理を用いた複素積分)

(1) 12x

dx (2) ix

dx (3) 0

3 1xdx (4) dx

ee

x

ax

1

)10( a (解 1-1)

(1) 12x

dx

まず

1

1)( 2zzf と定義する。

)(zf は iz において発散するので解析的ではない。

特異点として考える。右図のような経路を考え、次の

周回積分を考える。

R

R CCC

dzzfdzzfx

dxdzzf21

2 )()(1

)( 0

となる。 2C で留数を考えると

]),([2)(2

izfesiRdzzfC

izi lim2 )(

))((1 iz

iziz

次に 1C について考える。 ieRz とすると

iRiedz より またR とすれば

022

1 1)( d

eRRiedzzf i

i

C

0 

よって

22

22 )(

10)(

1 CC

dzzfx

dxdzzfx

dx    

である。

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(解 1-2)

(2) ix

dx

まず

iz

zf 1)( と定義する。

)(zf は特異点 iz を持つ。右図のような経路を考え、

次の周回積分を考える。

R

R CCC

dzzfdzzfix

dxdzzf21

)()()( 0

となる。 2C で留数を考えると

]),([2)(2

izfesiRdzzfC

izi lim2 iiz

iz2)(1

次に 1C について考える。

ieRz とすると iRiedz より またR とすれば

001

)( dR

ieied

ieRRiedzzf

i

i

i

i

C

idi0

よって

1221

)()()()(CCCC

dzzfdzzfix

dxdzzfdzzfix

dx     

iii2 である。 ※(1)の問題では自分で与えた経路の寄与が積分に現われなかったが、この問題では寄与があった。付け足した経路の評価は必ずしなければならないことに注意しよう。

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(解 1-3)

(3) Ix

dx

03 1

まず

1

1)( 3zzf と定義する。

)(zf の特異点は3

exp,3

exp,1 iiz    を持つ。

右図のような経路を考え、次の周回積分を考える。

0)()()(1

)(30 21

3C

R

CCC

dzzfdzzfdzzfx

dxdzzf

3C で留数を考えると、

]),([2)( 3

3

i

C

ezfesiRdzzf33

3

3 )1(lim2

ii

i

iz ezezz

ezi

333 1

2iii eee

i

13

23ie

次に 1C と 2C の寄与を考えよう。 R の極限も考えると

01

)(32

033

1

deRRiedzzf i

i

C

Iedxx

edxx

edxxedzzf ii

Ri

R

i

C

32

03

32

03

320

3

32

2 11

11

1)(

以上より

303

32

30 23 )(

11)()(0

1 C

i

CC

dzzfx

dxedzzfdzzfx

dx    

よって

33

210

3xdx

   となる。

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(解 1-4)

(4) Idxe

ex

xa

1 但し )10( a

まず z

za

eezf

1)( と定義する。

特異点は L   ,3, iiz と幾つも存在する。 右図のような経路を考え、次の周回積分を考える。

C

dzzf )( dxe

eR

Rx

xa

1 2

)(C

dzzf3

)(C

dzzf4

)(C

dzzf5

)(C

dzzf 0

これから簡単のために

dxe

eR

Rx

xa

1 11

)( IdzzfC

のように書くとする。ちなみにR にて II1

さて各々の経路の寄与を調べてみる。

i

Rz

Rza

dze

eI2

0

)(

2 10

0

2

)(

4 1iRz

Rza

dze

eI 0 (どちらも 1a より)

R

Riz

iza

dze

eI 2

)2(

3 1

R

Rz

azai

dzeee

1

2

12 Ie ai Ie ai2

結局

5

)(C

dzzf IeIIII ai24321 1 となるので 5C での留数を考える。

)(1

lim]),([ ize

eizfesR z

za

iz

ze を i 近傍について Taylor展開をすると )(1)( izeizeee iiiz L )(1 izee iz  

であるから、 iz の極限にて ai

z

za

izeiz

eeizfesR )(

1lim]),([

以上より

5

)(C

dzzf aiai eiIe 21 2

]sin[]sin[2

22aai

iee

iI aiai  となる。

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・基本例題2(少々技術のいる複素積分)

