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卒業研究論文 スーパーにおける常連客の購買行動の分析 学籍番号 00D8101020G 作田 真吾 中央大学理工学部情報工学科 田口研究室 2004 3

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  • 卒業研究論文

    スーパーにおける常連客の購買行動の分析

    学籍番号 00D8101020G

    作田 真吾

    中央大学理工学部情報工学科 田口研究室

    2004年 3月

  • i

    あらまし 本研究では,九州にある某スーパーの ID付き POSデータを使い,常連客の購買行動を分析する.まず分析対象期間に購買履歴のある顧客全体から,来店頻度と購入金額をもとに常連客

    を抽出する.購買行動の分析対象とする顧客は,顧客全体の年代別構成比率が高い 30代 40代の常連客 10 人であり,実際の購買行動の類似点の有無を検証する.また,顧客の購買履歴からライン別の購入金額の偏りを調べ,常連客の嗜好を見出す.その結果から,常連客全体を分

    類する. キーワード:RFM分析,顧客の分類

  • ii

    目次

    第 1章 はじめに ...........................................................................................................................1

    第 2章 利用データ........................................................................................................................2

    2.1 ID付きPOSデータ ..................................................................................................2 2.2 都道府県気象資料....................................................................................................3

    第 3章 常連客の抽出....................................................................................................................5

    3.1 常連客の定義 ...........................................................................................................5 3.2 RFM分析...............................................................................................................6

    第 4章 購買行動の分析 ................................................................................................................9

    4.1 コレスポンデンス分析 ............................................................................................9 4.2 分析対象顧客 ...........................................................................................................9 4.3 全期間におけるライン間の相関関係....................................................................10 4.4 春季,夏季,秋季におけるライン間の相関関係 .................................................14

    4.3.1 顧客Ⅰにおけるライン間の相関関係......................................................14 4.3.2 顧客Ⅲにおけるライン間の相関関係......................................................16 4.3.3 顧客Ⅴにおけるライン間の相関関係......................................................17 4.3.4 顧客Ⅵにおけるライン間の相関関係......................................................19 4.3.5 顧客Ⅹにおけるライン間の相関関係......................................................21

    第 5章 常連客の分類..................................................................................................................23

    5.1 主成分分析.............................................................................................................23 5.1.1 主成分分析とは .......................................................................................23 5.1.2 主成分の算出...........................................................................................23 5.1.3 寄与率 ......................................................................................................25 5.1.4 分析結果 ..................................................................................................25

    5.2 クラスター分析 .....................................................................................................27 5.2.1 クラスター分析とは................................................................................27 5.2.2 階層クラスター分析の手順.....................................................................27 5.2.3 クラスター分析の方法............................................................................27 5.2.4 分析結果 ..................................................................................................27

    5.3 各クラスターの特徴..............................................................................................28

  • iii

    第 6章 まとめ .............................................................................................................................30

    謝辞 ························································································································31

    参考文献 ··················································································································32

    付録 ························································································································33

  • 1

    第1章 はじめに 今日,小売業において顧客の購買行動を分析し,それに基づいた店舗経営をすることが重要

    である.顧客の中でも,リピーターと呼ばれる常連客が,売り上げの多くを占めている場合が

    多い.このことから,常連客に焦点を絞って分析を行うことが重要である.分析を行うには,

    顧客情報や商品情報が詳細に管理されている必要がある.以前までは,情報の管理が困難であ

    り,マーケティング戦略は容易なものではなかった.しかし現在では,共通商品コードとして

    JAN コードが導入され,商品管理が格段に容易になった.さらに,JAN コードはバーコードとして商品に記載され,POSシステムをはじめ,受発注システム,棚卸,在庫管理システム等に利用されるようになった.近年,POSシステムはさらに進化をとげ,顧客に会員カードを持たせることにより,顧客情報と商品情報を同時に管理することを可能とした. 本研究では,ID付き POSデータをもとに分析を行う.対象とする顧客は常連客であり,常連客の定義は第 3章に示す.顧客は,各々で購買行動が違うことが想定される.そこで,常連客がどのような購買行動をしているか,また,顧客間で類似点はあるのかを調べる.さらに,

    常連客が特定の商品に偏った購買行動を示すかを調べ,似たような嗜好を持つグループに分類

    することを目的とする.

  • 2

    第2章 利用データ 2.1 ID付き POSデータ 本研究では,日本オペレーションズ・リサーチ学会マーケティング・エンジニアリング研究

    部会提供の ID付き POSデータを用いる.データは福岡県にある某スーパーにおけるものである. データの概要は以下のとおりである

    1. 総レコード数 2,775,477レコード 2. 期間 2000年 4月 21日(金)~2000年 10月 20日(金) 3. 総顧客数 14,182人 4. データ内容

    ・客コード ・年齢 ・性別(1:男性,2:女性) ・住所 1(県名) ・住所 2(町名,字など) ・住所 3(町名,字など) ・購入日 ・ラインコード(39種類) ・ライン名(大分類) ・クラスコード(292種類) ・クラス名(小分類) ・商品コード ・商品名 ・購入単価 ・購入点数

    本研究では,食料品を対象として分析を行うため,食料品以外のラインは削除する.対象と

    するラインは以下の 22種類であり,そのあとに続くものはクラスである. ・ 牛肉…牛生食,牛肉,牛肉アウトパック,ナマ・ホルモン,生食,馬肉,

    ブロック,ミンチその他 ・ 豚肉…豚スライス,豚肉,豚肉アウトパック ・ 鶏肉…鳥肉,鳥肉アウトパック,焼き鳥 ・ 加工品…加工品,タレ類,ハム ・ 鮮魚…うなぎ焼き魚,えび,かに,刺身,鮮魚,畜生材 ・ 塩干…塩干,海草,ギフト,魚卵,鮭・鱒,ちりめん・丸干し,珍味,フライ物 ・ 野菜…野菜,季節類

