独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す...

9
〈金沢星稜大学 人間科学研究 第 3 巻 第 1 号 平成 21 年 9 月〉 - 47 - 1 .はじめに 1 − 1 .研究の背景,位置づけ,視点,目的 わが国では,2005年以降,バスケットボールのbjリーグ や野球の四国アイランドリーグ(現,四国九州アイランド リーグ)など,独立系プロスポーツリーグ(以下 独立リー グと略す)の設立が相次いでいる。これは,「わが国のスポ ーツシステムが,学校や企業がスポーツを所有するという 形態からスポーツを公共財として捉え,学校や企業を含め た地域で支援していく形態への変化のあらわれである」 1 指摘できる。しかし,それは同時に,プロスポーツリーグ ならびにプロスポーツクラブが経営上の自立を求められて いるということでもある。一般にプロスポーツリーグやク ラブのビジネスモデル(収益構造)は ①テレビ放映権  ②スポンサーシップ ③観戦チケット ④グッズの 4 つで あり 2 ,県域レベルの地域をマーケットとする独立リーグ にとって,特に重要なのが ③観戦チケット収入となる。 観戦者が増えることは,単純にチケット収入が増えるだけ でなく,企業へのスポンサーセールスやグッズの販売,飲 食店の出店など多くの波及効果をもたらし,経営基盤の安 定へ寄与するのである。 筆者らはこれまで「地域プロスポーツクラブの観戦動機 に関する調査」(07年),「地域プロスポーツクラブの観戦満 足度に関する調査」(08年)を石川県内に本拠地を置く2つ のプロスポーツクラブを対象に継続して実施している。本 稿は07年度のツエーゲン金沢の観戦者実態と観戦動機の解 明に関する調査研究,08年度観戦満足に関する調査研究に つづき,ミリオンスターズ観戦者のサービスプロダクトに 対する満足を測定する調査研究と位置づけている。ミリオ ンスターズの観戦者がどのようなサービスプロダクトに満 足をしているのか,そして,どのようなサービスが全体の 満足度に強い影響を与えているのか,あるいは再観戦しよ うとする意思に強く働きかけているのかについて,明らか にしていきたい。 1 − 2 .BCリーグ 3 と石川ミリオンスターズの集客状況 BCリーグ全体の観戦者数はリーグ初年度の2007年で平 均1790人,総観戦者数は26万人 4 であった。つづく2008年 シーズンは平均1318人と約25%の減少となっている。大幅 な減少の原因には ①無料招待チケットの減少 ②初年度 の新鮮さがなくなったことなどが指摘 5 されており,観戦 者数を増加させるためには,よりリピート率を高めること 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関する調査研究 ─ 08年 石川ミリオンスターズのホームゲーム観戦者を事例として─ Research on the Spectators' Satisfaction in Independent League 田島 良輝,神野 賢治,岡野 紘二 Yoshiteru Tajima, Kenji Kamino,  Koji Okano 〈要旨〉 野球の独立系プロスポーツリーグBCリーグ(Baseball Challenge League)所属の石川ミ リオンスターズ(以下 ミリオンスターズと略す)観戦者を対象にサービスプロダクトの満 足に関する調査研究を実施した。 本調査研究では,①ミリオンスターズ観戦者(以下 観戦者と略す)の特性 ②観戦者の サービスプロダクトに関する評価(因子分析) ③再観戦に影響を与えるサービス因子の 規定力(重回帰分析)を明らかにすることを主たる目的としている。 その結果,観戦者は30歳以上の男性が中心であり,野球というスポーツへの知識・関 心が高く,ミリオンスターズへ肯定的な意識を持っている(目的①),「リーグ」,「イベン ト」,「グッズ&飲食」,「ゲーム」,「スタジアム」,「地域密着」という6つのサービスプロ ダクト因子を抽出できた(目的②)こと, 6 つのサービスプロダクト因子のうち「ゲーム」 ならびに「地域密着」因子の再観戦意図への規定力が強いことが明らかになった。 〈キーワード〉 BCリーグ,石川ミリオンスターズ,サービスクオリティ,観戦満足,再観戦意図

Upload: others

Post on 21-Feb-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す …...SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであ り,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同

