2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4部・複素関数論ダイジェスト / 第12回 複素関数・正則関数...

156
A. Asano, Kansai Univ. 2014年度秋学期 応用数学(解析) 浅野 晃 関西大学総合情報学部 第4部・複素関数論ダイジェスト 複素関数・正則関数 第12回

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

2014年度秋学期 応用数学(解析)

浅野 晃 関西大学総合情報学部

第4部・複素関数論ダイジェスト 複素関数・正則関数

第12回

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

いったい 何をやろうというのか

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はこの考えを使って,実関数の積分

! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。この考えを使って,実関数の積分

! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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x

数直線をy

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線をy

複素平面に拡張

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

こういう周C上で

C

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

こういう周C上で

C

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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を計算すると

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな積分はまっとうには計算できません。

そこで

この考えを使って,実関数の積分! ∞

−∞

1

x4 + 1dxを求めることを考えます。そのために,経路Cを各

辺に分けて,それぞれの辺での 1

z4 + 1の積分が,実軸上以外では r → 0のとき 0になることを示しま

す。これには,実軸以外の辺上では |z| ! rであることを用います。

例えば,長方形の右側の立辺では""""! r+ri

r

1

z4 + 1dz

"""" "! r+ri

r

1

|z|4 + 1d|z|

"! r

0

1

r4 + 1dy =

r

r4 + 1

(29)

で,r → 0のとき 0になります。他の辺でも同様で,! ∞

−∞

1

x4 + 1dx =

π√2が得られます。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2013 年度春学期) 第13回 (2013. 7. 9) http://racco.mikeneko.jp/  7/7 ページ

x

数直線を

実部

y 虚部

複素平面に拡張 z = x + yi

こういう周C上で

C

b1

C

C1

b2

C2

b3

C3

図 3: 有限個の孤立特異点を含む場合

y

0

–1+i

rx

√21+i

√2

–r

r+rir–ri

C

図 4: 留数と定積分

図 4の経路 C の内部に入っている極は,1 + i√2,−1 + i√

2だけです。ここで,(23)式より

Res(1 + i√

2; f) = lim

z→ 1+i√2

(z − 1 + i√2)f(z)

=1

(1+i√2− −1+i√

2)(1+i√

2− −1−i√

2)(−1−i√

2− 1−i√

2)

=−1− i

4√2

(27)

となり,同様にRes(−1 + i√

2; f) =

1− i

4√2となります。

よって,(25)式より,

1

2πi

!

Cf(z)dz = Res(

1 + i√2; f) + Res(

−1 + i√2

; f) = − i

2√2

(28)

で,すなわち!

C

1

z4 + 1dz =

π√2が得られます。

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を計算すると

上の積分も求まる

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

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niv.

複素数と複素関数複素数 z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

( x, y は実数,   )

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数 z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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( x, y は実数,   )

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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, Kan

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niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素平面

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複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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( x, y は実数,   )

複素平面

x

y

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A. A

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niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素平面

x

y

・z = x + yi

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A. A

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複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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( x, y は実数,   )

複素平面

x

y

・z = x + yi

x

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複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素平面

x

y

・z = x + yi

x

y

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複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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( x, y は実数,   )

複素平面

実軸x

y虚軸

・z = x + yi

x

y

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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( x, y は実数,   )

複素平面

実軸x

y虚軸

・z = x + yi

x

y

r

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

( x, y は実数,   )

複素平面

実軸x

y虚軸

・z = x + yi

x

y

r

θ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

( x, y は実数,   )

複素平面

実軸x

y虚軸

・z = x + yi

x

y

r

θ

r cosθ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

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niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

( x, y は実数,   )

複素平面

実軸x

y虚軸

・z = x + yi

x

y

r

θ

r cosθ

r sinθ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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( x, y は実数,   )

複素平面

実軸x

y虚軸

・z = x + yi

x

y

r

θ

r cosθ

r sinθ

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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sano

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複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

( x, y は実数,   )

複素平面

実軸x

y虚軸

・z = x + yi

x

y

r

θ

r cosθ

r sinθ

[絶対値]

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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( x, y は実数,   )

複素平面

実軸x

y虚軸

・z = x + yi

x

y

r

θ

r cosθ

r sinθ

[絶対値][偏角]

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数と複素関数

複素数で定義された関数が [複素関数]

複素数

虚部実部

z = x + yi

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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( x, y は実数,   )

複素平面

実軸x

y虚軸

・z = x + yi

x

y

r

θ

r cosθ

r sinθ

[絶対値][偏角]

複素数には大小はない 絶対値の大小がある

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

すると

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

すると

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

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今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

すると

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

すると

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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cosθ のテイラー展開

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

すると

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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cosθ のテイラー展開 sinθ のテイラー展開

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

すると

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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cosθ のテイラー展開 sinθ のテイラー展開

よって

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今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

すると

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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cosθ のテイラー展開 sinθ のテイラー展開

よって

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今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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のとき

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

すると

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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cosθ のテイラー展開 sinθ のテイラー展開

よって

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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のとき

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素数の指数関数実数の指数関数のテイラー展開

すると

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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複素数の指数関数は,テイラー展開で定義する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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cosθ のテイラー展開 sinθ のテイラー展開

よって

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今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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のとき

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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[オイラーの等式]

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

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, Kan

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複素関数と微分 正則関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の微分複素関数の微分の定義は,実関数と同様

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

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, Kan

sai U

niv.

