国際比較研究:放送・通信分野の独立規制機関 第2 …48 july 2010...

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46 JULY 2010 はじめに 2000 年に入って放送・通信の融合が一層深 まる中,韓国では行政管轄上の範囲をめぐり, 放送分野を管轄する放送委員会 1) と通信分野 を管轄する情報通信部などの間で主導権争い が繰り広げられてきた。しかし,2008 年 2月に イ・ミョンバク(李明博)政権が発足し,直後 に「放送通信委員会の設置および運営に関す る法律」(以下,放通委法)が施行されたこと で,放送と通信の規制監督機関が一元化され た。放通委法に基づいて設立されたのは,大 統領直属のKCC(Korea Communications Commission,放送通信委員会)で,法律 上は政府機関であるが国務総理の指揮・監 督は受けない。放通委法はまた,利用者など からの求めに応じて放送や通信の内容につい て審議する機関を定めており,KCCとは別に KCSC(Korea Communications Standards Commission,放送通信審議委員会)が設立 された。 本稿では,これら2つの機関について整理 し,政治からの独立といった観点で検討する。 執筆にあたっては,韓永學論文 2) ,尹成玉論 3) ,黃懃論文 4) を中心とした先行研究 5) から 多くの教 示を得るとともに,KCC および KCSC の資料により,新たな情報を得ることができた。 なお,全体構成は以下の通りである。 1. 設立の経緯 2. KCC(放送通信委員会) 2-1. 組織と業務内容 2-2. 青瓦台・国会との関係 2-3. 予算規模 3. KCSC(放送通信審議委員会) 3-1. 組織と業務内容 3-2. 主な制裁事例 4. 考察 ─政治からの「独立性」の観点から─ 1. 設立の経緯 放送の規制監督機能について韓国では, 1987年の民主化以降も,基本的には政府機関 が担ってきた。しかし,キム・デジュン(金大中) 政権下の2000 年に,合議制独立行政機関とし て放送委員会が発足し,放送行政を引き継ぐこ とになった。ところが,放送と通信の融合が新 たな問題を顕在化させた。放送と通信の両方に またがるサービスが登場するたびに,放送委員 会と情報通信部が管轄権をめぐって対立し,さ らには文化観光部までが加わるなどして,政策 【シリーズ】 国際比較研究:放送・通信分野の独立規制機関 第2回 韓国 KCC(放送通信委員会)と KCSC(放送通信審議委員会) ~政治からの「独立性」は保てるか~ メディア研究部(海外メディア研究)  田中則広

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Page 1: 国際比較研究:放送・通信分野の独立規制機関 第2 …48 JULY 2010 「総則」(第1条,第2条),第2章「放送通信委 員会の設置など」(第3条~第10条),第3章「委

46  JULY 2010

はじめに

2000年に入って放送・通信の融合が一層深まる中,韓国では行政管轄上の範囲をめぐり,放送分野を管轄する放送委員会1)と通信分野を管轄する情報通信部などの間で主導権争いが繰り広げられてきた。しかし,2008年2月にイ・ミョンバク(李明博)政権が発足し,直後に「放送通信委員会の設置および運営に関する法律」(以下,放通委法)が施行されたことで,放送と通信の規制監督機関が一元化された。放通委法に基づいて設立されたのは,大統領直属のKCC(Korea Communications Commission,放送通信委員会)で,法律上は政府機関であるが国務総理の指揮・監督は受けない。放通委法はまた,利用者などからの求めに応じて放送や通信の内容について審議する機関を定めており,KCCとは別にKCSC(Korea Communications Standards Commission,放送通信審議委員会)が設立された。

本稿では,これら2つの機関について整理し,政治からの独立といった観点で検討する。執筆にあたっては,韓永學論文 2),尹成玉論文 3),黃懃論文 4)を中心とした先行研究 5)から

多くの教示を得るとともに,KCCおよび KCSCの資料により,新たな情報を得ることができた。なお,全体構成は以下の通りである。

1.設立の経緯2.KCC(放送通信委員会)2-1. 組織と業務内容2-2.青瓦台・国会との関係2-3.予算規模3.KCSC(放送通信審議委員会)3-1.組織と業務内容3-2.主な制裁事例4.考察─政治からの「独立性」の観点から─

1. 設立の経緯

放送の規制監督機能について韓国では,1987年の民主化以降も,基本的には政府機関が担ってきた。しかし,キム・デジュン(金大中)政権下の2000年に,合議制独立行政機関として放送委員会が発足し,放送行政を引き継ぐことになった。ところが,放送と通信の融合が新たな問題を顕在化させた。放送と通信の両方にまたがるサービスが登場するたびに,放送委員会と情報通信部が管轄権をめぐって対立し,さらには文化観光部までが加わるなどして,政策

【シリーズ】 国際比較研究:放送・通信分野の独立規制機関

   第 2 回 韓国 KCC(放送通信委員会)と     KCSC(放送通信審議委員会)