〈金沢星稜大学 人間科学研究 第 3 巻 第 1 号 平成 21 年 9 月〉

- 47 -

1 .はじめに

1 − 1 .研究の背景,位置づけ,視点,目的わが国では,2005年以降,バスケットボールのbjリーグ

や野球の四国アイランドリーグ(現,四国九州アイランドリーグ)など,独立系プロスポーツリーグ(以下 独立リーグと略す)の設立が相次いでいる。これは,「わが国のスポーツシステムが,学校や企業がスポーツを所有するという形態からスポーツを公共財として捉え,学校や企業を含めた地域で支援していく形態への変化のあらわれである」1と指摘できる。しかし,それは同時に,プロスポーツリーグならびにプロスポーツクラブが経営上の自立を求められているということでもある。一般にプロスポーツリーグやクラブのビジネスモデル(収益構造)は ①テレビ放映権 ②スポンサーシップ ③観戦チケット ④グッズの 4 つであり2,県域レベルの地域をマーケットとする独立リーグにとって,特に重要なのが ③観戦チケット収入となる。観戦者が増えることは,単純にチケット収入が増えるだけでなく,企業へのスポンサーセールスやグッズの販売,飲食店の出店など多くの波及効果をもたらし,経営基盤の安定へ寄与するのである。

筆者らはこれまで「地域プロスポーツクラブの観戦動機に関する調査」(07年),「地域プロスポーツクラブの観戦満足度に関する調査」(08年)を石川県内に本拠地を置く 2 つのプロスポーツクラブを対象に継続して実施している。本稿は07年度のツエーゲン金沢の観戦者実態と観戦動機の解明に関する調査研究,08年度観戦満足に関する調査研究につづき,ミリオンスターズ観戦者のサービスプロダクトに対する満足を測定する調査研究と位置づけている。ミリオンスターズの観戦者がどのようなサービスプロダクトに満足をしているのか,そして,どのようなサービスが全体の満足度に強い影響を与えているのか,あるいは再観戦しようとする意思に強く働きかけているのかについて,明らかにしていきたい。

1 − 2 .BCリーグ3と石川ミリオンスターズの集客状況BCリーグ全体の観戦者数はリーグ初年度の2007年で平

均1790人,総観戦者数は26万人4であった。つづく2008年シーズンは平均1318人と約25%の減少となっている。大幅な減少の原因には ①無料招待チケットの減少 ②初年度の新鮮さがなくなったことなどが指摘5されており,観戦者数を増加させるためには,よりリピート率を高めること

独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関する調査研究─08年 石川ミリオンスターズのホームゲーム観戦者を事例として─

Research on the Spectators' Satisfaction in Independent League

田島 良輝,神野 賢治,岡野 紘二Yoshiteru Tajima, Kenji Kamino,  Koji Okano

〈要旨〉野球の独立系プロスポーツリーグBCリーグ(Baseball Challenge League)所属の石川ミ

リオンスターズ(以下 ミリオンスターズと略す)観戦者を対象にサービスプロダクトの満足に関する調査研究を実施した。

本調査研究では,①ミリオンスターズ観戦者(以下 観戦者と略す)の特性 ②観戦者のサービスプロダクトに関する評価(因子分析) ③再観戦に影響を与えるサービス因子の規定力(重回帰分析)を明らかにすることを主たる目的としている。

その結果,観戦者は30歳以上の男性が中心であり,野球というスポーツへの知識・関心が高く,ミリオンスターズへ肯定的な意識を持っている(目的①),「リーグ」,「イベント」,「グッズ&飲食」,「ゲーム」,「スタジアム」,「地域密着」という 6 つのサービスプロダクト因子を抽出できた(目的②)こと, 6 つのサービスプロダクト因子のうち「ゲーム」ならびに「地域密着」因子の再観戦意図への規定力が強いことが明らかになった。

〈キーワード〉BCリーグ,石川ミリオンスターズ,サービスクオリティ,観戦満足,再観戦意図

Page 2: 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す …...SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであ り,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同

〈金沢星稜大学 人間科学研究 第 3 巻 第 1 号 平成 21 年 9 月〉

- 48 -

が喫緊の課題にあげられている。また,2007年のミリオンスターズの平均観戦者数は1106

名,2008年シーズンは931名であった。これは全クラブ中,最も少ない観戦者数でもある。しかし,観戦者のリピート率は上位 2 番目であるように,何度も球場に足を運ぶ熱心なファンの存在はミリオンスターズ観戦者の特徴6であるといえよう。

2 .概念の定義 〜先行研究の検討より〜

本稿では,サービスクオリティ,観戦(顧客)満足,再観戦意図といった用語がキーワードになる。しかし,サービスクオリティと観戦(顧客)満足という概念にはこれまで多くの研究でその混同がみられる。

そこで,サービスクオリティと観戦(顧客)満足について若干の補足と検討をしておきたい。サービスクオリティの測定で最も一般的な研究には,Parasuraman(1988)らによるSERVQUALモデルがある。これは,サービスの期待レベルと実際に受けて知覚したレベルの「ギャップ」をサービスクオリティとみなす方法である。しかし,これに対してはいくつかの批判もあり,吉田(2008)は,SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであり,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同していると指摘する。Oliver(1993)は,この類似する2つの概念について,サービスクオリティがサービスの認知的な反応であるのに対して,満足度はサービスの結果に対して感情を抱き,それを認識するプロセスによって生じるものであると区別している。同様にスポーツ分野におけるサービスクオリティ研究においても,Madrigal(1995)は,サービスクオリティが途中に別の要因を介して満足度に影響を及ぼしていると述べており,これは,Oliverのサービスクオリティが満足に先行するという見解と一致している。

