月刊現代ギター - 2015年6月号

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Page 1: 月刊現代ギター - 2015年6月号

現代

ギタ

ー 

昭和

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49巻

第6

株式会社 現代ギター社 

(本体 1,200 円 + 税)定価 1,296 円

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【修正日】 2015/05/08_03:59  【出力日】 2015/05/12_20:53

Page 2: 月刊現代ギター - 2015年6月号

13 特 集

ギターのロマン派音楽再発見 クラシックギターのロマン派とは?:富川勝智 ロマン派の多弦ギターと作品:尾尻雅弘

55 第 2 特集 フィゲタ奏法について:佐々木勇一

CONCERT PHOTO REPORT

24 コンサート・フォトレポート 原 善伸×鈴木大介 佐藤豊彦 若木唯一〔共演〕安原麗子(朗読)

いちむじん×吉田兄弟 佐々木 忠〔賛助〕金 庸太、大谷 環、藤元高輝 マルコ・デル・グレコ 小関佳宏 &Shaylee(Vo) ケルン・ギターカルテット レオナルド・ブラーボ 山口 修 神成理 東京・春・音楽祭~松尾俊介、佐藤亜紀子(Lt)、     阿部早希子(S)& つのだたかし

REPORT

50 藤井眞吾「ギター・アンサンブル講座」52 第 13回日本ギター    アンサンブルフェスティバル54 フォルマール・ギターオーディション    合格者コンサート

INTERVIEW

38 Jiro'sBar ~濱田滋郎対談〔27〕  市瀬陽子(舞踊史/パフォーマンス制作)46 猪居謙&猪居亜美

READING / ESSAY / LECTURE

34 愛器を語る[75]    益田正洋(ホセ・ロマニリョス)42 ポインツ・オブ・ギターテクニック[15]    山口修

INFORMATION

60 新刊案内62 外盤案内64 新譜案内70 めもらんだむ94 今月の見どころ聴きどころ96 イベント&コンサートガイド

ENSEMBLE

92 アンサンブルの広場

SCORE

113 今月の楽譜解説114 3 つのノクターンOp.4(メルツ)122 タイム・アフター・タイム(ハイマン&ロー    パ~岡崎誠)126 戸隠パイプのけむり(佐藤正美)

Vol.49 No.6 June2015 No.618 June

原善伸、鈴木大介

●表紙 猪居謙、猪居亜美●写真 営野充(StudioKUMU)

67 オールド・ポップス・コレクション〔15〕   パパの歌(忌野清志郎)      (たしまみちを)71 ポピュラー・ヒット・レパートリー〔27〕      希空~まれぞら~(澤野弘之) (小関佳宏)74 あなたの街の~ギター教室紹介〔3〕75 EtudePub ~ギター・ベーシック・レパートリー     完全攻略〔3〕           (坂場圭介)78 アンサンブルで聴く巨匠の名技〔3〕                    (朝川博)80 atempo 日記〔63〕(渡辺和彦)82 セゴビアとパキータ〔51〕      (A.エスカンデ/訳:坪川真理子)86 ロンドン便り〔66〕(ワシリー・サバ/訳:関塚亮司)88 レパートリー充実講座〔243〕(藤井眞吾)    24 の漸進的な小品集 Op.44 ①(ソル)