複素関数の微分複素関数の微分の定義は,実関数と同様

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

ただし,変数は複素平面上にあるのが,大きな違い

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の微分複素関数の微分の定義は,実関数と同様

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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ただし,変数は複素平面上にあるのが,大きな違い

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の微分複素関数の微分の定義は,実関数と同様

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ複素関数 f(z) が,複素平面の領域 D で[正則]

ただし,変数は複素平面上にあるのが,大きな違い

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の微分複素関数の微分の定義は,実関数と同様

→ f(z) が D 内のどこでも微分可能

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ複素関数 f(z) が,複素平面の領域 D で[正則]

ただし,変数は複素平面上にあるのが,大きな違い

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の微分複素関数の微分の定義は,実関数と同様

→ f(z) が D 内のどこでも微分可能

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ複素関数 f(z) が,複素平面の領域 D で[正則]

ただし,変数は複素平面上にあるのが,大きな違い

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の微分複素関数の微分の定義は,実関数と同様

→ f(z) が D 内のどこでも微分可能

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ複素関数 f(z) が,複素平面の領域 D で[正則]

ただし,変数は複素平面上にあるのが,大きな違い

複素平面上で微分可能とは?

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2014年度秋学期 

A. A

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, Kan

sai U

niv.

複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

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niv.

複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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niv.

複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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sano

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niv.

複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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実軸

虚軸

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複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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実軸

虚軸

z

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複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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実軸

虚軸

z

z + Δz

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複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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実軸

虚軸

z

z + Δz

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複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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実軸

虚軸

z

z + Δz

どのように近づいても, 極限値は同じ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素平面上での「微分可能」複素関数 f(z) が,複素平面上のある点 z で微分可能とは

複素平面上で z + Δz が z にどのように近づいても, 極限値はひとつに定まる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第12回第4部・複素関数論ダイジェスト/ 複素関数・正則関数

今回と次回は,複素関数論の要点を説明します。ふつうなら半年間の講義で扱う内容を2回の講義で説明しますので,細かい内容は抜きにして,複素関数とその微積分について概略を説明します。詳しくは,参考文献を参照してください。

複素数と複素関数

複素数とは,どんな2次方程式でも必ず解が存在するように,i =√−1として x + yi(x, yは実数)

の形で表される数として導入されたものです。複素数に対して定義された関数が複素関数です。複素数 z = x+ yiについて,xを実部,yを虚部といいます。複素数や複素関数は,実部を横軸(実軸),虚部を縦軸(虚軸)であらわす複素平面(ガウス平面)で考えると理解しやすくなります(図 1)。

ひとつの複素数は,複素平面でのひとつの点で表されます。図 1に示すように,複素数 zは,原点からその点までの長さ rと,原点からその点に向かう直線と実軸とがなす角 θを使って,z = r(cos θ+ i sin θ)

と表すこともできます。rを複素数 zの絶対値,θを偏角といいます。なお,2つの複素数の間で,絶対値には大小関係がありますが,複素数そのものの間には大小関係はありません。

ところで,実数の指数関数 exをテイラー展開すると,

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+ · · ·+ xn

n!+ · · · (1)

となります。これにならって,複素数 zについて指数関数 ez を

ez = 1 +z

1!+

z2

2!+ · · ·+ zn

n!+ · · · (2)

と定義します。ここで z = iθとすると,

eiθ = 1 +(iθ)

1!+

(iθ)2

2!+ · · ·+ (iθ)n

n!+ · · ·

= (1− θ2

2!+

θ4

4!− · · · ) + i(

θ

1!− θ3

3!+ · · · )

(3)

で,上式の実部は cos θのテイラー展開,虚部は sin θのテイラー展開ですから,eiθ = cos θ + i sin θであることがわかります。よって,図 1の複素数は z = reiθ と表すことができます。また,θ = πのときcosπ = −1, sinπ = 0ですから,eiπ = −1,すなわち eiπ + 1 = 0というオイラーの等式が得られます。

複素関数と微分,正則関数

複素関数 f(z)の微分は,実関数の場合と同様に

f ′(z) =df

dz= lim

∆z→0

f(z +∆z)− f(z)

∆z(4)

と定義します。複素平面の領域Dで複素関数 f(z)が微分可能であることを,f(z)はDで正則であるといいます。

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実軸

虚軸

z

z + Δz

どのように近づいても, 極限値は同じ正則関数は, 「折り目のないぐにゃ ぐにゃの板」

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数を図示すると

MATLABで描画 参考:http://jp.mathworks.com/help/matlab/examples/functions-of-complex-variables.html

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数を図示すると

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

1−1

−0.5

0

0.5

1

f(z) = z

実軸虚軸

f(z)の実部 色: f(z)の虚部

MATLABで描画 参考:http://jp.mathworks.com/help/matlab/examples/functions-of-complex-variables.html

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数を図示すると

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

1−1

−0.5

0

0.5

1

f(z) = z

実軸虚軸

f(z)の実部 色: f(z)の虚部

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

1−1

−0.5

0

0.5

1

f(z) = z3

MATLABで描画 参考:http://jp.mathworks.com/help/matlab/examples/functions-of-complex-variables.html