  • 3

    ・ 果物…柿・西瓜類,果物,果物ギフト,梨,ぶどう,メロン類,林檎 ・ 調味料…油,インスタント調味料,インスタント調味済み,カレーシチュールー,

    ケチャップ,香辛料,塩化学調味料,醤油,食酢,スープ,ソース, タレ,調味料,調理用砂糖,漬物,つゆ,ドレッシング,風味調味料,

    マヨネーズ,みそ ・ 嗜好品…インスタントコーヒー,お茶,加工糖,カップ即席麺,機能性食品,魚

    肉貝缶詰,クリーム,紅茶ココア,ジャム蜂蜜,デザートケーキ材,農

    水産瓶詰め,レギュラーコーヒー,レンジ食品 ・ 農海産物…鰹,乾麺,粉類,ごま,昆布わかめ,しいたけ,寿司材その他,

    その他,茶漬けふりかけ,煮干,海苔,パスタ,春雨ビーフン,半生麺,

    麩,ふくしょうざい,豆麦 ・ 米…米,米製品,もち米 ・ 袋菓子…ガム,玩具菓子,季節催事,キャンディ,コーナー菓子,シリアル,

    スナック,その他,チョコレート,珍味,半生菓子,ビスケット,百円

    菓子,袋菓子,米菓,ポケット菓子,豆菓子 ・ パン…菓子パン,食卓パン,食パン,調理パン,チルド,パン催事,洋菓子,

    和菓子 ・ 水物日配…揚げ,こんにゃく,佃煮,漬物,豆腐,納豆 ・ 練り物日配…季節,中華,練り物,ハムソーセージ,麺 ・ 卵…関連品,通常卵,特殊卵 ・ 冷食…おかず,こだわり,スナック,素材,中華,麺 ・ 乳製品…飲料,季節,牛乳,チルド,デザート,乳食品,ヨーグルト ・ アイス…関連商品,高級アイス,氷,ノベルティ,マルチ ・ 惣菜 S…惣菜,惣菜 S材料,チキン,天ぷら,フライ ・ 米飯…おにぎり,寿司,スナック,米飯材料,弁当

    クラスは入力ミスと思われる誤字や,業界用語と思われる一部理解できないものがある.

    2.2 都道府県気象資料 顧客の購買行動には,気象条件が関係する[6].そこで,(財)気象業務支援センターが発行している「都道府県気象資料 福岡県」を参照する.データは,地上データ(1961~2000年)と,アメダスデータ(1976~2000年)から構成されている. 本研究では,平均気温,最高気温,最低気温,天気概況を参照する.気象官署は飯塚のもの

    を使用した.気温は地上 1.5mの高さを基準として観測され,「度」単位で小数点以下第 1位まで示されている.天気は,天気概況データを参考にした.天気概況データは,昼間および夜間

    の天気概況コードが記録されている.日別データの天気概況は,天気と接続詞で記録されてい

    て,この 2つから 1日の天気を決定した.天気については表 2. 1に,接続詞については表 2. 2に示す.

  • 4

    表 2. 1 天気 値 天気 値 天気 値 天気 値 天気 0 天気なし 9 暴風雨 18 予備 27 雷・霜 1 快晴 10 みぞれ 19 予備 28 予備 2 晴 11 雪 20 大風 29 予備 3 薄曇 12 大雪 21 雷 30 予備 4 曇 13 暴風雪 22 あられ 31 × 5 霧 14 ふぶき 23 ひょう 6 霧雨 15 地ふぶき 24 大風・雪 7 雨 16 予備 25 雷・あられ 8 大雨 17 予備 26 雷・ひょう

    表 2. 2 接続詞 値 接続詞 値 接続詞 0 データなし 4 後 1 空白 5 後一時 2 一時 6 後時々 3 時々 7 を伴う(??を伴う)

  • 第3章 常連客の抽出 3.1 常連客の定義 本研究では「常連客」を対象とした分析を行う.スーパーの利用頻度や購入金額に着目して,

    常連客は,

    ① 週に何回も来店している顧客

    ② 週に1回か2回しか来店しないが,購入金額が多い(まとめ買いをする)顧客

    と定義した.

    本研究では 1 週間を 1 単位とし,対象期間を 2000 年 4 月 24 日(月)から 2000 年 10 月 15

    日(日)までの25週間とした.なお営業日は173日で,対象期間中休業日が2日あった.対象

    期間に利用履歴がある顧客は13,927人である.ここで顧客の男女比と年代について述べる.図

    3. 1より,圧倒的に女性客が多いことがわかる.また,図 3. 2より男女ともに30代と40代の合計で半分以上を占めていることがわかる.この結果より,顧客は世帯を持つ人が中心である

    と考えられる.なお,男性の最年少は21歳,最高齢は90歳,女性の最年少は19歳,最高齢は

    122 歳であった.しかし,122 歳の女性は実在しないことがわかったので,女性の最高年齢は

    93歳である.また年齢不詳とは,122歳の女性と2000歳と記載されていた人数である.

    5

    図 3. 1 対象顧客の男女比

    30歳未満 4.6%

    13.0%

    26.4%

    25.8%

    10.7%

    3.1% 0.2%

    6.8%

    18.1%

    27.5% 23.6%

    13.9%

    7.6% 2.1%

    0.4%

    男 女

    14%

    86%

    16.2%

    30代

    40代

    50代

    60代

    70代

    80歳以上

    年齢不詳

  • 6

    図 3. 2 男女の購入者年代別比率

    3.2 RFM分析 RFM 分析とは,ダイレクト・マーケティングの分野で確立したもので,顧客の購買行動・購買履歴から,優良顧客のセグメンテーションなどを行う顧客分析手法の1つである.データ

    ベース・マーケティングにおいては,顧客データ分析の最も基本的な手法である. まず,各顧客に関して次の3つの観点から指標化する.

    ・ R(recency:最新購買日) いつ買ったか,最近購入しているか ・ F(frequency:累計購買回数) どのくらいの頻度で買っているか ・ M(monetary:累計購買金額) いくら使っているか

    各指標の数値に重み付けした上で合算してランキングを作成すると,上位の顧客は“最近,何

    度も,たくさん買ってくれている顧客”,すなわち優良顧客と判断できる.本研究では,1 週

    間を1単位として分析を行うため,Rは考慮せず,FとMの 2つだけを用いて,RFM簡便法として用いた.

    Fの重み付けは以下のとおりである. ・ 週に来店していないか,1回来店…1点 ・ 週に 2回来店…2点 ・ 週に 3回来店…3点 ・ 週に 4回来店…4点 ・ 週に 5回来店…5点 ・ 週に 6回来店…6点 ・ 週に 7回来店…7点

    Fの評価結果を表 3. 1に示す.表 3. 1から 表 3. 3における性別は,1が男性を,2が女性を表す.