  ~政治からの「独立性」は保てるか~

メディア研究部(海外メディア研究) 田中則広

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その後,大統領選挙(2007年12月)でハンナラ党のイ・ミョンバク候補が当選し,韓国の政権は10年間続いた革新系から保守系に交代することになる。新政権発足前の2008年1月,ハンナラ党(当時,野党)は,放送通信委員会を大統領直属の合議制機関とする法案を国会に提出するが,これについて大統合民主新党(当時,与党)は,政治的中立性が欠如するとして反対した 10)。しかし,新政権発足の直前に与野党は,KCCを大統領直属とし,委員5人のうち大統領2人,国会3人の比率で委員の推薦権を持つことで合意した 11)。こうした与野党の動きに対して,放送界や市民は,大統領直属機関ではなく無所属の独立機関にすべきだと主張して反対した 12)。しかし,2008年2月のイ・ミョンバク政権発足後,放通委法が施行されたことにより,大統領直属のKCC,それに,法律上独立機関として定められたKCSCが発足した。

2. KCC(放送通信委員会)

第2章では,KCCの組織体制を概観した上で,他の行政機関,特に青瓦台(大統領府)および国会との関係をみる。また,2010年度の予算規模についてもふれる。

2-1. 組織と業務内容放通委法に依拠して設立されたKCCは,

「放送の自由と公共性および公益性の向上」,「放送・通信の国際競争力強化」,「KCCの独立的運営を保障することによって国民の権益保護と公共福利の増進に貢献すること」などを設立目的としている(第1条)13)。

放通委法は,全5章29条からなり,第1章

決定に遅れが生じるようになったのである。こうした状況を打開すべく,次のノ・ムヒョン(盧武鉉)政権下では放送・通信融合に向けた立法化準備が本格化した。2006年7月28日,政府,放送業界,通信業界,市民団体によって構成された国務総理所属の諮問機関,放送通信融合推進委員会(以下,融推委)が設置された 6)。融推委では,放送委員会,情報通信部,文化観光部がそれぞれ提示した機構改編方案について検討を重ね,同年10月に3つの案を示した。このうち,①「放送委員会案」は,統合委員会にするという案で,政策,振興,規制の各機能を大統領直属(職務上は独立)または独立委員会にするという内容,②「情報通信部案」は,政策,振興と規制を分離するという案で,政策,振興は政府部署に,規制は大統領

(総理)直属の委員会(職務上は独立)で担当するという内容,③「文化観光部案」は,規制と振興を分離するという案で,規制(政策,執行)機能は大統領または国務総理直属の委員会(職務の独立性保障)に,振興(政策,執行)機能は政府部署に,それぞれ統合するという内容であった 7)。融推委では検討の結果,「独立性保障の側面」からは合議制,「振興的側面」からは独任制(※合議制に対する概念で,大臣や知事など,行政庁が1人の者により構成されている場合をいう)的性格が必要であるとして

「大統領所属合議制行政機関」を設置するが,「独任制的性格を含まなければならない」とした案を支持し,この案が多数案であるとした意見書を国務総理に提出した 8)。そして,2007年1月には,この多数案を土台とする法案を国会に提出したが,結果的に,大統領の独断的な委員の任命方式や委員会の独任制的な性格等が批判されて頓挫した 9)。

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「総則」(第1条,第2条),第2章「放送通信委員会の設置など」(第3条~第10条),第3章「委員会の所管事務」(第11条,第12条),第4章

「委員会の運営」(第13条~第17条),第5章「放送通信審議委員会」(第18条~第29条)によって構成されている。KCCに関して規定した,第1章から第4章までの条文に沿ってKCCの組織と業務内容を概観する。

委員会は委員長1人,副委員長1人を含む5人で構成されており(第4条第1項),委員長および委員は放送および情報通信分野の専門性を考慮して大統領が任命する(第5条第1項)。委員5人のうち,大統領が委員長を含む2人を指名し,国会が3人を推薦する。国会は委員の推薦にあたり,大統領が所属あるいは所属していた政党の交渉団体(会派)から1人を,その他の交渉団体から2人を推薦する(第5条第2項)。

2010年4月末時点で委員は4人(欠員1人)である。委員長には,東亜日報政治部部長,韓国ギャラップ調査研究所会長などを歴任したチェ・シジュン(崔時仲)氏が就いている。チェ氏はKCC初代委員長で,2007年に行われた大統領選挙の際にはイ・ミョンバク候補の選挙対策委員会顧問として現政権の誕生に関わった人物である。チェ委員長ともう1人,大統領が指名した委員は,前情報通信部通信委員会常任委員のヒョン・テグン(邢泰根)氏である。また,国会が推薦した委員は,与党が前SBS 社長のソン・ドギュン(宋道均)氏,野党がキョンヒ(慶煕)大学副総長のイ・ギョンジャ(李京子)氏である。なお,イ・ギョンジャ氏はKCC副委員長でもある。なお,野党推薦のイ・ビョンギ(李秉基)ソウル大学教授は,2010年2月,およそ1年の任期を残して辞任した。よって,委員の

図1 KCC組織図(2010年4月時点)