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数を図示すると

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

1−1

−0.5

0

0.5

1

f(z) = z

実軸虚軸

f(z)の実部 色: f(z)の虚部

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

1−1

−0.5

0

0.5

1

f(z) = z3

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez MATLABで描画 参考:http://jp.mathworks.com/help/matlab/examples/functions-of-complex-variables.html

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則でない例

f(z) = 1 / z

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

15

20

MATLABで描画 参考:http://jp.mathworks.com/help/matlab/examples/functions-of-complex-variables.html

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則でない例

f(z) = 1 / z

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

15

20

こういう「穴」が 問題になる

MATLABで描画 参考:http://jp.mathworks.com/help/matlab/examples/functions-of-complex-variables.html

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式複素関数 f(z) が正則である必要十分条件は

z = x + yi とするとき f(z) = u(x, y) + iv(x, y) と表せるなら

実軸

虚軸

0

z = a + bi

a

b

r

θ

図 1: 複素平面

実軸

虚軸

0

z

z+Δz

図 2: z +∆zから zへの近づき方

重要なのは,「複素関数 f(z)がある点 zで微分可能である」ことは,「z +∆zが,複素平面でどの方向からどのように zに近づいても,上記の極限値がひとつに定まる」ことである,ということです。このことは,複素関数が微分可能であることが,関数の形においてかなりの制約であることを意味しています。

正則関数のイメージとしては,複素平面の上で軟らかい板を「ぐにゃぐにゃと」「どこにも折り目がなく」曲げたようなものを想像するとよいと思います。実際,正則関数は何回でも微分可能です(後述)。また,複素平面の領域Dで定義された正則関数 f(z)は,D内の点 aを中心としてDに含まれる円内で,

f(z) = f(a) +f ′(a)

1!(z − a) +

f ′′(a)

2!(z − a)2 + · · ·+ f (n)(a)

n!(z − a)n + · · · (5)

というテイラー展開であらわされます。

コーシー・リーマンの関係式

コーシー・リーマン (Cauchy-Riemann)の関係式は,複素関数の微分可能性を別の形で表したもので,次のように表されます。

複素数 z = x + yiの関数 f(z)が,x, yの実関数 u(x, y), v(x, y)を使って f(z) = u(x, y) +

iv(x, y)と表される時,f(z)が正則であるための必要十分条件は,⎧⎪⎪⎪⎪⎨

⎪⎪⎪⎪⎩

∂u

∂x=

∂v

∂yかつ

∂u

∂y= −∂v

∂x

(6)

がなりたつことである。

この関係式は,(4)式で示した複素関数の微分可能性の定義で「どの方向からどのように zに近づいても極限値がひとつに定まる」ことに強く関連しています。

(4)式の「z +∆zが zに近づく」ときの近づき方について,

1. 実軸にそって近づく,すなわち (x+∆x) + yi → x+ yi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式複素関数 f(z) が正則である必要十分条件は

z = x + yi とするとき f(z) = u(x, y) + iv(x, y) と表せるなら

実軸

虚軸

0

z = a + bi

a

b

r

θ

図 1: 複素平面

実軸

虚軸

0

z

z+Δz

図 2: z +∆zから zへの近づき方

重要なのは,「複素関数 f(z)がある点 zで微分可能である」ことは,「z +∆zが,複素平面でどの方向からどのように zに近づいても,上記の極限値がひとつに定まる」ことである,ということです。このことは,複素関数が微分可能であることが,関数の形においてかなりの制約であることを意味しています。

正則関数のイメージとしては,複素平面の上で軟らかい板を「ぐにゃぐにゃと」「どこにも折り目がなく」曲げたようなものを想像するとよいと思います。実際,正則関数は何回でも微分可能です(後述)。また,複素平面の領域Dで定義された正則関数 f(z)は,D内の点 aを中心としてDに含まれる円内で,

f(z) = f(a) +f ′(a)

1!(z − a) +

f ′′(a)

2!(z − a)2 + · · ·+ f (n)(a)

n!(z − a)n + · · · (5)

というテイラー展開であらわされます。

コーシー・リーマンの関係式

コーシー・リーマン (Cauchy-Riemann)の関係式は,複素関数の微分可能性を別の形で表したもので,次のように表されます。

複素数 z = x + yiの関数 f(z)が,x, yの実関数 u(x, y), v(x, y)を使って f(z) = u(x, y) +

iv(x, y)と表される時,f(z)が正則であるための必要十分条件は,⎧⎪⎪⎪⎪⎨

⎪⎪⎪⎪⎩

∂u

∂x=

∂v

∂yかつ

∂u

∂y= −∂v

∂x

(6)

がなりたつことである。

この関係式は,(4)式で示した複素関数の微分可能性の定義で「どの方向からどのように zに近づいても極限値がひとつに定まる」ことに強く関連しています。

(4)式の「z +∆zが zに近づく」ときの近づき方について,

1. 実軸にそって近づく,すなわち (x+∆x) + yi → x+ yi

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実軸

虚軸

z = x + yi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式複素関数 f(z) が正則である必要十分条件は

z = x + yi とするとき f(z) = u(x, y) + iv(x, y) と表せるなら

実軸

虚軸

0

z = a + bi

a

b

r

θ

図 1: 複素平面

実軸

虚軸

0

z

z+Δz

図 2: z +∆zから zへの近づき方

重要なのは,「複素関数 f(z)がある点 zで微分可能である」ことは,「z +∆zが,複素平面でどの方向からどのように zに近づいても,上記の極限値がひとつに定まる」ことである,ということです。このことは,複素関数が微分可能であることが,関数の形においてかなりの制約であることを意味しています。

