p-anca陽性のwegener肉芽腫の1例 - boehringer …...はじめに wegener...

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はじめに Wegener 肉芽腫症好中球細胞質する己抗体ANCA陽性全身性血管炎肉芽腫形成性疾患である病理組織学的1上気道とする壊死性肉芽腫 2壊死性半月体形成性腎炎 3全身壊死性肉芽腫性血管炎 する今回 広範 尿細管間質性病変 った P-ANCA 陽性肉芽腫症1 経験した症  例 症 例: 65 女性 主 訴: 発熱肺異常影 既往歴: 高血圧 46 ), 甲状腺機能亢進症 64 家族歴:甲状腺機能低下症 妹成人発 Still 現病歴:2006 11 月中旬から耳閉塞感あり12 月上旬より難聴出現近医にて突発性 難聴診断された2007 2 月中旬当院耳鼻科紹介受診慢性 中耳炎診断され鼓膜切開術施行したが難聴 改善せずその出現38以上発熱咽頭痛った2007 3 月下旬悪化近医 受診胸部レントゲン検査にて肺野異常影 当院紹介入院となった甲状腺機能亢進 しての内服加療われていない入院時身体所見:身長145.5 cm体重43 kg血圧160/85mmHg脈拍120 / 左右差なし右眼瞼結膜充血難聴あり両耳とも 90dB頚部 : 頚部鎖骨上窩リンパ触知せず胸部心音Ⅰ(-) (-)両肺野喘鳴める腹部 平坦圧痛なし両下肢浮腫なし 図1 P-ANCA 陽性の Wegener 肉芽腫の 1 例 潘   勤 雅  角 田 慎一郎  佐 藤 芳 憲 若 杉 春 枝            横浜栄共済病院 Key WordWegener 肉芽腫PR3-ANCAMPO-ANCA - 121 - 第 48 回神奈川腎炎研究会

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はじめにWegener 肉芽腫症は好中球細胞質に対する自己抗体(ANCA)陽性で全身性の血管炎に伴う肉芽腫形成性疾患である。病理組織学的に1)上気道と肺を主とする壊死性肉芽腫2)壊死性半月体形成性腎炎3)全身の壊死性肉芽腫性血管炎を呈する。今回は広範な尿細管間質性病変を伴った

P-ANCA陽性の肉芽腫症の1例を経験した。

症  例症 例:65歳,女性主 訴:発熱,肺異常影既往歴:高血圧(46歳),甲状腺機能亢進症(64

歳)家族歴:母:甲状腺機能低下症 妹:成人発症Still病現病歴:2006年11月中旬から耳閉塞感あり。

12月上旬より難聴が出現し,近医にて突発性難聴と診断された。

2007年2月中旬に当院耳鼻科紹介受診し慢性中耳炎と診断され,鼓膜切開術施行したが難聴は改善せず。その後,咳,痰が出現し,38℃以上の発熱,咽頭痛も伴った。

2007年3月下旬に咳,痰の悪化を認め,近医

受診し,胸部レントゲン検査にて肺野に異常影を認め当院紹介入院となった。甲状腺機能亢進症に対しての内服加療は行われていない。入院時身体所見:身長:145.5 cm,体重:43

kg,血圧:160/85mmHg,脈拍:120回 /分,整,左右差なし,眼:右眼瞼結膜充血,耳:難聴あり,両耳とも90dB,頚部 : 頚部,鎖骨上窩リンパ節を触知せず,胸部:心音Ⅰ→Ⅱ→Ⅲ (-)→Ⅳ (-),両肺野喘鳴を認める,腹部:平坦,軟,圧痛なし,両下肢:浮腫なし

図1

P-ANCA陽性のWegener肉芽腫の1例

潘   勤 雅  角 田 慎一郎  佐 藤 芳 憲若 杉 春 枝           

横浜栄共済病院 Key Word:Wegener肉芽腫,PR3-ANCA,MPO-ANCA

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図2 図3

UrinalysisProt(2+) O.B (1+)

