静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適し...

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www.medscape.org/viewarticle/884215 静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか? 後援: Bayer AG

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Page 1: 静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適し …...Jeff•Weitzです。オンタリオ州ハミルトンのマクマスター大学医学生化学教授、そして血栓症・ア

1 ページwww.medscape.org/viewarticle/884215

静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?後援:Bayer AG

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静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?

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www.medscape.org/viewarticle/884215

このアクティビティは、静脈血栓塞栓症(VTE)患者の治療に携わる心臓病専門医、プライマリーケア医、神経科医、その他の医療専門家を対象としています。

本アクティビティの目標は、VTEの二次予防についての最新データをレビューし、その臨床的意義について考察することです。

本アクティビティ終了時、参加者は以下のことができるようになります。

•• 慢性疾患としてのVTEの治療に関する知識を深めていただけます。•• 現在のデータに基づき、抗凝固薬による治療を、いつ、どのように延長するかの決定に大きな自信をもてるようになります。

講師陣と情報の開示

Medscape,•LLCは、ACCMEの認可を受けた団体として、教育的プログラムの内容の管理を行う立場にある担当者全員に対し、関連性のある商業的かつ経済的な利益関係について開示を行うことを求めています。ACCMEの規定する「経済的な利益関係」とは、金額に関わりなく過去12ヵ月に生じたすべての金銭的利益関係をいい、これには利益相反を生じうる生計を一にする配偶者またはパートナーの経済的利益関係も含まれます。

Medscape, LLCは、治験薬や米国食品医薬品局の規制を受ける医薬品の適応外使用に関し、最初に言及する時および内容的に適切と考えられる箇所において、その旨を伝えることを著者に奨励しています。

モデレータJeffrey Weitz, MD, FRCP(C), FACP

Professor•of•Medicine•and•Biochemistry,•McMaster•University,•Hamilton,•Ontario,•Canada

情報の開示:Jeffrey•Weitz,•MD,•FRCP(C)•FACPより、以下の経済的な利益関係の開示が行われています。•

以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:Bayer•HealthCare•Pharmaceuticals;•Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.;•Bristol-Myers•Squibb•Company;•第一三共株式会社;•Ionis•Pharmaceuticals,•Inc.;•Janssen•Pharmaceuticals,•Inc.;•Merck•&•Co.,•Inc.;•Novartis•Pharmaceuticals•Corporation;•Pfizer•Inc;•Portola•Pharmaceuticals,•Inc.

Weitz医師は、FDAによって米国内における使用が承認されている医薬品、医療機器、生物学的製剤、体外診断薬の適応外使用について言及する意図を持ちません。

Weitz医師は、FDAによって米国内における使用が承認されていない治験薬、医療機器、生物学的製剤、体外診断薬について言及する意図を持ちません。

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3 ページ

パネリストJan Beyer-Westendorf, MD

Assistant•Professor,•University•Hospital•Carl•Gustav•Carus•der•Technische•Universität•Dresden,•Dresden,•Germany

情報の開示:Jan•Beyer-Westendorf,•MDより、以下の経済的な利益関係の開示が行われています。•

以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:Bayer•HealthCare;•Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.;•第一三共株式会社;•Pfizer•Inc.;•Portola•Pharmaceuticals,•Inc.•

Beyer-Westendorf医師は、FDAによって米国内における使用が承認されている医薬品、医療機器、生物学的製剤、体外診断薬の適応外使用について言及する意図を持ちません。

Beyer-Westendorf医師は、FDAによって米国内における使用が承認されていない治験薬、医療機器、生物学的製剤、体外診断薬について言及する意図を持ちません。

Peter Verhamme, MD, PhD

Professor,•Department•of•Cardiovascular•Sciences,•University•of•Leuven,•Leuven,•Belgium

情報の開示:Peter•Verhamme,•MD,•PhDより、以下の経済的な利益関係の開示が行われています。

以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:Bayer•HealthCare;•Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.;•Bristol-Myers•Squibb•Company;•第一三共株式会社;•LEO•Pharma;•

以下の講演者または講演者グループのメンバーを務める:Bayer•HealthCare;•Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.;•Bristol-Myers•Squibb•Company;•第一三共株式会社;•LEO•Pharma

以下より臨床研究助成金を受取:Bayer•HealthCare;•Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.;•Bristol-Myers•Squibb•Company;•第一三共株式会社;•LEO•Pharma;•Sanofi•

Verhamme医師は、FDAによって米国内における使用が承認されている医薬品、医療機器、生物学的製剤、体外診断薬の適応外使用について言及することを意図しています。

Verhamme医師は、FDAによって米国内における使用が承認されていない治験薬、医療機器、生物学的製剤、体外診断薬について言及することを意図しません。

座長Keith A.A. Fox, MBChB, FRCP, FMedSci

エジンバラ大学心臓学教授(英国、エジンバラ)

情報の開示:Keith•A.A.•Fox,•MBChB,•FRCP,•FMedSciより、以下の経済的な利益関係の開示が行われています。

以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:AstraZeneca•Pharmaceuticals•LP;•Bayer•HealthCare;•Janssen•Pharmaceuticals,•Inc.;•Lilly;•Regeneron•Pharmaceuticals,•Inc;•Sanofi•

以下の講演者または講演者グループのメンバーを務める:AstraZeneca;•Bayer•HealthCare;•GlaxoSmithKline;•Janssen•Pharmaceuticals,•Inc.;•Lilly

以下より臨床研究助成金を受取:AstraZeneca;•Bayer•HealthCare;•Janssen•Pharmaceuticals,•Inc.;•Lilly;•Regeneron•Pharmaceuticals,•Inc.;•Sanofi

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静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?