(1) 2

0 ]cos[ axdx

但し 1a

(2) ax

dx]sin[

但し 1a

(3)0

]sin[ dxx

x (4)0

2 ]cos[xdx と

0

2 ]sin[ xdx

(解 2-1)

(1) 2

0 ]cos[ axdx

1a

まず ]cos[x を書き換えることを考える。 ]cos[x の定義式

2

]cos[ixix eex であるから

ixez とおけば

z

zeexixix 1

21

2]cos[ izdxdxiedz ix

より

Iazz

dziiz

dzazax

dx

CC z 12

11

2

0 122

22

]cos[ とかける。ここで、

12

1)( 2 azzzf と定義する。 )(zf は 12aaz が特異点である。

12aa 12aa と置く。又 1a より

1 1 0, であるから

右図のような経路が考えられ、次の周回積分を考える。

0)()()(2121 CCCC

dzzfdzzfdzzf

留数は について考えればよい。

12

11))((

lim),(2azz

zzfesRz

より

1

2),(Re2212

2]cos[ 2

12

2

0 azfsi

iazzdz

iI

axdx

C

となる。

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(解 2-2)

(2) ax

dx]sin[

1a

(1)と同様にして考える。 ixez とおき、

z

zii

eexixix 1

21

2]sin[ izdxdxiedz ix

より

Iazz

dzizdz

azi

axdx

CC z 12

11 12

22

2]sin[

121)( 2 azz

zf と定義する。特異点は 12aaz 1a より

1 1 0, 0であるから

右図のような経路が考えられ、次の周回積分を考える。

0)()()(2121 CCCC

dzzfdzzfdzzf

留数は について考えればよい。

12

11))((

lim),(2azz

zzfesRz

より

1

2),(Re2212

2]sin[ 2

12

a

izfsiazz

dzIax

dx

C

となる。

※例題(1),(2)らは共に特異点を二つ持つが条件より一方を選択し、経路を積分している。 またこれらの積分は基本例題1とは異なり、積分路がそのまま留数の計算となっている。 どちらの例題にしても経路のとり方は重要である。

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(解 2-3)

(3) 0

]sin[ dxx

x

xx]sin[の特異点は 0x のときである。

0x を積分路から除くために右図のような積分路

を考える。極限 R,0  のとき目的の積分路が

表現できそうである。

]sin[]cos[ xx  などが入ってきた場合は、まず

ixe の形を考えてみることである。

2

]cos[ixix eex

ieex

ixix

2]sin[ の形を狙うためである。

次の積分を考える。Cauchyの積分定理より経路C RRCC ,,21 において

0C

iz

dzz

e (経路Cにおいて特異点 0x が除かれているため)

経路を明らかにして書き直せば、

021 R

ix

C

iz

C

izR ix

C

iz

dxx

edzz

edzz

edxx

edzz

e

となる。 ,R の積分を xx と変数変換してやれば一項目とあわせて、

02121 C

iz

C

izR ixixR ix

C

iz

C

izR ix

dzz

edzz

edxxeedx

xedz

zedz

zedx

xe

とできる。さらに ]sin[ x の形を意識すれば、

21

]sin[2C

iz

C

izRR ixix

dzz

edzz

edxx

xidxxee

改めてirez と置いてやると

diiridirere

iredzz

e ii

iiz

]sin[]cos[expexp

このようになることから 21,CC について R,0  の積分を考えてみよう。

01

ddzC

0

2

ddzC

に注意する。

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RC :1 について

00

]sin[]cos[exp]sin[]cos[exp diiRdiiRi

0

]sin[exp dR2

0

]sin[exp2 dR2

0

2exp2 dR

 ReR

1 0 R

範囲 2,0 にて2]sin[

右図を見ればわかると思う。 2exp]sin[exp RR

0:2C について

ididiii0

0

0

]sin[]cos[exp

以上より

20

21]sin[]sin[2

021

ii

dxx

xdzz

edzz

edxx

xiC

iz

C

izR

となる。 ※※ 当然の事だが複素積分が全て留数を利用した積分ではない。 R での評価で用いた方法は「Jordan の補助定理」と呼ばれるものである。一般の形を後に記しておこう。途中でも注意したが ]sin[]cos[ xx  などが入ってきた場合は、まず

ixeの形で複素積分を利用することを考える。例題(4)も同様な部分が現われるので意識しよう。

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(解 2-4)