委員長 副委員長 常任委員

スポークスパーソン

企画調整室 放送通信融合政策室 放送政策局 通信政策局 利用者保護局

国際協力官 電波企画官 運営支援課

電波研究所

中央電波管理所

ネットワーク政策局

政策企画官 融合政策官・放送政策企画課・地上放送政策課・ニューメディア政策課・放送チャンネル政策課

・企画財政担当官・行政管理担当官・規制改革法務担当官・議案調整チーム・情報戦略チーム

・国際協力担当官・国際機構担当官

・電波政策企画課・電波放送管理課・周波数政策課

非常計画担当官 放送振興企画官

・放送運営総括課・デジタル放送政策課・編成評価政策課

監査担当官

・通信政策企画課・通信競争政策課・通信利用制度課・通信資源政策課

・調査企画総括課・市場調査課・利用者保護課・視聴者権益増進課(C/Sセンター)

・ネットワーク企画保護課・個人情報保護倫理課・インターネット政策課・政策総括課

・融合政策課・放送通信振興政策課・放送通信緑色技術チーム

(KCCのホームページより)

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構成は,ジャーナリスト出身2人,アカデミズム出身1人,官僚出身1人となっている。

事務組織は,2室(企画調整室,放送通信融合政策室)4局(放送政策局,通信政策局,利用者保護局,ネットワーク政策局)などからなり(図1),傘下に電波研究所と中央電波管理所を持つ。定員数は,本部491人,電波研究所184人,中央電波管理所937人の計1,612人であり,本部職員の大半は放送委員会および情報通信部からの移籍組である。

KCCの所管事務は,「放送に関する事項」,「通信に関する事項」,「電波研究および管理に関する事項」などであり(第11条第1項),所管事務のうち,審議・議決事項を第12条第1項で以下のように定めている。① 放送・通信基本計画に関する事項② 放送事業者の許可・再許可・承認・登録・

取り消しなどに関する事項③ 電気通信事業者の許可・取り消しなどに関す

る事項 ④ 周波数の効率的使用に関する事項⑤ 放送・通信関連技術政策の樹立に関する事項⑥ 放送番組の流通上の公正取引秩序の確立

に関する事項⑦ 放送・通信サービスの高度化および普遍的

サービスに関する事項⑧ 放送・通信事業者相互間の共同事業や紛争

の調停または事業者と利用者間の紛争の調停⑨ 電気通信設備の提供・共同利用・相互接続

または共同使用などや情報提供に関する協定の認可などに関する事項

⑩ 放送事業者・通信事業者の禁止行為に対する措置および課徴金賦課に関する事項

⑪ 放送番組および放送広告の運用・編成に関する事項

⑫ 放送・通信に関する研究・調査および支援に関する事項

⑬ 視聴者苦情処理および放送・情報通信利用者保護・福祉に関する事項

⑭ 放送・通信関連基金の助成および管理・運用に関する事項

⑮ 放送・通信関連の国際協力および通商に関する事項

⑯ 放送・通信関連の南北交流・協力に関する事項

⑰ KCC の予算編成および執行に関する事項⑱ 所管法令および KCC 規則の制・改定およ

び廃止に関する事項⑲ この法または他の法律によりKCC の審議・

議決事項に定めた事項

KCCの法律上の位置付けは「中央行政機関」であるが,所管事務の審議・議決事項のうち,放送事業者の許認可や番組の編成などを定めた事項については,国務総理の指揮・監督が適用されないことが定められている(第3条第2項)。

2-2. 青瓦台・国会との関係KCCの政治からの独立を考える上で,他の

行政機関との関係把握は欠かせない。そのため,ここでは特に青瓦台や国会との関係について言及する。

KCCは大統領直属の合議制機関であるため,当然ながら青瓦台とのつながりは深い。前記の通り,青瓦台が5人の委員について任命し,このうち,2人は大統領が指名した人物,残り3人のうちの1人は大統領が所属あるいは所属していた政党の交渉団体が推薦した人物であるため,「大統領側」の委員が過半数を占めるシステムになっている。5人の委員のうち,大統領

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が任命する委員長については,国会の「人事聴聞会」を経なければならない。人事聴聞会とは,公選によらない任命職の公職者を大統領が任命する前に,国会においてその候補者に対する検証を行うもので,候補者の専門性,業務遂行能力,財産形成過程,学歴と経歴,人格や周囲の評判などを中心に質疑が行われる14)。チェ委員長のケースでは,2008年3月18日に人事聴聞会が開かれ,野党は「不適格」として,人事聴聞会の結果報告書の採択を拒んだが,韓国の国会法では,結果報告書の採択如何にかかわらず,大統領が任命できるため,同年3月26日,KCCのチェ新体制がスタートした 15)。

KCC委員長は,所管業務に関して国会で発言する権利を持つ一方,国会の要求がある場合には,報告や答弁を行う義務を負う。このほか,KCCは毎年,業務遂行に関する報告書を国会に提出する義務を負っている。

