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非侵襲的で且つ正確に脈圧を 測定することができる脈圧測定装置 久留米大学医学部外科学講座 助教 友枝博

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Post on 22-Feb-2020

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非侵襲的で且つ正確に脈圧を測定することができる脈圧測定装置

久留米大学医学部外科学講座

助教 友枝博

はじめに

•静脈圧測定は救急・集中治療分野において循環血液量の過不足や心臓機能の低下、ショックや脱水などの状態を把握するために必要であり、治療方針の決定のための重要な指標である

• その値の測定には一般的には静脈穿刺やカテーテル留置を観血的に清潔操作で行う必要があり、医師または医師により指示を受けた看護師など法的に認められた者による施行が必要である

•患者の疼痛をともない、繰り返し施行することが困難で様々な合併症の危険も考えられる

• さらに圧力センサーなどのモニターへの接続のため患者の自由が束縛される

→これらの様々種々の制限や危険性のため非観血的静脈圧測定が望まれる

非観血的静脈圧測定が可能であれば

•清潔操作が不必要で人体への侵襲がなく、施行が医師や看護師以外でも簡便に可能

•数秒で何度でも繰り返し施行できる•危険性が極めて少なく合併症発生の危険性が極めて低い

などのメリットがあると考えられる

2007年にChristoph Thalhammerらは非観血的静脈圧測定法を発表した

Christoph Thalhammerらによる

非観血的静脈圧測定装置

Christoph Thalhammer,et al. J Am Coll Cardiol. 2007 Oct 16;50(16):1584-9.

Christoph Thalhammer,et al. J Am Coll Cardiol. 2007 Oct 16;50(16):1584-9.

測定は前述の装置を用いて施行。原理としては超音波が透過する圧力測定装置がエコープローブについたものを使用し、これを通して皮下の表在静脈を観察静脈を徐々に強く圧迫し、静脈が完全に押しつぶされた時の圧を圧力測定器で測定することで静脈圧を測定

測定原理

静脈

圧迫で押しつぶされた静脈

プローブで圧迫プローブで圧迫プローブで圧迫プローブで圧迫

Christoph Christoph Christoph Christoph ThalhammerThalhammerThalhammerThalhammerらにらにらにらによる非観よる非観よる非観よる非観血的血的血的血的静脈圧測定器の問題点静脈圧測定器の問題点静脈圧測定器の問題点静脈圧測定器の問題点

1. 超音波プローブと静脈圧測定部が一体化しており専用のプローブでないと測定できない(高価150~200万円以上)

2. 圧力測定部の皮膚との接触部が円形・薄型であり圧力測定部全体が均等の圧力で湾曲の強い四肢などの皮膚に密着しにくく、測定圧が不正確になる

3. 高精度で測定可能な圧力が50mmHg前後までに限られる

しかしながらいくつかの問題点があり、広く利用されるには至っていない。

Christoph Thalhammerらにより発表された測定器での測定結果

測定圧が70cmH

2O(51mmHg)を

超えると測定値に誤差が生じる

非観血的測定

観血的

測定

新技術の特徴

•静脈圧測定のための専用プローブをもちいなくても現在すでに購入している高周波数のエコープローブにアタッチメントを取り付けるだけで圧力測定が可能

•上記理由によりコストが1/5程度まで削減されることが期待される

•従来不可能であった51mmHg以上の脈管圧が測定できるようになり、従来の技術で測定可能であった低圧から中等圧の静脈圧のみでなく、高圧の静脈圧および動脈圧の測定が可能となった

• これにより既存の技術では計測不能なピンポイントでの動脈圧も測定可能となった

従来技術ですでに可能であった計測

1. 中心静脈圧、中等度以下の表在静脈圧測定

(救命・集中治療領域)

1. 心エコー検査における従来法より正確な

肺動脈圧の推定(循環器内科領域)

肺動脈圧 = 中心静脈圧 + 推定右室-右房圧較差

新技術により新たに測定可能となった動静脈脈圧は?