以上の検討をふまえて,本稿ではサービスクオリティを「観戦者が球場で体験したすべてのサービスに対する認知的評価」とし,観戦(顧客)満足を「試合を観戦することを決めたことに対する満足」,再観戦意図を「また球場に試合を観戦に来たいと思う意志」と定義7した。

3 .調査概要

3 − 1 .調査対象調査対象はBCリーグに所属する石川ミリオンスターズ

の観戦者を対象とした。調査日はリーグ戦ホーム最終日(2008年 9 月28日(日))とし,来場者自記式調査法で実施した。具体的には,会場入場時に中学生以上の観戦者全員

へ質問紙を配布し,調査員により試合開始直前,ハーフタイム時,試合終了時にそれぞれ回収を行った。配布数は910部,そのうち561部の回答を得ることができ,有効回答率は,508部の55.8%であった。

3 − 2 .調査目的 本調査の目的は,地域プロスポーツクラブの観戦者を対

象にその観戦実態(属性,観戦行動)を整理(目的①)する。なかでもサービスプロダクトに関する観客の満足度に着眼し,観戦者のサービスプロダクト満足因子を抽出する(目的②)。さらに,抽出されたサービスプロダクト満足因子が全体の観戦満足度や再観戦意図へどれほどの規定力を持ち得ているのかを明らかにする(目的③)。という 3 点である。

3 − 3 .調査内容質問項目を設定した理論背景は,プロスポーツを 1 つの

サービスプロダクトとして捉え,スポーツサービスプロダクトの構造と機能の観点から分析を行う高橋(2008),小野里(2004,2005)らの先行研究8を重要な参照点9としている。主な質問項目を以下にまとめた。1 ) 観戦者の基本的属性;「年齢」「性別」「職業」2 ) 観戦行動の概要;「観戦回数」「観戦人数」「チケット入

手方法」「情報入手経路」3 ) 観戦者の特性;「ファン意識」,「ルール理解度」,「応

援選手の有無」,「応援選手の名前」4 ) サービスプロダクトへの評価・満足度・再観戦意図;「ゲームへの評価」 3 項目,「リーグへの評価」3 項目,「スタジアムの観戦しやすさへの評価」3 項目,「地域密着への評価」 3 項目,「(ゲーム以外の)イベントに関する評価」2 項目,「グッズ・飲食物への評価」4 項目,「チケットに関する評価」 2 項目のサービス評価計20項目を設定し,“まったく思わない”から “大いにそう思う”の 5 段階評定尺度を用いて測定した。また,「全体の満足度」(非常に不満から非常に満足)と「再観戦意図」(全くそう思わないから非常にそう思う)については, 7 段階評価尺度を用いて測定を行った。

4 .分 析

4 − 1 .サンプルプロフィール1 )属性

性別は男性65.6%,女性34.4%と男性の方が多い結果が示された。年代においては40歳代が26.7%と最も多く,30歳代以上で全体の85.9%を占めている。職業別では,会社員・団体職員が最も多く54.5%,学生は4.2%にとどまると

Page 3: 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す …...SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであ り,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同

独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関する調査研究

- 49 -

いう結果であった。2 )観戦者行動

観戦経験(回数)においては「はじめて」観戦に訪れた人が20%であり,観戦者の多くは再観戦者であることが示された。その再観戦者のうち,過去の観戦回数「 6 回以上」の人が最も多く45.1%を占めている。観戦同行者については「家族」が最も多く,半数以上(55.2%)に達している。また,観戦者のチケット入手方法は,29.7%が試合会場で購入,招待券を含めた無料チケット10での観戦が38.3%であるという結果が示された。ミリオンスターズに関する情報入手方法については「地元の新聞から入手している」が顕著に高い値を示した。

3 )観戦者特性

ファン意識,野球のルール理解度,応援選手の有無の項目から調査対象者の特性を把握した。ファン意識では「それなりのファン」が最も多く42.5%,次に「熱心なファン」26.9%,「どちらともいえない」20.6%と続いた。それに対して「ファンではない」との回答は2.8%であり,観戦者の大部分が肯定的にミリオンスターズを捉えているルールの理解度では,「良く知っている」が42.9%,「だいたい知っている」が45.8%,「どちらともいえない」が5.8%,「あまり知らない」が4.8%,「ほとんど知らない」が0.8%であった。また,調査対象者の半数以上を占める58.9%に応援する選手がおり,観戦回数11が多い人ほど応援する選手が存在するという傾向がみられた。