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Page 3: 月刊現代ギター - 2015年6月号

特集 ギターのロマン派音楽再発見

●「ロマン派」ギターレパートリーの再発見 クラシックギターの「ロマン派」……皆さんは、どのようなイメージを持たれているでしょうか ? 最近は、コンクールや演奏会で、コストやメルツ、レゴンディなどのロマン派作曲家による作品が演奏される機会が増えてきました。ロマン派の時代には和声も複雑な色彩感を表現するものになり、技巧も凝ったものが多く、コンクールにおいて自由曲として聴かれる頻度も増えてきたように思います。 このように、ロマン派のギター作品は現在でこそ、多くの奏者が弾いていますが、1980 年代まではあまり知られていませんでした。クラシックギターのロマン派と呼ばれる作品がきちんと評価されるようになったのは、ここ 30 年ほどの話なのです。 1980 年代になって、メルツやレゴンディの作品が徐々に再出版されるようになってきましたが、それまでクラシックギターにおけるロマン派は「衰退期」とみなされていました。そもそも譜面も入手困難で情報も少ない。音楽的にきちんと評価されてきたとは言い難い。ソルやジュリアーニが活躍した 19 世紀前半のギター黄金期からタレガが登場するまでは「まともなギター作品はなかった」と思われていたのです。 しかし、1980 年代以降、クラシックギターにおけるロマン派の作品、先に述べたメルツやレゴンディなどの作品が出版され、次第に再評価されていきます。また、優れた奏者による録音や実演によって、ギターのロマン派にもたくさんの素晴らしい作品があることがわかってきたのです。 ちなみに、現代ギター社から邦訳が出版されているペーター・ペフゲン(田代城治訳)の『図説ギターの歴史』では、全 239 ページのうち、この時代のために割かれているページ数はたったの 5 ページです。もし、新たに誰かがギター史の本を書くとしたら、今はもっとロマン派に紙幅を割くべき時代になってきたと思います。ロマン派時代とは、そのくらい魅力的なギタリスト達が活躍した時期でもあります。それをこれから皆さんと一緒に見

ていきたいと思っています。

●ベルリオーズの証言〜ギターの時代からピアノの時代へ まずは、ロマン派という時代にギターがどのような存在であったのか……それを見ていきたいと思います。1840 年頃にエクトール・ベルリオーズが貴重な証言を残してくれています。(以下引用)

『もう一度ここで強調しておくが、作曲家自身がこの楽器を演奏出来ない限り、楽節が満載で、この楽器が有するすべての表現力を必要とするような数声部からなる楽曲を書くのは不可能である。ギターの巨匠たちが演奏可能なのはどのような曲なのかを知るには、ザーニ・デ・フェランティ、ウエルタ、ソルなどといった有名なギター奏者の作品を研究すること。少しでも音楽に興味がある家庭はまずピアノを備えるようになったため、ギターはスペインとイタリアを除いてあまり見かけなくなってしまった。魅力的で独創的な効果を持つ独奏楽器としてのギターの可能性を追求してきた、そして今もなお追求し続けている巨匠もいる。しかし、作曲家たちは、教会、劇場、演奏会では、ギターをほとんど使おうとはしない。』

(「管弦楽法」(エクトール・ベルリオーズ著 小鍛冶邦隆監修 広瀬大介訳 音楽之友社 p.192 より引用)

 このベルリオーズの著作『管弦楽法』の初版は 1844年に出ています(図 1)。この記述を読むと、ヨーロッパ音楽の中心地であったパリにおいて、この頃、ギターという楽器がかつての勢いを失っていたということがわかります。 ベルリオーズ本人はギターを弾けた人物でした。彼はギター音楽の素晴らしさを理解し、多くの可能性を感じていましたが、すでにこの時点でギターは音楽の主流からは外れていたわけです。もちろん、パリのギター界において後述するジャウマ・ボッシュのような人気のあるギタリストがいなかったわけではありません。しかしボッシュが、ベルリオーズが思う「この楽器が有するす