•座位、立位での下肢静脈圧(50~100mmHg程度)•橈骨動脈単独の圧力(手関節部の血圧計では尺骨動脈と橈骨動脈の動脈圧の高い方が非選択的に測定される)

•足背動脈などの動脈圧が測定可能(現時点では観血的計測以外困難

• その他仙骨部や背部等の体幹部の皮膚を栄養する細動脈などの穿刺不能な動脈圧など

• 現在までいかなる技術でも非観血的に測定不能であった動脈および静脈圧が測定可能(一部観血的にも不能であった)となり、患者の病態を把握するための新たな指標となり、将来的に治療方針決定の指標となってゆく可能性がある

血管外科・形成外科・皮膚科領域

• 患者の緊急を要する治療の指標となり、患者の生命予後改善に寄与できる可能性がある

救急医療・集中治療領域

• 循環動態把握の重要な指標となり、治療方針決定の指標となる可能性がある

循環器内科・救急医療・集中治療領域

想定される用途

本動静脈圧測定装置の構造図

液体

バルーンまたはシリコン膜(超音波透過液体封入)

耐圧カプセル 高周波エコープローブ(約7.5~10MHz)

水量調整バルブ

空気量調整バルブ

空気圧センサー

超音波

動脈・静脈

皮膚

超音波透過バルーンの圧迫ボタン(内圧上昇目的)

圧力センサー

既存の測定器

プローブが直接動静脈を圧迫

バルーンが密着しない等の可能性測定値が低く出たり

高圧の測定が不能

空気バルーン

測定装置の内部構造

空気圧測定器

空気バルーン

液体封入バルーン 液体量調整バルブ

エコープローブ挿入前の装置

エコープローブ挿入後

空気量調整バルブ

水量調整バルブ

静脈圧測定の様子

静脈圧迫の様子

静脈を圧迫し内腔静脈を圧迫し内腔静脈を圧迫し内腔静脈を圧迫し内腔

が完全につぶれたが完全につぶれたが完全につぶれたが完全につぶれた時点時点時点時点の圧力を測定の圧力を測定の圧力を測定の圧力を測定

圧迫によりつぶれた静脈圧迫によりつぶれた静脈圧迫によりつぶれた静脈圧迫によりつぶれた静脈

動脈圧迫の様子

カラードップラーモードとし、流速を5cm/secとし、カラー

ドップラーが完全に消失した時点の圧力を測定

非観

血的

動静

脈圧

測定

値非

観血

的動

静脈

圧測

定値

非観

血的

動静

脈圧

測定

値非

観血

的動

静脈

圧測

定値

既存の方法による動静脈圧測定値既存の方法による動静脈圧測定値既存の方法による動静脈圧測定値既存の方法による動静脈圧測定値

静脈穿刺による測定値 血圧計・動脈穿刺による測定値

新規開発の非観血的動静脈圧測定値と従来の測定法による測定値の相関mmHg

mmHg

Christoph Christoph Christoph Christoph ThalhammerThalhammerThalhammerThalhammer

らにらにらにらによるよるよるよる既存既存既存既存の技術によるの技術によるの技術によるの技術による計測可能範囲計測可能範囲計測可能範囲計測可能範囲

y = 1.00 x - 2.05

p < 0.01, r = 0.99

実用化に向けた課題

•現在まだ新規開発装置での動静脈圧の測定数が少なく、測定時の患者の体位変化によるものと思われる測定誤差があり、測定回数を増やし、さらなる統計処理を行う必要がある

•装置が手作りのため、改良に時間がかかり、今回の測定にてやや測定が困難であった動脈圧測定(患者への圧迫に力を要する)が容易となるよう、患者と接するバルーン部の形状をより薄くする必要がある

•装置をコンパクトに、できれば圧力測定装置を内臓できるよう改良が望まれる

市場性について

・本発明の脈圧測定装置は主に救急医療現場での使用が考えられる。全国の救急医療施設が本発明の市場となる

施設数は4620施設(平成24年厚生労働省医政局調べ)

・販売予想価格 30万円

以上を踏まえ、国内でも年間数十億の見込みが期待できる。また、装置内の液体充満部は消耗品になることが考えられる。

企業への期待

• 装置の段階的な改良およびコンパクト化

• 様々な形状のエコープローブ形状への対応

• 臨床試験への協力

本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 脈圧測定装置

• 出願番号 特願2015-176249

• 出願人 学校法人 久留米大学

• 発明者 友枝 博

問い合わせ先

久留米大学 産学官連携戦略本部

担当者:井上 薫、松尾 綾、日下 千賀子

TEL 0942 - 31 - 7916

FAX 0942 - 31 - 7918

e-mail chikan@kurume-u.ac.jp