3 )まとめ

サンプルプロフィールの結果より,ミリオンスターズの観戦者の特徴は,30歳代以上の男性が中心で,会場でのチケット購入率はおおよそ30%程度である。野球への関心・知識が高く,チームを応援したいという意識が高い。また,チームだけでなく,選手への関心が高い観戦者も多く存在しているといった実態が明らかになった。

4 − 2 .サービスプロダクト評価項目の因子分析ここではサービスプロダクトに対する20の評価項目につ

いて 7 つの因子を仮定し,主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。その結果,下位尺度のクロンバックα係数が十分な値を得ることのできなかった 2 項目

(q15.チケットの価格は適正である,q16.チケットは簡単に入手できる)を除外し, 6 因子を仮定し,再度主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。プロマックス回転後の最終的な因子パターンと因子間相関を表 1 に示す。また,回転前の 6 因子で18項目の全分散を説明する割合は63.5%であった。

第 1 因子は 3 項目で構成されており,「BCリーグには良い選手が揃っている」,「BCリーグは良い試合やプレイを

みることができる」,「BCリーグは話題性が豊富である」などリーグに関する内容の項目が高い負荷量を示していたので『リーグ』因子と命名した。

第 2 因子も 3 項目で構成され,「球場スタッフの対応には好感が持てる」,「イニング間のイベントはスタジアムを盛り上げる」,「球場アナウンスはスタジアムの雰囲気を盛り上げる」などイベントに関連する項目が高い負荷量を示していることから『イベント』因子と命名した。

第 3 因子は 4 項目で構成され,「欲しいと思うグッズがある」,「チームのグッズをつけて応援することは楽しい」,

「スタジアムの飲食メニューは豊富でおいしい」,「スタジアムでの配布物は試合観戦に役立つ」に関連する項目に高い負荷量を示したことから『グッズ&飲食』因子と命名した。

第 4 因子は 3 項目で構成されており,「ゲームやプレイに夢中になることができる」,「みんなで応援することは楽しい」,「ライブでみる選手のプレイに感動する」など,試合そのものに関連する項目が高い負荷量を示していたので

『ゲーム』因子と命名した。第 5 因子は 3 項目で構成されており,「ミリオンスター

ズの応援は仲間意識を生んでいる」,「球場の熱気を雰囲気が感じられる」,「球場は観戦しやすい雰囲気である」などスタジアムに関連する内容の項目が高い負荷量を示していたので『スタジアム』因子と命名した。

第 6 因子は 2 項目で構成されており,「ミリオンスターズの応援で石川の地に愛着を感じる」,「ミリオンスターズは地元のチームだから応援している」など地域への愛着,地元意識に関連する内容の項目が高い負荷量を示していたので『地域密着』因子とそれぞれ命名した。

4 − 3 .下位尺度間の相関サービスプロダクト評価尺度の 6 つの下位尺度に相当

する項目の平均値を算出し,「リーグ」下位尺度得点(平均 3.55,SD 0.76),「イベント」下位尺度得点(平均3.73,SD 0.77),「グッズ&飲食」下位尺度得点(平均3.30,SD 0.72),

「ゲーム」下位尺度得点(平均4.18,SD 0.70),「スタジアム」下位尺度得点(平均3.82,SD 0.77),「地域密着」下位尺度得点(平均4.26,SD 0.78)とした。次に内的整合性を検討するために各下位尺度のα係数を算出したところ,「リーグ」でα=.89,「イベント」でα=.80,「グッズ&飲食」でα=.78,「ゲーム」でα=.83,「スタジアム」でα=.83,「地域密着」でα=.80と十分な値をとることができた。また,サービスプロダクトに関する下位尺度相関を分析したところ,6 つの下位尺度は互いに有意な正の相関を示した。

Page 4: 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す …...SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであ り,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同

〈金沢星稜大学 人間科学研究 第 3 巻 第 1 号 平成 21 年 9 月〉

- 50 -

表 2 .属性の検討(年齢差)

年齢 サービスプロダクト因子リーグ イベント グッズ&飲食 ゲーム スタジアム 地域

1.18歳以下 3.82 3.90 3.48 3.87 4.03 4.352.19歳〜 22歳代 3.77 3.49 2.98 4.35 3.64 4.29

3.23歳〜 29歳代 3.60 3.57 3.16 4.18 3.73 4.03

4.30歳代 3.38 3.63 3.24 4.02 3.67 4.145.40歳代 3.46 3.72 3.30 4.19 3.80 4.266.50歳代 3.66 3.81 3.35 4.31 3.93 4.317.60歳代以上 3.75 3.90 3.45 4.29 4.06 4.55