(4) 0

2 ]cos[xdx と

0

2 ]sin[ xdx

]exp[]sin[]cos[ 222 ixxix の関係も考えて 複素関数

]exp[)( 2izzf と定義し右図のような経路を考える。 この経路においてこの関数はどこも正則である。 従って Cauchyの積分定理より

0]exp[)( 2

CC

dzizdzzf である。

経路の詳細を考えて、積分を考えてみると

4

0

2

0

2 ]exp[]2exp[exp]exp[)( iiiRiRdixdxdzzfR

C

04

exp2

expexp0

2

R

iiirdr

である。先に示したように ]exp[ 2ix の形を変え、第 2項目を例題 2-(3)と同様に考えると、 ]2sin[]2cos[exp]2exp[exp 22 iiRiiR

4

0

24

0

2 ]2sin[exp]exp[]2sin[]2cos[exp RdRiiRiRd

2

0

2 2exp2

RdR 2Q

0]exp[14

2     R

RR

と評価できる。よってこの積分は

0]exp[4

exp]exp[)(0

2

0

2RR

C

rdriixdxdzzf を計算すればよい。

初等積分 Gauss積分は 2

]exp[0

2xdx であるから。

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RR

rdriixdx0

2

0

2 ]exp[22

22]exp[

22

12

1]exp[2

12

1]sin[]cos[0

2

0

22 irdrixixdxR

この結果より実部と虚部に分けて表せば、

22

1]cos[0

2xdx 22

1]sin[0

2xdx

0

2 ]cos[xdx =

0

2 ]sin[ xdx がわかる。

※実部と虚部に分けて積分の値を示すことが出来るのも、複素積分ならではである。 さて例題(2-3),(2-4)で出てきた Jordanの補助定理をまとめておこう。 ・Jordanの補助定理

z にて関数 )(zf が考える領域にて一様に

0)(zf であるとき 右図のような経路の半円部分での積分

0)(]exp[R

CR

R

zfiazdzI

である。ただし aは正の実数とする。 (証明)

]exp[iRz とおくと

0

)()]sin(cosexp[)(]exp[ ii

CR eiReRfiiaRdzfiazdzI

R

条件よりRが非常に大きいと )(zf は任意の実数 にて f と評価されるから

2

00

]sinexp[2]sinexp[ RadRaRdRI R

となる。ここからは例題と同様に

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範囲 2,0 において2]sin[

2exp]sin[exp RR

とできるから、

012exp2]sinexp[22

0

2

0R

aRR e

aaRdRaRdRI

と一般の形で表現できた。途中でcos の項が消えていたのでその理由を示すと 右図は ]cos[]exp[Re),( xeizyxf y を };2,2{ x };5,0{ y の範囲で描いた物である。 小さくなっていくのがわかるように描いた範囲は

),(;1,0 yxf とした。 確かにすぐに小さくなる事がわかる。

・基本例題3 留数定理の説明で極の位数と数について述べていたのでそれぞれの例題を示しておく。

(1) 222 axdx (2)

06 1xdx

(解 3-1)

(2) 222 axdx

まず 222

1)(az

zf と定義する。

)(zf は aiz で特異点を持つ。この特異点は 2 位の極であることに注意する。右図のような経路を考え、次

の周回積分を考える。

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R

R CCC

dzzfdzzfax

dxdzzf21

222)()()( 0

となる。 2C で留数を考えると

]exp[iRz とおくとそれぞれの経路の積分は

0)(0

22221

RiC

daeR

Ridzzf (Jordanの補助定理より)