ギターのロマン派音楽再発見特集

クラシックギターのロマン派とは?富川勝智(ギタリスト)北海道札幌生まれ。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業。ギターを佐藤佳樹、手塚健旨氏に師事する。その後スペインに渡り、ホセ・ルイス・ゴンサレス、アレックス・ガロベーに師事。帰国後、精力的に演奏活動を行なうとともに、ヤマハやシンコーミュージックなどの出版物への編曲や教本執筆なども行なう。クラシックギター(モダンギター)に加え、オリジナル 19世紀ギターやテルツギターなども使用したコンサートも行ない、可能性を広げている。ダラス国際ギターフェスティバルをはじめとする海外の著名フェスティバルへも招聘され、著名国際ギターコンクールの審査員も務める。音楽史への造詣も深く、ギター専門誌に連載を行なう。楽曲解説や奏法解説を多数執筆。「現代ギター」誌への寄稿やワークショップの講師などギター史研究家としても精力的に執筆活動をしている。東京渋谷にある「富川ギター教室」を主宰し、後進の指導にもあたっている。正しい身体技法の理解に基づいた技術伝授と西洋音楽の表現法についての深い知識によって、多くの優れた門下を育てている。洗足学園音楽大学クラシックギター科講師。公益社団法人日本ギター連盟理事。ギターリーダーズクラブ正会員。日本音楽表現学会会員。

Gendai Guitar 13

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24 Gendai Guitar

ともに洗足学園音楽大学ギター科で教鞭を執る、原 善伸&鈴木大介という、現在まさに脂の乗り切った名手二人による初デュオCD『Guittara × Guittara』発売を記念してのリサイタルが横浜みなとみらい小ホールで開催された。ギター二重奏ではお馴染みの古典作品から始まった当夜のコンサート、二人が携えたサントス・エルナンデス、イグナシオ・フレタという歴史的銘器から醸し出される音は重厚かつ繊細で、ギターには不向きかと思われた広いホールの隅々にまでたおやかに流れわたる。レコーディングを経験しているだけあって、どの楽曲も見事に息の合ったアンサンブルとして練り込まれており、随所に二人の音楽家としての資質の高さが垣間見られた。勿論、デュオは楽しく聴くことが出来たのだが、この夜のハイライトはむしろ二人のソロだったのではないだろうか。鈴木の自編によるバッハ〈シャコンヌ〉はギターの特性を十二分に引き出した編曲で、〈シャコンヌ〉が舞曲であ

ることを改めて認識させる誠に素晴らしい演奏であった。原の〈グラン・ホタ〉は、正に掌中の一曲と言えるもので、鮮やかに爽やかに奏でられた。コンサート本編が少々短く、予定になかった第 3部が始まった時の聴衆の驚きと喝采は凄まじく、この日最高の盛り上がりを見せた。アンコールとして二重奏版のサグレラス編〈アランブラの想い出〉、タラーゴ編〈愛のロマンス〉が演奏された。プログラム:セレナーデOp.96-1(カルッリ)、アンクラージュマンOp.34(ソル)、シャコンヌ(バッハ~鈴木大介)*、グラン・ホタ(アルカス~タレガ)**、コルドバ(アルベニス)、ゴイェスカスの間奏曲(グラナドス)、スペイン舞曲第 1番~『はかなき人生』より(ファリャ)、亡き王女のためのパヴァーヌ(ラヴェル~プジョール)、対話風小二重奏曲Op.34-2(カルッリ)*鈴木大介ソロ、** 原 善伸ソロ、他はすべて二重奏

[4月 22日/神奈川・横浜みなとみらいホール・小]

×写真:東 昭年

鈴木大介Daisuke Suzuki

原 善伸Yoshinobu Hara

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34 Gendai Guitar

写真:木田新一

愛器を語る

益田正洋 ◆ホセ・ロマニリョス(1986)

Masahiro Masuda1990 年第 21 回クラシカルギターコンクールにて史上最年少(当時 12 歳)で第 1 位受賞。92 年東京国際ギターコンクール入賞、バーネットファミリー財団国際ギターコンクール入賞などの受賞歴を持つ。2000 年ジュリアード音楽院入学、ニューヨークにてコンチェルトデビューを果たす。ジュリアード音楽院修士課程を卒業。これまでに約 20 枚の CDをリリース。そのほとんどが「レコード芸術」誌特選盤に輝くなど高い評価を得ている。現在、ソロ、室内楽はもちろん、音楽と美術のコラボレーションなど意欲的な活動を行なっている。 写真:木田新一

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第二特集/フィゲタ奏法について

佐々木勇一(ささき・ゆういち)