F値 3.201** 1.780 1.629 2.579* 2.820* 2.928**

多重比較(Tukey・5%水準) 6>4 n.s. n.s. 6>4 7>4 7>3, 4

*p<.05 **p<.01 ***p<.001

表 3 .観戦回数の一元配置分析

観戦回数サービスプロダクト因子

リーグ イベント グッズ&飲食 ゲーム スタジアム 地域1.はじめて 3.41 3.75 3.10 3.94 3.74 3.892. 2回〜5回 3.49 3.84 3.26 4.14 3.86 4.283. 6 回以上 3.68 3.63 3.42 4.33 3.83 4.42

F値 5.384** 3.722* 7.226 11.917** 0.852 17.003***

多重比較(Tukey・5%水準) 3>1, 2 2>3 3>1 3>1, 2 n.s. 2, 3>1

*p<.05 **p<.01 ***p<.001

4 − 4 .観戦者の諸特性とサービスプロダクト   〜 下位尺度得点(平均)の比較〜次に,サービスプロダクト 6 因子のそれぞれの特徴を確

認するために,①対象者の属性(年齢)②観戦回数の 2 つの視点からそれぞれの下位尺度得点(平均)を比較分析し

た。表 2 は,①対象者の属性(年齢)とプロダクト因子下位

尺度得点(平均)を示したものである。ここでは,年齢を独立変数,各因子を従属変数とした分散分析を行っている。その結果,『リーグ』因子(F(6,497)=3.201,p<0.01),『ゲーム』因子(F(6,494)=2.579,p<0.01),『スタジアム』因子

(F(6,493)=2.820,p<0.05),『地域密着』因子(F(6,493)=2.928,p<0.01)の 4 因子で有意差がみられた。つづけてTurkeyのHSD法( 5 %水準)による多重比較を行ったところ,20歳〜30歳代と比べて50歳代〜60歳代の各サービスへの評価が高いことが明らかになった。

表 3 は観戦回数による比較である。観戦回数別のサービスプロダクトへの評価は,『スタジアム』因子を除く『リーグ』(F(2,491)=5.384,p<0.01),『イベント』(F(2,485)=3.722,p<0.05),『グッズ&飲食』(F(2,480)=7.226,p<0.01),『ゲーム』(F(2,489)=11.917,p<0.01),『地域密着』(F

(2,488)=17.003,p<0.01)各因子で有意差が認められ,有意差が認められた因子のうち,観戦回数が多くなると,サービスへの評価も高くなるという傾向が強いが,『イベント』因子のみがそれと異なる結果となった。

4 − 5 .サービスプロダクトの影響力の検討1 )観戦者の満足度を規定するサービスプロダクト

「ミリオンスターズのゲームやサービスについての総合的な満足度」を従属変数,サービスプロダクトの各因子を独立変数として重回帰分析を行った。その結果,『リーグ』因子,『イベント』因子の標準偏回帰係数が高く,総合的な満足度に強い影響があることが明らかになった。

表 1 .サービスプロダクト評価項目の因子分析結果(プロマックス回転後の因子パタン)項目内容 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵl) BCリーグには良い選手が揃っている 0.933m) BCリーグは良い試合やプレイをみることができる 0.845n) BCリーグは話題性が豊富である 0.691f) 球場スタッフの対応には好感が持てる 0.516g) イニング間のイベントはスタジアムを盛り上げる 0.816h) 球場アナウンスはスタジアムの雰囲気を盛り上げる 0.803q) 欲しいと思うグッズがある 0.725r) チームのグッズを身につけて応援することは楽しい 0.780s) 球場での飲食メニューは豊富でおいしい 0.656t) 球場での配布物は試合観戦に役立つ 0.418i) ライブでみる選手のプレイに感動する 0.758j) みんなで応援することは楽しい 0.699k) ゲームやプレイに夢中になることができる 0.672c) ミリオンスターズの応援は仲間意識を生んでいる 0.661d) 球場の熱気や雰囲気が感じられる 0.932e) 球場は観戦しやすい雰囲気である 0.614a) ミリオンスターズの応援で石川の地に愛着を感じる 0.904b) ミリオンスターズは地元のチームだから応援している 0.677

Page 5: 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す …...SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであ り,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同

独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関する調査研究

- 51 -

2 )再観戦意図を規定するサービスプロダクト      

次に「今後も継続的に観戦に訪れたい」という再観戦意図を従属変数,サービスプロダクトの各因子を独立変数として重回帰分析を行った。その結果,『ゲーム』因子と『地域密着』因子の標準偏回帰係数が高く,再観戦意図へ強い影響力があることが明らかになった。