正則関数のイメージとしては,複素平面の上で軟らかい板を「ぐにゃぐにゃと」「どこにも折り目がなく」曲げたようなものを想像するとよいと思います。実際,正則関数は何回でも微分可能です(後述)。また,複素平面の領域Dで定義された正則関数 f(z)は,D内の点 aを中心としてDに含まれる円内で,

f(z) = f(a) +f ′(a)

1!(z − a) +

f ′′(a)

2!(z − a)2 + · · ·+ f (n)(a)

n!(z − a)n + · · · (5)

というテイラー展開であらわされます。

コーシー・リーマンの関係式

コーシー・リーマン (Cauchy-Riemann)の関係式は,複素関数の微分可能性を別の形で表したもので,次のように表されます。

複素数 z = x + yiの関数 f(z)が,x, yの実関数 u(x, y), v(x, y)を使って f(z) = u(x, y) +

iv(x, y)と表される時,f(z)が正則であるための必要十分条件は,⎧⎪⎪⎪⎪⎨

⎪⎪⎪⎪⎩

∂u

∂x=

∂v

∂yかつ

∂u

∂y= −∂v

∂x

(6)

がなりたつことである。

この関係式は,(4)式で示した複素関数の微分可能性の定義で「どの方向からどのように zに近づいても極限値がひとつに定まる」ことに強く関連しています。

(4)式の「z +∆zが zに近づく」ときの近づき方について,

1. 実軸にそって近づく,すなわち (x+∆x) + yi → x+ yi

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実軸

虚軸

z = x + yi

極限をとるときに どのように近づいてもよい ので

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式複素関数 f(z) が正則である必要十分条件は

z = x + yi とするとき f(z) = u(x, y) + iv(x, y) と表せるなら

実軸

虚軸

0

z = a + bi

a

b

r

θ

図 1: 複素平面

実軸

虚軸

0

z

z+Δz

図 2: z +∆zから zへの近づき方

重要なのは,「複素関数 f(z)がある点 zで微分可能である」ことは,「z +∆zが,複素平面でどの方向からどのように zに近づいても,上記の極限値がひとつに定まる」ことである,ということです。このことは,複素関数が微分可能であることが,関数の形においてかなりの制約であることを意味しています。

正則関数のイメージとしては,複素平面の上で軟らかい板を「ぐにゃぐにゃと」「どこにも折り目がなく」曲げたようなものを想像するとよいと思います。実際,正則関数は何回でも微分可能です(後述)。また,複素平面の領域Dで定義された正則関数 f(z)は,D内の点 aを中心としてDに含まれる円内で,

f(z) = f(a) +f ′(a)

1!(z − a) +

f ′′(a)

2!(z − a)2 + · · ·+ f (n)(a)

n!(z − a)n + · · · (5)

というテイラー展開であらわされます。

コーシー・リーマンの関係式

コーシー・リーマン (Cauchy-Riemann)の関係式は,複素関数の微分可能性を別の形で表したもので,次のように表されます。

複素数 z = x + yiの関数 f(z)が,x, yの実関数 u(x, y), v(x, y)を使って f(z) = u(x, y) +

iv(x, y)と表される時,f(z)が正則であるための必要十分条件は,⎧⎪⎪⎪⎪⎨

⎪⎪⎪⎪⎩

∂u

∂x=

∂v

∂yかつ

∂u

∂y= −∂v

∂x

(6)

がなりたつことである。

この関係式は,(4)式で示した複素関数の微分可能性の定義で「どの方向からどのように zに近づいても極限値がひとつに定まる」ことに強く関連しています。

(4)式の「z +∆zが zに近づく」ときの近づき方について,

1. 実軸にそって近づく,すなわち (x+∆x) + yi → x+ yi

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x + (y + Δy)i

実軸

虚軸

z = x + yi

極限をとるときに どのように近づいてもよい ので

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式複素関数 f(z) が正則である必要十分条件は

z = x + yi とするとき f(z) = u(x, y) + iv(x, y) と表せるなら

(x + Δx) + yi

実軸

虚軸

0

z = a + bi

a

b

r

θ

図 1: 複素平面

実軸

虚軸

0

z

z+Δz

図 2: z +∆zから zへの近づき方

重要なのは,「複素関数 f(z)がある点 zで微分可能である」ことは,「z +∆zが,複素平面でどの方向からどのように zに近づいても,上記の極限値がひとつに定まる」ことである,ということです。このことは,複素関数が微分可能であることが,関数の形においてかなりの制約であることを意味しています。

正則関数のイメージとしては,複素平面の上で軟らかい板を「ぐにゃぐにゃと」「どこにも折り目がなく」曲げたようなものを想像するとよいと思います。実際,正則関数は何回でも微分可能です(後述)。また,複素平面の領域Dで定義された正則関数 f(z)は,D内の点 aを中心としてDに含まれる円内で,

f(z) = f(a) +f ′(a)