4 ページ

委員Jan Beyer-Westendorf, MD

上記のとおり。

Craig I. Coleman, PharmD

コネチカット大学•教授(米国コネチカット州ストーズ)

情報の開示:Craig•I.•Coleman,•PharmDより、以下の経済的な利益関係の開示が行われています。

以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:Bayer•HealthCare,•Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.,•Janssen•Pharmaceuticals,•Inc.•

以下の講演者または講演者グループのメンバーを務める:Bayer•HealthCare,•Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.,•Janssen•Pharmaceuticals,•Inc.

以下より臨床研究助成金を受取:Bayer•HealthCare,•Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.,•Gilead•Sciences,•Inc.,•Janssen•Pharmaceuticals,•Inc.

Graeme J. Hankey, MBBS, MD, FRACP, FRCP, FRCPE

西オーストラリア大学医学・薬学部•神経学名誉教授、サー•チャールズ•ガードナー病院神経内科顧問(オーストラリア、西オーストラリア州パース)

情報の開示:Graeme•J.•Hankey,•MBBS,•MD,•FRACP,•FRCP,•FRCPEより、以下の経済的な利益関係の開示が行われています。

以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:Bayer•HealthCare、Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.、Johnson•&•Johnson•Pharmaceutical•Research•&•Development,•L.L.C.

以下の講演者または講演者グループのメンバーを務める:Bayer•HealthCare

Gilles Montalescot, MD, PhD

ピティエ=サルペトリエール病院/循環器センター•循環器学教授(フランス、パリ)

情報の開示:Gilles•Montalescot,•MD,•PhDより、以下の経済的な利益関係の開示が行われています。

以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:Accumetrics,•Inc.、AstraZeneca•Pharmaceuticals•LP、•Bayer•HealthCare、•BIOTRONIK、•Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.、•Bristol-Myers•Squibb•Company、•GlaxoSmithKline、•Iroko•Pharmaceuticals,•LLC、•Lilly、•Medtronic,•Inc.、•Menarini、•Novartis•Pharmaceuticals•Corporation、•Pfizer•Inc、•Roche、•Sanofi、•The•Medicines•Company

以下より臨床研究助成金を受取:Abbott•Laboratories;•Accumetrics,•Inc.;•AstraZeneca•Pharmaceuticals•LP;•BIOTRONIK;•Bristol-Myers•Squibb•Company;•第一三共株式会社;•Lilly;•Medtronic,•Inc.;•Menarini;•Nanosphere,•Inc.;•Pfizer•Inc;•Roche;•The•Medicines•Company

Christian T. Ruff, MD, MPH

TIMI研究グループ/ブリガム・アンド・ウィメンズ病院/ハーバード大学医学大学院•助教授(米国マサチューセッツ州ボストン)

情報の開示:Christian•T.•Ruff,•MD,•MPHより、以下の経済的な利益関係の開示が行われています。

以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:Bayer•HealthCare、Boehringer•Ingelheim•Pharmaceuticals,•Inc.、第一三共株式会社、Portola•Pharmaceuticals,•Inc.

以下より臨床研究助成金を受取:第一三共株式会社•

Peter Verhamme, MD, PhD

上記のとおり。

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講師陣の役割に対する基本的説明(必要に応じて改変)担当専門家:この医学専門家グループは、これらのプログラムおよび資料の制作にあたって助言を行いました。

Caroline M. Padbury, B. Pharm

Medscape, LLC リード科学ディレクター

情報の開示:Caroline M. Padburyディレクターより、関連性のある経済的な利益関係を有さないことが報告されています。

Kalanethee Paul-Pletzer, PhD

Medscape,•LLC•科学ディレクター

情報の開示:Kalanethee•Paul-Pletzer博士より、関連性のある経済的な利益関係を有さないことが報告されています。

ピアレビューアー

本アクティビティの内容についてはピア・レビューが行われており、レビューアーより、以下の経済的な利益関係の開示が行われています。•

以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:Abbott Laboratories; HeartWare International, Inc; Medtronic, Inc.; Thoratec Corporation

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静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?

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静脈⾎栓塞栓症の治療延⻑どのような患者に適しているか?

司会Jeffrey I. Weitz, MD, FRCP(C)Professor of Medicine and Biochemistry McMaster UniversityHamilton, Ontario, Canada

Jeffrey Weitz, MD:こんにちは。Jeff•Weitzです。オンタリオ州ハミルトンのマクマスター大学医学生化学教授、そして血栓症・アテローム動脈硬化研究所のエグゼクティブディレクターを務めています。「静脈血栓塞栓症の治療延長:•どのような患者に適しているか?」と題した本プログラムへようこそ。

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パネリストJan Beyer-Westendorf, MDAssistant ProfessorUniversity Hospital Carl Gustav Carusder Technische Universität Dresden Dresden, Germany

Peter Verhamme, MD, PhDProfessor Department of Cardiovascular SciencesUniversity of LeuvenLeuven, Belgium

本日、ベルリンのISTH総会にてご一緒するのは、ドイツのドレスデン大学病院助教授、•Jan•Beyer-Westendorf先生です。ようこそBeyer-Westendorf先生。•

Jan Beyer-Westendorf, MD:こんにちはWeitz先生。

Dr Weitz:そして、ベルギーのルーベン大学教授のPeter•Verhamme先生です。ようこそVerhamme先生。

Peter Verhamme, MD:どうも。

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静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?