表 5  各サービス因子の全体の満足度,再観戦意図への規定力

満足度 再観戦意図標準回帰係数 標準回帰係数

リーグ .204** リーグ .161**

イベント .252** イベント .053  グッズ&飲食 .160** グッズ&飲食 .189**

ゲーム .027   ゲーム .227**

スタジアム .101** スタジアム .006  地域密着 .038   地域密着 .202**

重相関係数 .386   重相関係数 .346  *p<.05 **p<.01

5 .まとめ,考察と今後の課題

まずは 3 つの調査目的について結果をまとめた。ミリオンスターズ観戦者の実態は,30歳代以降の男性が

中心で同行者は家族連れが多い。会場でのチケット購入率はおおよそ30%程度である。全体的にリピート率が高い点が特徴であるが,なかでも60歳代のリピート率が高い。リピート回数が多くなるほど,ファン意識が高く,関心のある選手がいて,選手のプレイやクラブの勝利に対して期待度が高くなってくる。(目的①)。

スポーツ観戦におけるサービスプロダクトに関する満足度については,『リーグ』,『イベント』,『グッズ&飲食』,

『ゲーム』,『スタジアム』,『地域密着』という 6 つのサービスプロダクト因子を抽出できた(目的②)。

抽出された 6 つのサービスプロダクト満足因子のうち,全体の満足度に強い影響を与えているのは『リーグ』因子,

『イベント』因子であり,再観戦意図を強く規定する因子は『ゲーム』因子,『地域密着』因子であることが明らかになった(目的③)。

次に各サービスプロダクト因子の全体の満足度や再観戦意図への規定力(目的③)について,本拠地をともに石川県に置くサッカーのツエーゲン金沢との比較分析を行った。ツエーゲン金沢観戦者の場合,全体の満足度に強い影響を与えるものとして『グッズ&飲食』因子,『スタジアム』因子が指摘されたのに対して,ミリオンスターズでは『リーグ』因子,『イベント』因子が強い規定力を示すといった結果となった。小野里(2005)12,高橋(2008)13らの先行研

究では,全体の満足度に強い影響力を持つサービスプロダクト因子は,中核ベネフィットにあたる『ゲーム』因子であったが,本調査ならびにツエーゲン金沢に関する調査14

では,それと異なる結果となった。サービスプロダクトには「生産と消費の同時性」という特性がある。つまり,プロスポーツクラブの提供するサービスの中で最も根幹にあたるゲームというサービスは,観戦者のいる “イマ・ココ”で生産され,生産されると同時に消費される特性があるため,サービスの提供者であるクラブにとって最も重要でありながら,その品質のコントロールがきわめて難しい。そこで,プロスポーツリーグやクラブには勝敗に左右されないビジネスモデルの構築が求められることになる。本稿が対象とする独立系プロスポーツリーグの石川ミリオンスターズは,たとえば同じ野球というプロスポーツであっても,アメリカのMLBやわが国のNPBと比べて,ゲームのレベルが低くなることは否めない。それゆえ,より勝敗にリンクしない,ゲームの質に左右されないビジネスモデルの構築が重要となってくる。ミリオンスターズの調査において,全体の満足度を強く規定する要因に『イベント』因子が抽出されたことは,このような環境要因とクラブの取り組みが影響を与えているものと考察できる。

また本調査プロジェクトでは,観戦者の満足だけでなく,再観戦意図に直接影響力を与えるサービスプロダクト因子は何なのかについても分析をしている。これも満足度と同様にツエーゲン金沢の結果と比較したところ,ツエーゲン金沢,ミリオンスターズともに『地域密着』因子に高い規定力がみられた。スポーツを通して地域のつながり,地域への愛着が喚起されたとき,観戦者は「また球場に試合を観戦に来たいと思う意志」を持つのである。では,その「地域密着」とは概念的に,そして具体的にどういったことを示すのか。ここで結論をだすことはできないが,本稿の最後に若干の考察を付しておきたい。「地域密着」という概念を考えるとき,まずその地域とい

う多義的な言葉について,定義をしておかなければならないだろう。ここでは紙幅の都合もあり,詳細な議論は差し控えるが,社会学の視点から定義された松野(2004)の定義を参照しておきたい。松野は地域を,行政的範囲を基礎的範域とし,市場原理による “経済行動範域” “生活行動的範域” とが重層化した地域的範域のなかで,そこに居住する住民が,自ら主体性,自主性,責任を持って参画する地域政治,地域経済,地域文化,地域社会の構造連関的な動態的社会システムとしている。換言すれば,地域社会とは,行政・経済(企業)・生活(地域住民)と多様な対象を指し,その地域社会に “密着” するということは「それら対象と接点を創出し,継続的な関係性を構築すること」と考えてよいだろう。以上のように整理したとき,プロスポーツクラ

Page 6: 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す …...SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであ り,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同