    表 3. 1 Fの評価結果 客コード 年齢 性別 スコア 客コード 年齢 性別 スコア

    8657672 36 2 169 2879772 76 1 16316206607 64 2 169 16206330 51 2 16315333427 52 2 168 7320167 54 2 16216448043 71 2 168 15407431 75 1 1626450942 57 2 166 1679910 48 2 1617370069 71 2 166 14427715 56 1 161

    15038810 72 2 165 16221284 52 2 16115814249 49 2 164 16446754 76 2 16116446889 69 2 164 18004969 43 2 16119021044 56 2 164 6620597 45 2 160

  • 7

    表 3. 2 Mの評価結果 客コード 年齢 性別 スコア 客コード 年齢 性別 スコア

    2306354 62 1 125 17615271 57 1 1204425665 42 2 125 9178965 62 2 1197370069 71 2 125 16446889 69 2 119

    14623066 50 2 123 14427715 56 1 11817132099 49 2 123 14780146 49 2 1169492693 44 2 122 16447411 51 2 116

    14490129 49 2 122 8660615 42 2 11516206858 47 2 121 14514866 43 2 1152879772 76 1 120 16446058 54 2 115

    14476325 35 2 120 8646795 46 2 114 Mの重み付けは以下のとおりである.

    ・ 週の合計購入金額が 15000円以上…5点 ・ 週の合計購入金額が 12000円以上かつ 15000円未満…4点 ・ 週の合計購入金額が 9000円以上かつ 12000円未満…3点 ・ 週の合計購入金額が 6000円以上かつ 9000円未満…2点 ・ 週の合計購入金額が 6000円未満…1点

    Mの評価結果を表 3. 2に示す.なおMの重み付けに関しては,総務省統計局統計センターが発表している,全国の世帯消費支出とエンゲル係数を元に導出した.世帯支出の平均はひと

    月あたり 317,249円,エンゲル係数は 23.1%で,それらを掛け合わせ 4週間で割ると,1週間あたり 14,656円となる.そこで,上限を 15,000円とし,15,000円を 5ランクに分割することを考えた. 表 3. 1と表 3. 2からわかることは,両方にランクインしている顧客は 5人しかいないことである.多頻度で来店していれば,必然的に購入金額も増えると推測できる.しかし,表 3. 2ではあてはまらない.購入金額は,世帯同居人数や収入に依存する部分が大きいと考えられ,そ

    のことが顕著に表れているのではないかと推測する.また,年齢も 40 代以上がほとんどであり,結果として購入者の世帯が核家族,あるいは拡大家族であると考えられる. FとMの総合評価結果を表 3. 3に示す.表 3. 3より,FもしくはMの評価が高い顧客は総合評価も高いことがわかる.ここで,ランクインしている男性顧客の解釈が難しい.実際 1人で買い物に来ている顧客もいるであろうが,配偶者がそのカードを使っている可能性も考えら

    れるためである. さらにR/F/Mのそれぞれの項目を独立にランク分けし,R×F×Mのマトリクスを作る(例えば 5段階であれば,5×5×5=125の“セル”に分割されたマトリクスが想定される).このマトリクスのどのセルに属しているかによって,顧客をセグメントする.本研究では 7×5=35 のセルに分け,スコア分布を表 3. 4に示す.また表 3. 5には,各セルの男女数を示す.

  • 8

    表 3. 3 FとMの総合評価結果 客コード 年齢 性別 スコア 客コード 年齢 性別 スコア

    7370069 71 2 291 15038810 72 2 2682879772 76 1 283 7320167 54 2 266

    16446889 69 2 283 15579763 63 2 26416448043 71 2 280 17132099 49 2 26414427715 56 1 279 6824451 52 2 26114490129 49 2 277 18823339 53 2 26114623066 50 2 277 2306354 62 1 26016446058 54 2 273 14966315 48 2 25817615271 57 1 270 19689500 49 2 25815814249 49 2 269 14428123 56 1 257

    表 3. 4 FとMのスコア分布(総合人数[人])

    来店回数

    7 6 5 4 3 2 1 5 4 9 8 2 1 0 0 4 3 28 23 13 10 6 1 3 5 34 67 48 36 24 11 2 2 19 69 134 143 242 143

    額 1 0 8 47 128 294 868 11496

    表 3. 5 FとMのスコア分布(男女別[男/女])

    来店回数

    7 6 5 4 3 2 1 5 1/3 2/7 1/7 0/2 0/1 0/0 0/0 4 0/3 3/25 2/21 1/12 2/8 0/6 0/1 3 0/5 3/31 8/59 5/43 5/31 0/24 2/9 2 1/1 1/18 3/66 14/120 20/123 26/216 24/119

    額 1 0/0 1/7 8/39 14/114 38/256 117/751 1683/9813

    この結果から,①来店頻度の高い顧客と,②まとめ買いをする顧客を抽出する.①について

    は毎週 5回以上来店している顧客とする.②については週の購入金額が 9000円以上の顧客とする.本研究で対象となる常連客は 368人とする.また表 3. 4より,大半の顧客が週に 1回程度しか来店していないことがわかる.

  • 9

    第4章 購買行動の分析 4.1 コレスポンデンス分析 本章では,22種類のライン間の相関関係の有無を分析する.分析手法としてコレスポンデンス分析を用いる.コレスポンデンス分析は,複数のカテゴリ(分類項目)間の類似度,関係の

    深さを把握するのに適した手法で,主にイメージなどのポジショニングマップを作成するとき

    などに用いる.数理的には数量化理論第 3類と同等である.なお,分析結果は,二次元グラフとして出力される.グラフは,ラインと対ラインの座標値のユークリッド距離が近いほど,相

    関関係が密であることを示す. まず,顧客 1人が同日にどのラインと,どのラインの商品を購入したかをカウントし,そのカウント数をもとに分析を行った.コレスポンデンス分析を行うにあたり,ライン名を表 4. 1のようにコード化した.以後,本章の図でラベル付けされている数字には,表 4. 1を適用する.

    表 4. 1 ライン名 1:牛肉 7:野菜 13:袋菓子 19:乳製品 2:豚肉 8:果物 14:パン 20:アイス 3:鶏肉 9:調味料 15:水物日配 21:惣菜 S 4:加工品 10:嗜好品 16:練物日配 22:米飯 5:鮮魚 11:農海産物 17:卵 6:塩干 12:米 18:冷食

    4.2 分析対象顧客 コレスポンデンス分析を行ううえで,常連客全員について分析を行うことは困難である.そ

    こで,本章で対象とする顧客は,①に該当する 9人と,②に該当する 1人の計 10人とする.10人の詳細を表 4. 2 本章で対象とする常連客に示す.以後,この 10人をテンリピーターと定義する.またテンリピーターに,客コードとは別に顧客番号をⅠからⅩまで付けた.なお客

    コード 21456057の女性が,②に該当する顧客である.