1!(z − a) +

f ′′(a)

2!(z − a)2 + · · ·+ f (n)(a)

n!(z − a)n + · · · (5)

というテイラー展開であらわされます。

コーシー・リーマンの関係式

コーシー・リーマン (Cauchy-Riemann)の関係式は,複素関数の微分可能性を別の形で表したもので,次のように表されます。

複素数 z = x + yiの関数 f(z)が,x, yの実関数 u(x, y), v(x, y)を使って f(z) = u(x, y) +

iv(x, y)と表される時,f(z)が正則であるための必要十分条件は,⎧⎪⎪⎪⎪⎨

⎪⎪⎪⎪⎩

∂u

∂x=

∂v

∂yかつ

∂u

∂y= −∂v

∂x

(6)

がなりたつことである。

この関係式は,(4)式で示した複素関数の微分可能性の定義で「どの方向からどのように zに近づいても極限値がひとつに定まる」ことに強く関連しています。

(4)式の「z +∆zが zに近づく」ときの近づき方について,

1. 実軸にそって近づく,すなわち (x+∆x) + yi → x+ yi

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x + (y + Δy)i

実軸

虚軸

z = x + yi

極限をとるときに どのように近づいてもよい ので

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式複素関数 f(z) が正則である必要十分条件は

z = x + yi とするとき f(z) = u(x, y) + iv(x, y) と表せるなら

(x + Δx) + yi

実軸

虚軸

0

z = a + bi

a

b

r

θ

図 1: 複素平面

実軸

虚軸

0

z

z+Δz

図 2: z +∆zから zへの近づき方

重要なのは,「複素関数 f(z)がある点 zで微分可能である」ことは,「z +∆zが,複素平面でどの方向からどのように zに近づいても,上記の極限値がひとつに定まる」ことである,ということです。このことは,複素関数が微分可能であることが,関数の形においてかなりの制約であることを意味しています。

正則関数のイメージとしては,複素平面の上で軟らかい板を「ぐにゃぐにゃと」「どこにも折り目がなく」曲げたようなものを想像するとよいと思います。実際,正則関数は何回でも微分可能です(後述)。また,複素平面の領域Dで定義された正則関数 f(z)は,D内の点 aを中心としてDに含まれる円内で,

f(z) = f(a) +f ′(a)

1!(z − a) +

f ′′(a)

2!(z − a)2 + · · ·+ f (n)(a)

n!(z − a)n + · · · (5)

というテイラー展開であらわされます。

コーシー・リーマンの関係式

コーシー・リーマン (Cauchy-Riemann)の関係式は,複素関数の微分可能性を別の形で表したもので,次のように表されます。

複素数 z = x + yiの関数 f(z)が,x, yの実関数 u(x, y), v(x, y)を使って f(z) = u(x, y) +

iv(x, y)と表される時,f(z)が正則であるための必要十分条件は,⎧⎪⎪⎪⎪⎨

⎪⎪⎪⎪⎩

∂u

∂x=

∂v

∂yかつ

∂u

∂y= −∂v

∂x

(6)

がなりたつことである。

この関係式は,(4)式で示した複素関数の微分可能性の定義で「どの方向からどのように zに近づいても極限値がひとつに定まる」ことに強く関連しています。

(4)式の「z +∆zが zに近づく」ときの近づき方について,

1. 実軸にそって近づく,すなわち (x+∆x) + yi → x+ yi

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x + (y + Δy)i

実軸

虚軸

z = x + yi

極限をとるときに どのように近づいてもよい ので

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2014年度秋学期 

A. A

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sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式複素関数 f(z) が正則である必要十分条件は

z = x + yi とするとき f(z) = u(x, y) + iv(x, y) と表せるなら

(x + Δx) + yi

実軸

虚軸

0

z = a + bi

a

b

r

θ

図 1: 複素平面

実軸

虚軸

0

z

z+Δz

図 2: z +∆zから zへの近づき方

重要なのは,「複素関数 f(z)がある点 zで微分可能である」ことは,「z +∆zが,複素平面でどの方向からどのように zに近づいても,上記の極限値がひとつに定まる」ことである,ということです。このことは,複素関数が微分可能であることが,関数の形においてかなりの制約であることを意味しています。

正則関数のイメージとしては,複素平面の上で軟らかい板を「ぐにゃぐにゃと」「どこにも折り目がなく」曲げたようなものを想像するとよいと思います。実際,正則関数は何回でも微分可能です(後述)。また,複素平面の領域Dで定義された正則関数 f(z)は,D内の点 aを中心としてDに含まれる円内で,

f(z) = f(a) +f ′(a)

1!(z − a) +

f ′′(a)

2!(z − a)2 + · · ·+ f (n)(a)

n!(z − a)n + · · · (5)

というテイラー展開であらわされます。

コーシー・リーマンの関係式

コーシー・リーマン (Cauchy-Riemann)の関係式は,複素関数の微分可能性を別の形で表したもので,次のように表されます。

複素数 z = x + yiの関数 f(z)が,x, yの実関数 u(x, y), v(x, y)を使って f(z) = u(x, y) +

iv(x, y)と表される時,f(z)が正則であるための必要十分条件は,⎧⎪⎪⎪⎪⎨

⎪⎪⎪⎪⎩

∂u

∂x=

∂v

∂yかつ

∂u

∂y= −∂v

∂x

(6)