尿中β2MG 31700 μg/L

NAG 26.1 U/L

CBCWBC 12200 /mm3

Neu 85 %

Eo 1 %

Baso 0 %

Lymph 10 %

Mono 4 %

RBC 396×104 /mm3

Hb 11.5 g/dl

Ht 34.0 %

Plt 50.3×104 /mm3

Blood ChemistryT.P. 7.8 g/dl

BUN 10.6 mg/dl

Cr 0.7 mg/dl

T.bil 0.7 mg/dl

AST 20 IU/l

ALT 32 IU/l

LDH 209 IU/l

ALP 933 IU/l

γ -GTP 229 IU/l

CK 36 IU/l

Amy 34 mg/dl

Na 140 mEq/l

K 3.2 mEq/l

Ca 8.7 mEq/l

Cl 100 mEq/l

CRP 17.14 mg/dl

Immunological testIgG 1456 mg/dl

IgA 261 mg/dl

IgM 69 mg/dl

C3 128 mg/dl

C4 25 mg/dl

CH50 50.2 IU/ml

RF 28 IU/ml

ANA 40 倍 (Ho,Sp)

抗SS-A/Ro抗体 7.0以下 U/ml

抗SS-B/La抗体 7.0以下 U/ml

PR3-ANCA

10未満 EU

MPO-ANCA

93 EU

表1.入院時検査所見

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図4

図5

図6

図7

図8

図9

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図10

気管支鏡検査気管支鏡検査: 右中間幹,底幹近傍の粘膜隆起

と狭窄洗浄液細胞診:Class Ⅱ喀痰細胞診:Class Ⅱ抗酸菌塗沫標本:陰性組織学的結果:類上皮肉芽腫

診 断#1臨床所見上気道症状:難聴,中耳炎下気道症状:咳,痰腎症状:血尿,蛋白尿,進行性腎機能低下全身血管炎症状:発熱#2主要組織所見肺生検:類上皮肉芽腫の形成腎生検:肉芽腫形成壊死性血管炎#3主要検査所見

MPO-ANCA 93 EU

CRP 17.1mg/dL

以上よりWegener 肉芽腫の全身型と診断した

問題点1 MPO-ANCA陽性のWegener肉芽腫

Wegener肉 芽 腫 はPR3-ANCA陽 性85.7 %,

MPO-ANCA陽性は14.7%

2  肺生検の組織所見は類上皮肉芽腫の形成を認めるが,WGの肺組織所見のもっとも特徴的,壊死性肉芽腫性炎症を認めなかった

3 腎生検所見間質を主体の変化,間質炎症細胞の浸潤を認め,尿細管の萎縮,消失,肉芽腫の形成を認めた。

糸球体変化が乏しく,半月体の形成を認めない,pauci-immune型の糸球体腎炎であった。

間質性病変を認めるANCA関連血管炎ANCA関連性血管炎は間質に好中球,単核球

の浸潤を認めるが,糸球体変化を伴わない間質変化だけのANCA関連血管炎の報告は稀である。間質性腎炎を呈するANCA関連性血管炎の原

因の多くは薬剤性,感染に伴うものである.薬剤として塩酸ヒドララジン ,ペニシラミン,アロプリノール,ミノサイクリン,カルビマゾールなどがある。薬剤性の場合はMPO-ANCA陽性を認め,特

に高値を示す。本症例では,ANCA陽性となるような薬剤の服用歴はなかった。

結 語糸球体変化が乏しく,半月体の形成を認め

ず,間質性変化を主に示すMPO-ANCA陽性のwegener 肉芽腫の1例を経験した。治療についてはステロイドとシクロホスファ

ミドの併用は推奨されている。この症例では副作用の白血球減少症によりシクロスポリンAに変更し,経過良好であった。

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討  論 座長 それでは本日最後の演題に移らせていただきます。「広範な尿細管間質性病変を伴ったMPO-ANCA陽性のWegener肉芽腫の1例」。横浜栄共済病院の潘勤雅先生,よろしくお願いいたします。潘 MPO-ANCA陽性のWegener肉芽腫症の1