  • 10

    表 4. 2 本章で対象とする常連客 顧客番号 客コード 年齢 性別 住所 Fと Mの総合スコア

    Ⅰ 1679910 48 女性 福岡県糟屋郡宇美町宇美 197 Ⅱ 3601232 35 女性 福岡県糟屋郡宇美町宇美 210 Ⅲ 3933506 48 男性 福岡県糟屋郡志免町桜丘 228 Ⅳ 6620597 45 女性 福岡県糟屋郡宇美町 247 Ⅴ 8482942 32 女性 熊本県熊本市武蔵ヶ丘 229 Ⅵ 9232455 44 女性 福岡県糟屋郡須惠町上須恵 236 Ⅶ 14802754 43 男性 福岡県糟屋郡宇美町宇美 235 Ⅷ 16047831 33 女性 福岡県糟屋郡宇美町宇美 236 Ⅸ 20939913 32 女性 福岡県糟屋郡宇美町ひばりが丘 247 Ⅹ 21456057 46 女性 福岡県糟屋郡宇美町四王寺坂 147

    4.3 全期間におけるライン間の相関関係 対象期間の全期間,全顧客についてコレスポンデンス分析を行った結果を図 4. 1に示す.最も相関関係が密であるラインは,野菜と水物日配との間である.理由として,野菜が鮮度品で

    あることや,買いだめをしておくことが困難な商品であることが挙げられる.また,水物日配

    に含まれる商品が,1日に 1回は食卓にあがると考えられるものが多いため,相関関係が密になったと推測できる.次に相関関係が密なものは,水物日配と乳製品との間であり,これらに

    ついても同様のことが考えられる. 全体的に,多くの家庭で毎日食卓にあがる可能性の高いもの,つまり,野菜,パン,水物日

    配,乳製品などの相関関係が密である.逆に相関関係があまり見られないものは,牛肉と豚肉

    との間や,牛肉と鶏肉との間などである.理由として,異なる種類の肉類を,同時に買うこと

    が極端に少ないためと考えられる. また,アイスや惣菜 Sに対する相関関係は,いずれのラインに対しても見られない.アイスは気温が大きく関わるラインであり,ほかのラインに比べると,購入された合計回数が極端に

    少ない.惣菜 Sは,購入する顧客と購入しない顧客が分かれる商品であることが考えられ,購入の回数が少ない.よって,2 つのラインと他の全てのラインとの間の相関関係が見られないと推測される.乳製品もアイスや惣菜 Sと同様に離れている.これは購入された回数が非常に多いことにより,他のラインとの間に相関関係を表すことが困難となり,グラフ上で離れたと

    考えられる. 次に,テンリピーターについて分析を行った結果を図 4. 2に,顧客Ⅴについて分析を行った結果を図 4. 3に示す.対象顧客の残り 9人に対しても分析を行ったが,すべてほぼ同様の結果であった(残りの 9人は,付録Aを参照).図 4. 1,図 4. 2,図 4. 3を見比べると,ほぼ同様の結果である.これは,どの顧客も同じような組み合わせで買い物をしていることを表してい

    る. 対象期間が長いと,顧客ごとの特性は見えにくい.そこで,期間を短くして再度分析を行う.

  • 図 4. 1 全顧客の全期間におけるライン間の相関関係

    図 4. 2 テンリピーターの全期間におけるライン間の相関関係

    図 4. 3 顧客Ⅵの全期間におけるライン間の相関関係

    11

  • 12

    対象期間を 25週間から 4週間として分析をしたが,同様の結果であった.そこで,最終的に対象期間を 1週間とした.データは 4月から 10月まであり,春夏秋の季節がある.季節によって違いが表れることが考えられるため,対象とする 1週間を,以下のように季節ごとに設定した.

    ・ 春季…5月 15日(月)~5月 21日(日) ・ 夏季…7月 31日(月)~8月 6日(日) ・ 秋季…10月 2日(月)~10月8日(日)

    分析の前に,対象期間の天気概況を示す.春季を表 4. 3に,夏季を表 4. 4に,秋季を表 4. 5にそれぞれ示した.いずれの期間においても,1 週間のうちで晴れの日や雨の日があり,天気が購買行動に及ぼす影響に大きな差異はないと考える.

    表 4. 3 春季 月 日 曜日 平均気温[℃] 最高気温[℃] 最低気温[℃] 天気

    5 15 月 16.5 21.6 13.4 雨のち晴 5 16 火 16.1 20.9 12.5 曇一時雨 5 17 水 15.9 18.7 13.8 雨のち曇 5 18 木 18.1 24.8 13.2 晴のち曇 5 19 金 19.2 24.1 16.2 曇 5 20 土 18.6 25.1 14.0 晴一時雷雨 5 21 日 18.7 26.5 11.2 晴

    表 4. 4 夏季

    月 日 曜日 平均気温[℃] 最高気温[℃] 最低気温[℃] 天気

    7 31 月 25.8 29.4 20.4 雨一時曇 8 1 火 26.1 30.9 21.4 曇 8 2 水 25.1 28.4 23.8 曇時々雨 8 3 木 25.6 29.2 23.3 雨のち曇 8 4 金 28.0 33.4 23.6 晴 8 5 土 28.2 33.7 22.8 晴 8 6 日 28.5 33.2 23.4 晴

  • 13

    表 4. 5 秋季 月 日 曜日 平均気温[℃] 最高気温[℃] 最低気温[℃] 天気

    10 2 月 19.5 23.4 17.0 曇のち雨 10 3 火 20.0 25.0 16.1 晴時々曇 10 4 水 18.6 25.8 13.5 晴 10 5 木 18.7 26.1 13.0 晴一時曇 10 6 金 19.2 24.6 15.5 曇 10 7 土 20.0 24.2 15.9 曇 10 8 日 20.2 21.9 18.4 雨時々曇

  • 4.4 春季,夏季,秋季におけるライン間の相関関係 対象顧客 10人の春夏秋における分析結果を図 4. 4に示す.結果は,4.2節の相関関係とほぼ同様の形を示した.そこで,春季,夏季,秋季の各期間において,顧客一人一人の購買行動に

    着目する.ここでは 10人のうち 5人について示す(残りの 5人の結果は付録Bを参照).また5 人について,顧客の年齢と,袋菓子の購入点数とその商品名に注目し,子供の有無の推測を行う.