22

2222

)(lim2)(1lim2),(2)( aizdzdiaiz

azdzdiaizfesiRdzzf

aizaizC

333 242

)(2lim2

aiai

aizi

aiz

以上より 3222 2aaxdx

(解 3-2)

(2) 0

6 1xdx

まず1

1)( 6zzf と定義する。

)(zf には

6,5,4,3,2,1)12(6

exp mmiz   

の 6個の特異点がある。 右図のような経路を考えると半円に含まれる 特異点は 3個ある。

0)()()()()()(4321 CCCC

R

RC

dzzfdzzfdzzfdzzfdzzfdzzf

の積分を考える。 まず 1C は ]exp[iRz とすると

1]6exp[

11

1)( 66 iRzzf 01

1]6exp[1)( 66 RRiR

zf

となるから、

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0)(1C

dzzf ( R にて)

次に 2C 、 3C 、 4C について各々の留数を考えると

65exp

61

61lim

11lim

6exp),( 5

]6

exp[

66

]6

exp[2

iz

ezz

izfesRiz

i

izC

25exp

61

61lim

11lim

2exp),( 5

]2

exp[

26

]2

exp[3

iz

ezz

izfesRiz

i

izC

625exp

61

61lim

11lim

65exp),( 5

]6

5exp[

65

6]

65exp[4

iz

ezz

izfesRiz

i

izC

である。※ 以上より

432

)()()()(CCC

dzzfdzzfdzzfdzzf

625exp

25exp

65exp

612 iiii 

61exp

21exp

65exp

3iiii

 

32)2(

32230

223

3iiiiii

 

となる。 ※L’Hospital(ロピタル)の公式を用いている。 次はちょっとした応用例を挙げておく。実際に出くわすであろう例題である。

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・応用例 次の関数をフーリエ逆変換せよ。

220

1)(k

ekv

e:電荷 0:真空誘電率 0 この関数が含む変数から察するにある物理の意味を持つ関数である事は分かるであろう。 計算結果をよく吟味したい。 (解) フーリエ逆変換をすると

220

33 )2(1)(

)2(1)(

kekdeekkdr

rkirki

vv

vv vvvv

0 0

2

022

cos2

03 sin

)2(1

keddkdke ikr

0

1

122

2

02)2(

1k

edkdke ikr

022

02

)(1)2(

1k

eekdkir

e ikrikr

積分の部分を二つに分け、それぞれで複素積分を考えると

221 )(z

ezzfizr

222 )(z

ezzfizr

特異点: iz

と )(),( 21 zfzf を定義する。 先ず

221 )(z

ezzfizr

特異点: iz

について右図のような経路の複素積分を考える。

0)()()()(2

11

111CC

R

RC

dzzfdzzfdzzfdzzf

R において 1C の寄与は無い。よって

r

izr

eiizfesRiz

ezdzzfdz ),(2)( 1221

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222 )(z

ezzfizr

特異点: iz

について右図のような経路の複素積分を考える。

0)()()()(2

21

222CC

R

RC

dzzfdzzfdzzfdzzf

これもR において 1C の寄与は無い。よって

r

izr

eiizfesRiz

ezdzzfdzzfdz ),(2)()( 12222

)(),( 21 zfzf は共に偶関数である事に気付けば目的の積分は出来て、結局

)(rv

022

02

)(1)2(

1k

eekdkir

e ikrikr

02

01

02 )()(

211

)2(1 kfdkkfdk

ire

rr eieiir

e211

)2(1

02

rre ]exp[

41

0

re

00 4

1

となる。これはいわゆる Yukawa型の形をした Coulomb Potentialである。 式のように 0の極限にてよく知る形になる。実は r

1 の形を持つ Coulomb Potentialはフーリエ変換をしようとすると発散してしまい、 が無いと上手く出来ないのである。 Yukawa型の形での は Potentialが有効である距離の逆数の意味を持つ。即ち 0はCoulomb Potentialが無限遠まで到達する事を示している。(実際に図にしてみると下図) 原子核の立場でちょっと強く言いたい事と

