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JEITA ディスプレイデバイス事業委員会 人間工学専門委員会 主催 学校教育でのICT活用における人間工学的課題と ガイドライン策定の検討 東京福祉大学 教育学部 准教授 柴田 隆史 電子ディスプレイの人間工学シンポジウム2017 2017/3/3 1

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JEITA ディスプレイデバイス事業委員会人間工学専門委員会主催

学校教育でのICT活用における人間工学的課題と

ガイドライン策定の検討

東京福祉大学 教育学部 准教授

柴田隆史

電子ディスプレイの人間工学シンポジウム20172017/3/3

1

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講演内容

小学生のタブレット端末利用に関する調査研究

日本人間工学会子どものICT活用委員会の検討

2東京福祉大学・柴田隆史

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学校におけるICT活用

3東京福祉大学・柴田隆史

電子黒板やタブレット端末を活用した授業実践

⇒ 教員によるICT機器活用と、児童・生徒1人1台のタブレット端末利用

【参考】平成25年6月に閣議決定された日本再興戦略では、2010年代中に1人1台の情報

端末による教育の本格展開に向けた方策を整理し、推進することを掲げている。

学校で教員及び児童・生徒が、安全で快適にICT機器を使う環境は、

整っているだろうか?

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児童・生徒の健康面への影響

4東京福祉大学・柴田隆史

学校及び教員を対象に実施したアンケート調査(2012年実施)⇒ ドライアイや視力の低下、姿勢の悪化などに対する懸念が多い

(文部科学省 児童生徒の健康面への影響等

に関する配慮事項 学びのイノベーション

実証研究報告書 p.277より)

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人間工学的視点①

5東京福祉大学・柴田隆史

「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」(文部科学省, 2014)

http://jouhouka.mext.go.jp/school/pdf/kenko_ict_guidebook.pdf

・タブレット端末の使用については、“見やすさ”

や “児童の姿勢”に言及

・画面への照明の映り込みを防止し見やすくす

るために、タブレット端末の角度を調節する

と良いこと、など

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人間工学的視点②

6東京福祉大学・柴田隆史

日本人間工学会「子どものICT活用委員会」

・学校教員や児童・生徒に対して人間

工学の考え方を分かりやすく述べる

・タブレット端末や電子黒板を用いる

上で配慮すべき点や、児童・生徒の

健康面への影響について言及するhttps://www.ergonomics.jp/

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1.小学生のタブレット端末利用に関する調査研究

7東京福祉大学・柴田隆史

健康面への影響などが懸念されているのにも拘わらず、状

況や課題を把握して対策を考えていく根拠となる調査デー

タや知見は少ない

健康面への影響に関するガイドラインの活用や効果などに

ついては、人間工学的視点を取り入れた調査や詳細な検討

が必要である

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アンケート調査の目的

8東京福祉大学・柴田隆史

小学校での児童のタブレット端末利用の実態を明らかにし

た上で課題を抽出することを研究目的とした

教室でのタブレット端末利用における使いやすさや身体的

疲労に関するアンケート調査を実施した

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アンケート調査の方法

9東京福祉大学・柴田隆史

学校の授業でタブレット端末を1年以上使用している、

日本国内の児童830名を対象

調査時期は2016年3月

調査内容

・児童の属性及びタブレット端末での学習の得意さ

・タブレット端末の使いやすさ

・身体的側面への影響

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結果:映り込み①

10東京福祉大学・柴田隆史

設問:画面に蛍光灯が映りこんで、見にくいことがある。

約57%の児童が、画面に蛍光灯が映りこんで、見にくいと

思うことがあった

N = 829

16% 27% 44% 13%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

Q2

ない あまりない ときどきある よくある

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結果:映り込み②

11東京福祉大学・柴田隆史

設問:画面に蛍光灯が映りこむことを知っていましたか?

約75%の児童が、タブレット端末の画面に蛍光灯が映りこ

むことを知っていた

N = 788

75% 25%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

Q3

はい いいえ

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結果:傾ける①

12東京福祉大学・柴田隆史

設問:タブレット端末を傾けて使うことがある。

約69%の児童が、タブレット端末を傾けて使うことがあった

N = 820

16% 15% 28% 40%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

Q4

ない あまりない ときどきある よくある

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結果:傾ける②(選択肢+自由回答)