    図 4. 4 テンリピーターにおけるライン間の相関関係

    4.3.1 顧客Ⅰにおけるライン間の相関関係

    対象期間における分析結果を図 4. 5から図 4. 7に示した. 春季では,パンの購入が多く,それに対する鮮魚,野菜,嗜好品,袋菓子との相関関係が密

    である.また練物日配の購入も多く,それに対する鮮魚,野菜,調味料,嗜好品,農海産物,

    袋菓子,パンとの相関関係が密である. 夏季で,一番注目すべきラインはアイスである.25週間にわたる全期間においては,アイスの購入回数が極端に少なく相関関係が見られなかったが,夏季では春季と秋季に比べ購入回数

    が多く,鮮魚との間に密な相関関係がある.また,乳製品に対する相関関係は,果物,パン,

    練物日配との間に見られる. 秋季では,パンの購入が一番多く,そのまわりの鶏肉,鮮魚,塩干,果物,袋菓子の相関関係が密である.また図 4. 7では,練物日配,卵,アイスは近くに分布している.これは,同じラインに対し,ほぼ同じ回数購入されているためである. 袋菓子は,春季,夏季,秋季において 11点購入している.商品名は,エンゼルパイバニラ,アーモンドグリコ,コアラのマーチフレッシュなどである.顧客Ⅰは 48 歳の女性であり,商

    14

  • 品名から,この顧客に子供がいる可能性が推測できる.

    図 4. 5 春季におけるライン間の相関関係

    図 4. 6 夏季におけるライン間の相関関係

    図 4. 7 秋季におけるライン間の相関関係

    15

  • 4.3.2 顧客Ⅲにおけるライン間の相関関係

    対象期間における分析結果を図 4. 8から図 4. 10に示す. 春季において,野菜,調味料,嗜好品,農海産物の購入回数が多く,すべてに対して,農海

    産物,袋菓子,パン,水物日配との相関関係が密である.なお,牛肉,鮮魚,卵,米飯につい

    ては, 1度も購入していない. 夏季においても,野菜,調味料の購入回数が多く,袋菓子,パン,水物日配,練物日配との

    相関関係が密である.また,袋菓子,パン,水物日配は,冷食,乳製品との相関関係が密であ

    る.なお,アイスは 1度も購入していない. 秋季においては,特に相関関係が表れたラインは見られなかった.これは,来店回数は多い

    が,対象期間中に特定のラインが複数回購入されることがなく,特定のラインに対する相関関

    係が得られなかったためであると推測する. 春季と夏季に注目すると,野菜の購入回数が非常に多く,それと同時に袋菓子,パン,水物

    日配が購入されている.結果より,朝食がパンの可能性が高く,毎日漬け物か佃煮が食卓にあ

    がる可能性が高いと推測できる.なお,米飯については,対象期間中に 1度も購入していない. 袋菓子は,春季,夏季,秋季において 20 点購入している.商品名は,駄菓子,キャラメルコーン,とんがりコーンオニオングラタンなど多種におよぶ.顧客Ⅲは 48 歳の男性であり,購入点数の多さや商品名から,子供がいる可能性が十分に推測できる.

    図 4. 8 春季におけるライン間の相関関係

    16

  • 図 4. 9 夏季におけるライン間の相関関係

    図 4. 10 秋季におけるライン間の相関関係

    4.3.3 顧客Ⅴにおけるライン間の相関関係

    対象期間における分析結果を図 4. 11から図 4. 13に示す. 春季では,鮮魚,塩干,野菜,調味料の購入回数が多く,それぞれのラインに対して,袋菓

    子,パン,水物日配,練物日配,乳製品との相関関係が密である.また袋菓子,パン,水物日

    配は,練物日配,乳製品に対し,近くに分布している.また,牛肉,加工品,卵,冷食につい

    ては 1度も購入されていない. 夏季では,アイスの購入回数が春季,秋季と比べると多い.しかし,他のラインと比べると,

    特に多いわけではないため,全体として相関関係を見つけることが困難である. 秋季においては,特に相関関係が見られなかった.これは,いろいろな組み合わせで商品を

    購入していて,特定のラインとの間に相関関係が得られなかったためだと推測できる.また,

    アイス,惣菜 S,米飯に関しては,他のラインに比べて購入回数が少ないために,相関関係が

    17

  • 見られなかった. この顧客で最も注目すべき点は,春季,夏季,秋季にわたって,1 度も米を買っていないことである.しかし,全期間においては購入履歴があるため,本節の対象期間が 3週間分であり,購入していないだけである. 袋菓子は,春季,夏季,秋季において 12 点購入している.商品名はビックリマンチョコ,ベビースタードデカイ,なかよしボーロなどである.顧客Ⅴは 32 歳の女性であり,商品名から,子供がいる可能性が推測できる.

    図 4. 11 春季におけるライン間の相関関係

    図 4. 12 夏季におけるライン間の相関関係

    18

  • 図 4. 13 秋季におけるライン間の相関関係

    4.3.4 顧客Ⅵにおけるライン間の相関関係

    対象期間における分析結果を図 4. 14から図 4. 16に示す. 春季では,米,袋菓子に対して,水物日配,練物日配,卵,冷食,乳製品がほぼ同じ回数購

    入されていて,密な相関関係がある.実際の来店回数 5回のうち,米を 2回購入しているために,このような相関関係が見られたと考える. 夏季では,乳製品,アイス,惣菜 Sの購入回数が多く,それらに対し,アイス,惣菜 S,米飯が同時に購入されているため,密な相関関係がある.その他のラインは購入回数が少なく,

    いろいろな組み合わせで購入されているため,特に相関関係は見られない. 秋季では,グラフの右側にあるラインについては,それぞれがほぼ同じ回数購入されている

    ため,特に相関関係は見られない. 春季,夏季,秋季と通して見てみると,最も購入回数が多いラインは乳製品であり,乳製品

    と他の多くのラインとの間の相関関係が密である.ただし春季においては,乳製品の購入回数

    が極端に多いために,相関関係を表すことが困難となり,グラフ上で離れたと考えられる. 袋菓子は,春季,夏季,秋季において 23 点購入している.商品名はクリーミーポッキー,じゃがりこサラダ,フランホワイトなど多種のおよぶ.顧客Ⅵは 44 歳の女性であり,購入点数の多さや商品名から,子供がいる可能性が十分に推測できる.

    19

  • 図 4. 14 春季におけるライン間の相関関係

    図 4. 15 夏季におけるライン間の相関関係

    図 4. 16 秋季におけるライン間の相関関係

    20

  • 4.3.5 顧客Ⅹにおけるライン間の相関関係

    対象期間における分析結果を図 4. 17から図 4. 19に示す. 対象顧客は,低頻度の来店顧客であるため,1 回の購入が複数のラインにおよび,ライン間の相関関係が図 4. 1と似ている.ただし,夏季においては,来店回数が 2回で,そのうち 1回は多くのラインに及ぶ商品を購入しているが,残り 1回では,2つのライン(惣菜 Sと米飯)の商品しか購入していない.そのため,多くのラインを購入した 1回が強く反応を示し,図 4. 18のような結果になったと考える. この顧客で最も注目すべき点は,春季,夏季,秋季において肉類(牛肉,豚肉,鶏肉)が 1度も購入されていない点である.また,惣菜 S,米飯の購入が非常に多い点である.このことから,既製品で食事を済ませていることが推測できる.また米に関しても,春季,夏季,秋季

    で 1度も購入されていない. 袋菓子は,春季,夏季,秋季において 31 点購入している.具体的な商品名は,ビックリマンチョコ,おっとっと,じゃがりこサラダなど多種におよぶ.顧客Ⅹは 46 歳の女性であり,購入点数の多さや商品名から,子供がいる可能性が十分に推測できる.