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プログラムの⽬標以下についての知識を深める• 慢性疾患としての静脈⾎栓塞栓症(VTE)

以下について⾃信を持つ• 現在のデータに基づき、抗凝固薬を⽤いた治療を、いつ、どのように延⻑するかを決定すること

Dr Weitz:このプログラムでは、慢性疾患としての静脈血栓塞栓症について、そして抗凝固療法をいつ、どのように延長すべきかの決定に役立つ最新データについて話し合う予定です。

始める前に、このトピックに関する知識をチェックする質問をいくつか用意していますので、ご回答をよろしくお願いいたします。このアクティビティの最後にもう一度、学んだことを確認するため、同じ質問に回答する機会があります。

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9 ページ

a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

VTE治療の段階急性期、亜急性期、延⻑投与期

⻑期(亜急性期)約7⽇〜3ヵ⽉

延⻑約3ヵ⽉〜無期限

1週

⼆次予防

初期(急性期)約0〜7⽇

12週

Beyer-Westendorf先生、VTEの治療延長とは何を意味するのでしょうか。

Dr Beyer-Westendorf:この質問はとても重要なものだと思います。なぜならDVTは時間をかけて発症し、治療も長期にわたるので、治療段階を次のように分割する必要があるからです。まず患者の危険度が最も高い超急性期で、約1~2週間、場合によっては最長4週間まで続きます。次にいわゆる長期治療の段階が続きます。ここでは血栓の治療に焦点を当てますが、基本的には血栓の初期の再発を防ぐことに多くの力を注いでいます。繰り返しになりますが、これも患者を危険にさらす可能性があるからです。この段階は最長で3~6ヵ月続きます。この時期までにほとんどの患者、基本的に全患者が、治療を止めるべきか、また続けるとしたらどのような治療でどの用量を選択すべきかについて再評価しなければなりません。これが、われわれがみている3番目の延長治療の段階です。

Dr Weitz:分かりました。つまり1~4週間の初期、3~6ヵ月の長期、そしてそれを超えた延長期があるということですね。

Dr Beyer-Westendorf:そのとおりです。

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静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?

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a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

VTE再発の推定リスク主な要因

外科⼿術による誘発性

VTE⾮外科的な

⼀過性リスク因⼦による誘発性 VTE

⾮誘発性VTE

がんに関連したVTE

主な要因

Dr Weitz:Verhamme先生、この3~6ヵ月の時点で、治療を延長するか停止するかをどのように決定すればよいのでしょうか。

Dr Verhamme:再発リスクの評価が大切なのですが、そのためには患者のVTEが誘発性であるか非誘発性であるかを同定することが最も重要です。

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a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

外科⼿術による誘発性VTE再発リスク

1

3

0

1

2

3

4

1年 5年抗凝固薬による治療停⽌後

外科⼿術による誘発性近位VTEまたはPEに対するガイドライン推奨:3ヵ⽉間の抗凝固薬治療を推奨

再発の推定累積リスク、%

誘発性VTEでは、患者は大手術や大きな外傷の後にDVTに罹患します。このような患者がいったん3ヵ月間の治療を受ければ、再発リスクはかなり低くなることが分かっています…。

Dr Weitz:もし停止すれば。

Dr Verhamme:治療を停止した場合ですね。この患者をいったん3ヵ月間治療すれば、その後停止しても再発リスクは低くなります。ですから主要な危険因子による誘発を受けたこのような患者の再発リスクは低いのです。停止は可能です。これが最初のケースです。

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静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?

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a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

⾮誘発性VTE再発のリスク

10

30

0

10

20

30

40

1年 5年抗凝固薬による治療停⽌後

最初の⾮誘発性近位DVTまたはPEに対するガイドライン推奨:軽度/中程度の出⾎リスク:抗凝固薬治療の延⻑を提案

重度の出⾎リスク:3ヵ⽉間の抗凝固薬治療を推奨

再発の推定累積リスク、%

次に非誘発性静脈血栓塞栓症の患者について考えてみましょう。このような患者では危険因子を同定できません。最近外科手術を受けたり、不動状態になったりはしていないのです。がんや心不全のような、重要な併存症もありません。このような真の非誘発性静脈血栓塞栓症患者に対する抗凝固療法を3ヵ月で停止すれば、停止後の再発リスクは最初の年で10%になり、停止後5年間には30~40%にもなります。このような患者に対しては、延長療法の継続、すなわち静脈血栓塞栓症再発の二次予防を行うのが好ましいことは明らかです。

Dr Weitz:その中間の患者についてはいかがですか。•先生は、外科手術や外傷のような、主要な一過性危険因子による誘発を受けた患者について話されました。また、明らかな危険因子のない非誘発性の患者についても話されました。しかしあらゆる患者がこのような両極端に当てはまるわけではありません。

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⾮外科的な⼀過性危険因⼦による誘発性VTE再発のリスク

a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

⾮外科的な⼀過性危険因⼦• 不動状態(⼊院患者、下肢損傷)• 妊娠• エストロゲン療法• 8時間を超えるフライト

5

15

0

5

10

15

20

1年 5年抗凝固薬による治療停⽌後

⾮外科的な⼀過性リスク因⼦による誘発性近位DVTまたはPEに対するガイドライン推奨:

軽度/中程度の出⾎リスク:抗凝固薬による3ヵ⽉間の治療を提案重度の出⾎リスク:抗凝固薬による3ヵ⽉間の治療を推奨

再発の推定累積リスク、%

Dr Verhamme:はい。これは容易な患者です。主要な一過性危険因子、低い再発リスクでは、延長の必要なし。非誘発性、高い再発リスクでは、延長治療が推奨されます。次に、軽微な危険因子を有する患者がいます。軽微な危険因子は一過性のものである可能性があります。妊娠、ホルモン療法、軽度の外傷、可動性の制限。この軽微な危険因子も持続する可能性があります。また、われわれは、低リスクの血栓性素因または炎症性腸疾患の患者を同定したと思います。•

一過性または持続性の軽微な危険因子を有する患者の再発リスクは中程度です。このような患者の、抗凝固療法停止後1年目の再発リスクは、約4~5%と推定できると思います。これは過酷です。とても難しい患者たちです。

Dr Weitz:先生は、主要な一過性危険因子による誘発性の患者には、3ヵ月間の治療がおそらく適切であることを確認されました。非誘発性の患者に対しては明らかに治療の延長が必要だと考えておられます。そして、それらの間には、少し勾配がありますが、延長治療を行うか否かについてはグレーゾーンの患者たちがいます。

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静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?

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a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

がんに関連したVTE再発のリスク

• 年間再発率:15%• 以下のがんの状態に応じてリスクが変わる:

– 転移性である– 化学療法を受けている– 進⾏が速い

DVTまたはPEおよび活動性がんに対するガイドライン推奨:軽度/中程度の出⾎リスク:抗凝固薬による延⻑治療を推奨

重度の出⾎リスク:抗凝固薬による延⻑治療を提案

Dr Verhamme:全くそのとおりです。持続性の危険因子。これは強調すべき1つのカテゴリーだと思います。がんのような持続性の主要危険因子が考えられ、•がん患者自身もまた高い再発リスクが関連しています。

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a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

抗凝固薬治療の延⻑の便益とリスク

リスク出⾎の増加

利点VTE再発の減少

患者の選択

Dr Weitz:リスクに有利に働くことをどのように正確に把握できるかという点に話を広げる前に、もう一点確認したいのは、3ヵ月の時点で、再発を防ぐための抗凝固療法延長の利点を、この療法の継続による出血のリスクと比較して考えることです。また、ある患者は抗凝固療法を望まない一方で、ある患者は再発をとても恐れ、継続を望む可能性もあるので、患者の好みを考慮する必要もあると思います。

Dr Beyer-Westendorf:ある患者ではこれが服用している唯一の薬でもあるため、われわれの勧めにも関わらず、服用停止に実質的な利益を感じているので話し合いが必要です。

Dr Weitz:Beyer-Westendorf先生、この3~6ヵ月の時点に達した患者に対して延長するか停止するかの判断を確実にするための、何か他の因子はありますか。

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静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?

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a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

VTE再発の推定リスクその他の因⼦

抗凝固薬治療の停⽌1ヵ⽉後にDダイマーを検査

性別指標となる

イベントのタイプ:PEとDVTの⽐較

その他の因⼦

Dダイマーの陽性と陰性の⽐較:陽性の場合に再発リスクは倍増する

PE:⾼い再発リスク

PEとして再発する可能性が⾼い

男性と⼥性の⽐較:男性では再発リスクが

~75%⾼い+予測値は相加的と考えられる

抗凝固薬治療の延⻑に対するDダイマーと性別に基づいたガイドライン推奨はない

Dr Beyer-Westendorf:いくつかあると思います。文献ではこの課題に関する多くのアプローチがありますが、それらから学んだことは、指標となるイベントとして肺塞栓症を有していた患者は、•再発のリスクが高いだけではなく、明らかに静脈血栓塞栓症のさらに重度な徴候である肺塞栓症として再発する可能性が高いということです。PE患者は、深部静脈血栓症だけを患っていた患者とは少し異なるようです。

その他のツールによっても凝固活性化の程度を評価できますが、Dダイマーは凝固活性化を調べるためにとてもよく確立されたツールです。抗凝固療法の終了時と、その4週間後にDダイマーの検査を行った研究があります。この凝固マーカーが上昇している患者では、患者自身によって再発リスクが高いことが示されました。しかしながらDダイマーの上昇の有無の比率をみると、それほど大きな違いはないため、Dダイマーのような単一のバイオマーカーを用いて判断することは非常に難しいです。

Dr Weitz:他には何かありますか。•男性と女性の比較ではどうでしょうか。

Dr Beyer-Westendorf:これもよい質問です。男性は女性よりも再発リスクが高いことは知られていますが、その理由はこれが非誘発性VTEに関連しているからです。この点をはっきりさせなければなりません。

Dr Weitz:はい。私たちは非誘発性の場合のみについて話しています。なぜなら前にもお話ししたように、誘発性のものについては誘発因子の問題が解決したという前提で、3ヵ月目に抗凝固療法を停止するからです。

Dr Beyer-Westendorf:そのとおりです。男性に関しては、男性であること自体が再発のリスクを高める傾向があることは分かっていますが、女性に関してはもっと大きな違いがあります。年配の女性は若い女性に比べて再発リスクが高いのです。なお均衡のとれた女性のサブセットでは実際にDダイマーは役立つだろうということが分かっています。なぜなら抗凝固療法の停止後4週間経ってもDダイマーの値が低い若い女性は、静脈血栓塞栓症の再発リスクが非常に低いことが分かっているからです。このようなサブセットでは、実際に判断の助けとなるツールやスコアが存在します。