がなりたつことである。

この関係式は,(4)式で示した複素関数の微分可能性の定義で「どの方向からどのように zに近づいても極限値がひとつに定まる」ことに強く関連しています。

(4)式の「z +∆zが zに近づく」ときの近づき方について,

1. 実軸にそって近づく,すなわち (x+∆x) + yi → x+ yi

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x + (y + Δy)i

実軸

虚軸

z = x + yi

極限をとるときに どのように近づいてもよい ので

この2通りを 考える

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式

実軸

虚軸

z = x + yi(x + Δx) + yi

x + (y + Δy)i

この2通りの近づき方で 極限値は等しい

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式

実軸

虚軸

z = x + yi(x + Δx) + yi

x + (y + Δy)i

この2通りの近づき方で 極限値は等しい

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式

実軸

虚軸

z = x + yi(x + Δx) + yi

x + (y + Δy)i

この2通りの近づき方で 極限値は等しい2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式

実軸

虚軸

z = x + yi(x + Δx) + yi

x + (y + Δy)i

この2通りの近づき方で 極限値は等しい2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式

実軸

虚軸

z = x + yi(x + Δx) + yi

x + (y + Δy)i

この2通りの近づき方で 極限値は等しい2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式

実軸

虚軸

z = x + yi(x + Δx) + yi

x + (y + Δy)i

この2通りの近づき方で 極限値は等しい2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式

実軸

虚軸

z = x + yi(x + Δx) + yi

x + (y + Δy)i

この2通りの近づき方で 極限値は等しい2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシー・リーマンの関係式

実軸

虚軸

z = x + yi(x + Δx) + yi

x + (y + Δy)i

この2通りの近づき方で 極限値は等しい2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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これらが実部・虚部とも等しい

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

f(x)

x

f(x)

x

長方形で近似

a b

Page 89: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4部・複素関数論ダイジェスト / 第12回 複素関数・正則関数 (2014. 12. 18)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

f(x)

x

f(x)

xx0

長方形で近似

a b

xn

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

f(x)

x

f(x)

xx0

長方形で近似

a b

xnxi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

f(x)

x

f(x)

xx0

長方形で近似

a b

xnxi xi+1

Page 92: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4部・複素関数論ダイジェスト / 第12回 複素関数・正則関数 (2014. 12. 18)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

f(x)

x

f(x)

xx0

長方形で近似

a b

xnxi xi+1

ξi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

f(x)

x

f(x)

xx0

長方形で近似

高さ f(ξi)a b

xnxi xi+1

ξi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

f(x)

x

f(x)

xx0

長方形で近似

高さ f(ξi)a b

xnxi xi+1

ξi

2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

区切りを無限に細かくかつ分点の間隔の最大値→0

f(x)

x

f(x)

xx0

長方形で近似

高さ f(ξi)a b

xnxi xi+1

ξi

2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

区切りを無限に細かくかつ分点の間隔の最大値→0

f(x)

x

f(x)

xx0

長方形で近似

高さ f(ξi)a b

xnxi xi+1

ξi

2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実関数の積分この面積を 求めたい

区切りを無限に細かくかつ分点の間隔の最大値→0

f(x)

x

f(x)

xx0

長方形で近似

高さ f(ξi)a b

実関数の積分

xnxi xi+1

ξi

2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

経路を z = z(t) と パラメータで表す

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

経路を z = z(t) と パラメータで表す

t

t

t

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

経路を z = z(t) と パラメータで表す

t

t

t

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

経路を z = z(t) と パラメータで表す

t

t

t

z(ti) z(ti+1)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

経路を z = z(t) と パラメータで表す

t

t

t

z(ti) z(ti+1)

ξi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

経路を z = z(t) と パラメータで表す

t

t

t経路の上に 「板」が載っているイメージ (ただし「高さ」は複素数)z(ti)

z(ti+1)

ξi

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

経路を z = z(t) と パラメータで表す

t

t

t経路の上に 「板」が載っているイメージ (ただし「高さ」は複素数)z(ti)

z(ti+1)

ξi

「高さ」 f(ξi)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

経路を z = z(t) と パラメータで表す

t

t

t経路の上に 「板」が載っているイメージ (ただし「高さ」は複素数)z(ti)

z(ti+1)

ξi

「高さ」 f(ξi)

2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

複素関数の積分積分区間だけでなく 複素平面のどこを通って積分するか(経路)が重要

実軸

虚軸

経路C

経路を z = z(t) と パラメータで表す

t

t

t経路の上に 「板」が載っているイメージ (ただし「高さ」は複素数)z(ti)

z(ti+1)

ξi

「高さ」 f(ξi)

2. 虚軸にそって近づく,すなわち x+ (y +∆y)i → x+ yi

の2つの場合を考えてみましょう。1.の場合については,f ′(z)は

f ′(z) = lim∆x→0

{u(x+∆x, y) + iv(x+∆x, y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}((x+∆x) + yi)− (x+ yi)

= lim∆x→0

u(x+∆x, y)− u(x, y)

∆x+ i lim

∆x→0

v(x+∆x, y)− v(x, y)

∆x

=∂u

∂x+ i

∂v

∂x

(7)