してはこの には力を媒介する粒子質量の

逆数を含む事である。つまり Coulomb Potentialの媒介粒子の質量は… 私としては物理をしていてとても感動した

事の一つである。 (実は天下り的だったりする)

基本例題 1,2,3,応用例について見てきたが、まだ十分ではない。 積分路上に特異点がある場合は考えていない。解決する手法として「Cauchyの主値積分」という考え方がある。この手法の紹介をし、さらに虚数部分と実数部分の関係を表現した

変換、Kramaers‐Kronig(クラマース‐クローニッヒ)変換を紹介する。(K‐K変換)

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・Cauchyの主値積分 今までは特異点周りに積分路を考え、留数定理によって積分値を求めていた。 実数軸上に特異点がある場合を考えてみよう。この条件を持つ積分

dxax

xf )( a:実数

について考えよう。まず複素平面上に

az

zfzF )()(

を定義する。 )(zf は実軸上で正則であるとし、 )(zF が az にて極を持つものとする。

また )(zf は無限遠方 z にて

Mzfz k )( Mk, :定数 ……(※)

が収束するものとする。 以上を踏まえて右図の積分路を考える。 特異点 a の上方を周るような積分路 2Cを取る。また 2C の半径を とする。 Cauchyの積分定理よりこの経路では

0)(C

dzzF

さらに詳しく経路を考えると

0)()()()()(12 CC

R

a

a

RC

dzzFdzzFdxax

xfdxax

xfdzzF

となる。今までは特異点が全積分路の内側に極が存在し、留数定理が扱えたがこの場合は

異なる。(※)式を利用して経路 1C の積分を考えてみる。 ieRz とおけば、

MRaR

RdeRfaR

RdeiRaeR

eRfdzaz

zfdzzF kii

i

i

CC 0011

)()()()(

となるから、R において経路 1C の寄与は無くなる。 つぎに経路 2C について考える。

ieaz とおけば、

)()()()()(0

00

22

afideafideie

eafdzaz

zfdzzF iii

i

CC

従ってR と 0の極限においてこの積分は次のように書ける。

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0)()()()()(12 CC

R

a

a

RC

dzzFdzzFdxax

xfdxax

xfdzzF

0)()()(lim0

afidxax

xfdxax

xf R

a

a

RR

ここで出てきた極限

dxax

xfPdxax

xfdxax

xf R

a

a

RR

)()()(lim0

と定義しこれを Cauchyの主値積分と呼ぶ。以上より

dxax

xfPi

af )(1)(

の関係式が現われる。この両辺の実部と虚部をそれぞれ表してみると※

dxaxxfPaf )(Im1)(Re dx

axxfPaf )(Re1)(Im

これら実部と虚部の関係式を K-K変換(又は分散公式)という。 ※実部虚部は下のように計算した。

dxax

xfxfiPdxax

xfixfPi

af

dxax

xfxfiPdxax

xfixfPi

af

)(Im)(Re1Im)(Im)(Re1Im)(Im

)(Im)(Re1Re)(Im)(Re1Re)(Re

さて K-K変換まで紹介したが、主値積分に至る計算方法の経路の取り方がまだあるので紹介したいと思う。紹介するのはこの経路のとり方の計算が時々出てくるためである。 ・Cauchyの主値積分(別経路 1) 先と同様な条件で右図の積分路を考え

る。特異点 aの下方を周るような積分路

2C を取る。また 2C の半径を とする。 Cauchyの積分定理より

0)(C

dzzF

となるのは同じだが、

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この経路を詳しく見てみると特異点 aを含んでいるので留数部分が入っていて

0),(2)()()()()(12

azFesiRdzzFdzzFdxax

xfdxax

xfdzzFCC

R

a

a

RC

経路 1C の寄与は前述と同様にしてR にてなくなる。経路 2C も同様について考えると

ieaz とおいて、(範囲は 2 )