例を。【スライド】Wegener肉芽腫は好中球細胞質に対する自己抗体陽性で,全身性の血管炎に伴う肉芽腫形成性腎疾患である。病理組織学的に,1,上気道を肺を主とする壊死性肉芽腫。2,壊死性半月体形成性腎炎。3,全身の壊死性肉芽腫性血管炎を呈する。今回は,広範な尿細管間質性病変を伴ったMPO-ANCA陽性のWegener肉芽腫症の1例を経験しました。【スライド】症例は65歳の女性。主訴は発熱と肺異常影。既往歴は高血圧,甲状腺機能亢進症。現病歴,2006年11月中旬から耳の閉塞感あり。12月上旬より難聴が出現し,近医にて突発性難聴と診断された。2007年の2月中旬に当院耳鼻科に紹介受診し,慢性中耳炎と診断され,鼓膜切開術を施行したが,難聴が改善せず,その後,咳・痰が出現し,38℃以上の発熱,咽頭痛も伴った。2007年の3月下旬には咳・痰の悪化を認め,近医受診し,胸部レントゲン検査にて肺野に異常影を認め,当院紹介,入院となった。甲状腺機能亢進症に対しての内服加療は行われていない。【スライド】入院時の身体所見。血圧は160/85。右眼瞼結膜充血。難聴あり。両耳とも90dB。両肺は喘鳴を認める。【スライド】入院時の検査所見。尿蛋白は2+。潜血は1+。尿中のβ2MG,NAGともに高値を認め,血液の白血球1万2200と好中球85%の高値を認めました。血小板も50.3万の高値を認めました。生化学検査所見は胆道酵素の上昇とCRP17.1mgの高値を認めました。【スライド】免疫学的の所見。PR3-ANCAは10

未満で,MPO-ANCAは93と高値を認めました。【スライド】これは入院時の肺門部のレントゲン所見。両肺門部にリンパ節の腫大を認めました。【スライド】入院時の胸部のCT所見は右の上縦隔の腫瘍,リンパ節の腫大と右のS6領域に腫瘍影を認めました。【スライド】4月4日,気管支鏡の検査を施行しました。右の中間幹 ,底幹近傍の粘膜狭窄と隆起を認めました。洗浄液細胞診はクラス2,喀痰細胞診がクラス2,抗酸菌塗抹標本は陰性,組織学的の結果は類上皮肉芽腫を認めました。【スライド】これは4月19日の腎生検の所見。間質へ広範な細胞浸潤像と尿細管の破壊像を認めました。【スライド】これも同じく,間質への広範な細胞浸潤像と尿細管の破壊像を認めました。【スライド】糸球体には半月体の形成を認めませんでした。【スライド】Wegener肉芽腫に認める典型的な肉芽腫形成壊死性血管炎を認めました。【スライド】これは蛍光染色抗体の結果です。

IgG,IgA,IgM,C3の沈着を認めませんでした。【スライド】この臨床所見から上気道症状,下気道症状,腎症状,全身血管炎症状を認め,肺生検で類上皮肉芽腫の形成,腎生検で肉芽腫形成壊死性血管炎を認め,MPO-ANCAも93と高値と,CRP11.1の上昇を認め,以上によりWegener肉芽腫の全身型と診断しました。【スライド】入院時は3月26日血中のクレアチニンは0.7に対して,4月27日に血中のクレアチニン値は2.0まで急激な上昇を認め,血尿,蛋白尿も認めましたので,ANCA関連性急速進行性腎炎症候群と診断しました。臨床学的の重症度はグレード2で,病理組織学的の病期分類はステージ1と診断しました。【スライド】ANCA関連性急速進行性腎炎症候群に対する治療は,厚生省のガイドラインにより,この患者は高齢者や透析患者ではないですので,ステロイドのパルス療法の以後,副腎皮質経口ステロイド療法と免疫抑制剤の併用を選

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択しました。【スライド】これはこの症例の臨床経過です。4