Dr Weitz:ありがとうございました。Verhamme先生、VTEのエピソードを1つ以上発現していた患者についてはいかがですか。

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a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

VTE再発の推定リスクその他の因⼦(続き)

位置:遠位と近位の⽐較

VTEイベント回数:最初の⾮誘発性

イベントとそれ以降のイベントの⽐較

その他の因⼦

2回⽬以降:1回⽬よりも再発リスクは50%⾼い

ガイドラインの推奨:• 軽度の出⾎リスク:抗凝固薬治療の延⻑を推奨• 中程度の出⾎リスク:抗凝固薬治療の延⻑を提案• 重度の出⾎リスク:抗凝固薬治療の延⻑は推奨されな

孤⽴性遠位型:近位よりも再発リスクが

50%低いガイドラインの推奨:• 3ヵ⽉間の抗凝固薬治療

Dr Verhamme: 静脈血栓塞栓症のエピソードを2回目に呈した患者の再発リスクは高く、50%も高いことが分かっています。このような患者に対しても、予防の延長が利益となることは疑いようがありません。遠位深部静脈血栓症のみを呈している患者もいます…

Dr Weitz:..そして咳をしている。

Dr Verhamme:…そして咳をしている。このような患者の再発リスクは低いことが分かっています。彼らの再発リスクは約50%低いのです。これが最初の咳を伴う非誘発性血栓症であるなら、このような患者のほとんどに対しても延長治療を推奨することはないでしょう。

Dr Weitz:先生なら、このような患者を3ヵ月または6ヵ月などと治療しますか。

Dr Verhamme:3ヵ月ですね…

Dr Weitz:そして停止するのですね。もし患者に再発イベントがみられたら延長するのでしょうか。

Dr Verhamme:はい。そのとおりです。

Dr Weitz:以前のイベントが誘発性か非誘発性かという点は問題になりますか。

Dr Verhamme:これは少しグレーゾーンだと思うのですが、もし患者が、持続性か一過性かに関わらず軽微な危険因子によってVTEを再発したのであれば、これまでに学んだことによれば再発リスクは相当なものだということです。このような患者にとって予防の延長は利益となるでしょう。

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静脈血栓塞栓症の治療延長: どのような患者に適しているか?

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a. Kearon C, et al. Chest. 2012;141(suppl):e419S-e496S; b. Kearon C, et al. Chest. 2016;149:315-352.

VTEの治療

VKA:⾮経⼝抗凝固薬と同時に開始。⾮経⼝抗凝固薬は24時間INR≥2.0になるまで継続

NOAC:⾮経⼝抗凝固薬(dabigatranおよびedoxaban)の後で開始、あるいは⾮経⼝抗凝固薬(rivaroxabanおよびapixaban)の代わりに開始し、その後継続

VKAまたはNOAC

延⻑〜3ヵ⽉から無期限

⾮経⼝:heparin、LMWH、

fondaparinux

⻑期〜7⽇から〜3ヵ⽉

初期0〜7⽇

⼆次予防

Dr Weitz:分かりました。私たちはVTE治療を進歩させてきました。従来の治療法は、非経口抗凝固薬をビタミンK拮抗薬に上乗せすることによって始まりました。現在では直接経口抗凝固薬であるNOACまたはDOACが利用可能です。これまでに、DOACとプラセボを比較した延長治療のための試験が行われました。Beyer-Westendorf先生、この試験結果について要約していただけますか。

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19 ページ

a. Agnelli G, et al. N Engl J Med. 2013;368:699-708; b. Schulman S, et al. N Engl J Med. 2013;368:709-718; c. EINSTEIN-PE Investigators, et al. N Engl J Med. 2010;363:2499-2510.

NOACを⽤いたVTE延⻑投与試験有効性と安全性の転帰

AMPLIFY-EXT[a]apixaban

2.5 mg, n=840apixaban

5 mg, n=813プラセボn=829 P値

VTE再発またはVTE関連死、% 1.7 1.7 8.8 <0.001

⼤出⾎、% 0.2 0.1 0.5 --

RE-SONATE[b]dabigatran

n=681プラセボn=662

再発性または致死的VTE、% 0.4 5.6 <0.001

⼤出⾎、% 0.3 0 1.0

EINSTEIN-EXT[c]rivaroxaban

n=602プラセボn=594

再発性VTE、% 1.3 7.1 <0.001

⼤出⾎、% 0.7 0 0.11

Dr Beyer-Westendorf:はい。まず最初に、この試験がなぜプラセボ対照試験であったのかを理解することが大切だと思います。その理由はこうです。かつて患者をビタミンK拮抗薬によって治療していた頃、私たちはこれが3~6ヵ月の初期に妥当な治療選択肢だと考えていました。しかし長期治療における出血の恐れがそれを再考させることになったのです。古い時代の初期設定によれば、大部分の患者は3~6ヵ月で治療を停止し、継続するのは厳選された少数の患者でした。

現在これを初期設定として容認すれば、この決定を対照とするべきであることは明らかです。これが、DOACによる延長治療について調べた試験ではプラセボとの比較を行っている理由です。この試験はapixaban,•rivaroxabanおよびdabigatranという3種類の薬剤によって行われてきたのですが、これまでのところ結果はかなり似通ったものでした。NOACを用いた延長治療によって、再発率は、治療の停止およびプラセボ使用の患者に比べると最高80~85%まで減少可能であることが分かりました。この延長試験を受けた患者サブセットにおける3~6ヵ月後の再発率は、抗凝固療法を停止した場合に著しいものとなりました。

一方で、その背景には出血に対する恐れがあるので、出血率についても調べなくてはなりません。この全試験で、DOAC療法を継続した場合の大出血率は、とても低いものでした。プラセボ群に比べると、継続を選択することには明らかな利益ーリスク比がみられました。

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20 ページ

Weitz J, et al. Thromb Haemost. 2015;114:645-650.