2-3. 予算規模予算は,一般政府予算および放送関連事

業促進のために設けられた放送発展基金(最大の財源は地上テレビ局の広告収入の法定負担金)によって賄われている。2010年度の歳出予算規模は総額5,983億ウォン(約500 億円:2010年4月末 時点 ) で,2009年度に比べ て147億ウォン

(2.5%)の増加になっている(表1)。内 訳は政 府 予算3,321億ウォン(一般 会 計 3 , 2 5 6 億ウォン,革新都市建設特別会計65億ウォン),放送発

展基金 2,662 億ウォンである16)。2010年度予算の特徴についてKCCは3点を

挙げている。第1に,韓国政府が国政上の重要課題と位置付けている事案に対する重点投資である。高度化,組織化するサイバー攻撃などへの対応をはじめとする情報保全の強化や,2012年末のアナログテレビ放送終了にともなう混乱を防ぐとともに,デジタル放送転換のための財源獲得が困難な放送事業者への支援実施などである。第2に,将来的に成長が見込まれる事業を発掘するための投資である。放送コンテンツ産業の振興支援強化の一環として,デジタル放送コンテンツの支援センター設立,放送コンテンツの投資組合に対する出資,それに,3DTVの実験放送支援といった新規事業の予算を計上している。第3に,これまでに実施した事業の構造調整である。継続事業が段階的に仕上がることで1,425億ウォンを減額(前年度比322億ウォン減),また,類似事業の統合や事業の完了などにより510 億ウォンの予算削減を見込んでいる17)。

3. KCSC(放送通信審議委員会)

放送・通信関連の機能全般をKCCが統括する一方,内容審議については,KCCとは別組

表1 KCC 歳出予算(2010 年度)

区分2009 年度 2010 年度 増減

本予算 補正予算 %総計 5,836 6,113 5,983 147 2.5

財源別

政府予算 2,923 3,200 3,321 398 13.6一般会計 2,912 3,189 3,256 344 ─ 革新都市建設特別会計 11 11 65 54 ─

放送発展基金 2,913 2,913 2,662 △ 251 △ 8.6

(単位:億ウォン)

(KCC「2010年度予算および基金運用計画概要」を基に作成)

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織のKCSCが行っている。第3章では,放通委法第5章「放送通信審議委員会」(第18条~第29条)に依拠して設立されたKCSCの組織体制を概観するとともに,2009年の法的制裁の具体事例について言及する。

3-1. 組織と業務内容組織の設置に関しては,放送内容の公共性

および公正性の保障,情報通信における健全な文化の発達と適切な利用環境を作り上げるために,独立的に事務を遂行するKCSCを置くことが定められている(第18条第1項)。2008年5月14日にスタートしたKCSCは,前出の放送通信融合推進委員会と2007年1月に編成された国会の放送通信特別委員会における論議の結果を反映させて,放送委員会と,情報通信部傘下の情報通信倫理委員会に分かれていた内容審議の機能を統合した機関である18)。

KCSCは9人の委員で構成され,委員長1人,副委員長1人を含む3人の委員が常任となる(第18条第2項)。委員は大統領が委嘱するが,この場合,3人は国会議長が国会各交渉団体代

表議員と協議して推薦した者に委嘱し,3人は国会所管常任委員会が推薦した者に委嘱する

(第18条第3項)。また,常任委員の3人は互選で(第18条第4項),KCSC委員の任期は3年となっている(第18条第5項)。

2010年4月時点での委員構成は,委員長が2009年8月に就任した前大韓弁護士協会会長のイ・ジンガン(李鎭江)氏,副委員長にチョン・ヨンジン(全容禛)前情報通信研究振興院知的財産権センターセンター長,常任委員にオム・ジュウン(嚴柱雄)前韓国デジタル衛星放送

(Sky Life)放送本部長が就いている。このほか,6人の非常任委員を含めたKCSC委員の構成については表2の通りである。

次に,事務組織についてであるが,放通委法はKCSCの事務処理に必要な組織の設置を定めている(第26条第1項)。組織図は図2の通りで,企画調整室,放送審議室,通信審議室など4室2局18チームおよび5つの地域事務所(釜山,光州,大邱,大田,江原)から構成されている。

KCSCにおいて,放送・通信の内容審議を

表 2 KCSC 委員一覧

(2010年4月時点)

氏名 職位 経歴大統領推薦 イ・ジンガン(李鎭江) 委員長(常任) 前大韓弁護士協会 会長

チョン・ヨンジン(全容禛) 副委員長(常任) 前情報通信研究振興院知的財産権センター センター長

キム・ユジョン(金姷廷) 委員(非常任) 水原大学言論情報学科 教授

国会議長推薦 オム・ジュウン(嚴柱雄) 委員(常任) 前韓国デジタル衛星放送 放送本部長

ソン・テギュ(孫太圭) 委員(非常任) 檀国大学言論映像学部 教授

クォン・オチャン(權五昶) 委員(非常任) 弁護士

国会所管常任委員会推薦

イ・ユンドク(李潤德) 委員(非常任) 大邱大学情報通信工学部 教授

ペク・ミスク(白美淑) 委員(非常任) ソウル大学基礎教育院 研究教授

イ・ジェジン(李在鎭) 委員(非常任) 漢陽大学新聞放送学科 教授

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行っているのが放送審議室と通信審議室である。放送審議室の場合,審議対象となる放送サービス別にチームが分かれている。