月19日に腎生検を施行し,4月24日に治療を開始しました。500mgのMPSを3回パルス療法を施行しました。第1回のパルス療法の施行した後,プレドニン40mgとシクロホスファミド100mg/dayの投与を開始しました。その後,血中のCRP値,クレアチニン値とMPO-ANCAも順調に低下を認めました。尿中の蛋白の減少も認めました。その後,プレドニンを順調に減量して,6月17日に20mg/dayの順調に減量しました。シクロホスファミドの投与中に血中の白血球数の減少を認めました。白血球数は1400

まで下がりました。5月18日にシクロホスファミドの投与を中止して,代わりにシクロスポリン100mg/dayの投与を開始しました。その後,経過良好で白血球の上昇も認めました。【スライド】この症例の問題点は,Wegener肉芽腫はPR3-ANCA陽性が85.7%で,MPO-AN-

CA陽性は14.7%であるのに対して,この症例はMPO-ANCA陽性のWegener肉芽腫と診断しました。肺生検の組織所見は類上皮肉芽腫の形成を認めるが,Wegener肉芽腫の肺組織所見の最も特徴的な壊死性肉芽腫性炎症を認めなかった。腎生検の所見は間質を主体としての変化,間質炎症細胞の浸潤を認め,尿細管の萎縮,消失,肉芽腫の形成を認めた。糸球体変化は乏しく,半月体の形成を認めないpauci-immune型の糸球体腎炎であった。【スライド】ANCA関連性血管炎は間質に好中球,単核球の浸潤を認めるが,糸球体変化を伴わない,間質変化だけのANCA関連性血管炎の報告はまれである。間質性腎炎を呈するANCA関連性血管炎の原因の多くは,薬剤性感染に伴うものである。薬剤としては塩酸ヒドララジン,ペニシラミン,アロプリノール,ミノサイクリン,カルビマゾールなどがある。薬剤性の場合はMPO-ANCA陽性を認め,特に高値を示す。本症例ではANCA陽性となるような薬剤の服用歴はなかった。

【スライド】結語。糸球体変化が乏しく半月体の形成を認めず,間質性変化を主に示すMPO-

ANCA陽性のWegener肉芽腫の1例を経験しました。治療についてはステロイドとシクロホスファミドの併用は推奨されている。この症例では副作用の白血球減少症によりシクロスポリンに変更し,経過良好であった。以上です。座長 どうもありがとうございました。ただいまのご発表に対しまして,何か会場からご質問・ご意見はございますでしょうか。やっぱりWegener肉芽腫の疾患の標識マーカーというのはPR3-ANCAだと思うんですが,そうですよね。この患者さんはMPO-ANCAが陽性で,しかも組織像は,腎は間質性腎炎の病変が主体だったということで,crescenticな変化はなかったということですよね。糸球体の一般的に見られるWegenerで見られる壊死性の半月体形成性糸球体腎炎というのはなかったということですね。潘 はい。座長 それに何か病理所見と,疾患マーカー等も含めまして何か,お願いいたします。遠藤 東海大学の遠藤です。先生がおっしゃったように,やはりこのMPOでのWegenerかどうかということは,先ほどサーッと過ぎてしまったんですが,ここが肉芽腫形成壊死性血管炎だと示された像で,それが1枚だけだったんですが,それが先ほどもあったんですが,糸球体の周りにああいうふうな肉芽腫様に見える事があるので,糸球体ではなく,血管であるという証明をどうやってされたかということをお聞きしたい。潘 さっきの腎生検の所見の中に,最後のスライドで,血管の周囲にPAM染色で基底膜の断裂を認めた,血管周囲の基底膜の断裂を認めた。遠藤 さっきの病変のところにですか。潘 はい。あれは血管炎の所見と思われます。遠藤 そうですか。ありがとうございます。座長 そのほかにいかがでしょうか。実際には今日,いらっしゃっている先生方の中で,明らかにWegenerの肉芽腫なんですが,そういうふ