    図 4. 17 春季におけるライン間の相関関係

    21

  • 図 4. 18 夏季におけるライン間の相関関係

    図 4. 19 秋季におけるライン間の相関関係

    22

  • 第5章 常連客の分類 本章では,全期間における常連客を,さまざまな手法を用いて分類する.また,各顧客のラ

    イン別の合計購入金額を,全購入金額で割った値を購入比率と定義する.

    5.1 主成分分析

    5.1.1 主成分分析とは 主成分分析は,多くの変量の値を,できるだけ情報の損出なしに,1 つまたは少数個の総合的指標(主成分)で代用させる手法である. 主成分分析は,もとの変数間の類似性に基づいて,新たな少ない数の変数へと集約すること

    を目的とする.よって,モデル式は, nn xaxaxaz +++= L2211

    となる. xはもとの変数, は重みである. は集約された新たな変数で,主成分という.求められる主成分は必ずしも 1つではなく,

    a z

    nmnmmm

    nn

    nn

    xaxaxaz

    xaxaxazxaxaxaz

    +++=

    +++=+++=

    L

    M

    L

    L

    2211

    22221212

    12121111

    ,,

    のように複数個の総合特性から成り立つ.このとき, をそれぞれ第 1主成分,第 2主成分,…という.

    L,, 21 zz

    5.1.2 主成分の算出 個の各標本について,n種類の変量 が与えられたとする.このデータに基づき主成分 を求める.

    N nxxx ,,, 21 L( )nmzzz m ≤,,, 21 L

    まず,各変量の分散共分散 ijσ は,

    ( ) ( )∑ ∑= =

    =−−−

    =N N

    iijjiiij xNxxxxx

    N 1 1

    1,1

    1

    λ λλλλσ (5.1)

    となり,行列で表すと,

    23

  • ⎥⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢⎢

    =∑nnnn

    n

    n

    σσσ

    σσσσσσ

    L

    MMM

    L

    L

    21

    22212

    11211

    (5.2)

    となる.さらに,相関行列を,

    ⎟⎟

    ⎜⎜

    ⎛=

    ⎥⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢⎢

    =jjii

    ijij

    nn

    n

    n

    r

    rr

    rrrr

    σσ

    σ

    1

    11

    21

    212

    112

    L

    MMM

    L

    L

    R

    で表す.ここで,変量 を nxxx ,,, 21 L

    ⎥⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢⎢

    =

    nx

    xx

    M2

    1

    X

    とおくと, X の取り得る値は,

    ⎥⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢⎢

    ⎥⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢⎢

    ⎥⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢⎢

    nN

    N

    N

    nn x

    xx

    x

    xx

    x

    xx

    ML

    MM2

    1

    2

    22

    12

    1

    21

    11

    ,,,

    である.また,各主成分の変量 の係数をそれぞれベクトル ix

    ⎥⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢⎢

    =

    ⎥⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢⎢

    =

    ⎥⎥⎥⎥

    ⎢⎢⎢⎢

    =

    mn

    m

    m

    m

    nn a

    aa

    a

    aa

    a

    aa

    ML

    MM2

    1

    2

    22

    21

    2

    1

    12

    11

    1 ,,, aaa

    で表すと,主成分は,

    Xa

    Xa

    Xa

    Tmm

    T

    T

    z

    z

    z

    =

    =

    =

    M

    ,

    ,

    22

    11

    (5.3)

    と表すことができる.ただし,各 は長さ 1の単位ベクトルとする. ka これより,各主成分 の分散 が最大になるように係数ベクトル を求めればよい.

    つまり, kz { kzV } ka

    24

  • { } ∑= 111 aaTzV

    を の条件のもとで最大にするためラグランジュの未定数111 =Taa λを用いて,

    ( )⎣ ⎦∑ −− 1max 1111 aaaa TT λ

    を で微分して 0とおくと,連立方程式 Ta1

    ( ) 0aI =−∑ 1λ ( I は 次の単位行列) (5.4) nが得られる.すなわち,(5.4)のベクトル が 0以外の解をもつためには1a λが固有方程式,

    0I =−∑ λ (5.5) の解(固有値)でなければならない.第 1主成分の分散 ( )1zV の最大値は,(5.5)より,

    ( ) 11 λ=zV となる.ここで, 1λ は式(5.5)の固有値λの最大値である. の係数ベクトル は,1z 1a 1λ に対応した固有ベクトルとして求められる.固有値の降順に ml λλλλ ,,,,, 21 LL とすれば,第 主成分の分散は

    l

    lλ であり,第 主成分の係数ベクトルは,m lλ に対応した固有ベクトルとして求められる.

    5.1.3 寄与率 固有値の大きさは,全体の情報から 1つの主成分が取り出した情報量を示している.このことを定量的に示す尺度として寄与率がある.第 主成分の寄与率は n

    100

    1

    ×=

    ∑=

    m

    ii

    nnK

    λ

    λ

    で表される.さらに,抽出したいくつかの主成分の合計で,どれだけの情報を抽出しているか

    を見るための累積寄与率は,次のように定義される.

    100

    1

    1 ×=

    =

    =n

    ii

    m

    ii

    nCλ

    λ

    5.1.4 分析結果 常連客のライン別の購入比率に対し,主成分分析を行った結果を表 5. 1,主成分の固有値を表 5. 2に示す.