)()()()()(0

22

22

afideafideie

eafdzaz

zfdzzF iii

i

CC

留数の部分は

)(2)()(lim2),(2 aifaxax

zfiazFesiRaz

であるから、全てまとめると

0)(2)()()( aifafidxax

xfPdzzFC

→ dxax

xfPi

af )(1)(

結局同じ結果を与えた。これは初めの経路の結果をより確かにするため紹介した。 次は時々出てくる計算を意識した経路で計算する。 ・Cauchyの主値積分(別経路 2) 先と同様な条件で右図の様な、特異点 aの上方 i だけ通過するような積分路 Cを考える。 Cauchyの積分定理より

0)(C

dzzF

詳しく見てみる。

この経路の結果は 0で今まで見てきた積分と同じになるので、

0)()()( afidxax

xfPdzzFC

である。左辺の詳細を考えると

0)()()()(lim)(0

afidxax

xfPdzzFdxiax

xfdzzFC 半円

ixz としている。ここでR とすると左辺の半円部分は先述同様なくなるので、

結果、

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)()()(lim0

afidxax

xfPdxiax

xf である。

ここでδ関数を用いてもう少し変形させてみると、

dxaxxfidxax

xfPafidxax

xfPdxiax

xf )()()()()()(lim0

と出来るので、次のように記号的に表現することが出来る。

)(1lim0

axiax

Piax

今は特異点の上を通過したが下も同様に考えることが出来て、 右図の様な、特異点 aの下方 i だけ通過するような積分路Cを考える。 積分

0)(C

dzzF

上方の時と同様にR にし、半円部分

の寄与をなくし、留数を考えると

)()(),(2)(lim)(0

afidxax

xfPazFesiRdxiax

xfdzzFC

)()()(lim0

afidxax

xfPdxiax

xf

ixz としている。先と同様に記号的に表した結果を合わせると

)(1lim0

axiax

Piax

m

となる。 さて、この結果が何を意味するのかわからないと思うが、量子力学における散乱問題で

Green 関数と呼ばれるものが出てくる。そのときにこの計算を思い出して貰えればよい。又、佐藤の超関数と呼ばれるものも出てくるらしいが、そういうものがあるということだ

け知っていれば使うときに調べればよい。(参考図書の複素関数論を参照してください) さて複素空間では多価関数の表現としてリーマン面を考える方法がある。次はそれについ

て述べていくことにしよう。

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・リーマン面と分岐 ・多価関数 複素空間のみではなく実関数 )(xf とは何を意味するのか、少し考えてみよう。例えば )(xfy という式があるとする。これはある xに対しある一つの yが決定することを意味し、その時 f は x平面から y平面への写像(mapping)を意味している。 実数空間では xと yは普通一対一対応の関数で写像される。この関数を一価関数と呼ぶ。 複素空間に広げた場合、 )(zfw とかけるとしても、 zとwが一対一対応に写像されるとは限らない。 zに対しwが複数対応する場合その写像、関数 f は多価関数と呼ばれる。例えば次の関数は多価関数である。

21

)( zzf

この関数を満たす複素数をwとしよう。そうすると

2wz を満たし、 ]exp[irz とおき、wを ]exp[iaw とおいて求めてみると、 ]exp[]2exp[22 iriaw より

ra … ① ]exp[]2exp[ ii … ②

であるが、①式は良いとしても②式は問題がある。②式を満たす条件は

n22 n2

n:整数

となり解は無数に存在するのである。2 回転すれば同じ複素数を表すが、 回転では異な

る複素数を表す。従ってこの zは )(zf に代入すると次の二つのwになる可能性がある。

2

exp1 irw 2

exp2 irw

このように一つの入力から出力が二つあるので )(zf を二価関数と呼ぶ。 ※比較のために

2)( zzf について求めると 2zw ]exp[]2exp[22 iairz

2

exp2

exp iaoriaz    

どちらの zを )(zf に代入しても一つのwになる。 このような性質のため多価関数は今まで扱ったようには出来ない。複数ある出力に対し何

の指定もないので、このままでは今までのような解析的な関数ではないのである。

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・リーマン面と分岐 さて多価関数を一価関数の様に扱うためにはどうすればよいか、そのために考え出された