〈金沢星稜大学 人間科学研究 第 3 巻 第 1 号 平成 21 年 9 月〉

- 52 -

ブにおける “地域密着”とは,行政,企業,地域住民という地域社会を構成する対象と接点を持ち,継続的な関係性を構築することと,定義することができよう。では,ミリオンスターズは,具体的にスタジアムという場15でどのような “地域密着” 戦略を実践しようとしているのか,資料16を通して検証を試みた。まずはミリオンスターズの接点の対象は誰かであるが,それはスタジアムに足を運ぶ観戦者であり,特に親子を中心とした家族が想定されている。次に,ミリオンスターズがそれら対象と,どのような関係性を構築しようとしているのかについてであるが,設立当初の事業目論見書によると,ミリオンスターズはスタジアムを ①家族と手軽に楽しめる場 ②家族と一緒に応援できる場③家族が「私たちの選手,チーム」と自慢できる場にすることを目指すと,記してある。以上をまとめると,ミリオンスターズの “地域密着”戦略の成果設定とは,親子連れを中心とした家族(広くは地域住民)がスタジアムという場で野球を媒介に共通の意識や感情を持てるような賑わいを創出することにある,と考えてよい。本稿での議論はここまでとなるが,イベントの満足度が全体の満足度を強く規定し,また地域のつながりを感じた観客が再観戦への強い意図を持つという今回の調査結果より,スタジアムの一体感を醸成するイベント,地域への愛着を喚起できるイベントが観戦者の満足度を高め,再観戦への意図を強めるのではないかという仮説が設定できたものと考える。今後の研究では,この仮説をより精緻に検討することで,集客と地域密着活動について,その関係性を明らかにしていきたい。

注1 田島良輝・神野賢治・岡野紘二,「地域プロサッカークラブ

観戦者の顧客満足に関する調査研究 〜08年 ツエーゲン金沢のホームゲーム観戦者を事例として〜」,『金沢星稜大学人間科学研究』,第 2 巻第 2 号,P63,2009

2 石川ミリオンスターズの端保社長は筆者らのインタビューにおいて,これらの収入源にくわえ,「ファンクラブや後援会費」による収入増が地域プロスポーツクラブにおいて今後重要な位置づけを占めてくると指摘している

3 BCリーグの概要について簡単にまとめると,2006年に新潟,長野,富山,石川を本拠地とする 4 県で発足をした(現在は群馬と福井をあわせた 6 球団)。「野球を通じて地域の方々に,夢と感動を与える」を経営理念に,地域密着型球団経営の実現に向けて,「球場のボールパーク化計画」,「県内全域での試合開催」,「選手のセカンドキャリア支援」,「地域イベントへの参加」など様々な試みを行っている。経営方式はシングルエンティティ方式を採用しており,放映権,一部スポンサー,選手給与などはリーグ運営会社によって契約,管理されている。

4 BC リーグ公式サイト, ニュース, 北信越BC リーグ2007年度入場者数のご報告, 検索日2009年 1 月 1 日,http://www.bc-l.

jp/modules/bclnews/5 岡野紘二,「独立リーグ観戦者の観戦満足度を規定する要因

に関する研究 〜BCリーグにおけるサービスクオリティに着目して〜」,早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士論文,2008

6 上掲 5 )7 上掲 5 ) 6 )8 スポーツ観戦者のサービスに関する満足度を分析する研究に

おいて,プロダクトアウトの発想を基にしたアプローチが有効なものなのかは議論の余地があり,今後の理論的な検討課題にあげられる。

9 これらの研究では,コトラーの製品概念を用い,1.中核的ベネフィット(ゲームを観戦する楽しさ),2.基本製品(魅力あるリーグ/観戦しやすい会場),3.期待製品(チームへの地元意識/豊富なエンターテインメント性),4.潜在製品

(魅力的なグッズ/チケット入手の容易さ),5.膨張製品とサービスプロダクトの位置づけを構造化したうえで,サービスプロダクト因子とスポーツイベント全体の満足度との関連性を分析している。

10 石川ミリオンスターズの経営戦略として,「無料チケットの配布はしない」(端保社長)という方針がある。それゆえ,ここでの無料チケットは厳密に言えば,友人・知人から譲り受けたチケットだと推測される。

11 観戦回数を「はじめて」,「 2 回〜 5 回」,「 6 回以上」に分け,応援する先週の有無をクロス分析したところ,「はじめて」観戦する人の83.9%が応援する選手がいないのに対して「 6 回以上」観戦した人の81.9%に応援する選手がいることが分かった

12 小野里真弓・畑攻・斎藤隆志,「観戦者からみたスポーツプロダクトとしてのWリーグの分析と考察」,『日本女子体育大学紀要』,Vol 35,2005

13 高橋豪仁・鈴木渉,「bjリーグ観戦者に関する調査研究 、 大阪エヴェッサのホームゲーム観戦者を事例として─」,『スポーツ産業学研究第17回大会号』,日本スポーツ産業学会,2008