で,2.の場合については

f ′(z) = lim∆y→0

{u(x, y +∆y) + iv(x, y +∆y)}− {u(x, y) + iv(x, y)}(x+ (y +∆y)i)− (x+ yi)

= lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

i∆y+ i lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

i∆y

= −i lim∆y→0

u(x, y +∆y)− u(x, y)

∆y+ lim

∆x→0

v(x, y +∆y)− v(x, y)

∆y

=∂v

∂y− i

∂u

∂y

(8)

となります。どちらの近づき方でも f ′(z)は同じになりますから,実部・虚部を比較することで,(6)式の関係が得られます。

複素関数の積分

実関数 f(x)の積分(リーマン積分)は,積分区間 [a, b]に分点 a = x0 < x1 < · · · < xn = bを設定し,ξiを xi ! ξi < xi+1を満たす任意の値とするとき,

! b

af(x)dx = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(xi+1 − xi) (9)

で定義されます。正確には,この極限は「隣接する分点の間隔の最大値maxi(xi+1 − xi)を 0に近づけるようにして,n → ∞としたときの極限」です。

実関数の場合は,積分区間をとる場所は x軸上に決まっていますが,複素関数の場合は,積分区間だけでなく,複素平面上のどの経路を通って積分するかを考える必要があります。

そこで,経路Cをパラメータ表示を使ってz = z(t)と表します。この経路上に分点a = z(t0), z(t1), . . . , z(tn) =

b, (t0 < t1 < · · · < tn)となるように配置し,ξiを C 上で z(ti)と z(ti+1)の間にある任意の点とするとき,f(z)の C にそった積分を

!

Cf(z)dz = lim

n→∞

n−1"

i=0

f(ξi)(z(ti+1)− z(ti)) (10)

と定義します。実関数の場合と同様に,正確には,この極限は「隣接する分点間の,差の絶対値の最大値maxi |z(ti+1)− z(ti)|を 0に近づけるように,n → ∞としたときの極限」です。

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f(z) の経路 C に沿った積分

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら

経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら

経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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(合成関数の微分)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

(合成関数の微分)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

(合成関数の微分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

正則関数と積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

積分は経路に依存しない

経路C を z = z(t) で表す 両端は z(0) = a, z(1) = b

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

(置換積分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

(合成関数の微分)

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

閉曲線に沿った積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

さっきの定理

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

閉曲線に沿った積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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積分は経路に依存しない

さっきの定理

ということは,

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

閉曲線に沿った積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

積分は経路に依存しない

さっきの定理

ということは,経路 C が単純閉曲線なら,始点も終点も同じだから

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

閉曲線に沿った積分複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分なら経路 C が両端 a, b を含めてすべて D 内にあれば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

積分は経路に依存しない

さっきの定理

ということは,経路 C が単純閉曲線なら,始点も終点も同じだから

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

[コーシーの積分定理]

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

[コーシーの積分定理]

示唆して いるのは

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

[コーシーの積分定理]

示唆して いるのは

正則関数の微分は正則関数。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

[コーシーの積分定理]

示唆して いるのは

正則関数の微分は正則関数。正則関数は何度でも微分できる。

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

[コーシーの積分定理]

示唆して いるのは

正則関数の微分は正則関数。正則関数は何度でも微分できる。

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

[コーシーの積分定理]

示唆して いるのは

正則関数の微分は正則関数。正則関数は何度でも微分できる。

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

閉曲線上の 積分を表す

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理

実は

複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数 F(z) の微分で

経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線に沿った積分

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある単純閉曲線ならば

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

[コーシーの積分定理]

示唆して いるのは

正則関数の微分は正則関数。正則関数は何度でも微分できる。

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

閉曲線上の 積分を表す

注: 「領域内で正則」 であって, 「経路上で正則」 ではない

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある閉曲線ならば

コーシーの積分定理

証明は,グリーンの定理で

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある閉曲線ならば

コーシーの積分定理

証明は,グリーンの定理で

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある閉曲線ならば

コーシーの積分定理

証明は,グリーンの定理で

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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2次元関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある閉曲線ならば

コーシーの積分定理

証明は,グリーンの定理で

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

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閉曲線 C 上での(線)積分

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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2次元関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある閉曲線ならば

コーシーの積分定理

証明は,グリーンの定理で

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線 C 上での(線)積分

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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2次元関数閉曲線 C に囲まれた領域 D´ 内での(面)積分

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある閉曲線ならば

コーシーの積分定理

証明は,グリーンの定理で

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線 C 上での(線)積分

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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2次元関数閉曲線 C に囲まれた領域 D´ 内での(面)積分

線積分と面積分を 交換

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある閉曲線ならば

コーシーの積分定理

証明は,グリーンの定理で

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線 C 上での(線)積分

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

2次元関数閉曲線 C に囲まれた領域 D´ 内での(面)積分

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

として

線積分と面積分を 交換

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある閉曲線ならば

コーシーの積分定理

証明は,グリーンの定理で

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線 C 上での(線)積分

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

2次元関数閉曲線 C に囲まれた領域 D´ 内での(面)積分

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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として

線積分と面積分を 交換

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

コーシーの積分定理複素関数 f(z) が,領域 D での正則関数で経路 C が, D 内にある閉曲線ならば

コーシーの積分定理

証明は,グリーンの定理で

xi x

i+1 a b

ξi

f(x)

図 3: 実関数の積分(リーマン積分)

実軸

虚軸

0

z(ti)

z(ti+1)経路 C

ξi

図 4: 複素関数の積分

正則関数と積分,コーシーの積分定理

前節のように,複素関数の積分は,積分区間の両端の値だけでなく,途中の経路を指定しないと求められません。しかし,正則関数の場合は,積分が経路によらず両端の値だけによる場合があります。

連続な関数 f(z)が領域Dで定義されているとし,それが正則関数 F (z)の微分である,すなわち F ′(z) = f(z)であるとする。このとき,2点 a, bとその間の経路 C がすべてDの内部になるならば,

!