EINSTEIN CHOICE試験デザイン

• 主要評価項⽬:症候性致死的/⾮致死的VTE再発• 安全性主要評価項⽬:⼤出⾎

3365例

12ヵ⽉間の治療

症候性DVTまたはPEと客観的に診断され、6〜12ヵ⽉の

抗凝固薬療法を完遂した患者

R

31ヵ国230施設

rivaroxaban 10 mg/⽇

rivaroxaban 20 mg/⽇

aspirin 100 mg/⽇

Dr Weitz:分かりました。Verhamme先生、私たちは皆EINSTEIN•CHOICE試験に参加しています。この試験の結果は最近、3月のNew England Journal of Medicineにて公開されました。この試験のデザインと理論的根拠について説明していただけますか。•Beyer-Westendorf先生が見事な準備をしてくださいました。なぜこの試験では比較対象として、プラセボではなくaspirinを使用したのでしょうか。

Dr Verhamme:EINSTEIN•CHOICEでは、無作為化盲検法で、患者を異なった治療群へ無作為に割り付けました。最初に6~12ヵ月治療し、続いてEINSTEIN-Extension試験で評価されたrivaroxabanの標準用量、二次予防のための非常に有効かつ安全な用量を投与しました。第2治療群は、rivaroxaban•を10mgという低用量で投与しました。この用量は整形外科手術後の一次予防には非常に有効ですが、長期にわたる静脈血栓塞栓症の二次予防に対してはまだ評価されていませんでした。ユニークな第3治療群は低用量aspirinで、100mgのaspirinを1日1回投与されました。低用量aspirinが静脈血栓塞栓症の二次予防に有効だというデータはありますが、これは異なったものであり、抗凝固薬の継続による有効性よりもはるかに低い結果です。このユニークなEINSTEIN•CHOICE試験には3つの治療群があります。•

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Weitz J, et al. Thromb Haemost. 2015;114:645-650.

EINSTEIN CHOICE患者集団

以下の患者を除外:• 6〜12ヵ⽉の治療期間に症候性VTEを再発した患者• 抗凝固薬療法延⻑の適応となった患者(VTE再発、重度の

⾎栓形成傾向、または抗リン脂質抗体症候群)

対象集団:担当医が抗凝固薬療法継続の必要性について

確信を持てない患者

また、強調すべき重要なことは、この試験に参加した患者の間で、抗凝固療法を延長すべきかについて均衡がとれていたことです。医師が抗凝固療法継続の必要性を強く感じていた患者や、静脈血栓塞栓症が再発して2回目のエピソードを呈した非常に高リスクの患者では、抗凝固療法を継続するという厳格な指示があったことへの留意が大切だと思います。そのような患者は不適格でした。

抗凝固療法の延長の必要がない誘発性VTE患者も、明らかに同じでした。この試験に動員されるべきではありませんでした。これが患者集団です。リスクと便益がどのように関連しているかについて、医師が確信を持てない患者。そのような患者が標的集団でした。

Dr Weitz:分かりました。さて、治療群は3つありました。rivaroxaban•治療容量20mgを1日1回、予防用量10mgを1日1回、そしてaspirinでした。計画された治療期間は12ヵ月で、その後1ヵ月間フォローされました。

Dr Verhamme:この試験の結果は…全試験で提示されている結果で、主要有効性評価項目は症候性再発性静脈血栓塞栓症でした。そして、本質的な安全性評価項目はICH基準の大出血でした。

Dr Weitz:Beyer-Westendorf先生、EINSTEIN•CHOICEの最も重要な結果について説明していただけますか。有効性および安全性に関して、この試験によって何が明らかになりましたか。

Dr Beyer-Westendorf:もちろんです、Weitz先生。一番最初に説明すべき重要なことは、この試験が以前に行われたプラセボ対照延長試験と非常によく一致していることです。その理由を述べましょう。

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Simes J, et al. Circulation. 2014;130:1062-1071.

INSPIREAspirinはVTE再発を予防する

イベント発現率/年、 %

サブグループ プラセボ、(n=608)

Aspirin、(n=616)

HR(95% CI) P値

VTE 7.5 5.1 0.65(0.49, 0.86) 0.003

主要⾎管イベント 8.7 5.7 0.63(0.48, 0.83) <0.001

治療による純便益(Net clinical benefit) 9.8 6.5 0.64

(0.50, 0.83) <0.001

⼤出⾎ 0.4 0.5 1.31 (0.48, 3.53) .60

• 主要⾎管イベント:VTE再発、MI、脳卒中、またはCV死の複合• 治療による純便益:VTE再発、MI、脳卒中、全死亡率、および⼤出⾎

対照群としての第3治療群はaspirinでしたが、Verhamme先生が参照された以前の試験から、aspirinは実際に再発リスクを約30%まで減少させることが分かりました。

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Weitz J, et al. N Engl J Med. 2017;376:1211-1222.