概念がリーマン面である。 先の例の

21

)( zzf

についてリーマン面を考えることにする。 ある zが上記の )(zf を満たすとし、 右の図のように偏角( zarg )を 2 回転したとする。当然、

元の zになるべきだが先の結果からもわかるように、 )(zfは二つの結果を持つ。つまりこの zが 2

1w なのか22w なのか

区別出来ない。 右図の様に 2面で構成される複素面を考える。 このような多面の複素面をリーマン面と呼ぶ。 リーマン面の約束事は偏角が 2 回転した場合

1 面から 2 面へと移るとし、偏角は2 増加さ

せ別のものとして考える。さらに 2 回転した

場合 2面から 1面へと移ると約束しよう。 こうする事で 1w と 2w を区別するのである。 そうして多価関数

21

)( zzf

は一価関数として扱えるのである。 もう一つの用語「分岐」について述べておく。

)(zf には 1w と 2w の二つの結果がある。 1w 、 2w を )(zf の分岐(分枝)と呼び、ある点 0z を一周したとき )(zf が元に戻らないときこの 0z を分岐点と呼ぶ。 上記の例では原点が分岐点となる。 また上の図のように 1面から 2面に移るときの境界線を分岐線、カットと呼ぶ。 分岐線の引き方について一つ例を考えてみよう。

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・分岐線の例

212 )1()( zzf を一意的な関数にするためのカットを考えよう。

(解)

wzzf 212 )1()(

とする。wは 2w の様子を見るといくつ現われるだろうか )1(1 222 zzw

22 11 ziorzw     

と 4つも現われる。これらを一意的に扱うためにはどんなカットを考えればよいだろうか? 次に分岐線がある場合の複素積分について考えよう。 ・分岐線がある複素積分

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・Lauent(ローラン)展開 今まで書いてきた事は常に「複素積分」を実行するための話であった。よく見る参考書では

留数定理を行う前に特異点を除外するための方法として Lauent展開を紹介している。複素積分をする事だけを中心としたので書かないで済ましてきた。元々複素積分は複素平面上

で関数を解析する、「複素関数解析」の一部に過ぎない。Lauent展開は複素解析をするための最も基本となる展開であろう。複素解析入門と言う事で説明していこうと思う。 ・複素関数の Taylor展開 実数平面上で関数が任意の点で解析的であるとき Taylor展開は可能である。さて複素平面上で同じ事が言えるのであろうか?確かめてみよう。 ある積分路Cにおいて解析的な複素関数 )(zf は Cauchyの積分公式によって

C

dz

fi

zf )(21)( と表された。

経路Cによって囲まれた領域内( )(zf はこの中で正則)の点 aの周りでTaylor展開を考える。 )(zf を点 aの周りで Taylor 展開すると言う事は az の

冪乗で展開することであるから、Cauchy の積分公式から)(zf の冪級数表現を考える。(結構技巧的だと思う)

まず az を出す事を考えよう。

CaazC

da

fi

dz

fi

zf1

)(21)(

21)(

※確かにこうすれば az の項は出てくる。

zazaa aaz

111

11

ここで注意するのは zと の違いである。上の図で見るように経路Cに沿って積分する複素変数が であり、経路Cによって囲まれた領域内の )(zf の従属変数が zである。zが定義されている部分は経路Cよりも内側つまり よりも内側であるということである。これ

らから点 aとの距離を zと について考えれば式中の分数部分が次の様に書ける事がわか

る。距離の不等式から始まって

1aaz

01

1n

n

aaz a

az

)1(

111 2

0

         