放送審議企画チーム

放送審議の基本計画などを担当地上放送審議チーム

地上放送事業者の放送内容審議を担当有料放送審議チーム

総合有線放送事業者・衛星放送事業者・インターネットマルチメディア放送事業者・放送チャンネル使用事業者の放送内容審議を担当広告審議チーム

商品紹介と販売専門放送,いわゆるショッピングチャンネルの放送内容や放送広告の審議を担当

放送内容の審議にあたってKCSCでは,韓国国内の地上放送,ケーブルテレビチャンネル,ラジオチャンネル240チャンネルを24時間収録し,放送終了後2か月間保存する体制を取っている。

審議は,KCSCが定めた放送審議の基準に沿っており,この基準は,「放送法」第33条第2項に依拠している。同条項は審議内容に関し,以下の事項を挙げている。① 憲法の民主的基本秩序の維持と人権尊重に

関する事項② 健全な家庭生活保護に関する事項③ 児童および青少年の保護と健全な人格形成

に関する事項④ 公衆道徳と社会倫理に関する事項⑤ 両性平等に関する事項⑥ 国際的友好の増進に関する事項⑦ 障害者など放送から疎外された階層の権益

増進に関する事項⑧ 民族文化の発展と民族の主体性育成に関す

る事項⑨ 報道・論評の公正性・公共性に関する事項⑩ 言語醇化に関する事項⑪ 自然環境保護に関する事項⑫ 健全な消費生活および視聴者の権益保護に

関する事項⑬ 法令により放送広告が禁止される品目や内

図 2 KCSC 組織図

事務総長

監査室

企画調整室

戦略企画チーム

対外協力チーム

広報チーム

研究分析チーム

放送審議室 通信審議室 権益保護局 運営支援局

放送審議企画チーム

地上放送審議チーム

有料放送審議チーム

広告審議チーム

通信審議企画チーム

不法情報審議チーム

有害情報審議チーム

権利侵害情報審議チーム

名誉毀損紛争調整チーム

利用者支援チーム

有害環境改善チーム

総務チーム

運営管理チーム

情報電算チーム

地域事務所(5)

(KCSCのホームページより)

(2010年4月時点)

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容に関する事項⑭ 放送広告内容の公正性・公益性に関する事項⑮ その他この法の規定によるKCSC の審議業

務に関する事項

審議は図3の手順で行われている。

❶ KCSC には,番組内容に問題があるなどとする一般視聴者や団体からの審議要請・問い合わせが,インターネット,手紙,電話などを通じて寄せられる。これと並行して,毎週,KCSC が委託したモニター要員により,担当者宛にモニタリング日誌が提出される。

❷ 問題点などを指摘された番組は,地上放送,ケーブルテレビ・衛星放送など,ショッピングチャンネル・放送広告など,の 3 つに区分され,それぞれの担当チームが審議する。

❸ 担当チームによる解決が難しい場合には,小委員会で判断する。小委員会は KCSC の委員により構成されており,常任委員会,放送審議小委員会,通信審議小委員会,広告

審議小委員会の 4 委員会がある。このうち,放送に関しては,放送審議小委員会および広告審議小委員会(それぞれ KCSC 委員 5人以内で構成)が担当する。行政指導(勧告)措置の場合には,この段階で KCSC が直接,放送事業者に対して措置を取り(公文書の送付)完了する。

❹ 小委員会は必要に応じて,外部の専門家により構成された特別委員会に意見を求める。特別委員会は放送の場合,報道・ 教養,芸能・ 娯楽,広告の 3 つがある。

❺ 行政指導より厳しい法的制裁措置については,全体会議(KCSC 委員全員で構成)において検討される。全体会議で法的制裁が決定した場合,KCC に対して処分要請を行うことになる。

❻ KCC は,基本的には KCSC の決定に沿って,該当する放送事業者に制裁措置を科す。

❼ 制裁措置を受け入れた放送事業者は,実施後,KCC に対して報告を行う。なお,KCSCの運営経費については,放通

委法第28条に,放送発展基金,情報通信振興基金のほか,大統領令に定める基金からの支給が明記されているが,2010年度の予算は全額,放送発展基金からの支援によるもので,総額は247億ウォン(約20 億円)である。

3-2. 主な制裁事例制裁措置は放送法第100条に依拠しており,

「視聴者に対する謝罪」を筆頭に,「該当する放送番組または該当する放送広告の訂正・修正または中止」や「放送編成責任者・該当する放送番組または該当する放送広告の関係者に対する懲戒」が処分としては重く,その次に「警告」,

「注意」が続く。2009年(1月1日~ 12月31日)