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うにやっぱりMPO-ANCAが陽性で,腎臓の組織は間質性腎炎だったという症例をお持ちの先生方というのはいらっしゃいますか。何かそのへんからコメントをいただければというふうに思いますが,ないですか。ほかによろしいですか,何か。先生,お願いいたします。小林 湘南鎌倉総合病院の小林です。臨床の点からお聞きしますが,治療について,白血球が下がった。そして,ということで安全にできたと,スライドの最後に書かれていましたが,逆に,クレアチニンのほうは,腎機能のほうはジワリと上がってきているような状況が,最後のスライドで出てくるんですが,治療について,先生はこのあと,今後どういうふうにお考えになっているのか,お聞きしたい。潘 腎臓の機能は,そのあとようやく改善に向かっていますので,たぶんステロイドの療法が。小林 スライドだと,クレアチニンは最後上がったところで終わっていて。潘 少し上昇を認めたんですが,外来のフォローで腎臓の機能はよくなっていますので。小林 そうするとこのCYA100mgとプレドニン漸減のというところでうまくいいところで安定させることができたと,こういうことですね。潘 ええ,ということです。小林 はい,ありがとうございます。座長 お願いします。はい,どうぞ。角田 共同演者ですが,エンドキサンの副作用が出たので中止をして,腎機能が若干悪化しましたので,それでシクロスポリンを追加投与して,現在クレアチニンも1.1ぐらいで落ち着いております。座長 この患者さんは臨床診断,それから病理を含めた診断で,Wegener肉芽腫というのは,もうdefiniteであるということでよろしいですね。潘 はい。座長 そのときに鑑別する疾患というと,やっぱりMPO-ANCAが出てくる肉芽腫性病変になりますと,アレルギー性の肉芽腫性血管炎の問題だとか,それから好酸球がどうだったかとか,

喘息の既往がないかとかということもありますが,それはもう否定されるということで理解してよろしいですね。潘 。この患者さんは喘息の既往がなくて,腎生検でも好酸球の集積がなかったんですので,Churg-Strauss症候群は鑑別されます。座長 ということでよろしいですね。潘 はい。座長 ほかにいかがですか。はい,先生お願いします。守矢 湘南厚木病院の守矢といいますが,やはりANCAも高値で血管炎としてWegenerということでもいいのかなと思いながら,1ついちおう鑑別ということでCTで両側の肺門部のリンパ節腫大があったりとか,類上皮肉芽腫が組織上得られたりとかいうことで,sarcoidとかそういったものの臨床的,検査的なデータの異常というのは,何かありましたでしょうか。潘 sarcoidosisに対しては,リゾチームとACE

はともに陰性であったんですので,sarcoidosis

の排除ができました。守矢 はい,ありがとうございます。座長 ほかによろしいですか。それでは病理のほうのご説明をお願いいたします。重松 お願いします。【スライド01】この症例は血管炎があることは間違いないんですが,本当に組織学的にWe-

gener的かどうかについては,ちょっとまだ問題があるかと思います。【スライド02】この症例で腎生検でまず見えてきたのは,この小葉間動脈レベルの壊死性血管炎が少なくとも2カ所にあるということです。全層性の血管炎だが sarcoidパターンの肉芽腫様の血管炎ではないんですね。【スライド03】この血管は少し縦切りに切れていますが,これにも似たような血管炎が起こっています。はい,その続きです。【スライド04】それから糸球体に変化がなかったというんですが。【スライド05】これはマッソン染色で,その血

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管炎ですね。ちょっとここで見てほしいのは,このfibrinoid necrosisが中膜にあるんですけれども,内膜のほうにはもう少し線維化が起こっているということですね。まだこちらの中膜には壊死性病変が残っているということだと思います。【スライド06】これはPAM染色で見ているわけですが,PAMで見ると内膜の炎症,内膜にはあまりfibrinoidがなくて,中膜から外膜にかけてかなり強い壊死性の血管炎が起こっています。【スライド07】それからこれは糸球体なんです。糸球体の中に,これは半月体がはっきりしないと書いてありましたが,ここへfibrinが出てきまして,これはMassonでもそうなんですが,ここにも半月体的なものがちょっと出かかってはいると思います。【スライド08】だから糸球体病変はほとんどないというんじゃなくて,やっぱり一緒に伴って起こっているということですね。それからこういう病変がありました。これは間質にあるんですが,どうもここは血管極のところに血管炎があって,ここにあまりはっきりした糸球体の成分がないんですが,ちょっと何か思わせぶりの血管炎が,糸球体のhilusに近いところに血管炎が起こったという感じが見えると思います。【スライド09】それからこの例でも,間質の毛細血管炎ですが。peritubular capillaritisがかなり目立ちます。ここなんかはPAMレベルで見ると,何とかperitubular capillaritisの基底膜は染めることができるんですが,ここでは基底膜はもう見えないということですね。だからcapil-

