djm gccp djm gccp - ceri.go.jp · 2018-11-29 · のdjm...
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道路構造物基礎へのコスト縮減の試み
-グラベルセメントコンパクションパイル工法の適用-
留萌開発建設部 留萌開発事務所 ○國重 啓
伊藤 啓史
北海道開発土木研究所 土質基礎研究室 林 宏親
1.はじめに
従来、軟弱地盤上に施工するボックスカルバートの沈下対策としては深層混合処理
工法の一つである DJM 工法が採用されることが多い。当工法は、沈下、安定対策と
して実績が多く確実な工法であるが、圧密促進工法や締固め工法などの地盤改良に比
べ工費が高いという傾向がある。そこで、従来工法よりも経済的で当地に適した新技
術であるグラベルセメントコンパクションパイル( GCCP)工法をボックスカルバー
トの沈下対策として採用した。GCCP 工法は、すでに室内模型実験および現場試験施
工により、その沈下低減効果および品質が確認されている。本報告は、 GCCP 工法の
施工、品質及びコスト縮減効果について述べるものである。 2.工事概要 深川留萌自動車道の整備の一環として施工するボックスカルバートの基礎地盤改良
において GCCP 工法を採用した。 (工事箇所を図-1に示す )当地盤は N=2~ 7 の軟弱
層( Ac2 層)が 15m 程度堆積し、13m の盛土を造成すると 112cm の沈下が発生する。
当初の設計では、ボックスカルバート基礎の沈下対策として深層混合処理工法( DJM)
が選定されていた。 工事に関する概要を以下に示す。 ①.工 事 名:深川留萌自動車道 留萌市 幌糠改良外一連工事 ②.場 所:北海道留萌市藤山 ③.施工時期: 2005.5~ 2005.7 ④.地盤改良: GCCP(グラベルセメントコンパクションパイル)工法 ⑤.改良仕様: L=13.4 ~ 15.5m Σ L=3,919.3m N= 268 本 ⑥.盛 土 高: H= 13m (無改良時の沈下予測値: 112 ㎝) ⑦.施工目的:道路構造物基礎(ボックスカルバート)の沈下低減対策
図-1 工事箇所図 Hiromu Kunishige, Keishi Itou, Hirotika Hayashi
沈下対象層 W=35.0~56.3% qu=48~52kN/m2
図-2 設計断面と地盤条件
3.工法選定 当初設計では深層混合処理工法として DJM 工法が採用されていたが、追加地盤調
査とコスト縮減を目的とした工法調査の結果、新工法であるグラベルセメントコンパ
クションパイル( GCCP)工法が候補として挙がった。GCCP 工法は、サンドコンパ
クションパイル工法の施工機械を用いて、コンパクションの造成過程で砕石とセメン
トミルクをケーシング内で混合し固化パイルを造るものである(図-3)。パイルの出
来上り径はφ700mm であり、砕石とセメントを直接ケーシング内で混合させるため、
現地土の影響を受け難く高強度のパイルが造成できる。当工法は平成 15 年度より北海
道開発土木研究所と不動建設の共同開発として室内模型実験さらに現場試験施工が実
施され、その沈下低減効果および品質を確認している 1.2)。表-1に DJM 工法との比
較を示すが、施工性においては比較的硬質な地盤への貫入能力を有していること、経
済性では 16%のコスト縮減が可能となることで当工事への適用性が高いと評価された。
GCCP パイルの特徴を以下に整理して示す。 ①高強度のパイルが造成できる。
②高強度であることから改良率を低
減できる。 ③高価なセメントを必要とせず、一
般品のセメントを利用できる。 ④現地土が混入し難く通常の深層混
合処理で実施している現場配合試
験が不要となる。
図-3 施工概要
表-1 工法比較表 4.強度特性
GCCP 工法の強度特性を確認するために事前に室内配合試験、事後には品質確認試
験を実施している。試験法は一軸圧縮試験とし、室内配合試験は、最適なセメント添
加量の決定を目的とし、品質確認試験は設計に対する要求性能の評価と、更なるコス
ト縮減を目的に低配合杭の試験を実施している。 (1) 事前調査(室内配合試験) 最適なセメント添加量と砕石材を決定するために、 2 種類の砕石材と数種の配合に
