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Post on 26-Apr-2020
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製品概要 IWナット(IHI WEDGE NUT、図-1)は、株式会社IHIインフラシステムが開発した特殊な樹脂製ナットです。汎用トルシア形高力ボルトを用いて、高所、閉所でのワンサイド添接作業を可能にし、本体へのボルト挿入、ボルト頭塗装を先行して行うことができます。図-2に示すように、先行挿入したボルトは防錆キャップで密閉し、ボルトネジ部の発錆を防止します。この施工方法により、現場で添接部裏面へのアクセスが不要となり、安全性が向上すると同時に、工期短縮、コスト低減が期待できます。(特許登録済み)
図-2 施工手順
ここでは、IWナットの耐久性を確認した暴露試験、すべり抵抗力を確認したすべり試験および施工実績について紹介いたします。
1. 暴露試験1-1. 目的と試験方法 IWナットがワンサイド施工を実現するためには、黒皮の普通トルシア形高力ボルトを屋外に暴露しても錆や腐食が発生せず、ボルトの性能(本締め時の軸力)が保たれることが必須です。この屋外暴露状態での性能保持を確認するため、IWナットを用いて鋼板に取り付けた普通トルシア形高力ボルトを防錆キャップで気密状態とし、屋外暴露後に軸力の変動の有無を確認しました。 屋外暴露ボルトの試験体、暴露状況は、それぞれ図-3、4に示す通りです。ボルト頭側(下面)は、工場塗装の代わりとしてシール材で密閉しました。
図-3 屋外暴露ボルト試験体
図-4 暴露状況
1-2. 試験結果 屋外暴露後の本締め時の軸力計測結果を図-5に示します。6 ヶ月経過までの軸力は安定しています。9 ヶ月経過のボルトについては、ネジ部に錆が発生し、軸力にバラツキが見られました。従って屋外暴露の場合、6ヶ月を目安とし、ネジ部に錆が発生した場合は抜き取りで軸力試験を行い、軸力変動の影響を確認するのが望ましいと判断されます。
図-5 本締め時の軸力計測結果
汎用トルシア形高力ボルトでワンサイド施工を可能とする樹脂製ナット― IWナット ―
製 品 紹 介 2
齊 藤 史 朗中 村 善 彦 **SAITONAKAMURA ShiroYoshihiko
*㈱ IHIインフラシステム 開発部 / 研究開発2課
図-1 IWナット
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2. すべり試験2-1. 目的と試験方法 IWナットは添接板の孔に埋め殺しとなるため、添接板の孔径を通常の拡大孔より大きな径とする必要があります。また、先行塗装を行うため、摩擦面に上塗塗装を塗り込む仕様を標準としています。本試験は、IWナットを用いた添接部の摩擦面が、所定の摩擦力を発揮するかを確認するものです。 すべり試験の試験体形状を図-6に示します。トルシア形高力ボルトM22×80(S10T)(通常品:黒皮ボルト)を使用し、すべり側のみ軸力確認のため、ボルト軸部にひずみゲージを貼り付けました。試験は、試験体No.1 ~ 3を平成22年、No.4 ~ 6は平成23年に実施しました。
図-6 すべり試験体の形状
2-2. 試験結果 リラクセーション試験結果を図-7に示します。すべての試験体において、軸力の低下が10%以下という結果が得られました。
図-7 リラクセーション試験結果
すべり係数試験 の 状 況、 試 験結果をそれぞれ図-8、表-1に示します。すべての試験 体 に お い て、すべり係数μ1、μ2と も に0.4を満足しました。
表-1 すべり係数試験の結果
すべり係数μは次式により計算しますが、μ1はボルト軸力として初期導入軸力を、μ2はボルト軸力として締付後24hr軸力をそれぞれ使用しました。
3. 施工実績 IWナットは平成20年から実工事で施工されており、すでに30万本以上の実績があります(表-2)。IWナットを施工した尾道ジャンクション橋、安倍川橋での施工状況を図-9で紹介します。
表-2 IWナット施工実績
⒜尾道ジャンクション橋 ⒝安倍川橋併設橋図-9 IWナット施工状況
おわりに IWナットは、橋梁の合成床版のほかトンネル合成床版にも採用されています。今後もこれらの工事において、工期の短縮、建設費の削減に大きく寄与するものと期待しています。 最後に、IWナットの開発と施工に関して、多くのご指導とご協力をいただいた関係者の方々に深く感謝の意を表します。
〔参考文献〕⑴土木学会:鋼構造シリーズ15 高力ボルト摩擦接合継手
の設計・施工・維持管理指針(案)、2006年12月図-8 すべり試験の状況
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