図 3 放送内容審議の手順

視聴者からの審議要請・問い合わせ

担当チーム 審議研究委員

放送分科特別委員会

事務組織で検討

諮問要請 諮問意見

勧告以下最終議決

法的制裁ー KCCに処分要請

放送事業者へ通報

制裁措置実施後にKCCへ報告

モニタリング❶

放送 /広告 審議小委員会

KCSC全体会議

KCC

放送事業者

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に放送全体に対して取られた法的制裁は389件で,内訳は「視聴者に対する謝罪」34件,「該当する放送番組の中止」4件(4件とも有料放送),「該当する放送番組の関係者に対する懲戒」2件(2件とも地上放送),「並行制裁」 19)2件,「警告」120件,「注意」227件であった。

(1)ドラマの非倫理・扇情・暴力性

MBCドラマ『飯をくれ』(放送日:2009年6月24日他)は,夫婦間の性暴力の暗示や不倫女性に対する集団暴行や悪口など,刺激的な素材を午後8時という時間帯に放送し,「注意」措置に続き,「視聴者に対する謝罪」措置が下された。また,SBSドラマ『妻の誘惑』(2009年1月9日他)は,放送当初の「勧告」措置にもかかわらず,非倫理的で不道徳な男女関係,過度の大声,悪口などといった内容を持続的に放送したため,「警告」措置が下された。

こうしたドラマについてKCSCは,ハッピーエンド,勧善懲悪,家族の結合などの結果を迎えるにしても,不倫,不法,非人間的行為など,家族の基本的な倫理的価値をないがしろにするような内容が続くため,地上放送の家族視聴時

間帯に長期間放送する内容にしては不適切であるとしている。

(2)人権侵害

「背の低い男はloser(敗者)」という表現を放送して,社会的物議をかもしたKBS2『美女たちのおしゃべり』(2009年11月9日)には,「該当する放送番組の関係者に対する懲戒」措置が下された。同番組は,一般女子大生の発言を通して「背の低い男は敗者だと思います」,「万国共通で背の低い男が笑いものになるようだ」といった内容とともに,「背の低い男は... loser!」などと字幕を流すなど,身体的な差異を冷やかしの対象,劣った対象として描写し,放送した。

(3)公正性および客観性

2008年末に「メディア関連法」をめぐる論議が起き,一部の報道に対して市民団体などから公正性および客観性に関する提議があった。放送内容を審議した結果,MBC『ニュースフー』

(2008年12月20日他)に「視聴者に対する謝罪」措置,MBC『ニュースデスク』(2008年12月25日他)に「警告」措置が下された。『ニュースフー』は放送法改正案による財閥とマスコミの癒着の危険性に関する報道など,『ニュースデスク』は,放送法改正案に対する反対表明などが審議の対象となった 20)。放送内容を審議した結果,KCSCは,社会的争点や利害関係が鋭く対立している事柄を扱っているにもかかわらず,公正性と均衡性が維持できていないと指摘した。これに対して,MBC側は『ニュースデスク』の警告措置について行政訴訟事件の裁判を専門に行う裁判所「行政法院」に「制裁措置処分取り消し訴訟」を起こしたものの,行政法院はこれを棄却する決定を下した。

表 3 制裁種類別状況(2009 年)

種類 件数

視聴者に対する謝罪 34

該当する放送番組の中止 4該当する放送番組の関係者に対する懲戒 2

並行制裁 2

警告 120

注意 227

法的制裁小計 389

勧告 413

総計 802

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(4)商品・サービス等の広報

この分野の制裁措置は主にドラマに集中している。ドラマなどに商品を登場させて間接的に広告を行うプロダクト・プレースメント

(Product Placement)は韓国で禁止されており,これに違反したとして,KBS2ドラマ『妻と女』(2008年11月28日他),SBSドラマ『嫁と嫁様』(2008年11月24日他),『ガラスの城』

(2009年1月18日他),『スタイル』(2009年8月1日他)に「視聴者に対する謝罪」措置が下された。また,MBCドラマ『内助の女王』(2009年3月23日他),SBSドラマ『華麗なる遺産』

(2009年5月3日),SBSドラマ『シティホール』(2009年4月29日他),MBCドラマ『シンデレラマン』(2009年4月16日他)には「注意」措置が下された。

(5)その他

SBS『驚くべき大会スターキング』(2009年7月18日)は,一般視聴者が出演し,朝の出勤準備を3分で全て終えるという「3分出勤法」を放送したが,これが日本の放送番組の盗作であったことが判明した。また,担当ディレクターが出演者に動画を渡して,事前練習までさせていたことも明らかになり,さらなる波紋を呼んだ。この番組に対しては「該当する放送番組の関係者に対する懲戒」措置が下された。

以上が,地上放送に対する制裁事例である。地上放送の法的制裁件数は63件と,全体の16.1%を占めている。これに対して,有料放送の法的制裁件数は233件,59.8%を占めており,以下のような制裁事例がある。