laritisも間質の病変をつくるうえでは非常に大事な病変であると思います。【スライド10】ということで,組織学的には,この前の前の症例のようなWegenerのすごい肉芽腫が,こっちの症例にはあまりはっきりしなかったということで,MPO-ANCAの陽性の血管炎の所見であることにはまちがいないと思います。山口 重松先生が言われて,問題がないように

思います。通常WegenerだとPR3のANCAが多いが,その肉芽腫変化とかfibrinoid壊死性の血管炎とが,違いがあるのかどうかです。それから尿細管間質病変をどう考える。【スライド01】4本取られ,fibrinoidが全周性,全層性に及んでいる動脈がbiopsyの中に入っている。髄質も炎症が少しある。【スライド02】小葉間動脈のオーダーでfibri-

noid 壊死があって,周囲に肉芽腫性反応もあるように思います。【スライド03】縦切りのところも壁構造が分からないんですが,fibrinoid壊死で周囲に肉芽腫性の反応がある。【スライド04】多核巨細胞と私は見た。fibrinが漏れて,細動脈の壁から壊れたところで,多核巨細胞の反応がある。このへんにも多核化した類上皮様の細胞がありますので,肉芽腫性,壊死性の血管炎と言えると思います。【スライド05】間質炎は,plasma cellと好酸球も混ざっています。plasmaリンパ球,好中球,いろいろ混ざって派手な間質炎とcapillaritis,それから尿細管炎と,あらゆるところに炎症が及んでいると思います。【スライド06】PAMで見ますと,尿細管炎も強いですし,capillaryなのかリンパ管なのは分かりませんが,capillaritisも強く起きている。これはANCA関連で見られる全腎的な炎症所見と思います。【スライド07】糸球体はきれいですね。capil-

laryの中に好中球とか単球がいますが,糸球体炎と言えるほどのものはないように思います。【スライド08】一部,Wegenerでときどきあるんですが,ボーマン嚢の基底膜が消失して,crescent様になってくる。こういうgranuloma-

tousの反応はWegenerでもいいと思います。周辺のperiglomerulitisから起きてくるというのが一部あり,Wegenerを示唆する所見と思います。 fibrinoid granulomatousなangiitis,があって,tubular-interstitial nephritisで,periglomerulitisでcrescent様の病変がある。

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 欧米はWegenerが多くて,PR3-ANCAの頻度が高いんですが,チャイニーズは逆にWegener

であってもMPO-ANCAの症例が多く,人種的な違いがあるんでしょうか。それでnecrotizing

な血管炎を伴ってくるのは,MPO-ANCAのほうが概して多いと出ています。以上です。座長 どうもありがとうございました。臨床と,それからただいまの病理のご説明を含めまして何か,この症例でご質問はないですか。ご質問,ご意見。先生,お願いします。酒井 済生会南部病院の酒井と申しますが,中耳炎とのこと,この難聴はこのあとどうなりましたでしょうか。潘 そのあとは難聴が改善して,両耳とも30dBまで改善を認めました。酒井 はい。Wegenerかどうかというのはまた別として,MPOの症例で感音性難聴を両側内耳の血管炎との関連で呈して,そのあとステロイド療法でよくなるケースがけっこう多いので,そういった意味で,これはMPOが主体なのかなというな印象は持ちました。以上です。潘 はい。座長 そのほか,いかがですか。壊死性の肉芽腫性の血管炎と,それから間質性の腎炎を伴ったMPO-ANCA陽性の症例ということですね。よろしいですか。

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