LQ n

n

と出来るので結局 )(zf は、

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C

aazC

da

fi

dz

fi

zf1

)(21)(

21)(

Cn

n

daaz

af

i 0

)(21

C nn

n da

fi

az 10

)(21

ここでさらに Goursat(グルサ)の公式より ※Goursatの公式も正則な領域で定義されたものである。

C nn

n

dz

fi

nzfdzd

1)()(

2!)( )(

!1)(

!1

)()(

21 )(

1 afn

afdzd

nd

af

in

n

n

C n

となるから

)(zf0

)(

!)(

n

nn

azn

af

となり、まさに実数平面と同様な Taylor展開の形に出来た。 ・Lauent展開 先の Taylor展開と同様な事を考えるが、今度は経路Cによって囲まれた領域内に特異点がある場合について考える。 領域内の特異点以外の場所では正則なので Taylor展開が可能である。特異点付近の展開については Taylor展開とは別の展開が必要である。それが Lauent展開である。 特異点を考慮して Cauchyの積分公式を書くと

1

)(21)(

21)(

21)(

CCoC

dz

fi

dz

fi

dz

fi

zf

と出来る。 ここでもまた注意するのは zと の違いである。今度は経路によって特異点と z , との距

離関係が異なる。経路 0C (大きい外側の囲い)上では zが定義されている部分は よりも内

側である。経路 1C (特異点周り)上では zが定義されている部分は よりも外側である。こ

れらを踏まえて距離の大小関係は

L  1aaz 0C 上 L  1

aza 1C 上

となるから Taylor展開と同様 Cauchyの積分公式を上の関係を意識して書き換える。

1

)(21)(

21)(

CCo

dz

fi

dz

fi

zfCo

dz

fi

)(21

1

)(21

C

dzf

i

Co a

az

da

fi 1

)(21

1 1)(

21

C aza

daz

fi

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それぞれの項で級数の形に書き換える。

)(zfCo a

az

da

fi 1

)(21

1 1)(

21

C aza

daz

fi

Co n

n

daaz

af

i 0

)(21

1 0

)(21

C n

n

daza

azf

i

Con

n

n da

fi

az 10 )(

)(21)(

10

)1( ))((21

C

n

n

n dafi

az

ここで二項目の級数を少し変える。

1

1

110

)1( ))((21))((

21

C

n

n

n

C

n

n

n dafi

azdafi

az

さらにそれぞれの級数についている積分の部分はnに依存した係数として、

Conn d

af

iC 1)(

)(21

1

))((21

C

nn daf

iC L,2,1,0n

※ nC は Taylor展開の係数の様に書けるがあえてしない。 とおくと、結局

Con

n

n da

fi

azzf 10 )(

)(21)()(

1

1

1

))((21

C

n

n

n dafi

az

10

)()()(n

nn

n

nn azCazCzf と出来る。

これを Lauent展開という。(二項を別々に書いてあるのは 0C と 1C で区別している為) Cauchyの積分公式を Cauchyの積分定理より説明したときに次の事がわかっていた。

Cdz

azzf )( 0)()(

10 CCdz

azzfdz

azzf

10

)()(CC

dzaz

zfdzaz

zf 

これは全経路Cとほぼ同等の大きさを持つ経路 0C の周回積分と 1C での結果が等しいということであり、経路のとり方がこの結果に変化を与えないという事である。そこで今、経

路 0C と 1C が一致するような経路C を考えることが出来るので、Lauent展開は

n

nn azCzf )()(

Cnn d

af

iC 1)(

)(21

L,2,1,0n

と表現される。特に 1n とするとき

C

dfi

C )(21

1 留数 1

)(C

dzzf ]),([2 azfesiR (留数の所を参照)

となり、これは留数と同じ扱いが出来ることがわかる。確かに Lauent展開から留数を考える事が出来るが、具体的な値を出す物では無いので出さなかった。しかし複素解析には必

須な道具である。この他にも収束半径等の議論が必要な場合が出てくるかもしれないが、

前半部分で出した複素積分についてはそのような問題はないので安心して欲しい。