EINSTEIN CHOICE 主要評価項⽬VTE再発

1.51.2

4.4

00.5

11.5

22.5

33.5

44.5

5

Rivaroxaban 20mg Rivaroxaban 10mg Aspirin 100 mg

患者

、%

1107例 1127例 1131例

HR(95% CI) Privaroxaban 20 mg群とaspirin群 0.34(0.20, 0.59) <0.001

rivaroxaban 10 mg群とaspirin群 0.26(0.14, 0.47) <0.001

rivaroxaban 20 mg群と10 mg群 1.34(0.65, 2.75) 0.42

aspirinを用いた際のVTE再発率は約4.4%でしたが、これはまさに延長試験でプラセボ処置された患者にみられた範囲になるのです。EINSTEIN•CHOICEで選択された集団もまた、この臨床的均衡がとれた集団を反映していたのです。

同じことがrivaroxabanの20mg治療群にも言えます。これもイベント率1.5%により、高い有効性または効果を証明しました...

Dr Weitz:先生がおっしゃった4.4%と比較してですね。

Dr Beyer-Westendorf:そのとおりです。これもまたEinstein-Extention試験とよく調和しており、rivaroxaban•20mgを用いた治療の継続は、治療の停止やaspirinの使用と比較して、より良い選択肢であることが示されました。しかしながら、最も重要な知見は10mg用量の結果だと思います。•なぜなら10mgの用量は20mg用量と同程度に有効で、静脈血栓塞栓症再発の絶対リスクは1.2%であり、20mg用量との違いがみられないからです。

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Weitz JI, et al. N Engl J Med. 2017;376:1211-1222.

EINSTEIN CHOICE出⾎に関する結果

すべて P=NS

0.5

2.7

3.3

0.4

2

2.4

0.3

1.82

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

⼤出⾎ CRNM ⼤出⾎/CRNM

患者

、%

出⾎:国際⾎栓⽌⾎学会(ISTH)出⾎基準

Rivaroxaban 20 mg(n=1107)Rivaroxaban 10 mg(n=1127)Aspirin 100 mg(n=1131)

同時に、この試験の出血の転帰をみると、大出血率は3治療群で0.5%未満でした。これはaspirin群、10mg群、20mg群ともに当てはまりました。このことは、治療を停止したりaspirinを投与するよりも、rivaroxaban••20mgと10mgのほうが良い選択肢であることをはっきりと証明しています。そして、この試験の対象となった患者に対して、この10mgはそれまでの最大投与量と同程度の利益をもたらしました。

Dr Weitz:出血率または出血率の傾向に何らかの違いはみられましたか。•3つの治療群の間で出血率に有意な差はみられませんでしたが、•出血率の違いに何か傾向はありましたか。

Dr Beyer-Westendorf:はい。大出血を見れば何もありませんでしたが、臨床的に重要な非大出血を含めれば、生物学的勾配が予想されるはずです。3つの異なった強度による戦略ですから、何か徴候があるはずです。これらの違いもまた非常に軽微なもので、臨床的に重要な非大出血は、aspirinでは約2%、これに対し、rivaroxabanの10mg用量では2、•そして20mg用量では2.7%でした。臨床的に重要な非大出血を見ても、•3つの戦略すべては非常に安全です。

Dr Weitz:VTE再発のリスクは、rivaroxabanの治療用量および予防用量ともに、aspirinに比較して70%減少しており、安全性は同様でした。今では別の選択肢があります。延長治療の有望な戦略として、20mg用量、そして10mg用量があります。Verhamme先生、どの用量を使うかはどのように決定すればよいのでしょうか。

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EINSTEIN CHOICE臨床的意義

⽤量 10 mg• ほとんどの患者に使⽤• 出⾎の懸念がある患者に使⽤

⽤量 20 mg• 以下のリスクが⾼い患者に使⽤

– VTE再発– 深刻な⾎栓形成傾向– 抗リン脂質抗体症候群– がん

Dr Verhamme:10mgはとても魅力的です。Beyer-Westendorf先生が指摘したように、これはVTEの再発予防に有効であり、低用量aspirinと同等に安全です。予防の延長を考えた私の患者のうちの大部分にとっては、10mg用量はとても魅力的だと思います。

申し上げましたように、明らかにこれらのリスクの高い患者はEINSTEIN•CHOICEには含めませんでした。たとえば複合型の血栓形成傾向を有する患者、抗リン脂質症候群の患者、この試験に不適な患者に対しては、高用量、•rivaroxabanの標準用量である20mg用量を継続するでしょう。次に、出血の懸念がある患者に対してもまったくはっきりしていることですが、6ヵ月後に用量を減らすことができるという選択肢があります。

Dr Weitz:Beyer-Westendorf先生、これについて別に考慮した患者はいますか。

Dr Beyer-Westendorf:そうですね。さらに2つの集団について言及できるでしょう。どのようなタイプ、または用量の抗凝固薬であっても、それの使用中に再発を起こした患者は、明らかにこの血栓形成促進状態を治療し、保護することが難しいと証明された患者だと思います。これは、私が用量を減らすことを検討しない患者だと言えるでしょう。DOAC投与に適した患者は、ステージの進行したがんであるか、または非常に侵襲性で、血栓形成促進性の抗がん療法を受けている患者だと思います。これはまったく別の話題ですが、もし治療が非常に困難なステージのがん患者にDOACを投与して、それを継続するとしたら、完全用量によって継続すると思います。