13東京福祉大学・柴田隆史

設問:タブレット端末を傾けて使ったことがある場合は、そ

の理由を教えて下さい(いくつでも)。

0

100

200

300

400

蛍光灯などの映りこみをな

くすため

画面を正面から見ることで

文字や写真などを見やすく

するため

画面をタッチしやすくする

ため

紙の教科書も傾けるため

人数

• 画面に文字を書きやすくするため

• 首が疲れないようにするため

• 姿勢を良くするため

• となりの人やみんなに発表するため

• 先生にそう言われたから

• 画面を明るくするため

• いつもゲームを傾けてするから

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結果:入力①

14東京福祉大学・柴田隆史

設問:指やペンを使って、画面の思った通りの場所に絵や文

字が書けずに、ずれてしまうことがある。N = 826

約68%の児童が、指やペンを使って画面の思った通りの場

所に絵や文字が書けずに、ずれてしまうことがあった

12% 20% 40% 28%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

Q10

ない あまりない ときどきある よくある

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結果:入力②

15東京福祉大学・柴田隆史

設問:指やペンで文字が書きにくいと思うことがある。N = 825

約57%の児童が、指やペンで文字が書きにくいと思うこと

があった

21% 22% 33% 24%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

Q11

ない あまりない ときどきある よくある

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結果:疲労①

16東京福祉大学・柴田隆史

設問:タブレット端末を使うときの方が、紙の教科書を使う

ときよりも目がつかれると思う。N = 825

約55%の児童が、タブレット端末を使うときの方が、紙の

教科書を使うときよりも目が疲れると思っていた

23% 22% 28% 27%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

Q14

あてはまらない あまりあてはまらない 少しあてはまる あてはまる

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結果:疲労②

17東京福祉大学・柴田隆史

設問:タブレット端末を使っていて、腕や肩などの体のつか

れを感じることがある。N = 827

約36%の児童が、タブレット端末を使っていて、腕や肩な

どの体の疲れを感じることがあった

49% 15% 22% 15%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

Q15

あてはまらない あまりあてはまらない 少しあてはまる あてはまる

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結果:疲労③

18東京福祉大学・柴田隆史

肩:11%の児童から肩の疲れの訴え

目:23% の児童から視覚疲労の訴え 首:18%の児童から

首の疲れの訴え

手首:7%の児童から手首の疲れの訴え

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2.日本人間工学会 子どものICT活用委員会の検討

19東京福祉大学・柴田隆史

https://www.ergonomics.jp/organization/member/committee.html#r-201401

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ガイドラインの基本的な考え方①

20東京福祉大学・柴田隆史

学校でのICT学習環境において考慮する点

(1) ICT機器として電子黒板やタブレット端末などの人間工学要件

(ハードウェア的側面)

(2) ICT機器を使用する教室の人間工学要件

(視環境、機器配置など)

(3) ICT機器の使い方の人間工学要件

(機器が良くても、使い方を考えることが必要)

教員と児童・生徒からの視点が必要となる。

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ガイドラインの基本的な考え方②

21東京福祉大学・柴田隆史

ICT機器利用における「教員からの視点」と「児童・生徒からの視点」

教員

ICT機器

児童・生徒

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ガイドラインとして取り上げる項目(案)①

22東京福祉大学・柴田隆史

人間工学の考え方の紹介

⇒ 学校での児童・生徒の活動に即した例を用いる。

e.g. タブレット端末にグレアがある場合、自分の姿勢を崩すのではなく、タブレット端末の角度を変えるという対策をとる。

主に対象とするICT機器

(1) 実物投影機

(2) 電子黒板

(3) タブレット端末

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ガイドラインとして取り上げる項目(案)②

23東京福祉大学・柴田隆史

実物投影機

○ 主な使い方:教科書や補助教材、児童生徒のノート、立体物などを、電子黒板やテレビに映す。

●全般的なこと:設置場所、設置する机、ケーブル整備

●教員:立ち位置、拡大表示(文字などの大きさ)

●児童・生徒:発表(プレゼン)、見にくかったら発言や移動

*教育の観点:設置場所は教員の授業のやり方や好みなどにも配慮することが大事。

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ガイドラインとして取り上げる項目(案)③

24東京福祉大学・柴田隆史

電子黒板

○ 主な使い方:デジタル教科書・教材の表示や、ペンによる書き込み、拡大機能、書いた内容の記録など。

●全般的なこと:グレア回避、設置場所、画面サイズ、高さ、ケーブル整備、ソフト機能

●教員:立ち位置、文字などの大きさ、カーテン、照明

●児童・生徒:発表(プレゼン)、見にくかったら発言や移動

*教育の観点:設置場所は教員の授業のやり方や好みなどにも配慮することが大事。

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ガイドラインとして取り上げる項目(案)④

25東京福祉大学・柴田隆史

タブレット端末

○ 児童・生徒の使い方に注目する。

●見る:グレア回避、タブレットの傾斜、視距離、明るさ調整

●書く:タブレットペン、ペンの持ち方、視差ずれ、指入力

●持つ:グループワーク、発表(プレゼン)、カメラ利用

●運ぶ:タブレット管理(充電保管庫)、可搬性(運動場、体育館、プール)、家への持ち帰り

*その他、描く、打つ(タップする)、撮る、聞く。

*関連事項:座る姿勢、近視化予防、机でのタブレットの置き場所、タブレットペンの管理、紙のノートとの併用、利用時間、音量など。

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まとめ①:小学生のタブレット端末利用の実態

26東京福祉大学・柴田隆史

児童の約57%がタブレット端末の画面に蛍光灯が映りこん

で見にくいと感じている

3人に1人の児童が、眼や首、肩などに身体的疲労を感じて

いる

タブレット端末を使った学習での疲れやこり、痛み、だる

さ等があった部位は、両眼と首、肩に対する訴えが顕著で

あり、背中や腰、手首、人差し指に対する訴えも多かった

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まとめ②:ガイドラインの作成と活用に向けて

27東京福祉大学・柴田隆史

小・中学校の学校教員と児童・生徒にとって分かりやすく、

役に立つ、人間工学ガイドラインの作成

学校現場でICT活用を実践している教員や研究者からの視点

を考慮した検討

ドキュメント形式というよりは、イラストなどを用いたフ

ライヤーを一つのアウトプットとして、学校での活用促進

今後のICT教育の動向も踏まえた、子どものICT機器利用に

関する人間工学研究の蓄積と活用

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謝辞

ご協力いただいた方々に感謝の意を表します。

小学生のタブレット端末利用に関する研究は、堀田龍也教授(東北大学)と佐藤和紀主任教諭(東京都杉並区立高井戸東小学校/東北大学)との共同研究で実施しました。また、研究の実施にあたり、ご協力いただいた小学校の教員及び児童の皆様に感謝いたします。

ガイドライン策定に係わる検討は、日本人間工学会子どものICT活用委員会で進めています。

28東京福祉大学・柴田隆史