Cf(z)dz = F (b)− F (a) (11)

となり,経路 C には依存しない。

証明は以下の通りです。経路 C を z = z(t) (0 ! t ! 1), z(0) = a, z(1) = bで表します。すると,合成関数の微分によって

dF (z(t))

dt=

dF (z(t))

dz

dz(t)

dt(12)

となります。よって,置換積分により!

Cf(z)dz =

! 1

0f(z(t))

dz(t)

dtdt

=

! 1

0

dF (z(t))

dz

dz(t)

dtdt

(13)

となり,さらに (12)式から!

Cf(z)dz =

! 1

0

dF (z(t))

dtdt

= F (z(1))− F (z(0)) = F (b)− F (a)

(14)

となります。■

このことは,もしCが閉曲線なら,始点も終点も同じですから,経路によらず!

Cf(z)dz = 0である

ことを意味しています。このことをより一般的に表したのが,下記のコーシーの積分定理です。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

閉曲線 C 上での(線)積分

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

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2次元関数閉曲線 C に囲まれた領域 D´ 内での(面)積分

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

領域Dで正則な関数 f(z)について,経路CがDの内部の閉曲線ならば,!

Cf(z)dz = 0で

ある。

この定理と,その前に説明した定理をあわせると,正則関数 f(z)に対しては F ′(z) = f(z)となる正則関数 F (z)が必ず存在することがわかります。したがって,正則関数の微分は正則関数で,つまり正則関数は何度でも微分できることがわかります。なお,経路Cが閉曲線であることを強調する時には,この積分を

"

Cf(z)dzと書きます。

コーシーの積分定理の証明には,グリーン (Green)の定理が用いられます。これは,2次元の関数P (x, y), Q(x, y)があるとき,その閉曲線 Cに沿った積分(線積分)と,Cで囲まれた領域D′での積分(面積分)が

"

C(Pdx+Qdy) =

!!

D′

#∂Q

∂x− ∂P

∂y

$dxdy (15)

という関係で交換できる,というものです。

これを用いると,f(z) = u(x, y) + iv(x, y)とするとき"

Cf(z)dz =

"

C{u(x, y) + iv(x, y)}(dx+ idy)

=

"

C(udx− vdy) + i

"

C(vdx+ udy)

=

!!

D′

#−∂v

∂x− ∂u

∂y

$dxdy + i

!!

D′

#∂u

∂x− ∂v

∂y

$dxdy

(16)

で,コーシー・リーマンの関係式より実部・虚部ともに 0となります。■

次回の講義では,複素関数に正則でない点,いわば「穴」がある場合に,それを囲む積分について説明し,これを実関数の定積分を求めるのに用いる方法を紹介します。

参考文献

志賀浩二,複素数30講,朝倉書店,1989. ISBN978-4-254-11481-2

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第12回 (2014. 12. 18) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

として 正則関数なので, コーシー・リーマンの 関係式よりどちらもゼロ

線積分と面積分を 交換

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

今日のまとめ複素関数  複素数の指数関数  複素関数の微分→「正則関数」  複素関数の積分(経路に沿った積分)

コーシーの積分定理 正則関数を閉曲線に沿って積分すると0

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

今日のまとめ複素関数  複素数の指数関数  複素関数の微分→「正則関数」  複素関数の積分(経路に沿った積分)

コーシーの積分定理 正則関数を閉曲線に沿って積分すると0

正則でない点を囲んで積分したら?

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

次回に向けて

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez f(z) = 1 / z−1

−0.50

0.51

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

15

20

正則でない点を囲んで積分したら?

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

次回に向けて

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez f(z) = 1 / z−1

−0.50

0.51

−1

−0.5

0

0.5

1−20

−15

−10

−5

0

5

10

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20

正則でない点を囲んで積分したら?

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

次回に向けて

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

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3

f(z) = ez f(z) = 1 / z−1

−0.50

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正則でない点を囲んで積分したら?

積分は0

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

次回に向けて

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

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f(z) = ez f(z) = 1 / z−1

−0.50

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正則でない点を囲んで積分したら?

積分は0

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

次回に向けて

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

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0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez f(z) = 1 / z−1

−0.50

0.51

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正則でない点を囲んで積分したら?

積分は0

積分は?

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

次回に向けて

−1−0.5

00.5

1

−1

−0.5

0

0.5

10

0.5

1

1.5

2

2.5

3

f(z) = ez f(z) = 1 / z−1

−0.50

0.51

−1

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0

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1−20

−15

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0

5

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20

正則でない点を囲んで積分したら?

積分は0

積分は?

正則でない「穴」によって決まる