日本文化専門チャンネルのチャンネルJの場合,「ホステス」,「組織暴力団」,「人身売買」

などを扱った日本のドラマ『女帝』(2009年5月31日)を「青少年視聴保護時間帯」 21)に放送し,女性を強姦する場面,酒場の女性従業員が客と性関係を持つ場面などを流したとして,「視聴者に対する謝罪」措置が下された。また,音楽中心の娯楽チャンネルm.netの場合,サバイバル形式のモデル育成番組『I AM A MODEL 4』(2008年12月27日他)で,女子中学生の挑戦者に,男性モデルとセミヌードを撮影するよう命令し,抵抗を感じながらも挑戦者が男性モデルと体をくっつけて撮影する様子などを放送したため,「注意」措置が下された。

これらの制裁措置は,KCSCの決定に沿って政府機関であるKCCが行う。その結果は,KCCが毎年放送事業者を対象に実施する放送評価に反映される。地上放送の場合,合計900点(配点:内容,編成,運営それぞれ300点)として,内容300点のうち100点分を占める「放送審議関連制規定遵守」から減点される。減点数は,注意1点,警告2点,視聴者に対する謝罪,該当する放送番組の訂正・修正または中止,放送編成責任者・該当する放送番組の関係者に対する懲戒各4点,併科の場合6点などとなっている。そして,放送評価の結果は,3年ごとに行われる放送免許の再許可審査の結果を左右する。

4. 考察─政治からの「独立性」の観点から─

放送と通信の融合が進み,IPTVをはじめ,各種サービスが登場する中で,世界各国では経済の活性化を図りつつ,一方で,メディアの独立性,多様性,公益性などをいかに維持していくのかについて試行錯誤が続いている。この点に関しては韓国も同様である。韓国は,アメリカ

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の連邦通信委員会(Federal Communications Commission)をモデルとしながらも,大統領直属という独自のスタンスをとっており,また,政治からの独立といった観点からは,必ずしも十分とはいえないことが,これまでの研究でも指摘されてきた 22)。

また,内容審議についてであるが,これまで放送内容の審議は,合議制独立行政機関とはいえ放送行政を担う組織(放送委員会)の内部で行っており,通信内容の審議は,情報通信部傘下の情報通信倫理委員会が行っていた。こうした点を鑑みると,KCCとは別にKCSCを設立し,内容審議を担わせることにした点は大いに評価できる。とはいえ,表現の自由を何より大切に扱わなければならないKCSCの決定が政治状況に左右される可能性についての懸念も出ている23)。

現政権発足後,放送・通信分野において大きな権力を持つKCC委員長のポストに大統領の最側近が就任し,主要な放送局のトップにも大統領に近いといわれる人物が就任してきた。報道専門チャンネルYTNのケースでは,2007年の大統領選挙の際に,イ・ミョンバク陣営で活動した人物が新社長に就任することになったのを契機として労働組合と経営が対立,2008年10月には経営が労働組合の委員長などを解雇したことから,処分に抗議する意味で,アンカーや記者たちが喪服を連想させる黒い衣装やネクタイを着用したまま放送を行うといった事態も起きている。いわゆる「ブラック闘争」である。これに対してKCSCは,「放送の公的責任」,「公正性」に違反したとして,YTNのニュース番組に対し,「視聴者に対する謝罪」措置を下した。

KCSCによる制裁措置をめぐっては,現実問

題として倫理上問題のある番組が数多く放送されており,こうした観点からは内容を審議する機関の存在は意義があると思われる。しかし,YTNのケースを含む公正性に関する事案については一考の余地があろう。この点については,今後より一層の国民的論議が期待されるところである。

(たなか のりひろ)

注:1)ただし,放送のハードウェア政策については情

報通信部が,放送のソフトウェア政策については文化観光部がそれぞれ担当していた。また,放送法で定められた放送事業者の許認可についても,免許の推薦は行うものの,交付は情報通信部が行っていた。

2)韓永學「放送・通信規制機関の再編に関する一考察 ―韓国の放送通信委員会の設立と日本への示唆―」『情報通信学会誌』第 90 号,第 27巻第 1 号,情報通信学会,2009 年 5 月 25 日,11-23 頁。

3)尹成玉「방송통신심의위원회의 평가와 개선방

향(放送通信審議委員会の評価と改善方向)」『여의도저널(汝矣島ジャーナル)』通巻第 15号,2009 年春号,여의도클럽(汝矣島クラブ),ソウル,2009 年 3 月 30 日,22-41 頁,および,金鎬碩ほか 「 한국방송협회 연구보고서

2008-01 방송통신융합과 미디어 법제 연구

(韓国放送協会研究報告書 2008-01 放送通信融合とメディア法制研究)」韓国放送協会,ソウル,2008 年 9 月,57-71 頁。尹成玉氏は,放送規制機関と審議機関を扱った第 4 章部分(57-71 頁)を担当。