より室内配合試験を実施した。室内目標強度の設定は、室内強度 (qul)と現場強度 (quf)の比が不明であったことから深層混合処理工法の実績である「設計基準強度の 3 倍」
を用いることとした。 セメント添加量の決定は以下の2つの条件を満足するものとした。 ①設計基準強度を満足すること (quck≧ 2000kN/m2, qul≧ 6000kN/m2, qul/ quf=3 ) ②スラリーが供試体 (パイル )内に充填されること。 試験の結果、二つの条件を満足する配合として C= 150 ㎏ /m3W/C= 1.0 に決定した。
表-2 セメント添加量 ,砕石比較
(2) 事後調査(品質確認試験) 改良後の品質確認試験として設計配合の本杭 3 本と、添加量を低減した試験杭 1 本
の合計 4 本のコア採取及び一軸圧縮試験を実施した(表-3)。本杭の平均強度は
5978kN/m2 となり、目標強度を全て満足した。強度のばらつきを表す変動係数は通常
添加材添加量
(㎏/m3)
W/C
(%) (kN/m2)
qu7
(kN/m2)
大和田産
qu28
(kN/m2)
qu28
峠下産
3931
6040
2376
27671928
2352
2443
2703
1003
2662
高炉セメントB種
3260
1474
1.0
1.5
100
150
100
150
の DJM に比べ小さくパイルの品質性能の高さが確認できた。本杭と試験杭の比較で
はセメント量の差により強度差はあるものの、変動係数には大きな違いは見られなか
った。コア採取径の影響は径が大きい方の変動係数が小さい結果となった。これは、
砕石材が最大 40mm と大きいため砕石材の粒径が影響しているものと考えられる。 ①ばらつき: 変動係数は 20~ 30%(一般 DJM35~ 45%) ②配合 : 本杭と試験杭でセメント量の違いによる強度差は 2.5 倍あるが、変動係 数には差が無く 25%程度であった。 ③採取径 : 採取径が大きい方が変動係数は小さい
表- 3 事後調査結果一覧表 (3) 現場強度と室内強度の関係 図 - 4 に 現 場 強 度 (quf) と 室 内 強 度
(qul)の 関 係 と 現 場 強 度 の ば ら つ き を 表
す標準偏差の範囲を示す。現場と室内の
強度比を quf/qul= 0.7(2/3)とした場合は、
設計基準強度を下回る可能性は 17%、同
様に quf/qul= 0.5(1/2)とした場合は 2%と な り 、 一 般 的 に DJM 工 法 で 用 い る
quf/qul=1/3 よりも強度のばらつきが少
ないことが分かった。
図-4 現場強度と室内強度の関係
5.周辺影響調査 (1)振動・騒音 本工事の施工エリアから 100~ 120m の位置に民家があった。 SCP 工法のこれまで
の実績に基づくと、振動式 GCCP 工法でも法的に定められている建設作業時の規準値
は満足できる距離であったが、当地は国道から離れているため暗振動 (26dB)暗騒音
(42dB)が小さいエリアであった。したがって施工時の影響を極力小さくすることが望
まれた。無振動式施工機を用いて対応する手段もあったが、コストが大幅に増加する
ことから機械装備を検討し、試験打設によりその効果を確認した後に、工事を進める
事とした。特別な機械装備として、排気音にはサイレンサー・振動機には横抱きショ
ックを採用することにより一般の SCP 工法と比べ、騒音で 5dB・振動で 10dB 以上の
試験杭
調査径
100 1.5 86
最大
150 1 7365
W/C(%)
本杭
平均強度 標準偏差 変動係数
116 5685 1485 26
配合量 C 水セメント比 最小
D-3
D-36
150 1 86 6143 1852 30 9083
C-22
平均
I-42
17
41
9
9
2258
15 150 1 116 5967 1254 21 7311 3480
1447
3021
150 1 86,116 5978 1485 25 9083 2258
562 24 30962324
(kN/m2) (kN/m2)個数杭番
(mm) (kN/m2) (kN/m2) (%)(㎏/m3)