Dr Weitz:分かりました。ほとんどの患者には10mg用量で十分だと思います。何らかの懸念がある患者に対しては、高用量にとどめるという選択肢があります。

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まとめ• VTEは慢性疾患で、深刻な健康上の懸念である• 患者の多くが⾼い再発リスクを抱えている• NOACにより、以下の患者にシンプルな治療選択肢を提供

することができる– 急性期:最初に⾏うapixaban 1週間またはrivaroxaban 3週間

の⾼⽤量治療– ⻑期:NOACの投与を継続– 延⻑期(適した患者に対し):低⽤量rivaroxabanの選択肢

• EINSTEIN CHOICEのような試験から得られたデータは、NOACによる延⻑治療が安全かつ有効であることを⽰している

これまでに何を学んだでしょうか。•VTEは、いまだに重大な医学的問題であることを学びました。DOACは、初期から長期、そして延長期と、真に簡素化されたVTE治療であり、今では3段階の治療パラダイムが利用できることを学びました。ここでは最初にapixabanによる強力な治療を1週間行い、rivaroxabanによる治療を3週間行うことから始めます。次に長期へと移ります。

そしてそれを必要とする患者のための延長期です。私たちは非誘発性を確実に同定し、そしておそらくはいくつかの持続性因子による誘発性も同定しました。それらに対してほとんどの場合は低用量を用いますが、心配なら高用量の選択肢もあります。

Dr Beyer-Westendorf:高用量でも同じように安全に継続します。

Dr Weitz:そのとおりです。両用量とも安全プロファイルは良好です。何か話し忘れていることはあるでしょうか。

Dr Verhamme:少し付け加えたいと思います。3ステップの治療段階と、長期予防のため3~6ヵ月後に用量を減少させる選択肢について話し合ったとしたら、患者はとてもありがたく思うことでしょう。患者は私たちがリスクと利益を再評価すること、そして初期と延長期では違うことを感じているからです。

Dr Weitz:Verhamme先生、これ以上ないほど同意します。治療開始時からこれが段階的なアプローチであることを話せば、患者は準備をし、各ステップを楽しみにすると思います。患者には病気が改善する段階のように見えるのです。

さて、Verhamme先生にBeyer-Westendorf先生、この討論にご参加いただきありがとうございました。素晴らしいお話でした。皆様もこのアクティビティにご参加いただき誠にありがとうございました。続いて、問題と評価にお進みください。

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参考文献1. Kearon•C,•Akl•EA,•Comerota•AJ,•et•al.•Antithrombotic•therapy•for•VTE•disease:•Antithrombotic•Therapy•and•Prevention•

of•Thrombosis,•9th•ed:•American•College•of•Chest•Physicians•Evidence-Based•Clinical•Practice•Guidelines.•Chest.•2012;141(suppl):e419S-e496S.

2. Kearon•C,•Akl•EA,•Ornelas•J,•et•al.•Antithrombotic•therapy•for•VTE•disease:•CHEST•guideline•and•expert•panel•report.•Chest.•2016;149:315-352.

3. Agnelli•G,•Buller•HR,•Cohen•A,•et•al;•AMPLIFY-EXT•Investigators.•Apixaban•for•extended•treatment•of•venous•thromboembolism.•N Engl J Med.•2013;368:699-708.

4. Schulman•S,•Kearon•C,•Kakkar•AK,•et•al;•RE-MEDY•Trial•Investigators;•RE-SONATE•Trial•Investigators.•Extended•use•of•dabigatran,•warfarin,•or•placebo•in•venous•thromboembolism.•N Engl J Med.•2013;368:709-718.

5. Bauersachs•R,•Berkowitz•SD,•Brenner•B,•et•al;•EINSTEIN•Investigators.•Oral•rivaroxaban•for•symptomatic•venous•thromboembolism.•N Engl J Med.•2010;363:2499-2510.

6. Weitz•JI,•Bauersachs•R,•Beyer-Westendorf•J,•et•al;•EINSTEIN•CHOICE•Investigators.•Two•doses•of•rivaroxaban•versus•aspirin•for•prevention•of•recurrent•venous•thromboembolism:•rationale•for•and•design•of•the•EINSTEIN•CHOICE•study.•Thromb Haemost.•2015;114:645-650.

7. Simes•J,•Becattini•C,•Agnelli•G,•et•al;•INSPIRE•Study•Investigators.•Aspirin•for•the•prevention•of•recurrent•venous•thromboembolism:•the•INSPIRE•collaboration.•Circulation.•2014;130:1062-1071.

8. Weitz•JI,•Lensing•AWA,•Prins•MH,•et•al;•EINSTEIN•CHOICE•Investigators.•Rivaroxaban•or•aspirin•for•extended•treatment•of•venous•thromboembolism.•N Engl J Med.•2017;376:1211-1222.

略語

AC =•抗凝固薬

CI =•信頼区間

CRNM =•臨床的に重要な非大出血

CV =•心血管

DOAC =•直接経口抗凝固薬

DVT =•深部静脈血栓症

HR =•ハザード比

INR =•国際標準化比

ISTH =•国際血栓止血学会

LMWH =•低分子ヘパリン

MI =•心筋梗塞

NOAC =•非ビタミンK拮抗性経口抗凝固薬

NS =•有意差なし

PE =•肺塞栓症

R =•無作為割付

VKA =•ビタミンK拮抗薬

VTE =•静脈血栓塞栓症

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