    25

  • 26

    表 5. 1 ライン別の購入比率に対する主成分分析 第 1 第2 第 3 第 4 第 5 第 6 第 7 牛肉 0.152 0.103 -0.218 0.128 0.010 -0.088 0.035 豚肉 0.180 0.138 -0.160 0.156 -0.013 -0.010 -0.020 鶏肉 0.168 0.158 -0.130 0.083 0.033 -0.057 0.024 加工品 0.127 0.216 -0.053 -0.055 0.037 0.199 -0.044 鮮魚 0.102 -0.195 -0.128 -0.187 0.125 -0.262 0.158 塩干 0.096 -0.094 -0.034 -0.304 0.077 -0.294 0.114 野菜 0.113 -0.192 -0.037 0.288 -0.128 0.245 0.092 果物 -0.056 -0.225 -0.100 0.208 0.023 0.228 0.172 調味料 0.109 -0.063 0.271 -0.114 0.003 0.185 0.115 嗜好品 -0.161 0.120 0.019 -0.096 0.006 0.247 0.450 農海産物 0.107 -0.045 0.267 -0.114 -0.136 0.125 -0.021 米 0.008 -0.019 0.096 0.042 -0.662 -0.149 -0.318 袋菓子 -0.090 0.168 0.155 0.063 -0.049 -0.152 0.340 パン -0.148 0.077 0.061 0.170 0.149 -0.252 -0.285 水物日配 0.073 -0.164 0.158 -0.056 0.301 -0.052 -0.161 練物日配 0.079 0.126 0.121 -0.174 0.231 0.069 -0.160 卵 0.053 0.038 0.117 0.233 0.190 0.294 0.009 冷食 0.040 0.219 0.057 -0.174 -0.065 0.145 -0.084 乳製品 -0.063 0.032 0.150 0.335 0.261 -0.153 -0.209 アイス -0.038 0.077 0.089 0.120 -0.019 -0.402 0.346 惣菜 S -0.141 -0.016 -0.162 -0.176 0.105 0.138 -0.369 米飯 -0.205 0.024 -0.160 -0.127 -0.035 0.161 -0.004

    表 5. 2 主成分の固有値

    固有値 寄与率[%] 累積寄与率[%] 第 1成分 3.357 15.260 15.260 第 2成分 2.561 11.642 26.902 第 3成分 2.258 10.262 37.165 第 4成分 1.501 6.825 43.990 第 5成分 1.269 5.768 49.758 第 6成分 1.133 5.151 54.910 第 7成分 1.049 4.770 59.680

  • 第 1主成分の寄与率は 15.260%,第 7主成分までの累積寄与率は 59.680%である.第 1主成分は,肉類が正の値をとるような値である.第 2成分は,鮮魚,塩干,野菜,果物が負の値をとるような値である.第 3主成分は,調味料,嗜好品,農海産物が正の値をとるような値である.第 4主成分は,惣菜 S,米飯が負の値をとるような値である.

    5.2 クラスター分析

    5.2.1 クラスター分析とは クラスター分析とは,異質な要素の混ざりあっている対象を,それらの間に何らかの意味で

    定義された類似度を手がかりにして似たものを集め,いくつかの均質なもののクラスターに分

    類する手法である.大別すると階層的な方法と,非階層的な方法に分けられる.本研究では,

    前者を用いる.前者は,結果としてデンドログラムが得られる方法で,とくにクラスター数は

    定めず,対象の階層的構造を求め,目的に応じて大分類から小分類までいろいろ利用すること

    ができる.

    5.2.2 階層クラスター分析の手順 ( =jidOOOOOn ijjin ,,,, 21 数値との間の類似度を表すとがあり,対象個の対象いま L

    )n,,2,1 L が得られているときの,階層クラスター分析の手順は以下のようになる. Step1 1個ずつの対象を構成単位とする 個のクラスターから出発する. nStep2 クラスター間の類似度行列( )を参照して,最も類似性の高い 2個のクラスター

    を融合して,1個のクラスターをつくる. ijd

    Step3 クラスター数が 1になったら終了.そうでなければ,次の Stepにすすむ. Step4 Step2 で新しくつくられたクラスターと,他のクラスターとの類似度を計算して,

    類似度行列( )を更新し Step2に戻る. ijd

    5.2.3 クラスター分析の方法 本研究では,実用的に優れた方法としてよく利用されているウォード法を用いる.各クラス

    ターに属する要素の座標ベクトルを ( )L2,1=iix とし,各クラスターの重心 gからの偏差二乗 和を計算する.つまり、 を求める.これをクラスター内平方和と呼ぶ.2つのク ( 2∑ − gxi )ラスターを合併して 1つのクラスターにまとめるとき,クラスター内平方和の増加分を情報欠損量と定義する.クラスターを合併すると,必ず情報欠損量は増加するが,その情報欠損量の

    増加を最小にするように,合併相手を決める手法がウォード法である.

    5.2.4 分析結果 5.1節の第 1主成分から第 4主成分を元にクラスター分析を行う.結果は,4つのクラスタ

    27

  • ーに分類できた.各クラスターの特徴を調べるため,gnuplot を用いてライン別の購入比率を5.3節および付録Cに表示する.

    5.3 各クラスターの特徴 各クラスターから 10人を抽出し,各ラインの始点を揃えて gnuplotでグラフ化する. gnuplotとは,Thomas Williams,Colin Kelleyらによって作られたグラフ作成ツ-ルである.非常に簡単なコマンドで数式やデ-タの多種多様なグラフが作成できるほか,豊富な出力形式に

    よる実用性の高さが特徴である. 常連客全員のライン別購入比率の平均値を図 5. 1に,4つのクラスター(以下,AからDとする)のうち 1つを図 5. 2に示す(残りの 3つは付録Cを参照).なおグラフの横の数字は,客コードを示す.

    牛肉 豚肉 鶏肉 加工品 鮮魚 塩干 野菜 果物.

    調味料 嗜好品 農海産物 米 袋菓子 パン

    水物日配 練物日配 卵 冷食 乳製品 アイス 惣菜 S 米飯

    図 5. 1 常連客全員のライン別購入比率の平均

    図 5. 1と各クラスターのライン別購入比率を比べて,各クラスターの特徴を調べる.図 5. 2は,牛肉,豚肉,鶏肉,加工品,鮮魚,塩干,野菜の購入比率が高いことがわかる.図C.1は,クラスターの属する顧客数が最も多く,ほぼ平均値と同じである.図C.2は,鮮魚,野菜の購入比率が高い.図C.3は,惣菜 Sと米飯の購入比率が極端に高い. 常連客について,これら 4つのクラスターに分類ができた.