4)黃懃「방송통신위원회의 구조와 역할에 대한

평가 연구(放送通信委員会の構造と役割に対する評価研究)」『미디어경제와 문화(メディア経済と文化)』第 6-3 号,2008 年夏,커뮤니

케이션북스(コミュニケーションブックス),ソウル,2008 年 8 月 25 日,169-209 頁。

5)韓国のメディア規制組織に関してはすでに多くの研究があるが,韓論文,尹論文,黃論文の他にも代表的なものとして,金榮珠「방송 • 통신

의 융합과 규제기구의 일원화(放送・通信の融

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合と規制機構の一元化)」『國會圖書館報』第45 巻第 4 号通巻第 347 号(国会図書館,ソウル,2008 年 5 月 31 日,6-17 頁),高旼秀「방송통

신위원회 설립과 운영 그리고 문제점(放送通信委員会設立と運営そして問題点)」『여의도저

널(汝矣島ジャーナル)』通巻第 15 号,2009年春号,여의도클럽(汝矣島クラブ),ソウル,2009 年 3 月 30 日,5-21 頁,桂京汶「방송통신

위원회의 법적 지위와 권한(放送通信委員会の法的地位と権限)」『외법논집(外法論集)』第33 巻第 2 号,한국외국어대학교 전문분야연구

센터 법학연구소(韓国外国語大学校専門分野研究センター法学研究所),ソウル,2009 年 5月 29 日,347-378 頁,などがある。

6)国務調整室/放送通信融合推進委員会編『放送通信融合推進白書』国務調整室/放送通信融合推進委員会,ソウル,2008 年 1 月,21 頁。

7)国務調整室/放送通信融合推進委員会編,前掲書,72 頁。

8)国務調整室/放送通信融合推進委員会編,前掲書,80-83 頁。

9)韓,前掲論文,13-14 頁。10)『東亜日報』2008 年 1 月 29 日,朝刊,A18 面。11)『京郷新聞』2008 年 2 月 21 日,朝刊,1 面。12)金東俊「방송독립성 보장하는 심의위원 구성

필요(放送独立性保障する審議委員構成必要)」『放送文化』第 319 号,韓国放送協会,ソウル,2008 年 3 月 15 日,10 頁。

13)放通委法第 1 条の条文は「この法は放送と通信の融合環境に能動的に対応して放送の自由と公共性および公益性を高めて放送・通信の国際競争力を強化して放送通信委員会の独立的運営を保障することによって国民の権益保護と公共福利の増進に貢献することを目的とする」と規定しているが,この条文は曖昧であるとの指摘がある。黃(前掲論文,174 頁)によれば,論理的には放送通信委員会の独立的運営を保障することによって放送の自由と公共性と公益性を高めて,放送・通信の競争力強化を通して究極的に国民の権益保護と公共福利を増進させるという目的を含んでいるのであるが,「放送の自由,公共性,公益性保障と放送通信の競争力強化」という手段と「放送通信委員会の独立的運営保障」という手段が並列的に提示されており,放送通信委員会を完全な総括機関として規定したと見るのは難しいという。

14)白井京「韓国 : 人事聴聞会法」『外国の立法』217 号,国立国会図書館調査及び立法考査局,2003 年 8月,155 頁。

15)『京郷新聞』2008 年 3 月 27 日,朝刊,2 面参照。16)放送通信委員会編「2010 년도 예산 및 기금운

용계획 개요(2010 年度予算および基金運用計画概要)」放送通信委員会,ソウル,2010 年 1 月,6 頁。なお,政府予算のうち,革新都市建設特別会計とは,電波研究所の地方移転にともなう経費である。

17)放送通信委員会編,前掲報告書,8 頁および17-37 頁参照。

18)放送通信審議委員会編『2009 放送通信審議年鑑』放送通信審議委員会,ソウル,2010 年 4 月,18 頁。

19)単一事案に対して「視聴者に対する謝罪」,「該当する放送番組または該当する放送広告の訂正・修正または中止」,「放送編成責任者・該当する放送番組または該当する放送広告の関係者に対する懲戒」などの制裁措置を同時に 2 つ以上科したケース。

20)『京郷新聞』2009 年 3 月 5 日,朝刊,12 面。21)平日午後 1 時から午後 10 時まで。しかし,

2010 年 10 月 1 日以降は拡大され,平日午前 7時から午前 9 時まで,土曜日,公休日などの午前 7 時から午後 10 時までの時間帯も含まれることになる。

22)黃は,放通委法には KCC の独立性を保障する条項が入っており,法律の条項を見た限り,ある程度独立性を保障しており,また,形式上大統領の影響力を受けるようになってはいるが,実質的に委員会形態で運営される場合,大統領の直接的な影響力行使は簡単ではない。しかし一方で,KCC が委員構成を通して政治的独立性,あるいは中立性問題を政治上の派閥の間の均衡問題として解決しようとしていることは,KCC の政治的独立性を図る上でのアキレス腱にもなると主張する(前掲論文,187 頁)。KCC については韓も,人事や予算などの面で,政治権力からの実質的な独立に限界があり,放送 ・ 通信の政策 ・ 規制の独立性,民主制,合理性の確保に一定の打撃を受けざるを得ず,とりわけ,放送の場合には,国家による隷属を強いられた過去への回帰の危険性さえあるとの見解を示している(前掲論文,17 頁)。

23)前掲,韓国放送協会研究報告書,69 頁。