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
10000
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000 10000
室内強度(kN/m2)
現場
強度
(kN
/m
2 )
○: W/C=1.5,C=100kg/m3
●: W/C=1.0,C=150kg/m3
quf/qul=1
quf/qul=0.5
+
+
標準偏差
quf/qul=0.7
低減効果が得られた。その結果、本工事では民家から苦情も無く施工を終了すること
が出来た。
図-5 騒音感覚 ,騒音レベルの距離減衰と測定結果
図-6 振動感覚 ,振動レベルの距離減衰と測定結果 (2)変位 本工事の施工エリアから 33m の位置に高圧線の鉄塔があり、打設による変位の影響
が懸念された。特に考慮すべき変位は鉄塔側の変位と BOX 横断方向の変位があるが、
BOX 横断方向の変位は両側に既設の盛土があり影響は少ないと考え、鉄塔側の変位に
配慮し、鉄塔から離れる方向に打設する施工順序をとった。変位杭の配置を図-2に
示す。以下の図-7 ,8は 1 列 (3 本 )打設する毎の水平方向と鉛直方向の変位量をまと
めたものである。 一般的な SCP 工法の変位の影響範囲は改良下端からθ= 45°と言われている。
GCCP 工法も同様にθ =45° (杭芯から 17.1m 離れた位置 )で考えると、水平方向は
5mm 以下、鉛直方向は 2mm 以下となり、GCCP 工法も SCP 工法と同程度の影響で
当現場データ当現場データ
当 現 場 デ ー タ
水 変位測定結果
-0.010
-0.005
0.000
0.005
0.010
0.015
0.020
0.025
0.030
0.035
0.040
0.045
0.050
0 10 20 30 40 50 60
杭芯からの距離 (m)
変位
量 (
m)
-0.010
-0.005
0.000
0.005
0.010
0.015
0.020
0.025
0.030
0.035
0.040
0.045
0.050
0 10 20 30 40 50 60
杭芯からの距離 (m)高
さ (m
)
6m位置
12m位置
23m位置
28m位置
あることが確認できた。鉄塔への影響は、打設順序を検討した事によって鉄塔への変
位は無く、また 10m 程度離れた田んぼにも変位による異常は見受けられなかった。 図-7 水平変位測定結果 図-8 鉛直変位測定結果 ※ 変位観測の対象となった打設杭の平均貫入長は 17.1m である。 6.まとめ 今回、道路構造物基礎のコスト縮減の試みとして、新工法である GCCP 工法を採用
した。その結果、DJM に比べ 16%のコスト縮減効果を得ることができた。さらに品
質では設計仕様を全て満足すると共に DJM 工法よりも高い品質性能を有しているこ
とが確認できた。GCCP 工法は、セメントと砕石を直接混合し高強度のパイルを造成
することから、品質やコストが地盤の影響を受け難く安定しているという特徴を有し
た工法である。一方、深層混合処理工法では地盤(配合試験)により必要なセメント
量が変化するため、泥炭などの軟弱な地盤では強度発現に必要なセメント量の増加や
高価な固化材の使用が必要になる。そのため、地盤条件によっては GCCP 工法による
更なるコスト縮減効果が期待できる。また今回は、フィールド試験工事として室内配
合試験を実施しているが、使用する砕石とセメントが予め分かれば配合試験も不要と
なる可能性もあり、更なるコスト縮減と工期短縮が可能な工法である。今後、 GCCP工法の効果を評価する為に、カルバート基礎に埋設した土圧計、間隙水圧計のデータ
を定期的に回収し調査を継続実施する予定である。
【参考文献】 1)林 澤井 大林 小飼 佐藤 泥炭性軟弱地盤に対する高強度小径パイルの沈下低減
効果 第 39 回地盤工学研究発表会講演概要集 2004.7, 2)林 澤井 大林 小飼 飯田 泥炭性軟弱地盤に対する高強度小径パイルの現場試験
施工 第 40 回地盤工学研究発表会講演概要集 2005.7 3)地盤工学会( 1988) 軟弱地盤対策工法