譜例 1:〈皇帝の歌〉よりフィゲタの例

佐々木勇一●プロフィール1986 年新潟県柏崎市生まれ。11 歳よりギターを始め、これまでに菊地雅樹、アニエロ・デジデリオに師事。その他、パヴェル・シュタイドル、ゾーラン・ドゥキッチ、ロマン・ヴィアゾフスキー、熊谷俊之、福田進一、佐々木 忠などのレッスンを受講。現在、ドイツのコブレンツ・インターナショナル・ギターアカデミーに留学し、フーバート・ケッペル、佐々木 忠、リュート奏者の蓮見岳人に師事し研鑽を積んでいる。第 29 回 GLC 学生ギターコンクール第 2 位(2004 年)、第 28 回スペインギター音楽コンクール第 2位(2010 年)、第 42 回クラシカルギターコンクール第 3 位(2011 年)

 『現代ギター』読者の皆さま、はじめまして。ギタリストの佐々木勇一と申します。現在、私はドイツのデュッセルドルフという街に住んでいます。このデュッセルドルフがある地域はノルトライン=ヴェストファーレン州というところで、私が思うに、ドイツでクラシックギターが最も盛んな地域だと思います。この地域には音楽大学や音楽学校が多く、その学校にはギター科があり、世界的に有名な多数のギタリストが教鞭を執っています。さらに、ギターの講習会やコンクール、コンサートなども頻繁に行なわれております。

●フィゲタ奏法について さて、テーマの「フィゲタ奏法」について述べていきましょう。 譜例 1はルイス・デ・ナルバエス(c.1500-1555/1560 ?)の〈皇帝の歌〉冒頭です。この作品はギターでよく弾かれる作品で、聴いたことがある方も多いのではないかと思います。皆さんはこの曲の以下の部分をどのような指使いで演奏されるでしょうか? 譜例内にある運指例ですが、ギターを演奏される方はあまり使わない指使いではないかと思います。 この p(親指)と i(人差し指)を交互に用いて弾く指使いを「フィゲタ」と言います。きっと、多くの方が i

と m(中指)を交互に用いる運指を使うと思いますし、「フィゲタ」と聞いても馴染みがなく、よく分からないかもしれません。しかし、多くの方が無意識のうちに、このフィゲタを普段からギターの演奏に取り入れているのではないかと思います。 私もクラシックギターを演奏することが専門ですの

で、以前はフィゲタについてほとんど馴染みがなく、そういう古くからの奏法が存在していることは知っていましたが、全く意識をしていませんでした。そんな私が、フィゲタを無意識のうちにギターの演奏に取り入れていることに気づくきっかけとなったのは、ルネサンス期の音楽に出会い勉強する機会を得た時でした。 当初私は、ギタリストが編曲し、既に運指が振られた楽譜を用いていましたが、ケルン在住のリュート奏者の方がタブラチュア譜を見て演奏することを勧めてくださいました。 タブラチュア譜には、左手の運指だけではなく、右手の運指が書かれているものがあります。当初(今も ?)、私自身はそれを全く理解せずに弾いていました。しかし、何百年も前の先人達が生み出し、残してくれたアイディアや知恵に触れるにつれ、私が普段から弾いている所謂「モダンギター」の演奏にもフィゲタを効果的に用いることが出来るのではないかと考えるようになり、そう思って自分の演奏を振り返ってみると、普段から無意識のうちにフィゲタを取り入れてギターを演奏していることにも気づきました。私と同様に無意識ながらフィゲタを用いてギターを演奏している方は多いのではないかと思います。

●フィゲタとは? 冒頭にも書きましたが、ギターを演奏される方々にとって「フィゲタ」という奏法は、全く聞いたことがない、あるいは聞いたことがあってもほとんど馴染みがないものなのかもしれません。「フィゲタ」とは何でしょうか?それでは、具体的に説明していきましょう。

第二特集

フィゲタ奏法について~モダンギターにおける効果的な応用法~

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