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様式第5 号(第9 条関係) 論文内容の要旨 報告番号 氏名 小池奈月 Squamous c e l l c a r c i n o m a (SC) a n t i g e n a s a n o v e l c a n d i d a t e marker f o r a m n i o t i c u i d e m b o l i sm Squamous c e l l c a r c i n o m a (SC) a n t i g e n は羊水塞栓症診断の新しいマーカーと なり得る 論文内容の要旨 羊水塞栓症は、羊水中の胎児成分が母体循環に入札肺毛細血管内の機械的閉塞あるいはアナフィラ キシ一様反応により、急激な呼吸循環障害やDIC を呈する疾患である。発症率は2万分娩に1例程度と稀で あるが、発症すると治療は困難で妊産婦死亡率は約60% と高い。予測や臨床診断は困難なため、呼吸循 環障害があり、他の周産期合併症でない場合に除外診断し早期に治療を開始する他ない。確定診断は、 剖検で肺などの組織中に胎児成分を確認することで行う。従来、血清学的補助診断マーカーとして羊水・胎 便中に多く含まれるSTN 、亜鉛コプロポルフィリン1 (ZnCP 1 ) が用いられてきた。 STN は特異度が高いが、 ST N ZnCP-1 ともに感度が高くないことが問題で、あった。そこでわれわれは、新たな羊水流入マーカーを検索 した。羊水流入を証明するために必要なマーカーの条件は、羊水中に特異的に濃度が高いこと、陣痛によ り濃度が変化しないことである。条件を満たす蛋白質を検索し、 Squamous c e l l c a r c i n o m a (SC) a n t i g e n 適切であることを見出した。 本研究では、日本産婦人科医会が行っている羊水塞栓症血清検査事業で集められた血清を用いて、 SC CA CUA 法で測定した。剖検により確定した確定的羊水塞栓症4 f 列、血清検査事業が設定した臨床的基 準を満たす臨床的羊水塞栓症1 6 例、正常分娩した妊婦をコントロール7 4 例とし、血清を測定した。血 清s e c a n t i g e n は確定的羊水塞栓症(1 2 . 0 ± 1 6 9 . 4 ng /mL, P = 0 . 0 1 ) 、臨床的羊水塞栓症(9 . 5 ± 1 0 . 3 ng/ mL, P = 0 . 0 4 )で、コントロール(4 . 4 ± 2 . 2 ng /mL) より有意に高かった。 ROC 解析を行い、羊水塞栓症診 断の血清s e c a n t i g e n のカットオフ値を7 . 1 5 ng/mL と設定した。 この時の感度は60% 、特異度は89.2% あった(AUC=O .7 8 5 , P 0 . 0 1 )。 STN の感度、特異度は2 5 . 8 % 97.2% ZnCP - 1 で、は4 5 . 9 % 7 3 . 0 % であり、 SCCA. がより感度が高かった。 この結果より、 s e c a n t i g e n は従来の補助診断マーカーSTN ZnCP-1 よりも有用な羊水塞栓症診断の新 しいマーカーとなり得ると考えられる。また、低侵襲で簡便に検査出来るため臨床診断に有用である。

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Page 1: secginmu.naramed-u.ac.jp/dspace/bitstream/10564/3672/1/01乙...血清sec antigen は確定的羊水塞栓症(112.0 ± 169.4 ng /mL, P = 0.001) 、臨床的羊水塞栓症(9.5 ±

様式第5号(第9条関係)

論文内容の要旨

報告番号 氏名 小池奈月

Squamous cell carcinoma (SCC) antigen as a novel candidate marker for

amniotic 自uid emboli sm

Squamous cell carcinoma (SCC) antigen は羊水塞栓症診断の新しいマーカーと

なり得る

論文内容の要旨

羊水塞栓症は、羊水中の胎児成分が母体循環に入札肺毛細血管内の機械的閉塞あるいはアナフィラ

キシ一様反応により、急激な呼吸循環障害やDIC を呈する疾患である。発症率は2万分娩に1例程度と稀で

あるが、発症すると治療は困難で妊産婦死亡率は約60% と高い。予測や臨床診断は困難なため、呼吸循

環障害があり、他の周産期合併症でない場合に除外診断し早期に治療を開始する他ない。確定診断は、

剖検で肺などの組織中に胎児成分を確認することで行う。従来、血清学的補助診断マーカーとして羊水・胎

便中に多く含まれるSTN 、亜鉛コプロポルフィリン1(ZnCP 1) が用いられてきた。 STN は特異度が高いが、 ST

N 、ZnCP-1 ともに感度が高くないことが問題で、あった。そこでわれわれは、新たな羊水流入マーカーを検索

した。羊水流入を証明するために必要なマーカーの条件は、羊水中に特異的に濃度が高いこと、陣痛によ

り濃度が変化しないことである。条件を満たす蛋白質を検索し、 Squamous cell carcinoma (SCC) antigen が

適切であることを見出した。

本研究では、日本産婦人科医会が行っている羊水塞栓症血清検査事業で集められた血清を用いて、 SC

CA をCUA 法で測定した。剖検により確定した確定的羊水塞栓症4f 列、血清検査事業が設定した臨床的基

準を満たす臨床的羊水塞栓症16 例、正常分娩した妊婦をコントロール74 例とし、血清を測定した。血清secantigen は確定的羊水塞栓症(112.0 ± 169.4 ng /mL, P = 0.001) 、臨床的羊水塞栓症(9.5 ± 10.3 ng /

mL, P = 0.004 )で、コントロール(4.4 ± 2.2 ng /mL) より有意に高かった。ROC 解析を行い、羊水塞栓症診

断の血清sec antigen のカットオフ値を7.15 ng/mL と設定した。 この時の感度は60% 、特異度は89.2% で

あった(AUC=O .785,P く0.001 )。STN の感度、特異度は25.8% 、97 .2% 、ZnCP -1 で、は45.9% 、73.0% であり、

SCCA. がより感度が高かった。

この結果より、 sec antigen は従来の補助診断マーカーSTN 、ZnCP-1 よりも有用な羊水塞栓症診断の新

しいマーカーとなり得ると考えられる。また、低侵襲で簡便に検査出来るため臨床診断に有用である。