14 上掲 1 )15 地域との接点はスタジアムのほかに,メディアや社会貢献

活動の場でも創出することはできるが,ここでは本調査がスタジアムに足を運んだ観戦者を対象とした調査であることをかんがみ,スタジアムという場に限定して論をすすめることにした。

16 BCリーグホームページ,地域密着型経営のポイントhttp://www.bc-l.jp/bcl/localCoherence.htmlや石川ミリオンスターズ事業目論見書などから,分析を行った

■参考文献一覧原田菜穂,「プロスポーツにおけるマーケット・セグメンテー

ション〜西武ドームにおけるパシフィック・リーグの試合による分析と考察」,『日本女子体育大学大学院修士論文』,2000

Madrigal, Robert ; Cognitive and affective determinants of fan satisfaction with sporting event attendance, Journal of leisure research, Vol.27, P205-227, 1995

松野弘;地域社会形成の思想と論理 −参加・協働・自治−,ミネルヴァ書房,2004

Page 7: 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す …...SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであ り,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同

独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関する調査研究

- 53 -

岡野紘二・田島良輝・間野義之,「BCリーグ観戦者の球場施設・サービスに対する満足度に関する研究」,『スポーツ産業学研究17回大会号』,日本スポーツ産業学会,2008

Parasuraman, A., VALARIE A.ZEITHAML, LEONARD L.BERRY ; SERVQUAL: A Multiple-Item Scale for Measuring Consumer Perceptions of Service Quality, Journal of retailing, Vol.64, P12-35,1988

Philip Kotler 月谷真紀 訳,『コトラーのマーケティング 基本

編』,ピアゾン・エデュケーション,2002Richard L.Oliver ; Cognitive, Affective and Attribute Bases

of the Satisfaction Response,The Journal of Consumer Research, Vol. 20 No. 3, P418-430,1993

吉田政幸 ; サービス品質研究における主要 3 因子−スポーツイベントにおける機能的,技術的,情緒的品質−, 日本スポーツ産業学会第17 回大会発表資料, 2008

Page 8: 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す …...SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであ り,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同

編 集 後 記

『人間科学研究』第 3巻第 1号をお届けします。平成19年 4 月の人間科学部の開設と人間科学会の発足から,石の上にも 3年目を迎えました。今号はこども学科 7件,スポーツ学科 1件の研究成果が寄せられました。多くは,地元に目を向け,地域をフィールドとして人材育成を図る人間科学部らしい調査や実践によるものです。池上氏・直江氏は,平成21年度文化庁国際芸術交流支援事業の一つである「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭2009〜モーツァルトと仲間たち〜」における学生参画の在り方を学生の具体例から提案しました。井上氏は,学都金沢を舞台とした「四高生と女学生の恋愛」事件に取材した小説を通して,人間の普遍的なテーマの一つである男女関係の在り方について考察しました。岡部氏は,学術情報ネット(SINET)で双方向性をもつ「遠隔授業システム」を介して各大学の授業等をリアルタイムに配信し,学生が移動することなく,在籍する大学において他大学の授業受講が可能となるシステムの有効活用について研究しました。北川氏は,金沢市における子育てする環境や制度,子育て支援センターなどでの子育てする親の生活や悩みの相談について実態調査を続けています。高氏は,自身がスクールカウンセラーとして,日々現場で悩める青少年の相談に応じ,少しでも心の負担を軽くするにはどうすればよいか,模索し続けています。谷中氏は,創造的音楽教育における即興表現の可能性について,電子的な楽器や媒体を用いた音楽シーンから模索する活動を続けています。村井氏は,授業時の対面以外でも学生と双方向で関係性を保てる方法として,学習コミュニケーションカード(LCカード)の活用の在り方を検証しています。田島氏・神野氏・岡野氏の共同研究は,プロ野球独立リーグのBC(ベースボール・チャレンジ)リーグに所属する石川ミリオンスターズの試合観戦者へアンケート調査を実施,その分析から顧客満足度を向上させるためのサービスとは何かを求めています。以上,各分野での地味な活動が実を結び,少しでも地域貢献に繋がれば,地元の大学としてこれに勝る喜びはありません。どうぞご高覧ご批正くださいますよう,宜しくお願い申し上げます。

2009年 9 月吉日 

編集委員長 馬 場   治

《投稿された論文等に関する著作権は基本的に人間科学会に帰属します》

Page 9: 独立系プロスポーツリーグ観戦者の観戦満足に関す …...SERVQUALモデルは本来,顧客満足度を測るモデルであ り,Parasuramanはサービスクオリティと顧客満足を混同

133150175 0

45

1200dpi