    28

  • 29

    牛肉 豚肉 鶏肉 加工品 鮮魚 塩干 野菜 果物

    果物 嗜好品 農海産物 米 袋菓子 パン

    水物日配 練物日配 卵 冷食 乳製品 アイス 惣菜 S 米飯

    1679910 2288226 3259970 3933506 4075610 6056122 6824451 7466220 7502936 7711908

    1679910 2288226 3259970 3933506 4075610 6056122 6824451 7466220 7502936 7711908

    1679910 2288226 3259970 3933506 4075610 6056122 6824451 7466220 7502936 7711908

    図 5. 2 クラスターAに属する 10人のライン別の購入比率

  • 30

    第6章 まとめ 本研究では,RFM 分析を用いて常連客を抽出した.さらに抽出した常連客に着目し,購買行動に特徴が見られるかを分析した.対象期間を 4ヶ月間とすると,顧客の購買行動はほぼ同じであると考えられる.これは,日本人の食生活が同様なものであり,購入する商品の組み合

    わせが結果として同じになるためである.しかし,1 週間での購買行動は顧客一人一人で異なることがわかった.したがって,対象期間を長くすると,購入するものが結果として同じにな

    ることで,相関関係も同様になると推測できる. また,購入比率に着目して常連客を分類した.その結果,購入比率には偏りがみられた.こ

    れは,特定のラインの購入金額が大きいことを表している.つまり,5 つの購入パターンに分類することができた. 本研究では,常連客を対象として分析した.したがって,本研究の結果が,全顧客にあては

    まるとは限らない.また,本研究で対象とした常連客について,袋菓子の購入履歴から子供の

    有無を推測した.しかし,袋菓子を食べるのは子供だけとは限らないため,実際の家族構成は

    断定できない. 今後の課題として,全顧客に関しての特徴を見出すことや,全顧客をグループ別に分類する

    ことが挙げられる.さらに,それぞれのグループに関して,どのようなマーケティング戦略が

    有効であるか見出すことが必要である.

  • 31

    謝辞 本研究を進めるにあたり,多くのご指導をいただいた中央大学理工学部情報工学科の田口東

    教授に深く感謝の意を表します.また,研究を進めるうえで,多くのご助言,ご協力をいただ

    いた鳥海重喜氏をはじめ,田口研究室の皆さんに深く感謝します.

  • 32

    参考文献 [1] 江尻弘,小売業デ-タベ-ス・マ-ケティング,中央経済社,東京,1998. [2] 飯塚久哲,米村大助,豊田秀樹,“顧客ランクによる行動分析”,オペレ-ションズ・リ

    サ-チ,第 48巻,第 2号,pp94-99,2003. [3] 石村貞夫,SPSSによるカテゴリカルデ-タ分析の手順,東京図書,東京,2001. [4] 関庸一,“ID付き POSデ-タからの顧客行動パタンの抽出”,オペレ-ションズ・リサ-

    チ,第 48巻,第 2号,pp75-82,2003. [5] 杉原敏夫,藤田渉,多変量解析,牧野書店,東京,1998. [6] 土屋知美,“天候による消費者の購買行動の変化について”,中央大学理工学部情報工

    学科卒業研究論文,2002.

  • 33

    付録 A

  • 図A.1 顧客Ⅰのライン間の相関関係

    図A.2 顧客Ⅱのライン間の相関関係

    図A.3 顧客Ⅲのライン間の相関関係

    34

  • 図A.4 顧客Ⅳのライン間の相関関係

    図A.5 顧客Ⅴのライン間の相関関係

    図A.6 顧客Ⅶのライン間の相関関係

    35

  • 図A.7 顧客Ⅷのライン間の相関関係

    図A.8 顧客Ⅸのライン間の相関関係

    図A.9 顧客Ⅹのライン間の相関関係

    36

  • 37

    付録 B

  • 図B.1 顧客Ⅱの春季におけるライン間の相関関係

    図B.2 顧客Ⅱの夏季におけるライン間の相関関係

    図B.3 顧客Ⅱの秋季におけるライン間の相関関係

    38

  • 図B.4 顧客Ⅳの春季におけるライン間の相関関係

    図B.5 顧客Ⅳの夏季におけるライン間の相関関係

    図B.6 顧客Ⅳの秋季におけるライン間の相関関係

    39

  • 図B.7 顧客Ⅶの春季におけるライン間の相関関係

    図B.8 顧客Ⅶの夏季におけるライン間の相関関係

    図B.9 顧客Ⅶの秋季におけるライン間の相関関係

    40

  • 図B.10 顧客Ⅷの春季におけるライン間の相関関係

    図B.11 顧客Ⅷの夏季におけるライン間の相関関係

    図B.12 顧客Ⅷの秋季におけるライン間の相関関係

    41

  • 図B.13 顧客Ⅸの春季におけるライン間の相関関係

    図B.14 顧客Ⅸの夏季におけるライン間の相関関係

    図B.15 顧客Ⅸの秋季におけるライン間の相関関係

    42

  • 43

    付録 C

  • 牛肉 豚肉 鶏肉 加工品 鮮魚 塩干 野菜 果物

    調味料 嗜好品 農海産物 米 袋菓子 パン

    水物日配 練物日配 卵 冷食 乳製品 アイス 惣菜 S 米飯

    1471512 1674899 1676375 1679894 1680913 1885516 1892833 2267389 2275710 2278211

    1471512 1674899 1676375 1679894 1680913 1885516 1892833 2267389 2275710 2278211

    1471512 1674899 1676375 1679894 1680913 1885516 1892833 2267389 2275710 2278211

    図C.2 クラスターBに所属する 10人のライン別の購入比率

    44

  • 1675583 1679367 1679750 1884546 1885641 1997888 2269632 2879772 3260044 3266233

    牛肉 豚肉 鶏肉 加工品 鮮魚 塩干 野菜

    1675583 1679367 1679750 1884546 1885641 1997888 2269632 2879772 3260044 3266233

    果物 調味料 嗜好品 農海産物 米 袋菓子 パン

    1675583 1679367 1679750 1884546 1885641 1997888 2269632 2879772 3260044 3266233

    水物日配 練物日配 卵 冷食 乳製品 アイス 惣菜 S 米飯

    図C.3 クラスターCに所属する 10人のライン別の購入比率

    45

  • 1675789 1681198 1883969 2305384 2306354 3260160 4304214 5171479 5610971 5742996

    牛肉 豚肉 鶏肉 加工品 鮮魚 塩干 野菜 果物

    1675789 1681198 1883969 2305384 2306354 3260160 4304214 5171479 5610971 5742996

    調味料 嗜好品 農海産物 米 袋菓子 パン 水物日配 練物日配

    1675789 1681198 1883969 2305384 2306354 3260160 4304214 5171479 5610971 5742996

    卵 冷食 乳製品 アイス 惣菜 S 米飯

    図C.4 クラスターDに属する 10人のライン別の購入比率

    46

  • 福岡市

    常連客全員

    クラスターA

    クラスターB

    クラスターC

    クラスターD

    牛肉 豚肉 鶏肉 加工品 鮮魚 塩干 野菜 調味料

    福岡市

    常連客全員

    クラスターA

    クラスターB

    クラスターC

    クラスターD

    嗜好品 農海産物 米 パン 練物日配 惣菜 S 米飯

    図C.5 福岡市,常連客,各クラスターにおける平均のライン別購入比率の比較

    47

    はじめに利用データ常連客の抽出購買行動の分析常連客の分類まとめ謝辞参考文献